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五十万人の遺産

1963年、宝塚映画+三船プロ、菊島隆三脚本、三船敏郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

フィリピンロケに対するフィリピン政府への感謝文

1942年

日本軍は破竹の勢いで、全フィリピンを席巻した。

そんな中、一機の飛行機がマニラのニコルス飛行場に着陸した。

通称「丸福」と呼ばれる表に「福」の字が描かれた金貨を当地の銀行に収納する為である。

その金貨は、日本中の国民から供出された金から作られていた。

その後、戦況は悪化し、山下兵団によってバギオのルソン山岳地帯へ運び去られた。

1945年8月15日

50万将兵の帰らぬ命と共に、この貨幣も消息を絶った。

タイトル(金色に輝く丸福金貨が画面中央に写っているパートカラー画面)

運転手の五十嵐(堺左千夫)が、都心の道路で接近して来た別の車の運転手と口喧嘩を始める。

後部座席に座った旭洋貿易社長、群司満(仲代達矢)は、運転手を諌めると、松尾はビルにいるんだな?と五十嵐に確認する。

遣軍主計少佐がクレヨン会社の庶務課長になっていたとは…とつぶやいた群司は、良く見つけたと、五十嵐の仕事を褒める。

東西クレヨン商会庶務課長、松尾武市(三船敏郎)は、女子社員(林美智子)がゴミ箱に捨てた書き損じた書類を拾い上げると、まだメモに使えるよと言いながら自分の机に戻ると、しわくちゃの紙を伸ばして束ねる。

その時、昼休みのサイレンが聞こえて来たので、松尾は女子社員に、ガードの向こうに50円でカレーを食わせる店を見つけたと言ったね?と確認し、出かけることにする。

会社から出た所で、松尾に声をかけて来たのが群司だった。

群司は、偶然出会ったように松尾に挨拶すると、一緒に昼食でも食べませんかと誘う。

松尾は、満州時代、毛布などを扱っていた貿易商の群司を覚えていたため、何も疑わずに群司の車に乗り込む。

レストランでステーキなどを食べながら、二人は、新京で松尾の送迎会をしたときのことなど、懐かしく思い出しながら話し合う。

その時、一人の外国人(F・J・ホーニング)が群司に近づいて来て挨拶し、握手して別れる。

群司によると取引先の人間らしかった。

群司は松尾に、自分の事務所に来てみませんか?ご相談がありますと言う。

松尾は群司に付いてレストランを出るが、その二人の様子をじっと観ている男(中村哲)がいた。

旭洋貿易の事務所にやって来た松尾は、この会社の顧問になってくれないかと言う群司からの申し出に戸惑う。

貿易のことは何も知らないと断りかけた松尾に、あなたは何もしなくても良いのですと答えた群司は、ただ、こちらがお願いすることだけをやってくれれば良い。フィリピンに行って欲しいのです。

そして、群司は一枚の金貨を松尾に差し出してみせる。

表面に「福」の字が描かれた丸福金貨だった。

昨年、フィリピンのブラックマーケットで手に入れたものだ。今でも時々、この金貨はあちらで出て来るようだと説明する群司は、急に松尾少佐!と呼びかけると、あなたは山下将軍の命を受け、この金貨を山奥に隠した最後の生き残りだと言い放つ。

一枚8.33匁の金貨が約1万枚、1億円分フィリピンに眠っています。

私は私腹を肥やす為に行っているのではない。あの金貨は、国民が供出した金でできているのです。それを今こそ、国民の手に返してやりたいのですと群司は語る。

しかし、松尾は、自分は金貨の在処など知らない。捕虜収容所に入っていた時に聞いた話によると、最後に残っていた200枚の金貨は、将校たちが分配したそうだと答える。

それでも群司は、あなたのことは徹底的に調べました。戦後、あなたがマッカーサーから取り調べを受けたのはどう言う訳ですか?と聞いて来る。

帰ろうとする松尾を観た群司は、五十嵐に命じ、松尾の会社に電話をしてくれ、出先で用事ができたと言うんだと命じる。

その時、春雷の音が轟く。

群司は、あまりに一方的なやり方に立ちすくんだ松尾に対し、自分はこうと思ったら、とことんまでやる男だ。この仕事は最後までやり遂げてみせますよ。自分は巳年なのでしつこいんですと笑いかける。

松尾は、車で送りましょうと言う群司の言葉を制し、電車で一人岐路に着く。

電車の座席に座った松尾は、丸福金貨を山奥に埋めたときのことを思い出していた。

阪急電鉄の逆瀬川駅で降りた時、雨が振っていたが、駅前のパン屋のおかみ(山田桂子)が、馴染みの松尾に傘を貸してくれた。

道を曲がった所に待ち受けていた五十嵐は、社長がもう一度お会いしたいそうですと言いながら、無理矢理、松尾の傘を取り上げたたむと、背後に控えていた青年佃(山崎努)と共に松尾を車の後部座席に押し込む。

佃は松尾の横に乗り込むと、すぐにトランジスタラジオで音楽を聞き始める。

その頃、松尾の一人娘松尾昌子(星由里子)も、駅を降りた所で、パン屋のおばさんが傘を貸してくれていた。

その傘をさし、帰宅する娘とすれ違う車の中の松尾は、声を出せないように、佃によって口を押さえられていた。

港の倉庫の一室で、五十嵐が松尾を車で連れて来たことを知った群司は、弟で船長の敬吾(三橋達也)から、今度の仕事では前の時のように約束を破らないでくれ、闇船で荷物を運ぶのは命がけなんだと、報償金のことをしつこく催促されていた。

松尾を部屋に連れて来た五十嵐に、家に電話をしておけ。お嬢さんが心配しないようにと命じた群司は、弟を紹介する。

敬吾は、機帆船船長だ、ここには食料や毛布など何でもそろっているが、カービン銃は俺だけが使う。後は船の塗り替えを町ばかりだと冗談めかして松尾に伝える。

群司は、娘さんに、1月ほど留守にすると手紙でも書きなさいと便せんを差し出すと、あの男が、今日からあなたの当番兵ですと、佃を紹介する。

その後、塗装がすんだ「希望丸」は出航することになる。

通信士として乗り込んだ五十嵐は、すでに船に酔っていたが、船長の敬吾の所へ食事を運んで来た時、前方から巡視船らしき船が近づいて来たのを発見して怯える。

しかし、それはただの汚穢船だったので敬吾は無視するが、雲行きが怪しいのが気になっていた。

敬吾が、天気のことを何か言ってなかったかと五十嵐に確認すると、南シナ海で台風が発生するとか何とか言っていたとのんきに話すので、バカ!なぜ、それを言わんと叱りつける。

機関室に降りて来た五十嵐は、機関士として雇われた安本(田島義文)と、前金10万でこんな仕事に参加したが、本当に金貨などあるのだろうか?と愚痴をこぼしていたが、それを聞いていた佃が、自分は金が目的ではなく、刺激になって面白いのでこの仕事に加わったと生意気なことを言い出したので、五十嵐と喧嘩になりかける。

その気配に気づいた為か、今まで寝ていた松尾が目を覚ます。

操縦室にいた敬吾は、突然、銃声が響いたので驚いて外を観ると、佃がカービン銃を海に向けて連射していたので、驚いて、何をしている!と銃を取り上げる。

佃が、むしゃくしゃしたのでカモメを撃っていたと言うので、カモメは船の水先案内人だ!知らんのか!と叱責してビンタする敬吾。

やがて、希望丸は台風に襲われる。

五十嵐は日本の船からのSOSを受信するが、こちらも転覆の危機を迎えていた。

他の乗組員たちと共に、懸命に沈没を防ごうと働く松尾の様子を見た五十嵐は、これは金貨があるぞ!と喜ぶ。

翌朝、デッキに出た五十嵐は、船の側にサメがいることを発見。さらに、その近くで漂流している日本人を発見し、すぐさま安本や松尾らと協力して救助しようとする。

しかし、船が停まったことに気づいてやって来た敬吾は、事情を知ると、仮にあいつを助けたとして、俺たちのことをどう説明するつもりだ?と制止する。

それでも、松尾が、君は海軍だったそうだが、軍ではそう言う教育を受けたのか?と言いながらボートを降ろそうとすると、俺が始末してやると言いながら、敬吾がカービン銃を手にしたので全員唖然としてしまう。

結局、助けを求める漂流者を無視して希望丸は動き出す。

かくしてフィリピンの人気のない海岸に到着した彼らは、全員、米兵に似た服に着替える。

これからバギオまで向かうが、我々は密入国なので、見つかったら射殺される恐れもあると、敬吾は全員に念を押す。

全員動き出した中、松尾だけが、周囲の風景をじっと見つめていたので、佃が話しかけると、松尾は、戦争中、ここでは大勢の日本人が亡くなった。今、自分がこうして立っているだけで当時の責任を感じるとつぶやく。

しかし、佃は、大人のセンチメンタリズムか…、能書きはたくさんだ!と吐き捨てる。

そんな若い佃に、お前たちは戦争の恐ろしさを知らん…と嘆く松尾。

彼らはジープに乗ってバギオを目指すが、荷台で居眠りをしていた佃に、隣に座っていた松尾はそっと毛布をかけてやるのだった。

やがて、一台の乗用車が後ろから着いて来ていることに気づいた敬吾は、車を停めて様子を見てみろと運転していた五十嵐に伝える。

すると、後続の乗用車が横付けして停まると、運転していた男(中村哲)が英語で話しかけて来る。

助手席には、その男の妻なのか、外国人女性が乗っている。

自分は商社マンで避暑地に向かう途中だが、同乗の家内が疲れてしまったので、何か薬を持っていないかと言っている。

群司敬吾が、持っていた「アリナミン」を渡してやると、男は礼を言い走り去って行く。

敬吾から今の男の話を聞いた松尾は、今、午後の3時だが、これから避暑に出かけたりするだろうか?と疑問を口にし、敬吾も油断しないように全員に注意する。

バギオ近くに来た敬吾は、密かに双眼鏡を使って町の入口付近の様子を覗いてみるが、検問が実施されていた。

松尾たちはその間、山中で食事をしていたが、佃が肉の缶詰を松尾に差し出す。

佃は、これで、さっき毛布をかけてもらった貸しはなしだ。俺は他人の親切が胸くそ悪いんだと吐き捨てる。

しかし、佃が根っからの悪人ではないことを見抜いていた松尾は、戦時中、自分たちは米などなく、蛇やトカゲ、最後は人間の肉まで食っている奴までいた…と話して聞かせると、佃は、又戦争の話かと嫌がる。

しかし松尾はさらに、お前が贔屓だ。少なくともお前は、丸福目当てで来たのではないと聞いたと付け加えると、佃は、うまいこと言っておだてて、俺を仲間にしようってんだろとバカにするだけだった。

そこに、敬吾が戻って来て、バギオには入れない。何か事件があったらしいと言いながら、持っていたカービン銃を佃に渡して、もう一度偵察に戻る。

その様子を観ていた松尾が、あの船長は誰も信じない。人のことを何とも思っていないんだ。海で漂流者を見捨てた時に分かったとつぶやくと、安本と五十嵐は、俺たちを船長と一緒にされては敵わないと言い訳するのだった。

そんな安本と五十嵐に、松尾は、俺は金の在処を言わないつもりだ。丸福が出れば俺はいらなくなる。俺は殺されるのはごめんなので、カービン銃を何とか俺の手に渡してくれと頼む。

その時、敬吾が戻って来て出発を命じる。

検問所で停まった彼らのジープだったが、その後ろからやって来た乗用車が苛立たしそうにクラクションを鳴らしたので、ジープはろくに調べられもせずあっさり通過することができる。

背後の乗用車に乗っていたのは、あの商社マンと言う日本人だった。

しかし、その後ジープは、大統領を警護する警官(テリー)に停められる。

警官が現地語で話しかけて来たので、一同は対処に困るが、その時、現地語が少しできる松尾が食料を調達に行く所だと説明する。

さらに、警官の側に、あの日本人商社マンが近づいて来て、敬吾に昨日の薬の礼を言うと、この人たちは知りあいですと警官に口添えしてくれたので、それ以上は追求されずジープは出発できた。

日本人商社マンと称する男は、その後ホテルに戻ると、部屋で待っていた外国人男女と落ち合い、すぐにバッグの中に仕込んだ無線機を開ける。

外国人女性は、昨日、車の助手席に乗っていた女であり、外国人の男の方は、日本のレストランで群司に近づいた取引先の男であった。

彼らは、どこかの国のスパイのようだった。

群司敬吾や松尾らが乗ったジープはやがて行き止まりに突き当たる。

そこからは徒歩で山を進むことになるが、間もなくロウ川にたどり着いた松尾は、あの吊り橋から向こうには、イゴロット族と言う部族がすんでおり、戦時中、日本兵が彼らの食料を根こそぎ奪ったので、今でも恨まれているはずだし、奴らは槍の名人なので気をつけるよう注意する。

その後、安本らに、明日の晩までには目的地に着くので、今夜あたり、銃を手に入れてくれと松尾は耳打ちする。

吊り橋を渡った彼らは、山の中で野営する事にするが、久々に当地を訪れた松尾は、感慨深げに周囲の風景を眺めていた。

松尾は、武装解除した時、自分は、あの山に関の孫六を埋めて来たと思い出を語り、五十嵐も北支にいたと戦時中の話をするが、その時、持っていたはずのライターがなくなっていることに五十嵐は気づく。

地面に落ちていた「イガラシ」と名前が刻まれたライターは、何者かに拾われる。

その夜、五十嵐と安本は、別のテントで寝ていた群司敬吾からカービン銃を奪おうとしていたが、なかなかチャンスがなかったので、もう少し様子を見ようと相談し合うが、その時、松尾の姿が見えないことに気づき、慌てて佃と敬吾を起こす。

敬吾は、安本と五十嵐が起きているのを不審に思うが、人質に逃げられたと思って悔しがる。

その時、当の松尾が戻って来て、あの音が聞こえないかと言う。

確かに遠くから太鼓の音が聞こえて来る。

あれはイゴロットの太鼓で、気になったので様子を見に行っていたのだと松尾は言う。

イゴロットの集落の近くに観に行くと、村人たちが火を焚いて踊っているではないか。

それを見た松尾は、あれは異人種を観た時の踊りだ。俺たちは見つかったらしいので、すぐに出発した方が良いと忠告しながら、隙をついて、敬吾からカービン銃を奪い取る。

日本に帰るまで預かるだけだと言う松尾。

翌朝、その松尾に銃を突きつけられながら一行は出発する。

二つの山の稜線の合致点から2000m手前にあるフィリピン松の根元から直角に南へ5歩、つまり4mの地点だと松尾はついに教える。

そして、他のメンバーたちに、この金貨は群司社長には渡さん。私腹を肥やすものではないと言っていたが信じてない。五十万の戦友たちの遺族に、例え一枚ずつでも差し上げたい。ここは地獄谷と言い、この下には無数の将兵たちの遺骨が埋まっている。この金は、その人たちの為に使いたいと決意を述べるが、聞いていた敬吾は、うまいこと言って、独り占めするつもりだろうと嘲る。

しかし、松尾は、俺も目的の為には手段を選ばない。この場で射殺しようか?と銃を突きつけたので、4人は仕方なく穴を掘り始める。

しかし、その場所から出て来たのは、錆び付いた日本兵の短刀や兜だけだったので、敬吾はこれが金貨か!と憤る。

松尾の方も驚いたようで、毛布にくるんで確かに埋めた。電探で探してみろと言うが、金属探知機で周囲を探しても何も見つからなかった。

逆上した敬吾は松尾を殴りつけ、銃を再び奪い取る。

松尾は、当時とは少し地形が変わっている。この辺は雨期には増水するので、金は下流に流されているに違いないと言い出す。

敬吾は、いつ寝返るか分からないし、もうこいつには用はないと、その場で銃を向けて来る。

その時、佃が。金探しの方が先だと口を挟んだので、松尾は松の木に縛られることになる。

一行が出発し、佃が松尾を縛っていると、助けてくれたんだなと今の佃の行動に感謝する。

そして、金を群司だけには渡さないでくれ。ここで死んだ日本人のことを考えてくれと頼むが、佃は何も言わず立ち去って行く。

敬吾、安本、五十嵐、佃は、金属探知機を使いながら下流に下っていたが、やがて、小さな洞窟の近くで探知機がなり出したので、この中にあるに違いないと安本と五十嵐が中に入ってみる。

すぐに、二人は青ざめた顔で戻って来て、中は日本兵の遺骨の山やと報告する。

敬吾は、少し怯えた様子の佃も連れて中に入ってみるが、確かに洞窟の中には、白骨が散乱していた。

ここには金はないと悟った敬吾は、外に出て来ると、もう一度、松尾を締め上げるんだと言い出す。

ところが、松の木の所に戻ってみると、松尾の姿はなかった。

敬吾は佃に逃がしたな!と迫るが、佃は、ロープが刃物で切られているぜと指摘する。

松尾を救い出したのは、イゴロット族になっていた元日本兵の山崎(土屋嘉男)だった。

7月15日のお盆の日、自分は爆撃で重傷を負った所をイゴロットの女に助けられた。

10日経って戦争が終わったが、イゴロット族の村には厳しい掟があり、一度部族の女と一緒になると二度と村から出られないので、それ以来、自分はイゴロット族になってしまったが、ずっと日本に帰ることを思い続けて来た。酋長がライターを拾ったので、日本人が来ていることを知った。どうか自分を日本に連れ帰って欲しい。金の在処を教えますと言うではないか。

ここへ来て6年目の6月、一本松の近くで露出した毛布を見つけた。「福」の字が刻まれていたので、すぐに日本の金だと分かり、三ヶ月近くかけて自分が埋め直しておき、今日まで、探しに来る日本人を待って監視していたらしい。

その話を聞いた松尾は、敬吾たちのことを嫌っているらしい山崎に同意し、君と二人で日本に帰ろう。マニラの日本大使館へ行けば、後はどうにでもなると承知する。

一方、敬吾の方は、イゴロットが松尾を連れて行ったのなら、俺たちが襲撃されないはずがない、どうもおかしいと言い出す。

五十嵐も、ジープを取られたらどうすると言うので、全員ジープの所に戻ることにする。

山崎は、松尾を金の在処に連れて来ると、穴を掘り、石の下に隠した丸福金貨を見せる。

松尾は、きれいなまま残っていた金貨を観て感激するが、その時、山崎は、敬吾たち一行が動き出したと教える。

その方向から、ジープへ戻るつもりと察した松尾は動揺するが、山崎は近道があると教える。

ジープに近づいていた敬吾らの前に出現した松尾は、丸福はあったぞ、7400枚全部無事だと言いながら、コインをばらまく。

生き残りの日本兵が守ってくれていたんだ。だが、うかつには会わせられん。一緒に帰る気はあるか?と言う松尾の言葉を聞いていた敬吾は、自らカービン銃を差し出し、少佐、俺の負けだと敗北を認める。

金貨の埋蔵場所に来た一行は、金貨をリュックに詰め込みジープの元へ戻るが、その時、山崎が、自分はちょっと…と言い出したので、事情を察した松尾は吊り橋の麓で待っていると返事する。

イゴロットの集落に戻って来た山崎は、家の中で機を織っている妻(浜美枝)を、戸の隙間からこっそり盗み見ると、鳥小屋の上の物置に隠しておいた軍服を取り出すが、その時鶏が騒ぎ出し、その声に気づいた妻は手を停める。

軍服に着替え、松尾たちと合流した山崎は、吊り橋の所へやって来るが、吊り橋は切られ、谷底に落ちていた。

さらに、彼らが乗って来たジープも炎上していた。

イゴロットに見つかったらしいと察し、焦った一行だったが、山崎は、下流に筏があるはずだと言って、その場に一行を連れて行く。

確かに筏があったので、全員喜んで筏に乗り込み、山崎が舫綱を切ろうとしたとき、や真崎の背中に槍が突き刺さる。

逃げる夫を追って来た妻が投げた槍であった。

松尾は驚いて銃で襲撃者を撃とうとするが、山崎は、撃たないで下さい。誰がやったか分かってます。内地の畳の上で死にたかった…と言いながら息絶える。

その時、佃が舫綱を勝手に切って筏を動かし始めたので、松尾は驚いて筏に乗り移るが、遠ざかって行く山崎の死体にすがりついてなく妻の姿を見る。

川を筏で下っている最中、カービン銃を脇に置き、前方を見つめていた松尾の隙をつき、敬吾がそっと銃を奪おうと手を伸ばしかけるが、寝そべっていた佃が足で銃を川に蹴落としてしまう。

裏切られたと知った敬吾と佃は筏の上に取っ組み合いの喧嘩を始めるが、次の瞬間、佃はポケットから取り出したナイフで、敬吾の腹を突き刺してしまう。

驚いた松尾は立ち上がると、馬鹿者と佃を叱りつけ、ナイフを取ると川に捨てる。

上陸した一行は重傷を負った敬吾を寝かせ、松尾は他の連中に食料を探しに行けと言うと、佃だけその場に残し、自分も食料を探しに出かける。

芋を持って松尾が戻って来ると、佃の姿がない。

寝ていた敬吾は、みんな金を持って逃げ出した。俺にとどめを刺さなかっただけましだと言うではないか。

佃は欲がないと思っていたのだが…と松尾がつぶやくと、お前もさっさと俺を置いて行け、人情ぶるな。みんな腹の中は一緒だと敬吾は言う。

金を持ち出した安本と五十嵐は、互いに疑心暗鬼の状態に陥っていた。

背後から付いて来る佃も信用できなかったからだ。

寝首をかかれるのが怖くて、満足に睡眠も取れない様子の二人の前にやって来た佃は、自分の分の金貨をその場にぶちまけ、欲しけりゃ持って行けと吐き捨てる。

その金貨を奪い合い、安本と五十嵐は取っ組み合いを始める。

その頃、寝ていた敬吾は、動こうとしない松尾に、なぜ行かん?と聞いていた。

松尾は、奴らはきっと戻って来る。奴らも人間なら、きっと帰って来るはずだと言うと、敬吾は、人間だから信じられないんだ。俺は戦争で人間の本性を観た。士官は、俺たちを置いて逃げ出したんだと打ち明ける。

松尾は、出血がひどくなるのであまりしゃべるなと止めるが、敬吾は、どうせ死ぬんだと答える。

そして、少佐、賭けるか?人間と言うものが信じられるかどうかと敬吾は言い出す。

松尾はそれに応じ、何を賭ける?と言うと、お前が負けたら、金貨を兄貴の所へ持って行け。勝ったら、お前の好きなようにしろと敬吾は答える。

いつまでだ?と松尾が聞くと、夜が明けるまでだと敬吾は言う。

翌日の早朝、五十嵐、安本、佃の三人は戻って来る。

それを仁王立ちで出迎えた松尾は、3人にビンタをすると、船長は死んだぞ。お前たちを、いや、人間を信じないまま死んだ。俺たちは賭けをして俺は勝った。しかし、船長は人を信じないまま死んだんだ!と悔しがる。

佃は、敬吾の死体の側に来ると、船長、勘弁してくれ!俺はあんたの側にいるのが辛かったんだ!とひざまずく。

安本と五十嵐も、何とも言えない表情になる。

その後、4人はジャングルを歩いて進み、嵐にも遭遇する。

ある場所では、日本兵らしき多数の白骨を発見したので、みなで拾い集め、簡単な墓を作って黙祷する。

食料は尽き、佃など、今度こそ兵隊の苦労が分かったとつぶやく。

松尾は落ちていたヤシの実を見つけ、その場で割って、皆に飲まそうとするが、その時、五十嵐が、潮の匂いがすると言い出す。

彼らは走り出し、やがて海にたどり着く。

驚いたことに希望丸のそばだった。

喜んで船に戻ろうと近づいた一行だったが、その時、船から何者かが射撃して来る。

五十嵐と安本は動揺し、その場から逃げ出そうとして背後から射殺される。

希望丸の中から撃っていたのは、あの怪しげな外国人スパイ3人だった。

日本人風の男は、群司はどうします?と外国人の男に聞いていた。

佃も動揺し、「松尾さん!」と呼びかけるが、松尾はその場を動くなと制する。

しかし、恐怖に駆られた佃は、立ち上がってジャングルの方へ戻ろうと走り出す。

その時、落としたトランジスタラジオが陽気な音楽を流し出す。

佃も又、背後から銃撃され、背中に背負ったリュックから、丸福金貨がこぼれ落ちる。

最後に砂浜に伏せていた松尾も、佃を助けようとして立ち上がった所を撃たれてしまう。

五十嵐らのリュックから砂浜にこぼれた丸福金貨を、海の水が洗っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

三船敏郎自身が監督した冒険活劇映画。

山下将軍が秘匿したと噂される「山下トレジャー」が素材となっており、フィリピンロケが決行されている。

出演者は、最初の日本部分に仲代達矢が出ている他は、三船敏郎、山崎努、三橋達也、堺左千夫、田島義文の5人がメインであり、土屋嘉男、浜美枝、星由里子などは、ゲスト出演と言った印象である。

それに、英語が得意な中村哲と外国人男女がスパイ役としてからむ形になっているが、三船らとフィリピンで会うシーンがあるのは中村哲だけ。

フィリピンロケは、メインの6人くらいの俳優が参加したものと思われる。

宝探しの冒険ものとしては良くあるパターンと言ってしまえばそれまでだが、なかなかコンパクトにまとまっている。

三船版「冒険者たち」と言った印象も受ける。

全体の印象も、特に意識しなければ、プロの監督が演出していると言っても分からないレベルで、特に下手とか巧いと言った違和感は受けない。

監督補佐として小松幹雄と言う人がきっちりサポートしているのではないかと思う。

この作品が公開されたのは、1963年の4月28日。

三船と山崎努が共演した「天国と地獄」は、同年3月1日公開…

と言うことは、二人はほぼ同時期に、2本の映画で共演していたことになる。

山崎が演じる若者像は、良くある反抗パターンであまり新鮮みはないが、戦争中の体験から人間不信になった三橋達也同様、この映画の柱の一人で、準主役と言っても良いポジションである。

脇を固める堺左千夫、田島義文も、下司っぽい俗物を良く演じており、どちらかと言うと堅苦しい印象がある三船、山崎、三橋のシリアス芝居をうまくほぐしている。

予算をかけた派手な場面こそないが、それほど堅苦しい印象もなく、それなりに楽しめ、なおかつメッセージ性も含んだ佳作になっていると感じた。