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台風クラブ

1985年、ATG+東宝、加藤祐司脚本、相米慎二監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

深夜の大田中学校のプール。

一人の男子が時々立ち止まりながらも、ゆっくり泳いでいる。

タイトル

そんなプールに、突如乱入して来た水着姿の数人の女子。

高見理恵(工藤夕貴)、宮田泰子(会沢朋子)、毛利由美(天童龍子)、森崎みどり(渕崎ゆり子)たちだった。

彼女たちは、トランジスタラジオの音楽に合わせ、陽気に踊り始める。

その時、理恵が、プールの中にいた山田明(松永敏行)に気づき、他の女子に教える。

大田中学の元野球部の二人、三上恭一(三上祐一)と清水健(紅林茂)は、ユニフォーム姿で、深夜の商店街をランニングしていた。

木曜日

酔っぱらいが絡んで来たりするが、相手にせずそのまま中学の方に向かっていると、メガネっ子の女子に声をかけられ、校内に案内される。

プールの縁に明が気絶している。

理恵から、溺れたらしいの、どうしたら良い?と聞かれた三上は、人工呼吸をしてみる。

夏休みに習ったばかりだと言う、マウストゥマウスを試してみることにする。

健が、横たわっていた明の腰に置かれていたタオルを外すと、サポーターしか履いていないことに気づき顔をしかめる。

そこに、訳も分からず女子たちに呼び出された数学教師の梅宮安(三浦友和)がやって来て、生徒たちの無軌道ぶりに呆れながら、叱りつける。

気がついた明は、プールにいた所を女生徒たちに見つかったあと、皆に海水パンツを脱がされ、コースロープを身体に巻かれ、水中でいたぶられたのだと説明する。

金曜日

団地住まいの理恵は、昔から友達の三上と団地内の公園で落ち合うと、手をつないで登校する。

優等生の三上は理恵に、あんまり泰子たちと付き合うなと注意する。

数学の授業中、生徒たちはほとんど梅宮の話など聞いていなかったが、特に幼い明は、鼻の穴に鉛筆を何本も詰めて遊んでいるうちに、鼻血を出してしまい、梅宮に叱られる。

あまりにもやる気が見えない生徒たちに絶望した梅宮は、聞いてるか?百姓の子供たちと言い出し、生徒から抗議されるが、そこに突然、用務員の岡部(伊達三郎)に連れられて、見知らぬ中年男女が教室に入って来る。

梅宮に詰め寄った中年女の方は、突然、娘とはいつ結婚するのか?今、いくつだと思っているの?もう29よ、いつまで待てると言うの?とプライベートな話を生徒たちの前でし出す。

彼女の弟らしい強面の中年男の方は、順子に貢がせたって言うんですかと梅宮に迫る。

姉の方が100万以上と付け加える。

その八木沢順子(小林かおり)本人は、グラウンドで一人待っていた。

自習になった靖子、由美、みどりたちは、理科部のベランダで「嫌なもの、見ちゃったな」とその後話し合っていた。

順子の母(石井トミコ)とその弟英夫(佐藤允)は、岡部に促され、用務員室に案内されると、そこでゆっくり話し合うよう勧められていた。

窓の外を観ていた理恵は三上に、台風来ないかなと話しかけていた。

ベランダにいた由美は、最近嫌なことばっかり、婆さん死にそうだし…と暗い話をするが、そんな彼女たちの所に、教室内にいた他の男子たちがふざけて、ちり紙を鼻に詰めた明を窓から押し出してきたので、女子たちは露骨に迷惑顔になる。

教室に残っていた理恵は、机の上に仰向けに寝転ぶと、頭を窓枠の所に起き、自分で窓を頭にぴったりくっつけ、「いたたたた…」などとふざけていたが、急に三上に、ねえ、来ると思う?と聞いて来たので、三上は、お前、最近、変だなと呆れる。

しかし理恵の方は、そう?そっちこそ変だと思うけど。野球を辞めてから、おとなしくなったと反論し、「イー!」と子供っぽい言い合いになる。

先生たちのことを心配する理恵に、昼休みに早退したらしいと三上は答える。

黒板に狸の絵を描きながら、どこか行こう。この間の店と誘う理恵だったが、三上は嫌だ、陰湿だよと拒否する。

狸の絵を描き終わった理恵は、好きだもんと言い返すが、そんな理恵のことを三上は、お前、最近変だなと再び言う。

その頃、帰宅した健は、バラックの家の入口を入ったり出たりしながら、一人「ただいま、お帰り…」などと、同じ言葉を繰り返していた。

自宅に戻った梅宮は、夕食の準備をしていた同棲中の順子に、俺の名前なんか出しやがって…、学校に来ることないだろ?辞めさせられたらどうするんだ。あいつに100万も貢いだのか?どうするんだと寝転んだ自分の足を順子の足に絡ませて転ばせると、抱きついて聞く。

順子は、良いのよ、別れられたんだから…と無表情に答えるだけなので、梅宮は、又俺が悪いんだろう。どうせ…と無気力につぶやく。

帰宅して勉強をしていた三上に、兄敬士(鶴見辰吾)が、父親が呼んでいると言いに来るが、どうせ精神論だからと三上は無視する。

東京の私立を受けると言う三上に、だとしたら、寮を出て、アパートを探さんとななどと敬士は話しかけて来るが、そんな兄に、三上は、個は種を超越するんだろうか?などと聞いて来る。

敬士は、それは卵が先か鶏が先かと言う議論と同じだからなどとまじめに答え出すが、そこに、遊びに来ていた理恵がコーヒーを入れて持って来る。

敬士は、まだ延々と卵の話を続けていたが、三上は興味なさそうに野球部のユニフォームに着替えると外出してしまうし、一人でスプーン曲げに挑戦していた理恵は、さっきから卵、卵って、一体何なんですか?と敬士に聞く。

夜のランニングをする三上は、健の家に来ると、健の名を呼ぶが、無言でふらりと出て来たのは酩酊した父留造(寺田農)だった。

家の中には健はいなかったので、きょろきょろしていると、背後から三上を呼ぶ健の声がする。

建築用の足場が組んだ上に登っていた健と明に気づいた三上は、自分も登ると、健が差し出したタバコを吸い出す。

健は、明がすげえの観たんだってと下びた笑いを浮かべながら言う。

何でも、部室で靖子と由美が抱き合っているのを、窓から目撃したのだと言う。

その時、気づいた靖子から、言ったら殺すと言われたと言うので、健が俺が守ってやると粋がる。

女同士ってどうやるんだ?と三上が聞くと、健は知った風に、指じゃと答える。

それから、クラスの誰が好きかと言う話になり、明が大町美智子だと答えると、健も俺もだ。あいつ、頭良いし、可愛いからなと教える。

健は、化学の実験中、火種を美智子の背中の中に入れ、大やけどを負わせたので、保健室で美智子を治療する保険の先生(きたむらあきこ)から、ひどく叱りつけられる。

その後、美智子は、廊下を通りかかった三上に泣きながら抱きつく…と言う過去を思い浮かべた健は、どうしてお前だけモテるんだ?お前には理恵がいるだろうと責める。

関係ないと三上が答えると、健がしつこく、じゃあ誰?好きな女と聞きながら、明と共に立ち小便を始めたので、連れションをしながら三上は河合奈保子と無難な答え方をする。

健は、あのデブ?と驚いてみせる。

自宅に帰った理恵は、まだ一人でスプーン曲げをしながら、松田聖子の「スイートメモリーズ」を口ずさんでいた。

やがて、冷凍庫から製氷ボックスを取り出すと、その氷を一旦取り出し、底に無理矢理曲げたスプーンを入れ、又氷を戻す。

土曜日

三上は、理恵の団地の部屋に迎えに来るが、理恵は、顔に口紅で十字を描いて眠り込んでいた。

やがて、寝坊したことに気づいて起き上がった理恵は、団地から一人登校する三上に待って!と窓から声をかけるが、無視されると、急いで制服に着替えようとする。

しかし、スカートを履きかけた所で諦めたのか、既に出かけた母親の寝室に行くと、鏡台に座り髪を三つ編みに仕掛けるが、それも途中で止め、母親の布団に潜り込むと、お母さん!とつぶやきながら、布団を抱きしめるのだった。

学校では、数学の梅宮の授業には出たくないと言い出したみどり、靖子、由美たちが教室を出て行ってしまう。

優等生の大町美智子(大西結花)まで三上に向かって、次の授業ボイコットしようと思う。耐えられないのと言い出すが、三上は無関心なように、俺も好きじゃないけど仕方ない。私生活の問題だから、仕方ないんじゃないの?と冷めた答え方をする。

午前10時30分

理恵は一応学校に向かおうとしていたが、途中で座り込むと微笑む。

教室では、梅宮が授業を始めようとしていたが、突然立ち上がった美智子が、昨日のことを説明して下さいと言い出す。

梅宮は、後で話すから…と答え、授業を続けようとするが、他の生徒たちもざわつき出し、男子は喧嘩を始めるし、女子も、そんな質問をした美智子を責めるなど騒然となる。

そうした生徒たちを観ていた梅宮は、暴れていた男子を羽交い締めにすると、お前ら、いい加減にしないとぶっ殺すぞ!と、全員を怒鳴りつけるのだった。

窓の外は風が強まり出し、やがて雨が降り始めたのを発見した明は、多分、ぼくが一番早く雨を観た…と微笑む。

雨が降り出した校庭からぐしょ濡れになって演劇部の部室に戻って来たみどりは、一人、おばあちゃんのことを考えていた由美と、その服を脱がし、レズごっこを始めた靖子の前で踊り始める。

いつの間にか、三人ともブラ姿になっていた。

放課後、教室に三上を探しに来た梅宮は、美智子が一人教室に残っていたので訳を聞くと、さっきの約束忘れたんですか?と美智子は言い返す。

昨日の話を後ですると言う授業中の梅宮の発言のことを言っているのだった。

梅宮は、ちょっとここで待ってろと言うと、又三上を探しに行く。

校内には、台風が接近しているのですぐ下校するよう放送が流れていた。

体育館にいた三上を探し当てた梅宮は、理恵と近所だったな?と聞き、あいつ、今日学校来てねえだろ?昨日、何か言ってなかったか?と続ける。

三上は知らないと答える。

教室では、一人残っていた美智子が詩を読んでいたが、それに気づいた健がうれしそうに、美智子の後ろの席に座ると、「おかえりなさい。ただいま…」と独り言をつぶやく。

不審がった美智子が「何?」と振り返ると、今度一緒にマクドナルド行かないかと健が聞く。

怖くなった美智子は、近寄らないで、来ないで、出てってよ!と声を上げるが、健は黙ったまま美智子に接近しようとする。

梅宮が職員室で電話をしていると、三上がやって来て訳を聞いたので、梅宮は、理恵が家出したそうだと教える。

午後4時20分

理恵は、東京の原宿駅に立っていた。

その後、教室に戻った梅宮は、待たせていた美智子の姿が見えないのでちょっと戸惑うが、岡部が、みんな帰ってますよと言うので、もう帰ったと思い込む。

しかし、美智子は、靴置き場で健から逃げ回っていた。

そんなことを知らない梅宮は、台風、真上に来るそうですよと言いながら、正面玄関の鍵をかける岡部の言葉を聞きながら、明日、日曜で良かったとつぶやきながら自転車で学校を後にする。

その後、玄関にやって来た美智子は、扉が施錠されていることに気づく。

健が迫って来て抱きついて来たので、二階に逃げようとした美智子だが、健に羽交い締めにされたので、非常ベルを押そうとするが、手が届かない。

その後、健を振り払った美智子は職員室に逃げ込む。

健は、切った唇から出た血を指に付けると、それで職員室のドア窓をなぞる。

ドアの内側には、美智子がしゃがみ込み開かないように押さえていたが、そんなドアを、健は「ただいま、お帰り、お帰りなさい…」などとつぶやきながら、無表情に蹴り始める。

木のドアは、少しずつ蹴り破られて行く。

美智子は教室内に逃げ込み、机の下に隠れるが、部屋に入り込んで来た健はすぐに見つけ、その机を蹴ると、中に潜んでいた美智子を引っ張り出し、制服を引き裂き始める。

美智子の背中を観た健は、急に一人で暴れ始める。

その頃、東京にいた理恵は、見知らぬ青年から赤いワンピースを買ってもらっていた。

職員室では、物音に気づいて入って来た三上が、美智子と健を発見していた。

美智子は、破れた制服を隠す為に部屋にあったスーツを着てイスに座っており、健は棚の上で寝そべっていた。

三上は健に、気にするなって、美智子も許しているぞと声をかける。

その時、玄関の方で物音が聞こえたので三上が様子を見に行くと、帰りそびれて閉め出された靖子たち三人の女子がいた。

演劇部の部屋で遊んでいたら、外が真っ暗なんだものなどと靖子たちは説明する。

美智子や健と共に、全員教室に戻って来ると、靖子たちは、机やイスを動かしたり、電灯を消して行ったりする。

健が腹が減ったと言うと、女子たちが持っているよ。食べる?と言い、三上も一人でタバコを吸い始める。

6時30分

土砂降りの東京

タクシーで、青年のアパートに連れて来られた理恵は、郵便受けをしっかり確認し、その青年が小林(尾美としのり)と言う名前であることを知る。

早く着替えろと言う小林の言葉に応え、理恵はトイレを借り、制服に着替える。

着替え終わった理恵は、小林に大学生かと聞き、そうだと知ると、東大ですかと無邪気に聞く。

小林が適当にごまかすと、じゃあ、三上君のお兄さんと一緒なんだと感激した理恵は、家出して来たのかと聞かれても、違いますとしか答えなかった。

教室では、三上が、みんな帰らないのか?家で心配しているぞと優等生らしいことを言っていたが、女子たちはラジオで音楽をかけると、その場で踊り始める。

三上は、みんな、まずいよ。理恵と一緒だと思われるよ。あいつ、家出したそうだよと教える。

それを聞いた健は、お前、変なことしたんじゃないのか?と責めたので、三上は、お前と違うよと冷静に切り返す。

やがて、三上や健、美智子もヤケになったように踊り始める。

東京では、小林が理恵に色々話しかけながら、ポニーテールに触れて来る。

「私、嫌なんです!閉じ込められちゃうの」と、突然、理恵は語り始める。

「それで年を取って、それで土地の女になるなんて耐えられないんです。三上君は、卒業したら、東京の高校に入るって言うし…」と話していた理恵は、急に帰りますと言い出す。

ご迷惑でしょうからと言う理恵をビンタした小林は、明日、日曜だし、もうちょっと東京で遊んで行けと止めようとするが、みんな心配しているでしょうからと理恵も引かない。

お前、本当に帰るのか?送んないぞとむくれた小林に、声をかけて下さって感謝します。本当にありがとうございましたと頭を下げた理恵は、土砂降りの外に走り出して行く。

学校では、職員室の電話をかけようとしていた三上を美智子が止めていた。

それでも、三上は、理恵の家に電話をすて、理恵が帰って来たかどうか聞くが、母親らしき相手の返事を聞いて受話器を置いてしまう。

その頃、梅宮は、順子と勝江、英夫と共に、自宅でカラオケを歌っていた。

そこに、みどりからの電話がかかって来るが、勝江の歌声にかき消され、内容が良く聞き取れない。

電話を代わった三上は、僕たち学校にいるんです。帰ろうとしても足が動かないんです。どうしたら良いでしょうかなどと言い出し、一度あなたと真剣に話してみたかったけど。あなたは悪い人じゃないけど、もう終わりだと思いますと言いきる。

それを聞いた梅宮は、お前は今は立派かもしれないが、後15年もすればこうなるんだと言い返す。

三上は、ぼくは絶対、あなたにはなりませんと言うと電話を切る。

梅宮は部屋に戻ると、すっかり上半身をはだけ、入れ墨を見せた英夫に「立派なもんもん!」などとおどけてみせる。

学校では、体育館に移動し、壇上に上がった靖子が、理恵の気持ち分かるわ…などとつぶやき、本日は、大田中学演劇部のサヨナラ公演のワンナイトショーに良くお越し下さいましたなどとふざけ始める。

まずは、3年5組35番毛利由美と紹介し、だんだん悪のりして行った女子たちは、制服の上着を脱ぎ、踊り始める。

健も、制服を脱ぎ、パンツ一丁になり壇上に上がると一緒に踊り始める。

バスケットゴールに野球のボールを投げていた三上も、とうとうパンツ姿になって壇上に上がると、皆で踊り始める。

女子たちはスカートも取り、全員下着姿になっていた。

その頃、乗換駅に着いた理恵だったが、信越線が土砂崩れで不通になったと駅員から聞き、呆然としていた。

午後10時49分

台風の目に入り、一旦雨がやんだ外に出た生徒たちは、「もしも 明日が 晴れならば〜♬」とわらべの歌を歌いながら踊り始める。

健は、一人、水たまりの中に寝そべっていた。

やがて、又、土砂降りになって来たので、起き上がった健は「おかえり!お帰りなさい!」とわめき出し、それを面白がった皆も踊りまくる。

その後、制服に着替え、教室で寝転がった皆は、台風が行ったら、みんあでどこか行こうなどと話し合う。

そんな中、三上だけは一人起きていた。

乗換駅の商店街に出た理恵は、身体を背中合わせに大きな白い布で繋ぎ、しゃがんだままオカリナを吹いて前後に動いている不思議なパフォーマンスの男女を見る。

何してるんですか?私にも貸してもらえますか?と無邪気に理恵が話しかけると、女の方が、オカリナは朝吹くものなんですと無表情に答え、「もしも明日が晴れならば」を吹き始める。

土砂降りの中を走り始めた理恵だったが、警官人形を見つけると、泣きながらそれにすがるように「もしも明日が晴れならば」を歌い始め、又走り出す。

三上は一晩中、掃除用具棚の上に腰掛け、口の中でピンポン球を転がしていた。

やがて、そこを降り、窓の外を見ると、前夜、靖子たちがふざけて飾り付けた千羽鶴などを取り、窓の側に机を階段状に詰み始める。

そして、イスに腰掛けると、夜が明けるのを待つ。

やがて雨も上がり、朝を迎えると、イスに登り、今から良いものを見せるから、起き上がって良く見てくれと言い、寝ていた皆を起こす。

床に寝ていた皆が何事かと三上の方を見ると、俺分かったんだ。なぜ、みんなが変になったか。俺は分かった。氏は生きることに先行するんだと、三上は言い出す。

死は、生きることの前提なんだ。俺たちには、厳粛に生きる為の厳粛な死が与えられていない。だから、俺が死んでみせてやる。みんなが生きる為に。良いか?良く観ておけよ、これが死だ!と叫ぶと、窓を開け、身を乗り出して外に落ちて行く。

悲鳴を上げ、窓に駆け寄るみんな。

外に出てみると、雨上がりのぬかるみの中に、三上の足だけが「犬神家の一族」のように突き刺さっていた。

月曜日

理恵はようやく、中信駅に帰り着く。

学校に向かっていると、明と出会い、どこへ行くのと聞かれたので学校と答えると、知らないの?今日は学校休みだぜと明は言う。

明はプールに行くのだと言うので、理恵も一緒について行くことにする。

台風一過で、すっかり洗い流され、朝日に輝く校舎を観た理恵は、「わぁ、きれい!金閣寺みたい!」と叫ぶ。

そして、明と一緒に、ぬかるんだ校庭を歩いて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

地方の中学校を舞台に、大人になりかけ、不安定な心理状態の男女生徒たちが、台風通過の中、学校に閉じ込められてしまった為、不思議な高揚感に突き動かされ、おかしな行動に走る様子を描いた作品。

日常ドラマであるが、登場人物たちの行動が、どれも突飛なようで、なおかつありそうにも見えるので、非常に興味深く観ることができる。

女との付き合い方でだんだん堕ちて行く教師梅宮をめぐるエピソードも、一見あり得ないようにも感じるが、絶対あり得ないとも言えないなと感じさせる所がうまい。

当時の三浦友和としてこの役は、かなり野心的な挑戦だったのではないだろうか。

工藤夕貴を始め、中学生役の子役たちが実に良く演じており、不自然になりそうな行動をリアルなものに見せてくれる。

特に、美智子を職員室に追いつめて行く健の異常行動は、偶然なのか、意図的な模倣なのかは知らないが、「シャイニング」(1980)などを連想させ、かなり怖い。

一見、登場する問題児風の中学生たちは、全員、家庭に問題があると言う風にも取れるが、成長するにつれ、子供の頃のように親に甘えられなくなって孤立して行く普通の中学生の姿のようにも思える。

おそらく大半の中学生にとって、何の問題もない幸せな家族など存在しないのではないだろうか?

暗く難解な作品が多いと言うイメージがあるATG映画だが、この作品に暗さはないし、特に難解でもないと思う。

青春もの特有の瑞々しさや普遍性があるからだろう。

アイドル映画などを除くと、中学生をきちんと描いた映画は意外と少ないようにも思える中、この作品は、他に例を見ない個性的でなおかつ魅力的な作品になっていると思う。

特に、男子と女子をバランス良く据えたことで、良くありがちな「不良男子と喧嘩」とか、「女学生同士の微妙な付き合い」など言うパターンに陥っていない所が斬新かつ好ましく感じられる。


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