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南郷次郎探偵帳 影なき殺人者

1961年、新東宝、島田一男原作、宮川一郎脚本、石川義寛脚本+監督作品。

※この作品はサスペンスミステリであり、後半謎解きめいた部分が登場しますが、最期まで詳細にストーリーを書いていますのでご注意ください。コメントはページ下です。

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タイトル

苦しむ下着姿の女。

男の足にすがる女の顔は尋常ではなかった。

そんな麻薬中毒と思われる女を、男はいきなり射殺する(…ここまでタイトルバック)

東京拘置所から出所して来た男は、麻薬王として知られていた神崎(晴海勇三)だった。

神崎はタバコを吸い、林を歩いて行くと、土手の上に、二人の男が車を待たせており、会釈して来る。

迎えの車と知った神崎は、その車に乗り込んで出発する。

その背後から一台の車が尾行し始める。

乗っていたのは、板長こと板津部長刑事(坂本武)と部下の山口刑事(宮浩一)だった。

山口刑事は、これで一網打尽ですねと板長に話しかける。

ところが、二股分岐点に来た時、その一方からダンプカーが迫って来て、板長たちの車の前に衝突寸前で停まる。

山口刑事は、早くどけろと抗議するが、藤縄建設と書かれたダンプの運転手は、そっちが悪いんじゃないかとふてくされた態度で、ゆっくりバックする。

思わぬ所で時間を食った板長たちは、神崎の車を追うが、もう相手は姿をくらましていた。

その後、神崎の他殺遺体が発見される。

南郷次郎(天知茂)は、翌日、日頃から懇意の板長から事務所に電話をもらい、神崎殺害事件の概要を聞く。

神崎が乗っていた車は盗難車両だったと聞いた南郷は、最初から何者かに殺される為に車に乗せられたことに気づき、奴がボスではなかったんですねと感想を伝える。

そのとき、助手の金丸京子(水原ユカ)がやって来て、頼まれもしないのに、南郷に二日酔いの薬を渡す。

南郷は、気が利くね、それに美人だし…とおだてるが、そんなおだては通用しない京子は、今日何の日かご存知ですかと聞いて来る。

君の誕生日だったっけ?と聞いた南郷に、京子は呆れたように、私の誕生日は給料日ですとやり返す。

南郷は、京子にろくに給料を払っていなかったのだ。

そのとき電話がかかって来たので南郷が出ると、東野文江と名乗る怯えた口調の女性からのもので、警察に言えないことでご相談があるので、麻布にある東京ホテルの383号室まで甥で願いたいと言う内容だった。

南郷は、京子に出かけるよと言い残し、愛用のルノーに乗ると、東京ホテルの383号室に向かう。

ところが、鍵がかかっていないドアを開けてみると、中のベッドの上に、依頼人である東野文江らしい死体が転がっていた。

素早く部屋の中の様子を観察した南郷は、クロークに降りて来ると、383号室の客が殺害されているので、すぐに警察を呼んでくれと、女性の受付に頼むが、女性が動揺しているのを見て取ると、電話は自分でかけるので、客の預けたものを見せてくれと頼む。

その場から、警視庁の板長を呼び出した南郷だったが、出かけていると言うので、東京ホテルで殺しがあったと伝える。

女性クロークは、383号室の客から預かっていた貴重品を出して来る。

それは、鍵と印鑑とロマンスカーの切符だった。

その頃、板長は、神崎追跡を意図的に妨害したと思われるダンプの運転手を聴取していた。

その工事現場に見知らぬ男が車で乗り付けて来たので、誰だと聞くと、藤縄建設の社長だと言う。

そのとき、警察無線が入り、東京ホテルでの殺しの情報がもたらされる。

すぐさま、現状に向かった板長たちは現場検証を始めるが、発見者である南郷が、被害者の貴重品を持って出て行ったらしいと聞いた板長は苦笑する。

案の定、被害者がホテルに残した住所や名前などは全て噓だった。

その頃、南郷は、鍵が銀行の貸金庫のものであると見当をつけ、最初の銀行から出て来た後、事務所の京子に電話を入れると、新宿の小田急の駅まで来て欲しいと伝える。

続いて、違う銀行の貸金庫からバッグを受け取る南郷。

京子は、小田急新宿駅で南郷から預かった鍵と印鑑、そして、隠し金庫に一つに入れられていた麻薬の元になる固まり数個を、警視庁の板長に届ける。

神崎の鍵と印鑑を持っていたホテルの被害者は、神崎がパクられる前に渡されていたに違いなかった。

その頃、南郷は、小田急のロマンスカーに乗って箱根方面に向かっていた。

棚に問題のバッグをわざと置き、目立つようにすると、周囲の客たちの反応を観察し始める。

すると、棚のバッグをにらみながら、後方のイスに腰掛けた人相の悪い男がいたので、南郷は警戒するが、すぐに、赤ん坊を連れた妻らしき女がやって来ると、赤ん坊を抱いて相好を崩す普通の父親だったことが分かる。

気がつくと、前方の席で、ちらちら南郷の方をうかがっているサングラスの女もいた。

横の列に座った新婚カップルの仲良しぶりに微笑んでいた南郷だったが、突如、見知らぬ若者が隣の席に座り、自分が置いたバッグのすぐ横に、似たようなバッグをわざと近づけて乗せた男が現れたので緊張するが、その男が煙草をくわえたので、自らライターを差し出し火をつけてやりながら、頼まれたのでねと、ホテルの女からバッグを託されたように装う。

終点の箱根湯本で降りた南郷は、バッグを取り替えて持っていった若い男が白タクに乗り込んだのを駅前で見届けると、自分もタクシーを止め、後を追おうとするが、そこに近づいて来たのが、車中にいたサングラスの女だった。

女は、次の仕事があるので、これから芦ノ湖へ向かい、そこにある42号のボートに乗って、なるべく遠くへ漕いで行って欲しいと頼むと、運転手に、芦ノ湖のボート乗り場にと行き先を頼む。

走り出したタクシーの運転手に、今の女性は良く観かける人か?と聞いた南郷だったが、運転手の方は知らなかったようで、南郷の連れだと思い込んでいたようだった。

途中、車を停め、公衆電話から小田原署へ連絡を入れた南郷は、警視庁の板長と懇意のものだが、「トヨペットクラウン」でバックナンバー「神5 す 4444」を追ってくれと依頼して、又タクシーに戻ると芦ノ湖へ向かう。

一方、白タクに乗っていた若い男は、急に眉の薄い運転手から拳銃を突きつけられると、持っていた鞄を奪われ、銃で殴られて気絶する。

運転手は、その若い男の身体を抱えて崖の側まで来ると、男の身体を崖下に突き落とすのだった。

その後、運転手は、バックナンバーをすり替えてしまう。

芦ノ湖に到着した南郷は、箱根であった女の指示通り、手漕ぎボートで、湖の真ん中付近まで来て様子を観ていた。

すると、一台のモーターボートが通りかかったので手を挙げて挨拶をしてみる。

すると、そのボーターボートは、一旦通り過ぎた後、旋回して戻って来るが、明らかにそのコースは、南郷のボートと衝突を狙ったかのような向きだったので、慌てた南郷は、必死にボートを動かそうとするが、モーターボートは、そんな南郷のボートを転覆させるような勢いで、間近を通過して行く。

そして旋回しては又戻って同じことを繰り返すうち、バランスを失った南郷は、湖に落下してしまう。

すると、モーターボートは、湖に浮かび上がった南郷を沈めるように直進して来る。

その度に、南郷は、水中に身を避ける。

そんな様子を、誰かが双眼鏡で覗いていた。

やがて、水中に沈んだと思ったのか、襲っていたモーターボートは去って行くが、何とか、息も絶え絶えに水面に浮かび上がった南郷は、近づいて来た別のモーターボートに乗った女から手を差し伸べられ救助される。

湖畔のホテルの一室に着いた南郷は、彼女に礼をしたいので名前を教えてくれと頼むが、彼女は教えようとしない。

そのくせ、南郷の名前は、濡れた名刺を見たらしく知っていた。

二人はしばらくダンスを踊るが、迎えの車が来たとボーイが知らせに来たので、彼女をその車に乗せ見送る。

その頃、白タクの運転手に殴られ、崖下に落とされた青年の死体を地元署の刑事たちが発見し調べていた。

本庁から連絡があった車に乗った男ではないかと見当をつける刑事たちは、死体のポケットなら「BBB」と印刷された謎のカードを発見する。

南郷は、先ほどの女性と一緒に、自分を助けてくれたボート屋の青年(溝口幸二)に、謝礼を手渡し礼を言いながらも、自分を襲撃した赤と白のボートのことと女性の素性を知らないか聞いてみる。

青年は、白と赤のボートのことは知らないようだったが、女性の方は、湖の向こう側の別荘に、年に2、3回来るのを観かけたことがあると教えてくれた。

早速、その別荘に行ってみた南郷だったが、「本田」と表札がかかったその屋敷には、鍵がかかり、中には誰もいない様子だった。

小田原署の刑事二人が本庁の板長に会いに来て、男の被害者が持っていた「BBB」のカードを見せる。

さらに、東京ホテルで殺された女性の名前が、東野文江(吉田昌代)と判明したと部下の報告で知った板長は、麻薬の治療病院を当たってみたらどうかと思いつく。

板長は、小田原署に連絡して以降、姿を見せない南郷のことを案じていた。

その南郷は、一足先に、麻薬の治療病院に調査に来ていた。

すると、殺された東野文江には弟がいると言うことが分かり、二人が写った写真まで見せてもらえる。

そこに写っていたのは、確かに文江と、東野大八(鳴門洋二)と言う弟だったが、それは、南郷とロマンスカーで出会い、箱根湯本からバッグを持って車で去った後殺害された、あの若い男だった。

不思議なことに、その写真は片端が切られており、もう一人、姉弟と一緒に誰かが写っていたようだった。

病院を帰りかけた南郷は、ちょうどやって来た板長と再開する。

板長は、先を越された南郷から写真を見せられ、大八と言う弟は、藤縄建設と言う会社に勤めていたらしいと教えられると、最初に神崎の尾行を妨害したダンプもそこの会社のものだったと言う。

南郷は、今夜事務所で会いましょうと板長に告げ、その足で藤縄建設の現場に向かう。

仕事に出かけるダンプから、泥水をはねかけられた南郷は、事務員(泉田洋志)から、東野大八は、この会社を辞めた後、姉が勤めていた「グランプリ」と言う店に転がり込んだらしいとの情報を得る。

その夜、事務所で板長と会った南郷は、見せられた「BBB」のカードは、桃色クラブだなと見当をつける。

板長は、帰り際、京子ちゃんに給料払ってやれと言い残して行くが、子供に小遣いを与えすぎると良くないと南郷がつぶやいたので、それを聞いた京子はむくれてイスに足を組んで座るが、その足に目をやった南郷は、もっと、スカートを下げてくれと困ったように頼む。

翌日、新宿の「グランプリ」と言うバーに出向いた南郷は、加代(小野彰子)と言うホステスに、東野文江のことについて聞いてみるが、加代は知らないらしく、マダムなら知っているかもしれないと言いながら、店の奥で客の相手をしていたマダム(宮田文子)を教える。

そのマダムの顔を見た南郷は驚く。

箱根湯本で、自分を芦ノ湖に向かわせたサングラスの女だったからだ。

南郷は、マダムに近づくと、「しばらく!湖の水は冷たかったよ」と嫌みを言う。

客は文句を言って来るが、マダムは南郷を奥の部屋に連れて行く。

マダムがウィスキーを注いだので、南郷は毒でも盛られているのではないかと警戒しながら、一体、誰に頼まれた?文江と大八は足を洗おうとした所で消されたと詰め寄る。

そのとき、カーテンの後ろから銃を持った用心棒が現れたので、南郷は持っていたグラスのウィスキーを相手の顔に浴びせかけ乱闘になるが、銃を奪い、相手を倒した所で、もう一人カーテンの背後に隠れていた眉の薄い男から殴られ気絶してしまう。

男は、倒れていた用心棒を射殺すると、マダムにも銃を向け発砲した後、その銃を気絶した南郷に握らせて部屋を出て行く。

撃たれたマダムは、瀕死の状態で部屋の棚まで這って行き、引き出しを開けると、そこから手帳を取り出そうとして絶命する。

気がついた南郷は、マダムと用心棒が殺されている様子を発見、自分が持っていた拳銃も調べると、その銃をその場に置き、マダムが掴んでいた手帳を奪い、部屋を出て、そのままバーの外に逃げる。

事務所に戻ると、京子が倒れていたので介抱する。

京子の話だと、ノックがしたので部屋を出てみると、いきなりハンカチで顔を押さえられ、眠くなったと言う。

エーテルか…、嫌がらせをしやがって!と怒った南郷だったが、怖くて帰れないと怯える京子を、ここに泊まって行って良いと言う。

京子は喜び、男の匂いがするベッドは嫌と言いながらも、掛け布団をもらうと、そのにおいを嗅ぎながら、うれしそうにソファアに寝ると、つい立ての向こうのベッドで寝ている南郷に、どうして先生は独身なんです?面白いからでしょう?板長さんが言っていたけど、先生は、人妻と生娘には手を出さないすか?などと色々話しかけるが、南郷の方は、マダムから奪って来た手帳を熱心に読みふけっていた。

翌朝、板長から電話が入り、南郷に出頭していただきたいと言う。

南郷は、やはり重要参考人になったかと苦笑いしながらも、京子には、夕べ、罠にかかって殺人容疑者にされてしまったと打ち明けると、自分は警察に行くので、君は新宿に女性だけが出入りできる「宝城寺商会」と言う金貸業があるので、そこに行ってみて欲しいと頼む。

仕事を依頼された京子は、張り切って「宝城寺商会」に出向くと、応対に出て来た秘書(加藤欣子)に、15万、無担保で貸して欲しいと頼む。

女は一旦部屋を出て、別の女にそのことを告げると、後ろ向きだったもう一人の女は、あの子なら良いわ。今夜、下着をきれいにして来るように言いなさいと命じる。

事務所に戻り、そのことを南郷に知らせた京子は、南郷がもう行かなくて良いと止めたので、又、子供扱い?と言いながら、一旦は言うことを聞く振りをした京子だったが、こっそり後ろを向いて笑っていた。

その夜、京子は単身、「宝城寺商会」から紹介されたキャバレーに出かける。

ステージでは、男性歌手(菊池正夫)が歌っていた。

ボーイにハイボールを注文した京子は、「宝城寺商会」から聞いて来た佐藤と言う名前を出す。

すると、間もなく、その佐藤(沖竜次)を名乗る男が近づいて来て、京子を店の奥の方へと連れて行く。

その佐藤こそは、眉の薄い殺し屋だったが、そんなことを知るはずもない京子は、「BBB」と印刷されたカードを渡され、カーテンの奥のドアから入るよう指示される。

電話をすると言い、京子はその場を一旦離れると、事務所の南郷に電話を入れ、以前観た同じカードをもらったと話すと、京子が勝手に店に潜入したことを驚いた南郷は、絶対そこを動くんじゃないと命じると電話を切る。

喜んだ京子だったが、気がつくと、背後の佐藤が立っていた。

京子は、もう少し飲んで行きたいし、歌も聞きたいからと元の席に戻る。

佐藤は、ボスらしき男に、もうすぐ南郷が大八のカードを持ってここに来ると伝える。

やがて、南郷が店にやって来たので、安心した京子は、奥の秘密の扉の在処を教えると店を出て行く。

その様子を佐藤は柱の陰からジッと観察していた。

南郷は、佐藤の想像通り、奥の扉に来ると、持って来た東野大八の「BBB」カードを、ガラス窓にかざし、中に入れてもらえる。

中には複数の部屋があり、その中の一つの部屋の鍵を渡された南郷が、指定の部屋に入ってみると、そこにベッドで腰をかけて待っていたのは、あの芦ノ湖で救ってくれた女だった。

女は、「宝城寺商会」を経営していた宝城寺竜子(三原葉子)であった。

竜子は、ここは単なるセックス社交場だととぼけるが、南郷は、裏では麻薬の取引をやっていると追求する。

竜子は、そんな南郷に、この前と同じじゃない。あなたを救うことになるとは…とつぶやく。

南郷は、本気か?と近づき、いつしか二人は熱いキスを交わしていた。

竜子は、私、芦ノ湖で大変な人を助けちゃったのねなどとつぶやきながら、こっそり、抱きついた南郷のスーツのポケットから部屋の鍵を抜き取る。

やがて、竜子は、すぐに出ないでねと念を押すと、先に部屋を出て行く。

しばらく待って、部屋を出ようとした南郷だったが、外から鍵をかけられており、ポケットに入れた鍵がなくなっていることに気づくと、急いで部屋の中の棚を探し、一本のヘアピンを見つけると、それを使って鍵を開ける。

外に出てみると、佐藤と竜子が車でどこかへ向かったので、南郷も愛用のルノーに乗って後を追うことにする。

東京を離れ、山道まで追跡して来た南郷だったが、背後から迫って来たダンプにあおられ、崖下に車ごと転落してしまう。

幸い車から放り出されたので、腕を怪我しただけで命は助かった南郷だったが、入院するはめになる。

危篤と書かれた新聞報道を読んで見舞いに来た板長は拍子抜けするが、かいがいしく南郷の世話をしていた京子は、あの報道は先生の作戦なのだと教える。

板長は納得し、襲撃したダンプは、やはり藤縄のものだと分かったと報告する。

ダンプの車輪に付着していた土と、南郷のルノーのタイヤに付いていた土が同じだったと言うのだ。

しかし、藤縄の社長は食わせ物で、運転手は酔っぱらっていただけなので、適当に調査してくれと平然としていたと言う。

さらに板長は「BBB(スリーB)」を捜査して見つけたと、一枚の写真を南郷に見せる。

それは、東野文江、大八姉弟と宝城寺竜子が一緒に写っている完全な状態の写真だった。

板長は、3人とも同じ沼津の生まれであると教える。

その頃、ゴルフ場に来ていた宝城寺竜子は、本田代議士(細川俊夫)から、グレゴリー(ヴァージル・ハートン)なる外国人を紹介されていた。

グレゴリーは竜子にゴルフクラブをプレゼントすると言い、車を運転していた佐藤に、ゴルフバッグを渡す。

佐藤はそれを、後部トランクに入れる。

竜子が、その車の後部座席に乗り込もうとすると、佐藤が前に乗りませんかと誘う。

しかし竜子は、そんな馴れ馴れしい態度を取る佐藤に、私にはボスがいるのよと叱りつける。

その竜子の動きを板長から聞いた京子が、入院中の南郷に教える。

何とか早く外に調査に出かけたいと漏らす南郷を厳しく叱った京子に、君は結婚したら、かかあ天下になるよと南郷はからかうが、京子は、私は一生、先生の秘書をさせていただきますと言い返す。

翌日、花を持って病室にやって来た京子は、ベッドがもぬけの殻になっているのに気づく。

南郷が残した置き手紙には「沼津に行きます。急な連絡がある時は、駅前の岡田屋旅館へ」と書かれていた。

沼津に来た南郷は宝城寺の実家を訪ね当てるが、応対に出て来た養母(美舟洋子)は、自分は後妻で、竜子をちょっと面倒観てやっただけなのだが、あの子は今でも親切にしてくれる。今日も今さっき帰った所なので、まだ、墓参りしているかもしれないと言う。

東野文江に付いて聞くと、竜子が東京に連れて行って面倒観ているらしいと養母は答える。

その後、教えられた寺に向かった南郷は、そこから出て来た竜子と出会う。

南郷は、片手を吊るした姿を見せ、この間はずいぶんひどい目に遭わせてくれたじゃないかと皮肉を言うが、付けて来た方が悪いのよ。追わないでって言ったじゃないと竜子は不機嫌そうに答える。

そんな竜子に、あの時の気持ちは本当かい?と尋ねる南郷だったが、竜子は、忘れたわ、あなたには関係ないことだわとつれない返事。

南郷は竜子に、殺人と麻薬売買に付いて自首を勧め、君に助けてもらったので、罪を軽くしようと思っているのだと気持ちを伝える。

しかし、竜子は、あなたは易者に向いているわなどとふざけたので、思わず南郷は、怪我している手で竜子の頬を叩き、自ら痛がる。

それを見た竜子は、乱暴するからよとあざけり、海の方、歩かない?と急に優しくなる。

二人して海辺を歩くうちに、竜子はあそこに別荘が見えるでしょう?子供の頃から、一度で良いから、ああいう所に入りたかったと打ち明ける。

そうした竜子と南郷は、いつしか砂浜に寝そべり、又キスをするのだった。

そうした二人の様子を、又誰かが、双眼鏡で覗いていた。

帰ると言い出し立ち上がった竜子は、決して付けて来ないでねと南郷に念を押す。

その後、車で自宅に戻って来た竜子だったが、自宅前に刑事たちが張っているのに気づくと、方向を変え、隣の家に入る。

そこには佐藤がおり、ボスがお待ちですと竜子に伝える。

ボスと言うのは、本田代議士のことだった。

竜子を迎えた本田は、今、素敵なラブシーンを見せてもらったよと言うので、竜子は本郷と会っていたことを知られたと慌てる。

一方、その後も、近くを散策してた南郷は、タクシーに乗った京子から声をかけられて驚く。

車に乗り込むと、京子は、山口刑事たちが張り込んでいた宝城寺竜子の屋敷に連れて行く。

手回しの良い京子の働きを褒めた南郷だったが、京子は、先生がラブシーンをしているうちに調べましたと言うではないか。

竜子のことを観られていたかと慌てると、やっぱり想像が当たったと京子がにらむので、南郷は京子の罠に引っかかって、自ら語るに落ちたことに気づく。

そこに、山口刑事たちも合流し、竜子をゴルフ場からずっと付けていたのだと明かす。

本田代議士は竜子に、藤縄社長には海外に逃げてもらったし、この屋敷の地下の麻薬精製所は潰したので、もう調べられても安全だ。君は香港に行け。近くの空港に、黒ずくめの男が待っているはずだから、そいつに付いて行けと伝える。

佐藤の運転する車に乗った竜子は、セスナが待機する空港に到着する。

佐藤は、車から降りた竜子に手を差し出して来たので、竜子も握手して別れを惜しむ。

間もなく、ボスが言う通り、黒ずくめの男が近づいたので接近した竜子は、殺しとペイの売買をやったのか?と聞くその男に、麻薬だけとふてくされたように答える。

すると、その男は、セスナ機とは反対方向に歩き出したので、竜子が不審がると、男はスーツの内ポケットから手帳を取り出すと、警察のものだと言い出す。

黒づくめの男とは、板長の変装した姿だったのだ。

竜子は銃を取り出し、逃げ出すと、異変に気づいた佐藤も近寄って来て竜子を車に乗せる。

それを追おうとした板長だったが、車に轢かれそうになった所を、突然誰かがぶつかって来て助ける。

それは駆けつけて来た南郷だった。

その後、芦ノ湖の反対側にある本田代議士の別荘にやって来た南郷は、戸の隙間から中を覗き込むと、想像通り、そこに竜子が一人いた。

声をかけ、中に入れてもらった南郷が、相棒はどうした?と聞くと、出かけたと言う。

銃を寄越せと迫ると、これは護身用だからと言い、竜子は渡そうとしない。

ボスは誰だと聞いた南郷は、君を裏切った男だと説明する。

空港に行かせ、板長に知らせた男さ。この別荘の持ち主だろう?と南郷がかまをかけても、竜子は知らないわ。私をこれほどまでにしてくれた人だから恩があるのだ言い、口を割ろうとしない。

そんな一途な竜子に近づいた南郷は、又いつしか口づけを交わし合っていた。

そのとき、二階から、銃を持った本田代議士がゆっくり降りて来る。

驚く竜子に、ペンと紙を持って来させると、三行半を書かせてやると言い出した本田は、俺の言う通り遺書を自分で書けと言う。

さっき、自分で言ってたのを聞いたが、俺への恩返しをしろと迫る本田。

唖然とする竜子に気を取られていた本田に、南郷が飛びかかる。

抵抗する本田代議士の手から銃を討ち落としたのは、飛び込んで来た板長だった。

これで、さっきの借りを返したなどと板長が得意気に近づいて来たとき、その背後のカーテンが開いて佐藤が銃を向けて来たので、南郷は思わず発砲し倒す。

そして驚く板長に、借りは返しましたよと南郷は言う。

竜子に近づいた板長は、他の犯人たちの逮捕に協力してくれたら、南郷さんの弁護は冴えますからねと言い含める。

板長ら刑事が本田らを連れて行った後、竜子と二人きりになった南郷は、心配しなくて良い、芦ノ湖の恩返しはさせてもらうと言いながら、一緒にソファアに座ると、又熱い口づけを交わすのだった。

ところが気がつくと、京子が、事務所で居眠りをしていた南郷を揺り起こしていた。

最期の口づけは夢だったのだ。

今日から、宝城寺さんの裁判が始まるのよと京子から言われた南郷は、あの事件から時間経過があったことを思い出すと、張り切って外に停めてあるルノーに乗り込む。

しかし、メーターを観た南郷はがっかりした顔になる。

すると、そこに近づいて来た京子が金を渡しながら、ガソリン代がないんでしょう?と言う。

君は結婚したら、なかなか良い奥さんになるよと礼を言いながら、南郷はルノーを出発させるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前髪を降ろし、爽やかなイメージになった天知茂が、まるで、ジェームズ・ボンドや、ルパン三世のように活躍する弁護士サスペンス。

芦ノ湖で、南郷がモーターボートに襲撃されるシーンなどは、まさしく「007」の世界なのだが、この作品が作られたのは、007シリーズが始まる前である。

原作者の島田一男は、本格的なミステリ作家と言うより、テンポの良い通俗サスペンスの書き手だと思うが、こうした映像化には向いているようである。

ボンドガールのように、南郷の前に現れた謎の美女を演じているのは三原葉子、まだそんなに太っていた時代ではないが、この作品では、特に肌を露出することもなく、もっぱらキスシーンのお相手役を演じている。

その三原葉子が大人の女の魅力を見せているとすれば、少女の魅力を見せてくれるのが、南郷の助手役の京子を演じている水原ユカ。

特に美人と言う感じでもないが、笑顔が魅力的な愛らしい人である。

この京子の明るさが、作品全体の魅力を増している。

坂本武演ずる板長は、何となく刑事らしさに欠けるような気もするし、天地茂が演じている南郷と言う弁護士も、ちっとも弁護士らしくは見えないのだが、その辺は、通俗活劇と言うことでご愛嬌だろう。

桃色クラブと言った風俗描写も、特に下品な感じには描いていないので、今観ても、気軽に楽しめる娯楽映画になっている。