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復讐浄瑠璃坂 第二部 暁の血戦

1955年、宝塚映画、直木三十五原作、竹井諒+加味鯨児脚本、二川文太郎+並木鏡太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

奥平主馬(尾上栄五郎)一行を襲撃した平野左門(嵐寛寿郎)は、額のはちまきに挟んだ小柄を巧みに使い、次々と敵の配下を倒して行くと、目指す主馬を倒し、奥平伝蔵(徳大寺伸)にとどめを刺させる。

道路脇で、許嫁源八郎の家のものに実兄を殺害された現場を観てしまった妹菊乃(扇千景)は耐えきれなくなり、その場を逃げ出すと、河原で泣き崩れる。

ずっと共に旅をしていた春菜も、菊乃に寄り添い、その哀れな身の上に同情すると、もう一度、鬼伏峠に戻って、すでに事件現場に集まっていた野次馬たちに、左門の行方を聞くと、東の方へ逃げたと言う。

とある寺で、奥平源八郎(四代目坂田藤十郎)で合流した左門は、隼人一門の襲撃を受け、護衛として農家に残っていた原田と松谷の二人を失ったことを知る。

二人の遺体は、寺の住職が手厚く供養している所だった。

左門は、奥平内蔵丞を斬りつけた仇、主馬を首尾よく討ち取ったことを奥平源八郎に報告する。

諏訪で夫の死を知った千万路(築紫まり)は泣き崩れるが、主馬の兄、奥平隼人(岡譲司)は、そんな千万路を、そなたは、こちらの様子を探っていた源八郎の犬に違いないとののしったので、側にいた父親奥平大学(小堀誠)から叱責される。

千万路は、自分をかばってくれた義父に礼を言うと、自室に下がった後、足を自分で結んだ後、懐剣で自害する。

せきと名乗って、隼人邸に侵入していた千春(中村玉緒)が、このことを隼人に知らせる。

隼人は苦い顔になり、大学は「やったか!」と無念がるのだった。

その後、隼人邸の庭に、奥平源八郎からの那須ヶ原に来いと書かれた挑戦状と共に、主馬の首が置かれた台が立っているのに気づいた奥平九兵衛(平田昭彦)が、兄、隼人に知らせる。

隼人はこの挑戦を受け、出かける用意をし始めるが、屋敷にやって来た軽部伊織(大河内傳次郎)は、源八郎からの挑戦を受け、これから切り込みに向かう所だと玄関先で逸る配下のものの言葉を聞く。

一方、息子である源八郎と弟である左門は、八重(松浦築枝)に那須ヶ原に出立する挨拶をしていた。

隼人の屋敷では、これから戦いに出かける九兵衛がせきに対し、お前が好きだと告白していた。

隼人に対面した伊織は、一時の怒りに身を任せ、大事を誤ってはいかん。ここはすっぽかして、直ちに江戸へ向かおうと進言していた。

その意見に、一緒に聞いていた大学と九兵衛も賛成する。

間者から、隼人一行が那須ヶ原に来ず、まっすぐ江戸へ向かったので、惣平(沖諒太郎)が付けて行ったとの知らせを受けた左門は、幕府のお膝元の江戸だと、徒党を組んでの騒動はことが面倒になる…と考え込む。

その頃、とある茶店では、旅の疲れから倒れてしまった菊乃を医者に診させた春菜が、何とか、源八郎 さんに会わせてくれるよう左門先生に頼んで来ると言い残し、左門らがいる寺へ一人向かうが、応対した住職は、彼らは昨日、すでに江戸へ旅立ったと聞かされたので、なんて意地の悪い人たちなんだろうと愚痴るのだった。

江戸の旗本大久保屋敷

到着した軽部伊織は、遅れて到着した藤枝(神代錦)たちに、隼人たちは、ここよりもっと安全な場所に隠していると伝える。

隼人側に贔屓している主人の大久保も、助けがいるときは、いつでも加勢を差し向けるぞと力づけるのだった。

その頃、江戸に着いた源八郎側も、敵方から見つかるのを警戒して、分宿していた。

大久保邸を監視していた惣平が左門や源八郎の元にやって来て、隼人らが屋敷から出た様子はないと知らせ、その後も、四六時中、屋敷は、源八郎方の間者らによって監視されていた。

ある夜、間者が化けた夜鳴き蕎麦屋に、詩吟を唸りながら近づいて来た左門が、客を装って情報を聞こうとしていると、背後から近づいて来た軽部伊織も、客を装って酒を注文し、左門に勧める。

それを受けた左門に対し、自分は隼人の付き人で新陰流の軽部伊織と名乗った伊織は、それとなく素性を探って来るが、平野左門は名前を名乗っただけだった。

しかし、その名を聞いて無刀流の使い手とすぐに気づいた伊織は、背後に迫った応援の大久保家の家臣たちに、お前たちが敵う相手ではないと言い、その場を立ち去らせる。

左門は、雨か嵐か…、少し曇って来ましたかな?と独り言を言い、伊織は、嵐になりますか?と問いかけるが、左門はごめんと言って、又、詩吟を唸りながら静かに立ち去ったので、一人残った伊織は、何事かを考えるように静かに酒を飲み始める。

江戸の自宅にたどり着いた左門は、そこに、菊乃を連れて、春菜が待っていたことを知る。

春菜は、菊乃を、何とか源八郎の元に置いてやってくれと頼むが、左門は、どこまでそこの知れないバカなんだ!と叱りつけ、どんなに春菜が食い下がっても相手にしようとしなかったので、菊乃は絶望して泣くしかなかった。

失意の女二人が帰ったあと、とある寺にやって来た左門は、そこに集まっていた源八郎 たちに、大久保の屋敷に隼人はいないとしか思えない。

江戸は広く、隼人の居場所を探し当てるのは生易しいことではないので、夏目と惣平は、大久保家出入りの米屋に入り込んでくれ。隼人一門はそれなりの数がいるので、まかない用の米も5俵や10俵ではないはずだから、大量に運び込む屋敷を探ってくれと命じる。

伝蔵には薪か炭屋、大門は魚屋、寛太は八百屋…などと、銘々が入り込む商売を指示する。

その頃、隼人の屋敷に、半ば軟禁状態で閉じ込められていた女中たちは、ここは江戸のどこなのか知りたがっていた。

一緒にいた「せき」こと千春も、そうした状況を利用し、情報を得ようと焚き付けていたが、女中たちが下男の佐久平に聞いても、用心深い佐久平は、そんなことを言ったら首が飛ぶと、決して口を割らなかった。

千春は、九兵衛の部屋に食事を運んだ時、無人であったので、いつものように屋敷内の見取り図を書き足したりしていたが、そこに九兵衛が入って来たので、慌てて、地図を隠すと、何事もなかったかのように給仕を始める。

すると、九兵衛は千春の手を握り、迫って来たので、いけません!と拒絶した千春は、部屋を逃げ出す。

その時、廊下を通りかかった藤枝は、後を追おうと出て来た九兵衛と出くわし、九兵衛は恥じ入るように部屋に戻る。

やがて、年も暮れ、寛文13年を迎えた。

薪屋に潜り込んでいた伝蔵は、やはり隼人は大久保家にはいないと左門に知らせて来る。

その結果を知った源八郎は、これでは一体どうしたら良いのだ?拙者ばかりが安閑として…と泣き出すが、左門はそんな源八郎をたしなめる。

そんなある夜、炭屋で寝付こうとしていた伝蔵は、主人がこっそり、大量の薪を荷車に積んだ侍らしき相手を見送っているのを、小屋の戸の隙間から目撃したので、その後をつけてみることにする。

すると、途中で待ち伏せていたらしき用心棒に襲撃され、左手を負傷したので、近くの橋の下に逃げ込む。

その頃、春菜は、自害しかけていた菊乃を発見、慌てて止めると共に、又、左門の家を訪ね、事の次第を打ち明けて、そうまで思い詰めている菊乃のために、何とか源八郎に会わせてやってくれと頼む。

左門は、やはりダメだと拒絶するが、翌日、春菜は、一人神社に来ていた源八郎に声をかける。

春菜は、いぶかしがる源八郎に、菊乃が来ていると教え、二人を対面させる。

源八郎は菊乃の側に近づくが、そうした様子を敵方の間者が監視していた。

その背後から近づいた編み笠の侍が、その場で斬り捨てると、驚いて振り向いた源八郎を促してその場を立ち去る。

春菜に、一時だけでも菊乃と出会えるように、源八郎の居場所を教えた左門だったが、何も話すことさえできず又取り残された菊乃は、その場に失神しかけ、駆けつけた春菜に支えられるのだった。

米屋に勤め、夏目と共に大量の米をとある屋敷に運び込んだ惣平は、休息中にこっそり庭に紛れ込むと、潜り戸からそっと中の様子をうかがう。

すると、恋人の千春が茶を運んでいるのを目撃したので、この屋敷こそ、探し求めていた隼人の住まいだと確信する。

その夜、屋敷内で酒を酌み交わしていた、隼人、九兵衛、伊織たちは、庭先に潜んでいた惣平に気づいて騒ぎ出した家人たちの声に気づく。

千春も、惣平が捕まる様子を観ていた。

捕らえられた惣平に、隼人は、源八郎の居場所を聞くが、答えようとしないので斬り殺そうとするが、伊織に敵の居場所を知る唯一の証人だとたしなめられ、惣平は庭の牢に入れられることになる。

浄瑠璃坂の本田と言う屋敷に10俵もの米を運んだ後、惣平の姿が見えなくなったと、一緒に米屋に入り込んでいた夏目が左門に報告していた。

夜、その牢に近づき、惣平を助け出そうとしていた千春だったが、その様子を偶然目にした九兵衛が近づいて来て、敵の回し者だったのか…と悔しがりながら、その場で惣平と千春を斬ってしまう。

千春はその場で絶命するが、惣平は重症だったにもかかわらず屋敷を逃げようとしたので、それを見た伊織は、後をつけるように九兵衛に命じる。

予想通り、惣平は左門のいる屋敷にやって来る。

左門は油断なく、表に出ると、付けてきた敵がいないか観察するが、九兵衛たちはとっさに身を隠していた。

敵の在処を突き止めたと知った九兵衛は、部下に見張りを頼むと、自分は応援を呼びに屋敷へと戻る。

息も絶え絶えの惣平は、左門に向かい、仇の…、じょ、じょ…と言いかけた所で息を引き取ってしまう。

その惣平の死体を配下に背負わせ、ただちに屋敷を出た左門は、見張りの侍を斬り捨てると、逃亡を図る。

そこに、仲間を引き連れた九兵衛が戻って来る。

逃げる途中の左門に気づいて声をかけて来たのは、又しても春菜だった。

春菜は、追い払おうとする左門をしつこく追いかけ、左門が入り込んだ寺の入口まで付いて来てしまう。

その春菜に気づいた九兵衛たちは、寺の中になだれ込むが、左門たちは、別の入口から既に逃げ出していた。

春菜は、自分の軽率な行動を悔やむが、墓の中に隠れて、自分を捕まえようとする九兵衛たちから逃れる。

左門たちを見失った九兵衛たちは、住職を外に連れ出し尋問するが、何も答えなかったので斬り捨ててしまう。

周囲を探していた仲間たちも、相手を見つけられなかったことを知った九兵衛は、とりあえず諦めて屋敷に返ることにする。

そうした一部始終を物陰から観察していた左門は、屋敷に引き上げる九兵衛たち一行を付けて行き、浄瑠璃坂にある屋敷を突き止めるのだった。

九兵衛から話を聞いた軽部伊織は、恐るべきは平野左門…とつぶやき、もう一度隠れ家を替えるしかあるまい。飛騨の大久保家の領地に向かおうと言う伊織の言葉に従い、家人たちは出発の準備を始める。

しかし、その頃、左門や源八郎たちは仲間を全員集結させ、そろいの衣装をまとうと、夜の浄瑠璃坂に出立する。

左門は、女子供は相手にせぬよう、全員に言い聞かす。

隼人の屋敷に到着した一行は、塀を登り、門を内側から開けると、全員屋敷内になだれ込む。

騒ぎを聞きつけた大学は、布団から出ると、槍を取って待ち構える。

左門は源八郎に、隼人を早く!と促す。

その源八郎に襲いかかって来たのは九兵衛だった。

それを交わして屋敷内に上がった源八郎は、槍を構えた大学を見るが、全く相手にせず、隼人を探す。

うろたえた女中たちを外に逃がすよう、佐久平に命じた藤枝は、自ら長刀を持って敵を迎え撃つ。

左門の前に立ちふさがったのは、又しても槍を持った大学だったが、お元気そうで何よりと挨拶だけした左門は、相手にもせず部屋を通りすぎる。

結局、老いた大学に斬り掛かって来る相手は一人もいなかった。

その時、騒ぎを聞きつけ、槍を片手に屋敷に駆けつけたのが伊織だった。

一方、屋敷の門前にやって来たのは、市中見回り中だった火付け役の堀田五郎左衛門だったが、何事かと声をかけると、屋敷内で斬り合っていた源八郎の侍が、敵討ちでござると言いながら門を閉ざしてしまう。

その時、坂を上って、大久保家より隼人の助っ人たちがやって来るが、堀田はその前に立ちふさがると、天下の直参が、たかが浪人たちの仇討ちに加勢したとあっては、世間の物笑いになるので、早々に立ち去られよと命じる。

屋敷内では、槍を持って待ち受けていた隼人を見つけた源八郎が対峙するが、実力の違いはいかんともしがたく、なかなか斬り込めなかった。

そこに左門が援護に現れるが、その左門の前に現れたのが宿敵伊織だった。

「勝負!」と声をかけた左門に対し、伊織も待ったをかけると、槍を捨て刀を抜く。

源八郎に化けた相手に斬り掛かっていた九兵衛 は、敵に斬り殺される。

源八郎も、とうとう隼人を斬って、討ち取ったぞ〜!と叫ぶ。

源八郎に駆け寄る一門の人間たち。

その様子を横目で観ながら左門と戦っていた伊織だったが、刃をへし折られてしまうと、小刀を抜き、「俺の負けだ…」と言いながら、その場に自分の腹を突いて倒れる。

倒れた伊織は、しばらく笑っていたが、やがて息絶える。

別室では、藤枝と大学も自害していた。

まだ、息のあった大学は、助け起こした左門に、万事は終わった。ただ心残りは菊乃…と漏らす。

それを聞いた左門は、その儀はしかと左門が…と約束する。

その返事を聞き届けたのか、大学は息絶えるのだった。

左門は、その大学と藤枝の死骸を後に、部屋を出て行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

二部構成の物語の後編。

物語は、どう観ても「忠臣蔵」の焼き直しである。

クライマックスの討ち入りの場面など、もう忠臣蔵そのものと言って良いくらい。

アラカン扮する主人公平田左門は、仲間たちに呼びかける時「おのおの方…」と言い、まるで、長谷川一夫演ずる大石内蔵助である。

全編のクライマックスの戦いや本作での討ち入りの場面はそれなりに迫力があるが、アラカンの殺陣はリアルな感じではない。

どちらかと言うと、見栄を切る感じの様式的な動きで、スピード感もあまり感じない。

アラカン自体、アップになると、明らかに目張りを強調した古風なメイクであり、時代を感じさせる。

全体的には講談調の通俗活劇といった感じで、浄瑠璃坂に左門たち一行が近づく時には「浄瑠璃坂へ」などとテロップが重なる。

忠臣蔵における吉良に当たる奥平隼人を演じているのは、岡譲司と言う、金田一耕助も演じたことがある往年の二枚目俳優である。

中村玉緒が斬られる所は、意図的に画面に写らないように演出されており、断末魔の様子は、彼女の声だけで表現されている。

それにしても、東宝の平田昭彦と中村玉緒が共演していたと言うのも、この作品ではじめて知った。

宝塚映画は、もともと東宝配給作品の供給元の一つだったので、大映に所属していた中村玉緒がゲストとして出ている方が珍しいのだ。

勧善懲悪の基本ラインに、敵味方に知恵者がいて互いに騙し合うと言う策略の面白さ。それに、敵味方に別れた愛し合う許嫁の悲劇性など、通俗ながらも、今観ても楽しめるアイデアが色々詰め込まれているので、最後まで飽きさせない作品になっている。