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反逆のメロディー

1970年、日活、佐治乾+蘇武路夫脚本、沢田幸弘監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜、何人もの男たちが木材を燃やしている。

そこに参加していた一人の青年、塚田哲(原田芳雄)は、いらなくなった木材を火に投げ込みながら、親分淡野大次郎(須賀不二男)がきれいごと並べ、淡島組を解散した時のことを思い出しながらヤケになっていた。

その足下には淡野組の看板も落ちていた。

そんな哲の手を掴み、あまり無茶をするなよと諌めたのは、兄貴分の峰田(深江章喜)だった。

しかし、哲は手を振りほどき、もう組は解散したんだ。兄貴づらするなと言い返す。

タイトル

ジープに乗り、生まれ故郷の港町に帰って来た哲は、地元のボートレース場にやって来るが、駐車場付近で、立花組の子分たちを殴りつけている見知らぬ男を発見する。

哲は客を装い、立花組がたむろしている部屋に座り込むと、話しかけて来た若い衆に、3-2に1万賭けさせる。

するとそれが当たったので、次も同じく2-3に20万賭けると外れてしまう。

立花組か?と聞くと、そうだと答えた若い衆が金を要求すると、哲はないと答える。

その様子に気づいた一人のヤクザが哲に近づいて来てすごんだので、哲は、俺は立花組に払うんであって、あんな奴に渡す金はないと、隣でたむろしていた連中を目で示す。

近づいていた男ドス健(永山一夫)は、自分たちは矢東会のものだと言いながら、若い衆の頭をビール瓶でかち割る。

哲は、その男の手をテーブルに引き寄せると、金は立花組に渡すと言いながら立ち去る。

矢東会のドス健は、テーブルにフォークで手を突き刺されていた。

ジープに乗った哲は、次はサウナのビルにやって来る。

建物の窓から女が声をかけて来たので、哲は、姉ちゃん、矢東会に呼ばれて来たのかい?と聞き、その場を立ち去る。

その側にバイクを留めて様子を観ていた若者(佐藤蛾次郎)が、女を後ろに乗せて、哲のジープの後から付いて来て、この女を5000円で買わないかと声をかけて来る。

近くで拾ったのだと言うので、停めた哲のジープにその青年は馴れ馴れしく乗り込んで来る。

女はとっくに逃げ去っていた。

そんな青年に哲は、金が欲しいのなら、もっと良い金儲けの方法がある。乗るか?と告げる。

暇を持て余していたらしい青年の目が輝く。

青年は、ダイナマイトをサウナに投げ込み、支配人室に侵入すると、ガスバーナーで支配人を脅しながら、金庫から金を奪って逃げ出す。

自分たちの店を破壊された矢東会のドス健と武沢(曽根晴美)は、立花組の姉御お竜(冨士眞奈美)に、立花組の名前を出して暴れている男の心当たりはないのかと詰め寄っていた。

お竜が知らないと答えると、武沢は、俺たちも知らない相手なので、好きに料理させてもらいますと息巻く。

矢東会のドス健、武沢、宮坂たちが出てゆくと、立花組の若い衆(二瓶正也ら)は、連中にビール瓶で頭を割られたものがいるんですよ、このまま好きにのさばらせておいて良いんですか?と取り囲むが、お竜は、矢東会が今ムショに入っているうちの人が呼び寄せた人たちなのは分かっているだろう?うちの人が出て来るまで後一ヶ月なんだから、それまで辛抱しておくれと言い聞かす。

その頃、浜辺にいた哲は、すっかり自分になついた青年の素性を聞いていた。

青年はゲバ作と名乗り、北海道の室蘭出身と言う以上のことは答えなかった。

そんなゲバ作に、今夜中に町を出ろ。連中もバカじゃないぞ。すぐ捕まるぞと言い含め、その場からジープを走らせた哲だったが、その後を追って又、サウナのビルの近くにやって来たゲバ作は、待ち受けていた矢東会の三人に捕まると、あの男はどこだ?と痛めつけられる。

その時、俺はここにいるぜと言いながら、背後から近づいて来たのが哲だった。

立花の弟だと、哲が名乗ると、それを聞いた武沢は、確か、大阪の淡野組にいたな?と聞き、淡野組は解散したと説明する哲に、俺たちは淡野組には手を出すなと言われていると伝える。

哲は、自分が帰って来たので、あんたたちは東京に帰ってくれと頼む。

そう言いながら、サウナの廊下を送り出していた時、ドス健が、待ち受けていた刺客に撃たれる。

その場にいたゲバ作は、撃たれたドス健を支え、撃った相手にドスを突き立ててやる。

二人のヤクザが死亡したので、駆けつけた地元警察の木原刑事(青木義朗)は、武沢にホシを差し出さないと、建物の中を調べトルコ法違反でしょっぴくぞと脅して来る。

武沢は、ガサ入れは勘弁してくれと頭を下げる。

それでも、強気の木原刑事は、県警の丸暴辺りが乗り込んで来るぞとすごみを利かせる。

その頃、ビリヤード場を経営している星野(地井武男)は、内縁の妻亜紀(梶芽衣子)が、盟友だったドス健の葬儀用に用意した花束を受け取り喜んでいた。

店では、一人の口ひげの男がビリヤードをやっていた。

亜紀が運転する車で葬儀場へやって来た星野は、最前列に座っていた哲に聞かせるように、ドス健、お前は幸せもんよ。仲間が腰抜けチンピラばかりでよ…と、露告な嫌味を言い出す。

それを苦々しく聞いていた武沢は、止めろ!サツの旦那方も来ているんだと制する。

観ると、確かに部屋の隅に木原刑事らが居座っている。

それを知った星野は、ヤクザの葬式のサツが出席しているのか?ヤクザ道も堕ちたもんだと嘆きながら木島の前に進むと、俺を傷害罪で逮捕してくれと両手を差し出す。

どこでやった?と、冷や酒を飲みながら木原刑事が聞くと、これからやるんだ!と言いながら、星野が殴り掛かって来たので、木原は軽くかわす。

情けねえ!と何度も怒鳴りながら暴れる星野を、組のものが取り押さえ、木原刑事はその場で星野に手錠をかける。

その様子を、外にいた亜紀が黙って見守っていた。

葬儀の後、お竜と港を歩く哲は、昔はこの辺もきれいな砂浜だったと懐かしみ、すっかり様変わりした風景を観ながら、帰ってるんじゃなかったと嘆き、組が解散して、すぐ思い出したのがこの砂だったんだと、砂浜の砂を手に取る。

お竜は、この港と工場を抱えて、組も荷が重くなった。哲さん、うちの人が帰って来ても、力になって下さいと頼む。

やがて、喪服姿の若い衆が見送る中、ゲバ作を連れ、哲は兄が入っている刑務所に向かう。

ゲバ作は、あの姉さんは良い女だから、やっちまえよと哲をけしかける。

面会した兄の立花(梅野泰靖)は、地味なお茶漬けの店でも探してくれないか。持たせてやりたい女がいるんだと哲に頼む。

それを聞いた哲は、兄がお竜と別れたがっていることを知る。

哲が、矢東会には手を引いてもらったと教えると、立花は驚くが、若者一人死なせてしまった…と訳を話す。

その後、哲の片腕になったゲバ作は、「豚どもを叩きのめせ!」と組の若い衆を焚き付け始める。

哲を頭に、町の貧しい人間を苦しめている企業を襲撃し、土地の権利金などを奪い返したりするようになったので、地元では警察より頼りにされるようになる。

そうしたある日、木原刑事が組にやって来て、あんまり調子に乗るなと哲に釘を刺した後、お竜に、拳銃を5丁ほど出して欲しいと依頼する。

拳銃取締週間なので、上のご機嫌を取る為に手伝ってくれ。去年は矢東会から5丁取り上げたと言う。

しかし、それを黙って聞いていた哲は、警察となれ合いなんかできるかと拒否するが、木原刑事はお竜に、旦那が出て来るまで後3週間だろう?と、意味ありげに囁きかける。

その直後、哲に大阪から電話が入る。

町では、建設会社のトラックと車が衝突事故を起こしていた。

哲は羽田に来ていた。

淡野を連れ、峰田が急に上京して来たので、出迎えに来たのだ。

峰田が言うには、今回、親父さん(淡野)の上京の目的は、矢東会、緒方組、相賀組などを解散させるのだと言う。

流れだ。これからは、警察とうまくやっていくんだと峰田が言うので、それを聞いていた哲は、立花組はまだ解散しないからなと答える。

空港を出て、車に乗り込もうと近づいて来た淡野を群衆の中で凝視していた男が、突然、包みを抱えて突っ込んで来る。

それに気づいた哲は、身を呈して、その男を捕まえ、淡野をガードする。

男は、星野の店でビリヤードをしていた滝川政次(藤竜也)で、包みの中にはドスが入っていた。

邪魔が入って暗殺に失敗した滝川は、その場から逃走する。

その顛末を店に戻って来た滝川から聞いた星野は喜んで興奮していた。

組長の仇を討つ男は好きだと言うのだ。

そして、亜紀に案内させ、滝川を、当座の隠れがとして、自分のダチのアパートへ連れて行かせる。

自分も、用心のため銃をバッグに入れていた星野は、店にやって来た哲に気づく。

哲は、矢東会の連中にここだと聞いて来た。滝川を出せと迫り、俺はくだらない男だが、滝川の政次とはダチ公ってことさ。お前にはドス健の貸しがあると言う星野と殴り合いになる。

窓ガラスを破り、道に出ても喧嘩を続ける二人に、駆けつけて来た警官が止めに入るが、興奮した哲は、警官たちを殴り、星野を逃がそうとするが、やがて、応援部隊も駆けつけ二人とも逮捕されてしまう。

ある日、関東のヤクザの親分たちをホテルに集めた淡野は、これからはこれまでのいきさつは水に流し、互いの組を解散して堅気の会社にして協力し合うんだ。援助して下さる政治家さんはたくさんいると説得していた。

その時、伝令が入って来て峰田に耳打ちすると、峰田もすぐに淡野に耳打ちする。

隣の部屋に、釈放された哲が来ていたのだった。

淡野に促され峰田が哲に言うには、最近、お前の所の若いもんが東亜建設を脅しに来た。

うちは、東亜の下請け会社を作らせてもらっているので、今後は止めさせろと言うのだ。

それを聞いた哲は、自分は組長じゃないので、子分に命令はできないと拒絶する。

淡野は、お前の好きにするんだとなだめ、哲に帰らせるが、残った峰田には、しばらく好きにやらせておけ。俺たちに楯突く奴は殺せと命じる。

その頃、星野は、店にやって来た矢東会の武沢にドスを突きつけ、政次を出せだって?てめえとは縁切りだ!出て失せろ!と怒鳴りつける。

政次が帰ったあと、亜紀が哲から電話だと言いながら受話器を持って来る。

星野はその受話器を手に取ろうともせず、てめえなんか観たくねえ!絶対行かねえぞ!と怒鳴りつける。

しかし、翌日、約束の11時にバーに哲がやって来ると、もう星野は先にビールを飲んでおり、遅いじゃないか。会いたい奴には先に来て待つものだ。俺を観ろ。1時間待ったとぬけぬけと言いながら、哲のグラスにビールをついでやる。

哲も、俺たちは馬が合いそうだなとつぶやく。

そんな哲に、星野は頼みがあると言い出し、指を鳴らすと、亜紀と滝川政次が奥から姿を現す。

滝川を立花組で預かってくれ、誰もそこにいるとは思わないだろうからと星野は頼む。

哲は黙って、隣に座った滝川にもビールをついでやる。

星野はいきなり、自分の腕時計と哲のを交換すると、今11時15分だ。あれたちはダチ公だと笑う。

ある朝、哲から浜辺に呼び出されたゲバ作は、兄貴、一体どうしたんだ?と聞いて来る。

ネタは上がっているんだ。このまま泣き寝入りするのか?と、淡野の言いなりになって最近おとなしくなった哲を責める。

哲は、俺は淡野組にいた。子供の頃から世話になったんだと説明するが、ゲバ作は聞かず、今は関係ないんだと拒絶する。

哲は、そんなゲバ作をなだめるように、東亜建設は放っておくんだ。お前は俺が好きか?俺はお前が好きだ。同じように、淡野の親父も好きなんだと説得し、その場から立ち去ろうとする。

しかし、バイクに乗ったゲバ作は、そんな哲のジープを追い抜き、東亜建設のトラックの事故現場に遭遇すると、後からやって来た哲を睨みつけるのだった。

一人になったゲバ作は歌を歌いながらバイクを押していた。

その時、子犬を連れた滝川政次を観かけたので、あんた、東京から哲さんと一緒に来たんだろう?ちょっと聞いてくれよと話しかける。

哲の話を聞いた滝川は、相手は親分だろう?親分が黒いもんを白いって言ったら従うのが子分だと教える。

それでも、ゲバ作は納得できないようで、黒いもんは黒!許せねえんだ!とわめくと、いつしか、ギターをかき鳴らしながら歌い始める。

それを側で寝そべって聞く滝川。

やがて、夜になり、ゲバ作の周囲には若者たちが集まり、一緒に歌っていた。

立花が出所し、組ではその祝いの席が行われていた。

立花は、峰田って言えば、淡野組で一緒だったらしいが、えねえ儲けてるんだって?と哲に聞いて来る。

一緒に話を聞いていたお竜の座を外させると、立花は、子分の一人に、お茶漬けやかのような店を探して欲しいと持ちかけたので、哲は口を出しかけるが、立花に止められる。

その時、木原刑事が警官たちを引き連れ乗り込んで来ると、すぐに組を解散しろ。こいつらがムショに盛大に迎えに行ったので、俺は上から叱られ赤っ恥をかかされたと子分たちを憎々しげににらみながら立花に告げる。

一方、ゲバ作は一人で、峰田が仕事を請け負っている工事現場にバイクで乗り込むと、ダイナマイトを投げながら暴れ始める。

それを見た峰田は、子分たちにトラックで追わせ、ゲバ作を捕まえると、両手両足を縛り付け、その上をトラックで轢かせる。

ゲバ作は、両手と両足を轢かれ、瀕死の状態で病院に運び込まれる。

哲が見舞いに来るが、その目の前でゲバ作は息絶える。

一緒に来ていた滝川に、哲はこいつの名前を知らないんだ。室蘭の出身と言う以外こいつのことは何も知らない。死んでしまったらそれまでよ。忘れられ、消えちまうんだと嘆く。

一人で組を出て行った哲は、飲み屋から出て来た峰田とその子分たちを殴りつける。

相手はドスを抜いて立ち向かって来るが、その時、滝川が駆けつけて来ると、行き先ぐらいは教えろ。水臭いじゃないかとつぶやいて、一緒に峰田の子分たちを叩きのめして行く。

この話を聞いた淡野は、立花組を潰そうと峰田に告げる。

その頃、店の二階で、星野は亜紀を抱いていた。

事を終えた星野は、もしかしたら、本当に俺は死ぬような気がする。これまで好き勝手なことをやって来たが気がかりなのはお前のことだ。もし、俺が死んだら、新しい男を作っても良いぜと言う。

すると亜紀は、男はあんた一人でたくさん。本当に私は男運が悪いよと答えたので、星野は、可愛いこと言う奴だと亜紀を又抱く。

二人して出かけようとし、銃は検問を警戒して亜紀が預かることにする。

いるときはいつでも取れるように、あんたの側にいるよと亜紀は言う。

一階に降り、入口の鍵を開けようとガラス戸に近づいた星野は急に身体を硬直させる。

入口の外には男が二人立っていたが、その二人からガラス越しのドスを刺されたのだった。

星野の異変に気づき駆け寄る亜紀。

星野は、倒れると、哲から取り上げた腕時計を見ようとしながら見えないと悔しがる。

そのまま星野は、亜紀の腕の中で息絶えて行く。

北浦警察署

東亜建設の重役、峰田らに呼び出された哲は、今度、製鉄工場を造るので、立花組に警備として協力して欲しいとの依頼を受ける。

県警の警部も同席しており、どうして協力せん!と哲に迫って来る。

それでも哲は、金儲けしているのはこいつらだけじゃないか。トラックが家に突っ込んでも何も保証しようとしない。おめえたちは2人殺した。

同じく同席していた木原警部も、県警の警部さんもああ言っているんだから…と哲の態度を責める。

しかし、立ち上がった哲は、せいぜい警察に協力して犬になるんだな。白い犬と黒い犬がいる。臭い、臭い!と峰田らをバカにし出て行こうとすると、木原警部が、坊や、あんまり意気がるんじゃない。お前たちを逮捕する罪状はいくらでもある。これ以上騒ぎを大きくするな!と釘を刺す。

組に帰って来た哲から事情を聞いた立花は、この喧嘩、どう納めるつもりだ?峰田に協力すれば金が入って来るじゃないかと顔をしかめる。

かすりが欲しいのか?ここで奴らの言いなりになると、取り返しのつかないことになるぜと向きになる哲。

ここにいると息が詰まると言い、部屋を飛び出して行った立花の様子を観ていたお竜と滝川は、あんたはここにいない方が良い。行方をくらました方が良いと助言をする。

峰田から報告を受けた淡野は、哲が詫びを入れて来たら殺すなよ。飼い犬も、尻尾を振っているうちは可愛いが、楯突いて来たら始末に負えないとつぶやく。

その後、木原警部が率いる警官隊が立花組に乱入して来て、組員たちを公務執行妨害など、適当な罪を作って逮捕して行く。

お竜も、喫茶店で生演奏をやったと言うので、著作権侵害として連れて行かれる。

かくして、立花組は誰もいなくなってしまう。

当の立花は、外で何者かに刺殺される。

滝川と共に身を隠していた哲は、翌日、組に電話を入れてみるが、誰も受話器を取らないので不思議がる。

滝川が様子を見に行こうとすると、そこにふらりと亜紀がやって来る。

滝川は、旦那の所に線香も上げに行けなくてすまねえと謝る。

亜紀は哲に腕時計を渡しながら、息を引き取るまで、あんたのことを気にしていたわ。男同士のなかって良いわね。正直、妬けるわ。その点、男と女の関係なんてあっけないものよ。あの人の顔なんかもう覚えてないわ。店は処分したので、又、男でも探しに旅にでも出るかと言いながら去って行くが、その目には涙が浮かんでいた。

結局、滝川と二人で立花組に戻って来た哲は、組がもぬけの殻となり、中はめちゃくちゃに踏みにじられていることを知る。

呆然としていると電話が鳴ったので、受話器を取り上げた哲に聞こえて来たのは、峰田の声で、組長には眠ってもらった。これ以上、騒ぎを起こすな…と言う内容だった。

立花の遺体が置かれた病院に忍び込んだ哲と滝川は、帰る木原刑事らの姿をやり過ごした後霊安室に入る。

そこには、釈放されたお竜が一人佇んでいた。

お竜は、哲たちに気づくと、無事で良かった。自分もさっき釈放されたばかり。家の人が死んだからよ。私たちはヤクザだから、法を破ったからこうなっても仕方ないのね。でも、私たちが何をしたって言うの!と言うと泣きながら出て行く。

その後ろ姿を悔しそうに見つめる哲と滝川。

その後、工場の完成パーティで、タキシードを着た淡野が来賓たちに愉快そうに挨拶しながら会場内を歩いていた。

その会場に突如乱入して来たのは、日本刀を手にした哲と、ドスを握った滝川だった。

二人は、取り巻きの子分たちを次々に倒しながら淡野に迫る。

殺された組長の仇として付けねらって来た滝川が、何とか、淡野を刺そうと近寄るが、その会場内にいた武沢に撃たれてしまう。

その武沢を斬った哲が、滝川に近づいて身体を支えるが、滝川は血を吐いて息絶える。

哲は、単身、淡野に迫ると叩き斬り、さらに間近に迫って、粟野の咽を突き刺す。

いつしか哲は、日本刀を握ったまま雨が振る外に出て来ていた。

その脳裏には、死んで行った星野やゲバ作の声がよみがえっていた。

埋め立て地をさまよう哲に、駆けつけた木原刑事らが何か呼びかけていたが、哲には何も聞こえなかった。

やがて、警察の狙撃犯が放った銃弾が哲の身体を射抜く。

哲は、崖から転げ落ち、やがて息絶えるのだった。

その腕には、星野から返してもらった腕時計がはまっていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

他界した原田芳雄主演の任侠青春もの。

…と言っても、原田さんは、別に角刈りになっている訳でもないし、着流し姿になる訳でもない。

いつも通りのロンゲにジージャン姿である。

大阪で入っていた組が解散したので、故郷の兄の組に戻って来た風来坊的な主人公が、地元企業と癒着して金儲けをし始めた元親分たちの生き方とそりが会わず、最後は特攻のように命を捨ててしまうと言う青春映画でもある。

途中から付き合いが始まるゲバ作役の佐藤蛾次郎や、星野役の地井武男がなかなか魅力的で、東映など他社の任侠ものとは一線を画す日活後期独自のアクション路線である。

佐藤蛾次郎が、フォークシンガーのように歌うシーンがあったりする(例え、吹き替えだったとしても)のは貴重ではないだろうか?

大人の考え方にとことん反抗的な青年たちのエネルギーの爆発が描かれているのが、今観ても面白い。

元ヤクザの親分を演ずる須賀不二男や悪徳刑事を演じている青木義朗も、なかなかどうして憎々しい。

お竜役の冨士眞奈美は、この頃、まだきれいだが、若干肥満が始まっている。

立花組の子分の一人として、東宝や「ウルトラマン」の「イデ隊員」としてお馴染みだった二瓶正也が出ているのがちょっと珍しい。

セリフもなく、ほとんどちょい役だが、おそらく当時、東宝を辞め、他社の仕事を模索していた時期の作品だと思うが、不遇な印象しか受けない。

任侠ものの形を借りた青春ものとして観れば、なかなか良くできた作品だと思う。