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僕はボデイガード

1964年、宝塚映画、沢村勉+山根優一郎脚本、久松静児監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

逃げる男に追う男

逃げているのは作家の小田切淳(有島一郎)、その背後にぴったり付き添って来たのは、東京の警察から派遣されたボデイガード北一平(渥美清)だった。

小田切が発表した小説をめぐって、右翼に命を狙われる危険性があると感じ、小田切の妻が依頼して来た為だった。

しかし、小田切は、今日は女の所に行くので付いて来ないでくれと迷惑がるが、一平はそうはいきませんと聞かず、二人はもみ合いになる。

その時、近づいて来た車にはねられそうになったので、思わず、小田切を突き飛ばした北は、急停車した車から降りて来た男がドスを出して迫って来たので、猛然と対決し始める。

最初は暴漢と気づかなかった北も、自分が命を救ってくれている北の格闘を見守っていたが、あっという間に、暴漢を投げ飛ばした一平は犯人に手錠をかける。

その時、側にいた近くの娘が連れていた犬を目撃した一平は、急に怖じ気づき、小田切の背後に隠れ、犬が恐いと告白する。

小田切は呆れて「ワン!」と一平に向かい吼えてみる。

タイトル

北一平は、この小田切淳警護を認められ、念願の警視庁警務課警衛課勤務に命じられる。

さっそく、警衛課の主任(遠藤辰雄)に挨拶に出かけた一平は緊張していた。

そんな一平の緊張感をほぐそうと、主任は君の所の所長も褒めていたよなどと世辞を良い、白井部長の組に入ってもらうと言いながら、白井巡査部長(高桐真)や同僚を紹介する。

そこに、警衛課のベテラン高木源吉(笠智衆)がやって来て、今夜はうちに来い、祝をやると声をかける。

一平とは同郷の先輩だった。

その高木のスーツに付いたバッジに「BG」と入っていたので、一平は不思議がるが、それは「ボデイガード」の略であり、これからは一平もBGなのだと高木と白井は説明してやる。

一平は、男の自分もBG(ビジネス・ガール)と同じイニシアルで呼ばれることに照れるのだった。

その日、勤務先の渋谷の所轄書に戻った一平は最後の警邏に出かれていた。

地元のチンピラ(加藤春哉)らが又騒いでいるので、一平は注意する。

ラーメン屋の「萬珍軒」の前を通ると、中国人の主人(杉狂児)が食べて行けと勧めるが、今日は予定があるからと断って立ち去ろうとするが、主人はなかなか帰そうとしない。

さらに、飲み屋の女将春江 (清川虹子)と手伝いの節子(浜美枝)も茶でも飲んでいってくれと声をかけて来たので、一応店の中に入り、今度、警視庁に移ることになったと教えると、皆驚くと同時に寂しがる。

去って行く一平の後ろ姿を見送りながら、春江は節子に、ピンちゃんがいなくなると困ったわねと声をかける。

それを聞いた萬珍軒の主人は、節子の気持ちを察し、自分が仲人してやろうかとからかう。

さらに坂道の途中で、顔なじみの売春婦の二人に声をかけられた一平は、堅気の商売しろとアボバイスしながらも、女がくれた焼き芋をいつものように半分もらいかけるが、通行人の目を気にして芋は返し、交番に帰って行く。

その夜は約束通り、高木の家でごちそうになった一平だったが、高木は、明日からうちに引っ越して来いと言う。

喜んだ一平は、右目をウィンクするような奇妙な表情をし始めたので、明が不思議がると、自分は昔から、うれしいことや哀しいことがあるとこうなるのだと一平は打ち明ける。

娘の雪子(団令子)も喜び、やんちゃな弟の明(大沢健三郎)も調子に乗り、姉さんがボウリングに行きたいと言ってたよと一平に耳打ちしたので、まだボウリングをしたことがないと言う一平は、明に小遣いを1000円渡して教えてくれと頼む。

しかし、その後雪子に聞くと、ボデイガードになったらそんな暇ないわよと呆れられ、明に騙されていたことを知った一平だったが、犬の置物を観ると又怯えるのだった。

高木家の二階に引っ越して三日目、いよいよ、厚生大臣付きボデイガードとしてスーツを来て出かけることになる。

杉浦厚生大臣(京塚昌子)は、週刊誌の載せると言う漫画家(大村崑)が、大臣室で似顔絵を描いている所だった。

漫画家は、大臣が独身である理由を尋ねるが、男って横暴で生意気なので、政治に命を賭けることにしたのだと大臣は答える。

そこに、白井部長が一平を伴ってやって来て紹介する。

杉浦大臣は、外務省に移った山田君の代わりねと承知していたようで、一目で一平を気に入ったようだった。

その様子を観ていた漫画家も、一平の顔にインスピレーションを得たようで、大臣と並んだ所を書かせてくれと頼み、スケッチブックに「○と□」を描いてみせる。

それを見た大臣は愉快がるが、白井部長たちは恐縮し、漫画家を追い出してしまう。

しかし、杉浦厚生大臣は、すっかり一平を気に入ったようだった。

一平は、部屋を出た杉浦厚生大臣を付いて行き、慌てて、手洗い所まで入りかけ、白井部長に呆れられる。

その時、一平に声をかけて来たのは、警察学校時代の同期生岩崎(船戸順)だった。

彼も、ボデイガードをやっていたのだった。

二人は、休憩時間、近くのビルの屋上で旧交を温めるが、岩崎が辞書を片手に昇進試験の勉強をしているのを観た一平は、お前だけ出世するのは止めろと注意する。

そんな二人を、大臣が出かけると白井部長が呼びに来る。

杉浦厚生大臣は、夜の町の状況観察をやりたいと言い出し、その辺の場所に詳しい一平をお供に指名する。

変装した二人が、恋人のように腕を組んで盛り場の様子を見に行くと言うので、白井警部や岩崎たちは、それを遠くから見守ることにする。

新聞記者も近づけないでと言う大臣からの要望だったので、気づいて近づいた二人の記者たちを白井部長たちが足止めする。

屋台が集まる一角にたむろする売春婦たちと、そのヒモであるハゲトラ親分(沢村いき雄)が話している現場を観た一平は、それを大臣に教える。

そんな一平に気づいた馴染みの売春婦が声をかけて来るが、彼女たちと仲が良いことを大臣に知られたくない一平は懸命に追い払う。

やがて大臣は一軒のおでんの屋台を覗き込み、そこでラーメンをすすっていた女に、相場はいくらなの?500円くらい?などと無神経な質問を浴びせたので、女は怒り出し、そこに一平が顔をのぞかせたので、一平の正体も、杉浦厚生大臣の正体もバレてしまう。

女は、ハゲトラ親分を呼びに行き、大臣に詰め寄ったハゲトラは因縁をつけ始め、チンピラたちも集まって来て杉浦厚生大臣をババア呼ばわりしたので、つい一平はそのチンピラをビンタし、逆上した売春婦たちも入り乱れ大乱闘になる。

これを遠くから観ていた記者二人は喜び、その騒動を捉えた写真は「女大臣売春婦に殴られる」と題され、新聞にでかでかと載ってしまう。

それを見た主任は白井警部や一平たちを叱りつける。

その場に同席した高木は、部長がおっしゃっているのは「無事これ名馬」と言う意味なんだよと補足するが、このまま杉浦大臣に付けておく訳にはいかんので、命令あるまで待機せよと部長は一平らに命じる。

一方、係長は、岩崎と中村の二人は、昇進試験に合格したと報告するが、一平は受かるはずもなかった。

その夜、やけになった一平は、春江の店で痛飲するが、気に入らないつまみを足下に捨てていると、それに子犬が近づいて来たのに気づきパニックになる。

そこに、白井部長がやって来て、明日から大久保国務大臣付きに決まったと伝える。

一緒について来た岩崎は、首相官邸付きになったと言うので、一平は、お前は昔から俺より勉強ができたからなと出世を喜ぶ。

そこに、チンピラたちが、夕べの騒ぎを謝罪に来たので、白井部長は、あんなチンピラから兄貴呼ばわりされているのは立場上まずいと一平に注意する。

しかし、それを聞いていた春江や節子は、一平は地元署の頃から、こうした連中や売春婦たちの面倒を良く観て、更生するよう、色々助けているのだ。夕べは刈り込みと勘違いした連中が騒いだだけなのだと白井に教える。

そうした中、すっかり泥酔し、管を巻き始めた一平を岩崎が送って行こうとすると、春江は節子に財布を渡しながら、車に乗せて送っておやりと勧める。

そして、岩崎には、邪魔ですよとなだめるのだった。

大久保国務大臣(十朱久雄)は、ボデイガードを嫌っていた。

妾の家に行くのにまで付いて来るからだった。

「大久保邸」と書かれた家の前で張っていた白井部長と一平の前に、妾の桃代 小桜京子)が出て来て、大臣はお疲れの様子で熟睡しているから、今日は二人とも帰って映画でも観てくれと、映画券を二枚差し出す。

二人はそんなことはできないと拒否するが、あまり桃代が勧めるので、白井部長が一平に、お前だけ行って来い。ここは俺一人で大丈夫だから。5時までには帰って来いと言ってくれたので、迷った末、一平は、二枚の映画券を持ってヒカリ座と言う映画間に向かう。

妾宅のすぐ近くではデモが行われていたが、こんなにうるさくても、大臣も寝ていられないだろうと一平は笑っていた。

映画館に来ると、やっている映画は「昼下がりの情事」だった。

入るかどうか入口付近で迷っていた一平は、たまたま集金で外出していた節子と出くわす。

一平は思わず、一緒に見ないかと誘うが、節子は映画のタイトルを観て嫌らしいわね、警官に癖に不謹慎よと顔をしかめ、今日は集金の途中だからダメだけど、今度の休みの時には誘ってよと笑顔で去って行く。

一人残った一平は、思い切って、映画券をその場で破り捨てる。

大久保大臣が桃代に見送られて屋敷の前の車に乗り込んだ時、近づいていたデモ隊が大臣に気づき、車を取り囲んで主張を言い始める。

白井部長は一人でデモ隊を阻止しようとするが、多勢に無勢で、あっという間に、車から離れた所まで人ごみの上を運ばれてしまう。

そこに、映画館から一平が帰って来るが、デモ隊によって地面に放り投げられた白井部長が走って来たトラックに轢かれてしまう瞬間を目撃してしまう。

白井部長の通夜の席で、一平は、白井部長の妻に平謝りする。

そのあまりの憔悴ぶりに、妻の方が同情し、これも運命だったんです。白井の形見のライターを受け取ってくれと手渡す

同席していた高木、係長、岩崎らも、俺は今何かむなしいと、ベランダで落ち込む一平に、謹慎処分くらいですんで良かったじゃないかと慰めるのだった。

翌年の春、一平は、ヨーロッパの某国の王女を警護して関西に向かう。

奈良で、鹿を8mm撮影していた王女(イーデス・ハンソン)は、随行していた一平に、カメラを回してくれと頼むが、一平は英語がわからずとんちんかんな答えをしてしまったので、王女は呆れて「男のくせに、もうちょっとしっかりせな、あきまへんで!」と、妙に達者な大阪弁で励ますのだった。

それから1年、一平は部長に昇進し、同郷の先輩に当たる遠山やすじ国務大臣(加東大介)付きになる。

チャンス到来だった。

遠山大臣にはじめて会った時、一平はそれとなく自己アピールをし、自分が大臣と同郷の四国であることをアピールする。

その時、秘書官の一人が電話を受け、田舎の婆さんが大臣に会いたがっているようだが、断っておいたと大臣に報告する。

遠山大臣は一平を連れて自宅に戻ると、今日は娘京子(磯村みどり)の誕生日なので一緒に楽しんで行けと勧める。

すると、その誕生会に、一平は、自分の母親しげ(浪花千栄子)がいることに気づく。

先ほど大臣に会いたがっていたと言う田舎の婆さんと言うのは、しげのことだったのだ。

しげは、大臣の子供時代を良く知っていると言いながら、迷惑がる大臣に、田舎の土産としてたこの干し物を渡したりする。

一平は、そんな母親が恥ずかしく、何とか早く立ち去らせようとするが、娘の友達たちもしげを面白がり、京子も一平に一緒に踊ろうと誘い、レコードをかける。

一平は、踊れないと必死に断るが、しげの勧めもあり、無理矢理ツイストを踊ることになる。

しかし、京子の友達が抱えていたプードルを見せられると逃げ出すので、しげは、あれは、3つの時に犬に噛まれたことがあるもんでと苦笑する。

その後、しげは高木の家に厄介になっていた。

厚かましいしげは、高木に向かって、雪子さんを一平の嫁にもらえないだろうかと言い出し、高木もあっさり承知する。

そこに当の一平が帰って来たので、高木がそのことを伝えると、雪子が好きだった一平は舞い上がって喜ぶ。

しかし、その話を聞いた雪子の方は、その話、絶対ダメ。ボデイガードは自分の時間がないし、白井さんのように死んじゃうかもしれないと言うので、それを聞いていたしげは、一平に、ボデイガードを辞めてサラリーマンになれと言い出す。

さらに雪子は、実は自分には、結婚の約束をした人がいるのだと言うではないか。

その言葉にショックを受けた一平は、高木家を飛び出すと、春江の店に来て、萬珍軒の主人と酒を飲み出す。

雪子に結婚を断られたとやけを起こす一平を節子らが懸命になだめていると、ハゲトラの子分らが飲みに来て、ポリ公は良いな、人の金で酒が飲めて、犬!などと因縁をつけて来たので、一平はいきり立ち、子分たちと喧嘩になるが、気がつくと、店の座敷で寝かされていた。

ハゲトラ組のデブたちは、110番して連れて行ってもらったと言う。

それはまずいと感じた一平だったが、深夜の3時だと言うのに、ずっと節子が一人で介抱していたことを知ると感激し、とりあえず帰ろうとする。

しかし節子が、後2、3時間で朝になるから、それまでここで寝ていたら?私は平気と言うので、妙な噂でも立てられたら…と案じていた一平も、良いか。良し決めた!結婚しようと言い出す。

節子は喜びながらも、まだ雪子さんに未練があるんじゃないの?と心配するが、一平はきっぱり諦めたと言い、節子を抱こうとするが、その時、泊まり込みの手伝いが寝ぼけて店に出て来たので、警察官がこんな不謹慎なことをしてはいかんなと反省した一平は、そのまま帰ることにする。交番に酔って時間をつぶすと言うのだ。

節子の方は、寝ぼけ眼の手伝いを恨むのだった。

やがて、高木の退職の日が来る。

岩崎も、個人の感情が入ることが許されない仕事に疑問を感じ、今では転職し電器屋をはじめていた。

一平は、瀬戸内海に帰る遠山大臣に随行して、5年ぶりに帰郷することになる。

村総出の歓迎会となり、しげとおよしも港に遠山大臣が到着するのを待ち受けていた。

陶山大臣の胸像除幕式が執り行われる。

久々に実家に帰った一平は、外に干してあった蛸を一つ取り、今夜食わしてくれ、俺の大好物じゃとしげに甘える。

その頃、遠山大臣が泊まった宿に、泥酔した幼なじみの留五郎(田武謙三)が会わせろとやって来るが、およしが止める。

夜、久々のおふくろの味に舌鼓を打っていた一平は、酒を止めたとしげに教える。

そして、今度結婚することに下と報告する一平に、喜んだしげは、今まで一平が自分の為に送ってくれた10万円を貯金していたので、それを新婚の家賃として持って行けと言う。

それを聞いた一平は、何を言っているんだ。それは、母ちゃんの為に送った金なんだからもらえないなどとちょっとした口喧嘩になる。

そんな所におよしがやって来て、イルカの留五郎 が酔って旅館にやって来たと知らせに来る。

それを聞いた一平は、留五郎は以前から、東浜の埋め立てに反対しとったな?大丈夫だろうか?と真顔になる。

留五郎は、女将の千代(沢村貞子)や芸者のいる席遠山大臣と同席し、自家製のどぶろくを大臣に飲ませたりしていた。

女将は、この人たちは18の時、別々に自分のとこの中に夜ばいに来たなどと昔話を披露していたが、やがて、酔った留五郎が、東浜を埋め立てられたのでは自分たち貧乏漁師は食って行けなくなる。保証金を今の3倍くらいにしてくれと言い出すが、大臣はそれは自分の一存では決められないと相手にしなかった。

そこに、心配した一平が駆けつけて来るが、遠山大臣は、こいつは昔から知っている奴だから心配いらないと遠ざけようとする。

すると、留五郎は、お前は、こんな用心棒を付けているんか?と逆上し、工場ができたら、そこで働けば良いじゃないかと勧める大臣の言葉にも、それでお前は、リベートたら言うもんが懐に入るんだろうと言いがかりをつけて来る。

その言葉に、大臣が怒ると、いつの間にか、留五郎は包丁を手にして立ち上がると、お前は漁師の敵だ!と怒鳴り始める。

側にいた警官が止めようと近づいて、左腕を切られる。

一平も留五郎を取り押さえようとして、お前も漁師の子じゃないかと怒鳴る留五郎に左手を切られてしまう。

全治一か月の重傷で、警官になってはじめて一平は25日も仕事を休むことになる。

傷は何とか治ったが、一平の心の中には直りきれない別の傷があった。

留五郎が逮捕する時叫んだ「お前も漁師の子じゃないか!」と言う言葉だった。

そうした思いに沈んでいた一平に、二階に上がって来た高木は、ボデイガードはやるがいがないか?人間が人間を殺すのは良くないことだと思わんか?今は任務に専念しろ。俺も若い頃は、仕事に懐疑的になったこともあると優しくアドバイスする。

そんな所に見舞いにやって来た春江と節子に、高木は、弱気になっている一平に発破をかけてやってくれと頼む。

春江は、節子は姉の子なんですがと高木に紹介し、一平も思い切って、今度この人と結婚するのだと高木に報告する。

高木は驚きながらも喜び、雪子も喜ぶが、現金にも節子に夢中の一平は、もはや雪子は眼中になかった。

いよいよ、一平と節子の結婚式の日が来る。

転勤した同僚のアパートの部屋に一平は引っ越し、その日は、母親のしげは、神経痛が出て出て来れず、朝から一人でパンを食べていたが、そこに春江と節子、馴染みのチンピラが土産を持って訪ねて来る。

そんな仲間たちに見送られ出勤した一平だったが、何となくその日は妙な日で、虫の知らせがした。

閣議が終わり、赤坂の料亭に遠山大臣が昼食に向かったときだった。

入口脇に潜んでいた襲撃者(鈴木和夫)が、突然「国賊!」と叫びながら銃を向けて来たので、一平も思わず銃を取り出し、襲撃者ともみ合いになる。

やがて、襲撃者は逃亡したので、一平もその後を走って追跡する。

工事中のビル建設現場に逃げ込んだ襲撃者を追いつめる一平。

工事関係者が警察に連絡したので、やがてパトカーも集結し、襲撃者は工事中の高架部分に立ち止まると、やがて、自ら地上に身を投げる。

一平は、地上に叩き付けられた襲撃者の遺体を上から見下ろすことになる。

アパートでは、萬珍軒の主人も集まっていたが、肝心の新郎の一平は、なかなか帰って来なかった。

そこにや売春婦たちもやって来て、春江は、節子の代わりに、今度から店に来てくれることになったと説明する。

雪子も、自分の結婚相手だと言う津田と言う男性を伴ってやって来る。

そこに高木がやって来て、節子を台所に呼び寄せると、持って来た夕刊を見せる。

第一面に「大臣ピストルで狙撃される」と大見出しが踊っていた。

それを見て青ざめる節子に、高木は、一平は無事であることを教えながらも、一平と結婚をするの、嫌になったかい?と聞く。

しかし、節子はそんなことないと否定する。

そこに、岩崎がテレビを持ってやって来たので、結婚式に来たのかと全員思うが、彼は結婚式のことは知らなかったようだ。

高木は、一平の帰宅時間が分からないので、とりあえず、式を始めようと勧め、全員、食事を始める。

深夜になったので、明日が早いと言う津田と雪子は帰ることにする。

雪子は節子に、トランジスタラジオとフランス製の香水をプレゼントする。

やがて、3時過ぎ、ようやく一平が帰宅して来る。

一平は、ちょっとした油断でホシを殺してしまった。後味が悪いと悔やんでいる様子。

それでも、既に寝ていたチンピラたちも起こし、節子と三三九度をする。

一平は、今まで待っていてくれた仲間たちに、今日から自分は、首相官邸付きを命じられたと報告する。

売春婦二人は、水天宮の張り子の犬を安産祈願としてプレゼントするが、不思議なことに、一平はもうその犬を怖がらなくなっていた。

岩崎は、実は、結婚式と知らなかったので、自分はテレビを買ってもらおうと思って来たのだと打ち明け、アメリカからの衛星中継が始まる時間だと言いながら、勝手にテレビの準備を始める。

チンピラたちは、パチンコ屋の景品やちり紙をプレゼントする。

萬珍軒の主人は、ブランコに乗った子供の人形が付いた置き時計をプレゼントする。

ちょうど朝の5時になったので、岩崎はテレビをつけ、衛星放送にチャンネルを合わせる。

そのテレビが伝えて来たのは、ケネディ大統領が暗殺されたと言う衝撃のニュースだった。

それまでにぎやかだった一平夫婦や客たちは、そのニュースに釘付けとなる。

一平の顔は見る間に引き締まり、今から官邸に行くと節子に告げる。

高木も、このニュースはすでに官邸に伝わっているはずだ。行けと勧める。

節子も行ってと頼む。

寝ないまま外に飛び出した一平は送って来た節子に謝ると、じっとしていられないんだと言うと、帰って来たら、もう一度三三九度をやり直そうと伝える。

二人はその場でキスをする。

外に走り出した一平は、道に落ちていたバナナの皮で滑ってしまうが、踊り場からその様子を観て心配する節子に、大丈夫!と言いながら立ち上がると、朝が開け始めた団地内を走って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

渥美清が「SP」(セキュリティポリス)に扮して活躍する人情喜劇

こうした職業に、早くからスポットを当てた作品があったことに驚きを覚える。

スーツを着た渥美清が、大臣を襲撃した犯人を、走って延々と追跡するシーンなど、寅さんしか知らない世代にとっては大変珍しいのではないだろうか?

ボデイガードになった渥美が、自分たちの仕事の略称が「BG」と呼ばれるのを恥ずかしがるのは、当時の職業婦人のことを「BG」(ビジネス・ガール)と呼んでいたため。

女性の呼び方の「BG」の方は、「売春婦」と混同されると言うことで、その後「0L(オフィスレディ)」と呼び変えられるようになるが、その辺の事情を知らない世代にとっては、この辺の言葉の面白さは分かりにくいかもしれない。

「男はつらいよ」が人気を得る前、渥美清が良くやっていた「生真面目一筋の男」を描いた作品で、この頃の渥美の役は、男にも女性にも好かれていたことが分かる。

日本初の海外衛星中継を観るため、岩崎がテレビを持って来ると言う辺りで、当時を知るものはすぐにピンと来るのだが、ボデイガードの仕事に疑問を感じていた一平が、仕事の自覚を強く持つきっかけとして、この劇的なニュースを持って来たことに時代性を感じると共に、それほど、このニュースが当時の日本に与えた影響力も大きかったと言うことも分かる。

渥美清と言う役者の幅広さを知るだけではなく、当時の世相を知るためにも貴重な作品ではないだろうか。