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鉄火場の風

1960年、日活、熊井啓脚本、牛原陽一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

網走刑務所の表門が開く。

線路が走りすぎて行く。

タイトル(列車で東京に向かう畑中英次の姿を背景に)

東京のキャバレー「モンパルナス」では、ドラムの音もけたたましく、フロアでは客たちが踊っていた。

そこに帰って来た畑中英次(石原裕次郎)は、近づいて来た支配人永田正雄(深江章喜)に、店長の高木と相良那美(北原三枝)を呼べと言いつける。

席に着いた畑中のテーブルにやって来た那美は、知らせてくれたら迎えに行ったのにと言いながら、隣の席に座るが、畑中は冷たいまなざしで、ムショにいても色んな話が流れて来るぜ。高木と出来ているんだって?と聞く。

那美は、仕方なかったのだと答えるが、「この、はすっぱやろう!」と畑中は罵倒する。

畑中が那美を許せないのは、呉羽組長殺害の疑いが畑中にかけられた時、愛していたはずの彼女すら、最後には高木の証言を信じ、自分を見捨てたことだった。

やがて、バンドの音楽が始まり、歌手の那美はフロアに戻り歌い始める。

畑中は、続いて、店長の高木剛太郎(芦田伸介)の部屋に向かう。

畑中は、久々に会った高木に、この辺では良い顔になったそうだな?と皮肉り、おめえ、目から血が出るほど悔しい思いをしたことがあるか?と迫る。

それに対し、変な言いがかりは付けるなと鷹揚に返した高木だったが、最後には、グラスに注いだ酒を畑中に浴びせかけ、「帰れ!」と怒鳴りつける。

店長室を出た畑中は、カウンターで飲んでいた西川政一(宍戸錠)の胸ポケットからハンカチを抜き取ると、それで顔を拭き帰ろうとするが、隣に座っていた速水健(赤木圭一郎)から足を引っかけられ、転びそうになる。

その後、畑中は、「万幅軒」と言うラーメン屋でチャーシューメンを注文する。

応対した店の娘の木内昌子(清水まゆみ)は、出所して来た畑中が来てくれたのを喜ぶ。

店主の父親も昌子(あきこ)も、昔から畑中を良く知っていたのだ。

そんな昌子の歓迎ぶりをテーブル席から冷ややかに観ていたたちの悪そうな4人組の男女が、昌子に注文の難癖をつけ、あげくの果てに、チャーシューメンを食べていた畑中の顔を、丼に突っ込むと言う悪質な嫌がらせをして来る。

さすがに切れた畑中は、ポン引松(榎木兵衛)らを相手に喧嘩を始まるが、すぐに店主の木内一巳(殿山泰司)が出て来て、野菜を畑中やチンピラたちにぶつけ始める。

しかし、客が帰ったあと、奥の部屋で向かい合った木内は、笑顔で畑中に酒を勧めていた。

木内は畑中に、おめえも足を洗う良い機会だと忠告していたが、そこに、畑中と同じ双葉組の真壁鉄次(佐野浅夫)と江島民平(武藤章生)が挨拶に来たので、木内は露骨に顔をしかめる。

その頃、最近体調が優れない高木は、店長室で、医者の新田整(梅野泰靖)から注射をしてもらっていた。

新田は、一度病院で検査を受けた方が良いと勧める。

そこに戻って来た健が、畑中は万福軒にしけこんだと報告に来る。

組長を畑中に殺されたと信じ込んでいた健は、早く自分の手で畑中を始末したがっていたのだった。

高木は、そんな健に、明日一日畑中を付けてみろと命じる。

翌日、畑中が向かったのは、加藤博敏(小泉郁之助)弁護士の家だった。

畑中は、無実の罪で3年もムショ暮らしをさせられた人間として、何とか再審請求をしてもらおうとしていたのだが、加藤弁護士は、証拠がそろったら…と言ってくれるが、あまり乗り気ではないようだった。

仕方ないので、その足で、かつて噓のアリバイ証言をした管理人佐々木忍(浜村純)に会いに行き、本当のことを言ってくれと迫った畑中だったが、佐々木は、スケート場であんたを観たと得意げに証言した奴は、その三日後に家族を残して頓死した。男やもめの自分には子供もいるのだと、露骨に迷惑がる。

佐々木のアパートを出た畑中は、朝からずっと付いて来ていた健に、わざと自分から言葉をかけてからかう。

茶店で那美と落ち合った畑中は、身近にいるあんたが、高木の事情を探るしかないんだと迫るが、那美は、あんたのこと、前より好きよ。楽しかった、あの頃…。高木は私のことが好きだったので、そのこともあって、当時からあなたが憎かったの…と思い出を語るばかり。

今日は高木はどうしてる?と聞くと、この前亡くなった川崎の組長の追善会に行っていると那美は教える。

それを聞いた畑中は、通知状や入場資格券になるチラシを持っていっただろうと指摘する。

その頃、高木は、地元の顔役らしき鱶川謙三(嵯峨喜兵)の屋敷の庭で、ゴルフのクラブを振っていた。

そこへ秘書(夏今日子)がやって来て工業振興会が会いに来たと鱶川に連絡に来るが、それをうるさそうに帰した鱶川は、辞去しようとする高木を押しとどめ、今日の客人はどのクラス?と聞く。

高木は、鱶川を、追善会で行われる博打に誘いに来ていたのだった。

一方、落ち目になった双葉組は、根城にしている不動産屋でくすぶっていた。

追善会のチラシは受け取りながらも、立場上参加できないでいた真壁鉄次、江島民平らは、せめて畑中の兄貴がいてくれたら…とぼやくが、柳辰蔵 (河上信夫)は、久々に客らしき男が入って来たので、茶を出そうとするが、それは客ではなく、テレビを売りに来たセールスマンであることに気づく。

マンションでテレビを観ていた高木は、風呂上がりの那美が戻って来たので迫ろうとするが拒否される。

畑中に義理立てしているんじゃないだろうな?と高木から言われた那美は、あんな男…とバカにした様子を見せ、昔、本当に何もなかったんだろうなと聞かれても、キスもしなかったわ。私はあなたのものよと言いながら高木に抱きつくが、顔を見られないように背けながら、黙って涙を流す那美だった。

ある日、呉羽組の息がかかるぼったくりバー「ベラミ」にやって来た健は、会計表を観た客(柳瀬志郎)がママの夏子(木室郁子)に文句をつけていたので、外に連れ出し財布の中身を抜き取ると、すっかりビビった客に、今度この辺に来たら、俺に声をかけなと名乗って帰らせる。

そんな様子を観ていた畑中が声をかけると、近くの工事現場横の空き地に連れて来た健は、いきなり組長を闇に葬りやがってと言いながら殴りかかり、敵わないと見ると、ナイフを抜いて、畑中に突きかかって来る。

しかし、畑中は、そんな健をあっさり投げ飛ばすと、俺は人を闇討ちにするようなヤクザじゃない。死んだ組長さんには恩義があったんだ。恩を仇で返すようなまねはしないと言い聞かせると、お前も早く足を洗え、自分では粋がっているつもりでも、世間じゃ、人間のクズくらいしか見ていないんだぜと、弟に言い聞かせるように話す。

気まずくなった健は、覚えてやがれ!と捨て台詞を残して走り去って行く。

その後、万福軒の屋上にいた畑中に、洗濯物を干しに来た昌子が、何か仕事に就いて働いた方が良いのじゃない?父から色々昔のこと聞いたけど、畑中さんは噓を言うような人じゃないと話しかけて来る。

畑中も、あき坊からもらった手紙、ずいぶん冷やかされたぜとムショ時代のことを教え、からかう。

昌子は、畑中の右手に巻かれたハンカチに気づくが、畑中は何でもないとあわててハンカチを取ると、洗濯物を干すのを手伝い始める。

そこに、花の鉢植えを持った木内が上がって来たので、昌子も下に降りるが、そのとき、持っていたリンゴを畑中に投げて渡す。

その頃、集まった組長たちの理事会では、高木からの進言で、畑中を破門して東京から所払いする決議文を馬瀬朝次郎(東野英治郎)が読み上げていた。

その決議文を、高木は「モンパルナス」に呼び出した畑中に渡して、明日の晩までだぜ、東京も。まあ、達者に暮らせと言い渡す。

双葉組の事務所の不動産屋にやって来た畑中は、電気屋のセールスマンと酒を飲んでいた真壁たちに、親分衆が集まるのか?と聞き、行くか?と真壁から聞かれた畑中は行く!と答える。

一方、大学病院で、新田から心電図検査をしてもらっていた高木は、完璧なプランの巧い話があるが、150万いるので、資金を出してくれないかと相談されていた。

そこに、グリーンと言うアメリカ人が新田に挨拶に来る。

高木は、心臓に少々障害があるだけだった。

真壁、江島、柳らを連れた畑中は、チラシを使い、組長たちが集まる賭場へと向かっていた。

馬瀬は、乗り込んで来た畑中から、一方的な追放状を受け取ったことへの抗議を聴き、不機嫌になる。

しかし、そんな畑中にも、今夜は遊んで行けと、他の組長が声をかけて来る。

鱶川ら客たちも交え賭場が開帳される。

その内、高木の子分の西川が中盆を勤めるようになるが、その手つきを観察していた真壁が、あったけえんじゃねえか?とアヤを付ける。

イカサマ呼ばわりされた西川はいきり立ち、ナイフを取り出すが、その手を押さえた馬瀬は、仲裁にたち、今となっては、どっちが正しいとは言えないが、せっかく来て下さっている客人たちに不愉快な思いをさせたことだけは確かなので、この際、お歴々の前で、双葉組と呉羽組が白黒付けたらどうだね?と畑中と高木の顔を見る。

これに乗った畑中と高木の、一対一の勝負が始まる。

最初は西川が賽改めをさせた上で、壺を一度振り、買った方が次の勝負の壺を振るのだ。

最初は畑中が丁で勝ち、壺を振る権利を手に入れる。

勝負は五分五分の状況で進んで行く。

それを固唾をのんで見守る組長や客人たち。

時間も経った所で、馬瀬が、一休みしたらどうかと二人に勧める。

客人たちには食事が用意されていたが、畑中は江島にビールを頼んだだけだった。

西川も疲れきったように、子分が持って来たうな重を断り、中盆の位置にじっと座ったままうなだれていた。

休憩の間、外出していた真壁が200万用意して戻って来る。

後半戦では畑中が明らかに不利な情勢になっていた。

壺を振る権利を手にしていた高木は350万を張る。

柳は、100万張らせてくれと頼み、負けたらどうする?との高木の言葉に、しばし考えた末、残りのシマを渡すと約束する。

壺の中は、1、1の丁で、高木の勝ちだった。

がっくり肩を落とした畑中は、ふと、休憩中も一歩も動こうとしなかった西川の姿を思い出し、いきなり立て!と西川に命じる。

他の組長の手前、渋々、西川が立ち上がると、足の下に隠していたもう一つのサイコロが転がり出て来る。

そのサイコロを馬瀬に差し出しながら、叔父貴、こんなことでも、しろと言われたら従わなけりゃいけねえのか?と責めると、他の組長たちに対し、親分衆!自分は、ヤクザとはもっと筋金入りの渡世人だと思って来たが、こんな仁義なら、こっちからごめん被りやす。今晩限り、足を洗わせていただきますと言い残し立ち去ろうとするが、高木の子分たちが立ちはだかる。

それを蹴散らした畑中は、一人、屋敷を出て帰るのだった。

他の組長の面前ですっかり面目を失った高木は、その場に残った馬瀬と柳ら双葉組の前で謝罪する。

馬瀬が中に入り、今夜の詫びとして500万双葉組に払えと高木に命じるが、高木は300万で許してくれと哀願して来る。

しかし、その言葉に怒った真壁は、ムショ入りを覚悟して用意して来た金だ。500万色をつけ、明日の晩までに耳を揃えて持って来い!出来なければ「モンパルナス」をいただくと言い放つ。

その後、憔悴しきった高木一人を残し、全員が帰って行くが、そこに新田が来ると、高木は、この前の病院の話に乗っても良いと言い出す。

一方、朝方、万福軒の自室に敷かれていた布団に入ってすぐ寝入った畑中の様子を観に来た昌子は、そっと掛け布団をかけ直してやるのだった。

モンパルナスの店長室で高木と二人きりになった新田は、残るのは三つの問題だと話していた。

一つは資金、二つ目は処分の方法、三つ目は人員だと言う。

何人いるんだと高木が聞くと、電話線を切るのに二人、金を取るのが二人、射撃が巧く、信用できる奴が良いと言うので、高木は健を勧める。

電話線を切る人間としては、武本と言う友人を知っているので、そいつに50万払うと新田が言い、もう一人いると言うが、高木は俺がやると言い出す。

もう50万いると言う新田に何に使うのかと聞くと、あんたと俺が逃げる運賃だと言う。

翌日、高木に山の谷川に呼び出されて話を聞かされた健が、岩場に並べたビール瓶を次々に撃ち砕き、銃の腕前を披露しながらも、高木の話には素直に返事を出来ないでいた。

高木は、俺もやりたくないが、呉羽組を立て直すには仕方ないのだ。俺とお前がやらなくては、今後呉羽一家はどうなる?と迫る。

東京に戻って来た健は、バー「ベラミ」で酒を浴びるように飲み始める。

そんな健に夏子は、畑中が探していたから会いに行けと勧める。

泥酔した健は、酔った勢いを借り万福軒にやって来る。

そんな姿を観た畑中は、今日は朝から高木とどこをほっつき歩いていた?と聞かれると、何も入らねえや!命だって惜しくねえやと叫び、店を飛び出して行く。

その後を追おうと外に出た畑中は、呉羽組の男たちの待ち伏せに出会い、殴り合っている所を、隠れていた永田から、銃で頭を殴られてしまう。

気がつくと、どこかのガレージの中のイスで縛られていた。

畑中は、消そうって言うのか?とそこにいた高木を睨みつけるが、高木は落ち着いた様子で、あの日、組長も同じようにここで一発撃ち、アパートに運んでもう一発撃ったと告白する。

その話を、同じ地下室で一緒に聞いていた健は愕然とする。

高木は、ガレージ内に置いてあったバイクのエンジンを吹かすと、健に撃てと命じるが、健がためらって銃を落とすと、それを拾った高木自らが畑中を撃とうとする。

そのとき、やって来た新田が高木の浅はかな行為を、みっともねえぜ。自分の身体を考えろと言って止める。

そこに、新田が連れて来た武本寛(土方弘)も入って来て合流すると、気を取り直した木は明日の打ち合わせをしようと言い、全員、別室に移動する。

最後に部屋を出かけた健は、ナイフを取り出すと、畑中が座っていたイスに突き立てて出て行く。

翌朝、ガレージに様子を観に来た西川は、縛られた畑中が床に倒れていたので安心するが、その畑中が少し身体をずらすと、身体の下にナイフがあったので怪訝に思う。

次の瞬間、起き上がった畑中は、西川を殴り倒して外へと逃げ出す。

那美に会いに来た畑中は、高木の居場所を聞く。

那美は、新田と出かけたが、行く先は分からないと言う。

畑中は、高木がついに吐いたと教えるのだった。

とある野球場そばのマンホールには「工事中」の覆いがしてあり、そこに高木が立っていた。

マンホールの中では、すでに武本が電話線を細工していた。

そのそばに泊まった車の中には、新田と健が乗っていた。

畑中は、健を探しに「ベラミ」に来るが、客たちと一緒に野球中継をラジオで聞いていた夏子は知らないわよ!とうるさそうに答える。

車から降りた新田と健は、大きなジュラルミンケースを持って野球場の敷地内に入ると、守衛に「サン銀のものです」と挨拶して、球場内に入って行く。

そのとき、高木が見張っていたマンホールに、電話線を引っ張って来た武本が登って来る。

球場内の通路を進んでいた健と新田は、ちょうど警備室から出て来た警官に会うが、新田は落ち着いて、二死満塁ですよと告げて、その場を切り抜ける。

球場経理課にやって来た二人は、日守課長(三島雅夫)に、サン銀から来ましたと挨拶する。

日守が、吉川さんは?と不思議がると、ちょっと体調を崩しまして、自分は大阪から転勤して来た神田ですと、新田が名刺を取り出す。

経理課員たちが売上金をジュラルミンケースの中に詰めている間、二人の相手をしていた日守は、健が取り出したタバコに火が付かないのを見て取ると、自分で火をつけてやるが、そのとき、健のスーツの胸元から覗いている拳銃に気がつく。

その頃、武本はマンホールの所で口笛を吹いていたが、いら立った高木に止めろと怒鳴られる。

2時半、経理課で、外部と連絡を取っていた警官がかけていた電話が突然切れ、ジュラルミンケースを持った二人が部屋を出かようとすると、突然、日守課長が、横に立っていた警官の拳銃を取ると「動くな!」と制する。

強盗ですと言いながら、その拳銃を警官に渡した日守は、銀行員にしてはホルマリンの匂いがした。自分はあの匂いが大嫌いなのだと、見破ったきっかけを話し出す。

立ち止まったままそれを聞いていた健は、突然振り向きざま、警官を撃つ。

倒れた警官が落とした拳銃を拾った日守が、部屋を出かかっていた拳を撃つ。

新田と健は、駐車場に止めていた車に乗り込もうとするが、撃たれていた健は途中で倒れる。

その様子を観ていた高木は、新田や武本が車に乗り込むと、自分で拳を撃ち、自らも車に乗り込み逃亡する。

瀕死の重傷を負った健だったが、通りかかったタクシーを止め、拳銃で運転手を脅して降ろすと、自ら運転して逃亡する。

やがて、万福軒に血まみれの健が転がり込んで来る。

そのとき、外で、健の行方を探していた畑中は、救急車を呼びに走って来た男から事情を聞くと店に戻る。

健は、兄貴、すまねえ…、俺が馬鹿だったばかりに…、高木に…と詫びる。

店員が水を飲ませようとコップを差し出すと、それを受け取った畑中は、健の顔にかけると、大したことねえぜ!と告げて、外に飛び出して行く。

「モンパルナス」はもぬけの殻だった。

メイク室にいた那美に会った畑中は、高木と新田が野球場をやったと教える。

那美から、夕べ、寝るとき、今日はずっとここにいるように高木から言われていると聞いた畑中は、どうせ高飛びだと吐き捨てる。

その後、病院に健の様子を観に来た畑中だったが、健は気丈にも、死にゃしねえ。これから仲良く頼むぜ。陽が沈んで行く…。きれいだ…。真っ赤だぜ、ビルが…と言い残し、息を引き取る。

たまらなくなり廊下に出た畑中に、那美が近づいて来る。

高木から電話があり、自分一人で行くつもりだったと言うので、何しに?と畑中が聞くと、那美は黙ってバッグの中に入れていた拳銃を見せながら、どうしても勇気がないの。一晩中歩き通したわ。畑中さん、捕まえて!と訴える。

待ち合わせはどこかと聞くと、立川街道の三本杉と言うバス停だと言う。

危ない時に使って頂戴と言いながら、那美は自分の拳銃を畑中に手渡す。

飛行機が飛び立つ立川基地の側の「ドライブイン富士」の前で新田は一人待ち受けていた。

そこに、車で一人高木がやって来たので、遅い!と苛ついた新田だったが、那美を呼んであると聞くと、さらに驚き、足手まといになると言い、不機嫌そうになりながらも、一緒にドライブインに入ると、基地内で待機していたアメリカ人の操縦士グリーンに電話を入れ、少し遅れると連絡をする。

グリーンは、後10分で飛び立つので急げと返事をする。

そのとき、「松尾行き」の五王バスが近づき、「三本杉」で停車する。

高木が外で観ていると、そこから那美が降り立って姿を見せるが、バスが走り去ると、その後ろに、畑中も立っていることに気づく。

てめえたち、グルだったのか!と高木が銃を取り出し発砲すると、畑中は、那美の身体を道の脇の畑に落とし、自分も銃を取り出し応戦する。

畑中は、トラックが三台続けて近づいたのに気づくと、その最後の車が通り過ぎた瞬間、道路に上がり、新田の足を撃ち抜く。

高木はもう弾切れのようだった。

畑中は、高木の車を狙い撃ちすると炎上させる。

逃げ場を失った高木を追った畑中は、殴り合いの末倒すが、その上空を、グリーンが乗った飛行機が飛び立って行く。

高木は、救急車に乗せられ運び去られて行く。

その様子を観ながら、畑中は那美に、又二人になったな。これからどうする?と尋ねる。

那美は、昌子さんを幸せにしてあげて。昌子さんはあなたを好きなのよ。あなたは鈍感で分からないでしょうけどと答える。

君はどうする?と聞くと、私はもう一度出直すの。そして別の人を探すわ。あなたのような…と言い、近づいて来た刑事(紀原耕)に促され、パトカーに乗り込む。

その那美と握手をして別れた畑中は、自らも刑事に促され、別のパトカーに乗り込むのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

石原裕次郎と赤木圭一郎の共演作。

タイトルから想像すると、古い任侠もののような印象があり、確かに賭場での勝負が見せ場となってはいるが、別に、裕次郎や赤木が着流しだったり、刺青を背負っているような描写はなく、いつもの日活ギャングものの延長のような感じである。

赤木圭一郎は、単なるゲスト出演と言う感じでもなく、後半は準主役と言っても良いような扱い。

裕次郎の先輩格の宍戸錠も、それなりに見せ場がある役柄を演じている。

芦田伸介は、体力的には弱そうだが、卑怯なヤクザと言う、見た目に合った役柄になっている。

その他の常連たちも、適材適所といった感じで、安心して観られるプログラムピクチャーになっている。

ただ、後半突然登場する三島雅夫の経理課長の活躍は、ちょっと、いくら何でも現実離れしていないだろうか?

昔、警察にいたとか、射撃の選手だったと言うような説明がないと、ただの経理畑の中年男が、いきなり強盗相手に拳銃を撃つなどと言うのは信じがたい気がする。

前半の賭場での勝負までの話と、後半の野球場襲撃の話が、ちょっと分離しているような印象もないではない。

野球場襲撃だけで、十分、一本分のサスペンスになったのではないかと言う気もする。

前半部分が裕次郎の見せ場、後半部分が赤木の見せ場と言う風に、あえて二つの見せ場を用意した為かもしれない。

それでも、最後の最後には裕次郎が決める形になっており、両方のファンを意識したサービス満点演出と言う風に解釈した方が良いのだろう。


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