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新平家物語 義仲をめぐる三人の女

1956年、大映京都、吉川英治原作、成沢昌茂+辻久一脚色、衣笠貞之助脚色+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

平家に非ざれば人に非ずとまで言われた平家も、源氏によって次々に打倒されて行った。

寿永2年 秋

木曾義仲(長谷川一夫)は、木曽の山中で平維盛の軍と対峙していた。

そんなとき、和田小太郎義盛(見明凡太朗)は、鎌倉の頼朝の命により、木曽の義仲の陣へやって来る。

新宮十郎行家(進藤英太郎)、太夫坊覚明(大河内傳次郎)らが出迎え、話を聞くと、義仲の息子の義高(滝口マサオ)を鎌倉に預かると言う申し出だった。

この話を聞いた樋口次郎兼光(黒川弥太郎)や今井四郎兼平(細川俊夫)ら取り巻きは相談するが、どう考えても、人質に取られると言うことであり、承服できないと言う意見も出るが、今、鎌倉と戦う時ではないと言う結論に達する。

翌朝、義高と添い寝していた義仲は、太夫坊覚明から火急の用と呼ばれて起きる。

巴御前(京マチ子)の元には、兄の兼光がやって来て、八幡の森まで来てくれと伝える。

女兵小屋では、頭(高橋とよ?)がなかなか起きない女兵の一人を叱りつけていたが、隣に寝ていた山吹(山本富士子)が、高熱が下がらず病気だと弁護する。

太夫坊覚明から、義高を寄越せと言う鎌倉からの指令を聞いた義仲は、頼朝に媚びへつらえと言うのか?鎌倉勢ごとき、一気に打ち砕く!といきり立つが、お従兄弟同士と言う間柄でもあり、ここは穏便にと太夫坊覚明や兼光が必死に説得する。

太夫坊覚明は、ご子息義高様は自分が鎌倉に連れて行くと申し出る。

巴御前は、両親と離れなければいけなくなったことを知り泣いている義高を、身体を大事にして時を待つのですと言い聞かせていた。

その後、森の中から、馬に乗って鎌倉に向かう義高の姿を見送っていた義仲は、鞍ずれ用の薬を渡してやったかと共の爺(高堂国典?)に確認すると言う親心を見せた後、自分が別当実盛に連れられて、この木曽に落ちぶれて来た日のことを思い出していた。

あれからもう27年か…と義仲は感慨に耽る。

爺を先に帰らせ、山を一人歩くことにした義仲は、しばらくして休息し、水を入れたひょうたんを、かんしゃくまぎれに捨て去る。

そのひょうたんを拾って、「殿!」と差し出したのは、病気の仲間のために、薬になると言う土ガエルを掘って捕らえた帰りの山吹だった。

山中で突然現れた山吹を見つめた義仲は、何を思ったか、急にその手を引き寄せると、驚く山吹をその場に押し倒してしまう。

都から戻った新宮十郎行家は、巴御前に、清盛のせいで人心が乱れた都は、今や百鬼夜行の有様だと、空腹のあまり、用意された飯を頬張りながら報告する。

そのとき、巴は、自分をじっと見つめている一人の女兵に気づく。

それは山吹だった。

すぐにその場を離れた山吹は、頭から叱りつけられるが、謝るどころか、殿に言いつけるぞ!と妙に居丈高な態度になる。

そんな女兵の小屋に近づいて山吹を探す巴だったが、もう山吹の姿は見えなかった。

義仲軍は、山狩りで捕らえた敵兵からの情報で、平家の本陣は石動に移ったと知る。

その平維盛(南条新太郎)の陣では、援軍、斎藤別当実盛の到着を待ちわびていた。

義仲が湯浴みをしていると、そこへ山吹が近づいて来て、自分の姿に義仲が気づくと、さっさと逃げ去ってしまう。

その後、義仲は、捕らえられた敵兵たちを観に行く。

一緒について来た爺は、その中の一人を目にすると、斎藤別当実盛(志村喬)様ですと義孝に知らせる。

驚いた義孝は、捕縛を解かせると、その場で刀を取り自害しかけたので、あわてて取り押さえる。

爺は、その後、屋敷内に案内した実盛に、酒を用意し、「お懐かしゅうございます」と挨拶をするが、実盛は返事を返さなかった。

そこへ義仲がやって来て酒を勧めながら、昔、あなたに木曽に連れて来られたが、自分はこんなに成長しましたと愉快実に話しかけ、今後は義仲軍に留まってくれと頼むが、実盛は、自分は平宗盛より直垂をいただいてこの合戦に来た身分、作法通り、首をはねてもらうのが武士の礼儀、昔は昔…との硬い表情は変えなかった。

かつては、坂東一の荒武者と言われた実盛、死に場所だけは心得ていると続け、囚われの身になることを潔しとしない決意は固そうだったので、それを察した義孝は、自らの満月を描いた軍扇を手渡すと、これを義仲と思ってくだされと伝える。

すると、それをいただいた実盛の方も、自分の三日月を描いた軍扇を義仲に差し出す。

その後、義仲は家臣に命じ、実盛を敵陣まで送り届けさせる。

爺が、夕食の膳を運んで来ると、今日は、巴と一緒に食べるのでと、別室に持っていかせた義仲の元に、又、山吹が近づいて来る。

義仲は「用を言え!」と叱りつけるが、山吹は、今にも戦が始まろうとしております。殿の心の内をお聞かせください。自分をおそばにお置きくださいと願い出る。

しかし、義仲は、あの時のことは、今は後悔していると答え、あちらに行ってくれとすげない態度を取るが、耐えきれなくなった山吹は、そんな義仲に抱きついて来る。

そこに、巴御前と共に戻って来た女兵頭が、あわてて逃げ去って行く山吹の姿を認め、首を傾げるのだった。

巴は義仲に、怪しげなものがうろついておりますと、女と言えどもご油断めさるなと義仲に注意を促す。

やがて、実盛を送って行った家臣たちも戻って来る。

義仲は、集合した配下の者たちに、今宵、子の刻、夜襲をかけると通達するが、実盛のことを念頭に、年老いた武者は討つなと付け加える。

その夜、松明を掲げ、山道を進む平家の一軍があった。

その一軍が倶利伽羅峠にさしかかった時、山中で待ち受けていた義仲軍は、太鼓や法螺の音で脅かすと同時に、草薮の中から矢を射かけ、敵をパニックに陥れる。

慌てふためいた平家の兵たちは、次々に崖から落下して行く。

やがて、平家の落とした松明が盛りに着火し、山火事が起こる中、両者の合戦が始まる。

勝負はあっけなく義仲軍の勝利に終わり、白旗が揚がり歓声がこだます。

そんな中、巴御前の元へ、一人の老武者を、名のある者と思い引き連れた家来がやって来たので、殿のご命令じゃ、年老いた武者は離してやれと巴は命ずる。

その後、巴の面前に一人の敵武者が姿を現したので、名を名乗れと声をかけるが、相手は無用じゃと拒絶し勝負を挑んで来る。

巴御前は長刀で応戦するが、やがて、長刀が折れてしまう。

それを観た相手は、自分の刃をわざと岩に突き立て、折ってしまう。

その直後、巴は、懐剣で相手の腹を突き刺し息の根を止めるが、自らも傷を負い、その場に気絶してしまう。

そこに駆けつけて来たのが山吹で、瀕死の巴を発見すると、自ら背負い、何とか戦場から逃れようとするが、やがて力つきると、その場に巴の身体を残して、自分が逃げてしまう。

その後、義仲は、巴に討たれ、息絶えていた武者の死骸を発見する。

敵陣に戻した斎藤別当実盛であった。

今井四郎兼平がその死体を確認し、年寄りに見られぬように髪の白髪を染めている所から、覚悟の最期だったようだと義仲に告げる。

それを知った義仲は、恨みに思いまするぞと嘆きながら、自分が渡した満月の軍扇を広げて、実盛の顔を隠してやるのだった。

そこに、巴御前が深手を負ったとの知らせが届く。

その頃、源氏の追撃に破れた平家一門は、都を捨て、西海に向かわんとしていた。

都では、弥兵衛宗清(荒木忍)が、法皇の君が隠れてしまわれたと、逃げようとする他の公家たちに伝えていた。

そんな中、自分は逃げぬと都落ちを拒否する公家もいたが、平家の者たちによって、館に火を放たれてしまう。

都から逃げる途中の老公郷(小川虎之助)は、火の手が挙がった都を遠くに見ながら、娘(中村玉緒)と共に嘆くのだった。

そんな都に接近していた義仲軍の中、傷ついた巴御前も輿に乗って付いて来ていた。

女兵頭は、山吹たち女兵たちに向かい、今日は、お前たちが何をしても怒らぬぞと上機嫌だった。

そんな義仲と巴御前の前に、義高を鎌倉に送り届けた太夫坊覚明が戻って来る。

そこに、片足が不自由な新宮十郎行家も合流し、太夫坊覚明を紹介されると、鎌倉では拙者の話など出なかったか?と問いかけるが、太夫坊覚明は困った表情で、あまり良い噂は聞きませんでしたと正直に答える。

そこへ、天皇はお会いにならないと伝える使者が戻って来たので、それを聞いた義仲は激高し、持っていた盃を地面に叩き付けると、もう都にいるのが嫌になったと口にする。

それを聞いた巴御前は、何をおっしゃいます!そうのような気の弱いことをとなだめる。

今井四郎兼平らも、後白河法皇の冷たい態度に怒りを憶えていたが、そこに、猫間中納言(十朱久雄)からの使者がやって来る。

義仲は会うのを嫌がるが、行家がここは会った方が良いと勧めたので、渋々会うことにするが、猫間中納言が、持参して来た天皇の思し召しを読み上げ、義仲の功労に対しては従五位下左馬頭・越後守に任ずること、行家に対しては従五位下備前守を与えると言われる。

その伝令に対し、不満を募らせていた義仲は、御謁見の御沙汰がないが…とあからさまに聞いてみる。

猫間中納言は、ものには順序があると気を持たせるだけだった。

関白、松殿基房(柳永二郎)は、院が都を木曽の山猿などには任せられぬと言っているのを知っていたいたので、使いから戻って来た猫間中納言の、義仲が院に謁見を願っているとの報告を聞き困り果て、仲介者として、行家を呼び寄せてみようと言うことになる。

後日、松殿基房は、義仲と行家の二人を自らの館に呼び寄せ、猫間中納言と共に酒を振る舞ってなだめることにする。

松殿基房は、謁見をねだる義仲に、もう少し辛抱しておれば、官位も上がりましょうと世辞を言ってやる。

すっかり酩酊して上機嫌になった義仲は、その場にあった丸高坏を両手で持って、楽器の演奏に合わせ、即興の踊りなど披露し始めたので、付いてきた行家は慌て、関白や猫間はその田舎者丸出しの行動に苦笑していた。

しかし、そんな場の雰囲気に気づいていない義仲は、急に、美人の誉れ高い松殿基房のご息女に一目お目にかかりたいと言い出す。

これには、さすがの松殿基房も呆れ、忍と言う女中(三田登喜子)を娘の身代わりを言いつける。

しかし、その一部始終を観ていた娘の冬姫(高峰秀子)は、琴は私が参じましょう。せっかくの客人を騙すようなことをなさっては、父上の恥辱となりましょうと申し出るが、結局、忍が御簾越しに琴など聞かしてやることになる。

その偽姫の姿を酔眼で見つめていた義仲は、すっかりご満悦になるのだった。

その頃、平頼盛より源頼朝に当てた文書を隠し持っていた使いの者を捕らえていた樋口次郎兼光らは、義仲の帰りを待っていた。

しかし、巴御前直々に先議すると言い出したので、太夫坊覚明が、西浦七郎(夏目俊二)なるその使者を、巴御前の面前に連れて来る。

巴は、鎌倉に人質に取られている義高がどうなっているか聞く。

西浦は、お慈しみでございますと、かわいがられていることを教える。

そんな西浦に、巴は、手紙をやりたいのだが、届けてもらえるかと聞き、それを聞いた西浦も少し考えた後、承知し、新宮十郎行家にはお気を付けられますようと付け加える。

その後、ようやく帰宅した義仲は、使者が持っていた平頼盛より源頼朝に当てた手紙を読み、そこに、院が、自分よりも頼朝に都を任せたい旨が記されてあったことを知ると激怒して、使者を自ら調べると言い出すが、巴御前がすでに解き放ったと太夫坊覚明から聞かされ、唖然とするのだった。

しかし、太夫坊覚明は必死に、鎌倉との確執は避けなければいけませぬ。鎌倉には義高様がおりますので…と説得し、巴御前も又、ここは鎌倉と手を握り、百年も千年も契りを結ばなければいけませぬ。義高を想う巴の心をご配慮くださいませと言い聞かせるのだった。

爺と共に、山小屋に向かった義仲は、法皇の御信任を得るにはどうしたら良いのだと一人悩み、爺には栗を拾いに行けと場を外させる。

小屋の中で一人になった義仲の所に近づいて来たには山吹だった。

義仲は、うるさがり、出て行ってくれと命ずるが、一途な山吹は言うことを聞かず、自分は女兵のままでかまいませぬ。殿の来る良い胸を慰めとうございますとすがりつき、泣き出すのだった。

そんな一途さに打たれた義仲は、そなたもわしも、木曽で育ったまっすぐな杉や檜だ。都では育たん…とつぶやく。

山吹は、そんな義仲に、都人たちは殿のことを「夜叉」と呼んでいます。殿の名に乗じて、家来が野党になっているのですと教える。

それを聞いた義仲は、良く教えてくれた。礼を言うぞと山吹に感謝する。

都の五重塔の前では、女兵頭が、きれいな着物を羽織ってふざけていたが、突然現れた義仲の姿を見てあわてて逃げ出す。

塔の中では、家来たちが、どこからかさらって来た女たちを無理矢理手篭めにしようとしている最中だったが、いきなり入って睨みつける義仲のただならぬ顔色を見ると、皆、青ざめて逃げ出して行く。

一番上の階に登った義仲は、陣中取締役であった楯の親忠(春本富士夫)までもが、女を組敷いているのを観て愕然とする。

親忠が逃げ去った後、残された女の顔を観た義仲は驚愕する。

関白、松殿基房の館で琴を弾いていた娘の冬姫ではないか!

恐縮して詫びる義仲に、女は、自分は冬姫ではなく、忍と言う女中であり、あの時は、冬姫の身代わりにと言われたので…と事情を打ち明ける。

関白の差し金で、まんまと騙されていたと知った義仲は、都人の心に真はないのか!と激怒する。

その後、義仲は、忍を関白、松殿基房の館へ送って行くと、家来が冬姫に無礼を働いていたので、お詫びに上がったと挨拶する。

松殿基房が、忍に下がっておれと命じると、義仲は別に所望したきことがあると言い出す。

何事かと松殿基房が鷹揚に聞くと、自分たちは山家の育ちで都の作法などを何も知らないので、心きいたる女を一人お貸しいただきたいと義仲は申し出る。

すると、松殿基房が誰でも連れて行かれよと承知したので、先ほどから聞こえていた琴の音のする方へ向かった義仲は、通りかかった女中に、あの方は冬姫さまかと確認し、冬姫を連れて行くと言い出す。

それを知った松殿基房はそれは困ると言い出すが、先ほど、忍を冬姫と言い繕い、誰でも連れて行って良いと言ってしまった手前、それ以上、言い訳をすることができなくなる。

かくして、冬姫は、義仲に連れられ五重塔に連れて来られる。

爺は、階上にいた冬姫に食事を持っていくが、すぐに食べないと仰せですと言いながら降りて来る。

それを聞いた義仲は、自分でもう一度膳を持って上がり、冬姫の前に置くと、なぜ食わん?都人の口には合わんと言うのか!人を偽り、笑うような都人の口には合うまい!食うな!とかんしゃく起こし、膳を足蹴にしてしまう。

しかし、すぐに、短慮だった許してくれと詫びる義仲に、あなた様のお怒りは分かります。都と言う所は、人を踏みにじっても生きようとする人たちが集まっている所です。殿、一時も早く、木曽へお帰りください。都は、殿のような方のいる所ではありませんと冬姫は話しかける。

しかし、義仲は、一旦、都に旗を揚げたのに…と、撤退を躊躇し、宮小人に習って、これからは嘘をつこうと言い出す義仲に、冬姫は、父親から託された手紙を取り出してみせる。

そこには、義仲がお前に気を取られたのはむしろ幸い。院のお呼び寄せられた鎌倉軍が来るまで、親への孝行と知り、耐え忍ばねばならんと書かれていた。

松殿基房は、実の娘まで、政略に利用したのだ。

間もなく、関白から事情を聞いて来たと、行家があわてて館にやって来たので、出迎えた太夫坊覚明は、関白殿とは、何の用でお会いになった?と聞く。

それには答えず、巴御前の元へとやって来た行家は、基房殿の娘を義仲が連れて来たのだと説明すると、巴は存じておりますと答える。

まだ冬姫の元にいた義仲は、仏像を観ながら、木曽に帰るか…、帰ろう!と決心すると、姫の御指図に従って木曽に帰ります。この都に来て、姫一人が味方になってくれた。そう思うて良いなと冬姫に伝える。

木曽を出て、秋も深かろう…と義仲が思い出に耽ると、冬姫も、さぞかし美しゅうございましょうと聞くので、義仲は、美しい…、誰も噓を言わんと答える。

姫も行ってみとうございますと冬姫が言うと、その姫の言葉を聞いて、都に来た甲斐があったと義仲は満足そうにつぶやくと、腹が空いたであろう。木曽のひなびた味を食べてみないか?と勧め、今度は、冬姫も、素直にはいと答えるのだった。

その頃、館には、行家の軍が院へ向かい、楯の親忠の陣も不穏な動きがあるとの知らせが届いていた。

樋口次郎兼光は、味方の陣に、このような不穏な動きがあるとは…と緊張し、すぐさま、妹の巴御前に報告に行く。

館に来ていた行家は、黙って帰りかけていたが、その様子を観ていた太夫坊覚明は、背後から近づくと、やにわに斬りつける。

帰宅した義仲は、庭先に倒れていた行家の死体を観て驚き、室内に入ると、そこに自害した太夫坊覚明の死体も発見する。

太夫坊覚明の書き置きには、必ず、鎌倉様と手を握られよ、若様の御為にも…と記されてあった。

それを読んだ義仲は、その方の進言、身にしみて分かっておるぞとつぶやくが、そこに、親忠の軍も院に入ったと言う知らせが届く。

自体の緊急性を感じた義仲は、屋敷内の太鼓を打ち鳴らし、家来たちに警戒させる。

塔の上にいた冬姫は、下の道路を動く兵士たちの様子を窓から観ていたが、そこに上がって来た義仲が、松殿基房の館まで連れて帰ると言うと、冬姫は、自分は帰りません。私は父に捨てられた者です。このまま、ここに置いていただきますと抵抗する。

義仲が、鎌倉軍がもう宇治川を超えて来ており、もう木曽へも帰れん。姫とも別れだな…とつぶやくと、冬姫は、ひしと義仲にしがみつくのだった。

そこに、手負いの根ノ井小弥太(山路義人)が上がって来て、親忠を院の中に取り逃がしたが、その時、院の御門に矢を射てしまった。殿!許されいと詫びながら息を引き取る。

義仲は、冬姫に、何事があってもここを動いてはなりませぬと言いおくと、館に舞い戻ることにする。

何者か分からぬ敵軍が約300騎、館に接近していた。

義仲は全軍に、迎え撃つ用意をさせる。

直垂を付けていた巴御前の前に、女兵として山吹が現れる。

爺と今井四郎兼平らは、倶利伽羅峠での快勝の思い出などを愉快に話し合い、互いに士気を高め合っていた。

館に、次々と矢が射込まれて来る。

義仲は、巴御前と、万一の時は、洛北の不動堂で落ち合うことを約束すると、今限り、木曽の山軍へ帰ろうと全員に言い渡す。

山吹は、女兵頭に、女の長様、私は名もなき女兵として諦めますと告げ、意味が分からぬ頭を戸惑わせる。

冬姫が籠っていた五重塔にも、次々と火矢が打ち込まれ、火災になる。

雪姫は、殿〜!と叫び、逃げ惑うしか、なす術がなかった。

その声が通じたのか、義仲は巴に指揮をゆだねると、自らは、五重塔へと向かい、冬姫を救出しようとするが、火に阻まれ階上に上がれない。

そこへ、敵が迫ったので指揮を!と樋口次郎兼光が駆けつけたので、姫を助けるよう命じた義仲は、又、館に戻る。

山吹は、討ち死にした女兵頭を発見する。

山吹は、巴御前の前に来ると、一時も早く、お立ち退きを!殿とご一緒にと進言する。

敗色濃厚になったことを悟った義仲は、良く戦ってくれた、礼を言うぞと家来たちの労をねぎらう。

保料次郎(富田仲次郎)も討ち死にしたと晴定(清水元)が知らせに来る。

樋口次郎兼光が、姫を塔の下までお連れしましたが…と報告に来たので、義仲は「ダメだったか…」と、姫の命を救えなかったことを知り悔しがる。

義仲は、用意された馬に乗り、都を後にする。

洛北の不動堂へたどり着いた義仲は、窓からイチジクをちぎって口にすると木曽の味がすると、共をして来た家来にも食べさせると、木曽はやっぱり良い所だ。木曽へ帰ろうとつぶやく。

家来が、巴御前を迎えに小屋の外に出た直後、小屋の中に残っていた義仲の背中に矢が突き刺さる。

小屋を出ようとした義仲の身体に、さらに矢が突き刺さり、義仲は、小屋の中に倒れ込む。

敵将が入り込んで来て、義仲の死亡を確認すると、御首討ち取った!と名乗りを上げる。

別の場所では、巴御前も捕らえられていた。

その側には、爺が倒れていた。

巴はその場で自害しようとするが、それを止めた和田小太郎義盛は、今、御自害あそばされては、鎌倉にいる義高様の命も危のうございますと言い聞かせる。

山吹は、枯れ葉を詰んだ義仲の墓に花を添えながら、とうとう、あんなに帰りたいと言われていた木曽に、山吹がお連れします。山吹がお連れするのですよ…と言いながら泣いていた。

その山吹のいるすぐ下の道を、捕らえられた巴御前を乗せた馬の列が通過して行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

豪華キャスト総出演の大映大作時代劇の一本。

豪華絢爛な衣装や大きなセットなどを観ると、多額の予算を投じていることがうかがえるが、いかんせん話が単調で起伏に乏しく、今の目で観て、ものすごく惹き込まれると言うほどではないのが惜しまれる。

まず、よほどの歴史好きでもない限り、平家物語自体の知識が今の観客にはほとんどないので、数多く登場する人物関係や当時の時代背景などが分かりづらく、話の展開自体も良く理解できないと言う恨みがある。

公開当時の観客には、良く理解できていたのだろうか?と言う疑問すらある。

タイトルにある「義仲をめぐる三人の女」とは、巴御前、山吹、冬姫のことであろうが、それぞれを当時の有名女優が演じていると言う見所以外、特に、義仲とのロマンの面白さは感じられない。

巴御前は、自らも直垂を付け、男勝りに戦う義仲の妻のように描かれているだけで、特に、義仲との甘い関係などは描かれていない。

山吹も又、義仲の一時欲情から抱かれた女兵と言うだけで、その後の山吹の一途さに対し、義仲は冷めきっており、これも甘い関係とは言えない。

冬姫との関係も、特に深いと言う感じではなく、ひょんなことから一時を共に過ごし、互いに心を通わせたと言うに過ぎない。

つまり、どの関係も、観客が惹き込まれるほどのものではなく、恋愛ロマンとしては中途半端な印象しかない。

では、合戦シーンは魅力的かと言えば、これ又、さほどのことはなく、ちゃちと言う訳ではないが、迫力満点と言う感じでもない。

全体的に「動く日本画」と言うような感じで、一画面一画面、構図も決まっており、様式美としては完成度が高いが、映画としては、いくつかのエピソードを繋いでみせただけと言う印象で、やや単調と言わざるを得ない。

太眉メイクの京マチ子や、汚れ役の山本富士子などが、ビジュアル的にちょっと珍しいくらいだろうか?

結局、主人公が悲劇で終えると言う展開も、今ひとつ乗れない要因かも知れない。

一見、女性向け恋愛ロマンと男性向け合戦シーンで、両方の客層を狙ったつもりの企画だったのだろうが、どちらの客層にとっても、食い足りない印象を残した作品なのではないだろうか。

歴史好きな人には、又違った面白さがある作品なのかも知れないが…