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お早よう

1959年、松竹大船、野田高梧脚本、小津安二郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

土手下に並ぶ集合アパート

そこに住む中学生三人と小学生一人が一緒に下校して来る。

中学生の一人大久保善一(藤木満寿夫)が、仲間に自分の額を指で押してみろと言い、その言葉通り押してみると、おならをして得意がる。

同じく、原口幸造(白田肇)も、まねして額を押させるが、押すと、急に困った顔になり立ち止まる。

先に歩いていた善一と林実(設楽幸嗣)と勇(島津雅彦)兄弟が、立ち止まったまま動き出そうとしない幸造にどうしたのかと聞くが、幸造は、困った顔のまま何も言わず、そろそろと歩くだけ。

善一の母親とよ子(長岡輝子)が大久保しげ(高橋とよ)の家にやって来て、お隣の町内会長が、先月分の婦人会のお金がまだだって言ってると話しに来る。

しげもとよ子も、先だってちゃんと払って、会計係の林民子(三宅邦子)に預けたはずだけど変ね?と言う話になり、そう言えば、会長の家、最近洗濯機買ったでしょう?などと、あらぬ疑いの目を向け始める。

噂をすれば何とやらで、その会長こと原田きく江(杉村春子)がしげの家に回覧板を持って来るが、家を出た所で、妙な歩き方でゆっくり帰って来る息子の幸造を発見する。

幸造は、ズボンとパンツを脱いだ情けない格好で、パンツを出してくれと母親のきく江に頼んでいたが、腹を下し、パンツを汚してしまった幸造に怒ったきく江は、洗濯機を買ったのは、あんたのパンツを洗うためじゃないのよと睨みつける。

帰宅した子供たちは、毎日、池袋でキャバレー勤めをしていると言う若夫婦の家に入り浸りになっていた。

理由は、その若夫婦の家にあるテレビで相撲観戦するためだった。

しかし、これを母親たちは快く思っておらず、毎日、決してあの家には行くなと言い聞かせていたが、子供たちは言うことを聞かなかった。

今日も、善一と、さらにパンツを履き替えた幸造もやって来て、若旦那丸山明 (大泉滉)と共に双葉山の勇姿をテレビで観始ていた。女房みどり (泉京子)は、今日は実ちゃんは来ないの?と二人の子供に聞く。

英語の勉強に出かける予定の実と弟の勇を送り出した民子の元にやって来たとよ子が、婦人会のお金を会長がまだ受け取っていないと言っていると言いに来る。

民子は意外そうに、もう渡しましたけど?と答える。

実、勇兄弟も来ていた丸山家にやって来たきく江は、息子の幸造を連れ戻しに来ただけではなく、他の子にも、英語に行かないの?と言い聞かせる。

きく江は、みどりに、いつもお邪魔してすみませんと口では社交辞令を言いながらも、目は、不潔なものでも観るように見下していた。

民子は、きく江の家を訪れ、自分はとっくに会費は会長に渡したので、直接、会長に聞いてみましょうか?と話に来るが、きく江は、そんなことをしたらかえって先方も迷惑よと言い聞かす。

実、勇兄弟と幸造、実が英語を習いに来ていたのは、出版社が潰れ失業状態の福井平一郎(佐田啓二)の家だったが、そこに自動車のセールスマンをやっている姉の福井加代子(沢村貞子)が帰って来る。

平一郎は、幸造に英語の訳を言わせようとするが、黙り込んでしまったので、その額を指でつつくと、突然おならをする。

幸造は得意げに、善一の家のおじさんはとてもおならが上手く、自分も毎日練習をしている。芋だけでは駄目で、軽石を削って飲んでいると言うので、それを聞いた平一郎は、そんなの迷信だよと笑う。

その頃、帰宅していた善一の父、大久保善之助 (竹田浩一)は、見事なおならをしていたが、その音を聞いた女房のしげが、あなた、呼んだ?とやって来る。

英語塾から帰宅した実と勇は、又、テレビを観に行っていたことがバレ、民子に叱られていた。

実は、今日の夕食も又、さんまの開きと豚汁と言う代わり映えしないメニューだったこともあり、膨れっ面で、テレビが観たいから行ったんだ。行かせたくなければ、家でもテレビを買ってくれと夕食に手を出そうともせずだだをこね出す。

これに、弟の勇も同調し始めたので、民子は、お父さんに叱ってもらいますと睨みつける。

ちょうどそこに、民子の妹で、出版社勤めの有田節子(久我美子)と共に、父親の林啓太郎(笠智衆)が帰宅して来る。

実は節子に、英語の先生が、頼まれている原稿は、明日の朝まで待ってくれと言っていたと伝える。

翌朝、子供たちは、いつものごとく、「おならごっこ」をしていた。

善之助もおならをし、又、しげが、呼んだ?とやって来る。

節子は、平一郎の家に来ると、原稿の進捗具合を聞くが、まだ全部はできておらず、できた分だけ渡すと言うことになる。

原稿をもらった節子が出て行くと、あんな人が、あんたのお嫁さんになってくれたら良いんだけど…と、姉の加代子が弟に話しかけるが、今無職状態では無理だと平一郎は答える。

共同アパートでは、きく江が民子の家にやって来て、うち、洗濯機買ったでしょう?それで変な噂立てられて…、こんなことでは会長なんかやっていられない。洗濯機くらい、自分の金で買えると訴え始める。

最初は穏やかに対応していた民子だったが、きくが、私は潔癖で人の物にに手をつけるような人間じゃないと気色ばむと、さすがに、事情を察した民子の方も、自分は確かに、先月の28日に、お宅のおばあちゃんにお金を渡しましたと力説する。

場の雰囲気が緊張したその時、玄関に押売(殿山泰司)がやって来て、ナイフを取り出すと、鉛筆を削り出し、買ってくれと迫る。

その様子を観ていたきく江は、逃げるように自宅に戻ると、助産婦をしている母親のみつ江(三好栄子)に、押売が来るから自分の代わりに出てくれと頼む。

すると、想像通り、さっきの押売が玄関に現れたので、みつ江がのっそり出て対応する。

押売が、又ナイフを取り出し鉛筆を削り出すと、自分にも削らせてくれと言い出したみつ江は、台所から大振りの出刃包丁を持って来ると、押売の目の前で鉛筆を削り出す。

その様子を観ていた押売はさすがに怖じ気づき、みつ江が持った鉛筆を取り戻さないまま、這々の体で出て行く。

ほっとするきく江を前に、みつ江は、あんなのが怖くて、産婆はできないよとうそぶく。

そんなみつ江に、林さんの奥さん、先月分の封筒をおばあちゃんに渡したって言っているけど、まさか受け取っていないだろうね?と確認すると、受け取っていないと言う。

しかし、少し経ってから、タンスの上に置いた封筒を取り出したので、やはり、母親が受け取ったことを忘れていたと知ったきく江は、おばあちゃん、楢山だよ、とっとと行っとくれと叱りつけると、すぐさま、民子の家に向かい、先ほどのことはこちらの勘違いだった。おばあちゃんがすっかりぼけちまっていてと謝罪して帰る。

きく江はとよ子に呼び止められたので、玄関口に防犯ベルを売りに来ていたセールスマン(佐竹明夫)に出会う。

とよ子は、先ほどの押売にゴムひもを買わされたので、防犯ブザーを買おうと思うが、きく江も一緒にどうかと勧める。

しかし、きく江は、うちにはおばあちゃんがいるので、そんなものはいらないと言い残して帰って行く。

近くの町の飲み屋「うきよ」で、先に飲んでいた押売の横にやって来た防犯ブァーのセールスマンは、親しげに話し始める。

二人はグルだったのだ。

そこに、仕事帰りの啓太郎(笠智衆)がやって来て、この間、手袋片方忘れて行かなかったかと?と聞くので、女将(桜むつ子)は、知らないと答える。

帰ろうとしかけた啓太郎を呼び止めたのは、先に飲んでいた富沢汎(東野英治郎)だった。

啓太郎が座って付き合うと、富沢は、あんたいくつです?といきなり聞いて来る。

定年の話だった。

雨の日も風の日も、満員電車に揺られ30年…と愚痴った富沢は、いつしかその場で居眠りを始める。

その頃、実と勇兄弟は、隣に行かせたくなければ、うちでもテレビを買ってくれと、夕食を食べさせようとする民子を前にだだをこねていた。

民子は、勇の方を懐柔しようとして優しく呼んでみたりするが、動こうとした勇は、実に制されて、一緒にだだをこねる。

そこに、啓太郎が帰宅して来て、民子から、毎日のように隣に行くと聞くと、反抗的な実を、お前は口数が多すぎる、無駄話は止めろと叱りつける。

しかし、実は、無駄話は大人だってするじゃないか、おはよう、こんにちわ、ごきげんようなどと、奥さん連中の挨拶のまねをし始める。

その態度に、さすがの啓太郎も強く叱りつけたので、実は勇を連れ、勉強部屋に行ってしまう。

そこに、節子が帰って来て、土産のケーキなど出してみせるが、実と勇は、全く口をきかなくなってしまう。

勇の方は、話したそうにタイムの合図であるオーケーの指をしてみるが、実は許さない。

おなか空いたねと口に出してしまった勇の額を実が押すと、勇は可愛いおならを出し、得意げになる。

翌朝、みつ江が土手の上で空を拝んでいると、きく江がご飯だと呼びかける。

家に戻って来たきく江は、朝食をとっていた夫の辰造(田中春男)に、パンツを買って来てくれと頼む。

又猿股か…と呆れた辰造は、おかわりをしようとした幸造に、腹の調子が元に戻るまでおかわり早めろと叱る。

幸造は、情けなさそうな顔になる。

実と勇兄弟は、その日も朝から黙りを決め込んでいたので、節子は面白がる。

家の外に出た兄弟に挨拶をしたきく江だったが、二人の子供が無視して学校へ出かけたので首を傾げ、自宅に戻ると、林さんの奥さん、まだ根に持っているのかしら?とつぶやくと、おばあちゃんが大事なことを忘れるからと、みつ江のせいにし始める。

しかし、みつ江も黙っておらず、お前だって、先月自分が立て替えてやった先月分のガス代ねこばばしたじゃないかと反論し始めたので、辰三が止める。

しげの家に来たきく江は、林さんの奥さん、ああ見えて、細かいこと根に持つらしいわよと吹き込んだので、しげは、先日借りたビールを返さなくちゃと真顔で答える。

外に出た民子は、ちょうど戻って来たきく江に朝の挨拶をするが、きく江は知らん振りをして自宅に入ってしまったので、民子はちょっと唖然となる。

その後、民子の家にやって来たしげは、借りていたビールと、バスの切符をその場に置いて、そそくさと帰って行く。

しげはその足で、とよ子の家にやって来ると、林さんの奥さん、とっても小さなことで根に持つんですってと告げ口する。

それを聞いたとよ子も、この間、猫が干物を加えて来ちゃったから、返した方が良いかしらと案じ出す。

学校では、国語の授業で、佐久間先生(千村洋子)がしりとりの勉強をしていた。

からす、すみ、みかづき、きく…に続く言葉はとの問いかけに、当てられた子供が「月光仮面」とか「赤胴鈴之助」とかとんちんかんな答えばかり出す。

そこで、勇に当ててみると、立ち上がった勇は何も言わず、手でオーケーの合図をするだけなので、先生は何のことか分からず面食らってしまう。

一方、実の方も、伊藤先生(須賀不二夫)から教科書を読むよう当てられていたが、一言も発しなかったので、そのまま立たされることになる。

両方のクラスでも、先生が、明日給食費を持って来るように伝達していた。

帰宅した勇は、実に、給食費どうする?と問いかけるが、実は、口を開いちゃダメだと弟を制する。

茶の間では、民子と敬太郎が、頑固な子供はどっちに似ていると言い合いをしており、それを節子が面白そうに聞いていたが、そこに勇がやって来て、何かジェスチャーを始める。

しかし、両親も節子も意味が分からない。

続いて、実がやって来て、同じようにジェスチャーを始めたので、節子が一生懸命、それを解読しようとして、「学校が火事になり、消防さんが来て、お菓子を出したのね?違う?」と言う珍妙な答えになってしまう。

翌朝、善一と幸造は、善之助と一緒に土手の上でラジオ体操をしていた。

善之助は、又おならをしたので、幸造が感心すると、善一は、ガス会社に勤めているからさと妙な自慢をする。

その日も、実と勇兄弟の無言は続いており、平一郎の英語塾に行っても二人は黙ったままだった。

平一郎は愉快がり、軽石削って飲んでいるのか?と聞き、動物園のあしか、死んだろう?客がいたずらで投げる石を餌だと思って食べちゃったからだよと脅す。

そこに、丸山みどりがやって来て、こちらに部屋が空いてないか?近所がうるさいので引っ越したいのだと言う。

平一郎はないと追い返すが、すれ違うように、節子がやって来て、新たな原稿を平一郎に頼む。

平一郎が、この子たちはどうして口をきかなくなったのかと聞くと、無駄口が多すぎるからお父さんに叱られると、さらに、大人だって無駄口を言うじゃないか、おはよう、こんにちは、いいお天気ですね、などと返答したので、又怒られたのだと知ると、無駄があるから良いんじゃないかな?まだ、この子たちには分からないだろうけどと平一郎は答える。

その頃、啓太郎と辰造も「うきよ」で飲みながら、実の反抗のことを話題にしていた。

辰造は、無駄と言えば、この酒やタバコだって無駄だと言い、原因がテレビだと知ると、自分もテレビは欲しいが買えないと言う。

型太郎は、私は欲しくない。誰かが「一億総白痴化」と言っていたと答えると、辰造は、一緒に飲んでいた客の通さん(菅原通済)に、テレビはどうです?と聞く。

通さんは、困ったもんですね。テレビ…と答える。

その日、酔った富沢が帰宅すると、勇がいるので歓迎する。

しかし、民子までいるので挨拶すると、民子は、お宅はお隣ですよと言う。

家を間違えたことに気づいた富沢は恐縮して帰って行く。

今度は間違いなく自宅に戻った富沢は、とよ子の前で、いい気持ちだと上機嫌になる。

翌日、丸山夫婦は、引っ越しの準備をしていた。

妻のみどりは口先で命令するだけで、作業の大半は、夫の明の方がしていた。

その様子を、裏庭から観ていた節子は、お隣引っ越しするらしいわよと民子に教え、民子も、うちも引っ越したいわとため息をつくと、敬太郎に向かい、ネズミって軽石食べるかしら?最近、ずいぶん減るのよと不思議がる。

その軽石を削って嘗めていた勇は、実に向かい、もう食べないようにしようね。まだ、たまってないかな?と胸をさすって心配する。

そのとき、伊藤先生が家庭訪問に来る。

啓太郎は、自分が叱りつけたばかりに子供たちが黙ってしまったと謝り、給食費は明日持たせますと話していると、そこに、富沢がやって来たので、伊藤先生は帰って行く。

その間、台所に忍び込んだ実と勇兄弟は、おひつと夜間を持ち出して外に逃げていた。

富沢の用事とは、何とか新しい勤め口が見つかったと知らせに来たのだった。

黒門町の三輪電機の外交員になったと言いながら、持って来た電化製品のパンフレットを啓太郎と民子に見せる。

啓太郎が、就職祝に何か買いましょうと言い出すと、もっとパンフがあると言い、一旦家に取りに戻る。

民子は、うちもそろそろ考えなくちゃ…定年よと、啓太郎に話しかける。

土手の下で、実と勇兄弟は、手づかみで飯を食い、茶を飲んで楽しそうだった。

おかずを取って来ると勇が戻りかけたとき、一人の警官がやって来たので、何となくおっかなくなった勇は土手の下の兄に知らせ、二人は、おひつとやかんを残したまま走り去って行く。

その夜、平一郎の家にやって来た節子は、うちの実と勇が来ていないかと聞く。

来ていないと答えると、節子は外に探しに出たので、それを観ていた加代子は、面白い子ね。自分も無駄なことを言って自動車を売っているし、あんただって、好きなのを好きだって言わないで、無駄なことばかり節子さんと言っているじゃないか。たまには大切なことも言うもんよとからかう。

その言葉を聞きながら、平一郎は、子供たちを捜すため外出してみることにする。

自宅では、啓太郎と民子が、子供たちの帰りを心配して待っていた。

もうすぐ夜の9時になろうとしていたからだ。

そこに、節子がおひつとやかんを持って帰って来る。

帰りに交番に寄ったら、これを置いて、二人は逃げたのだと説明する。

啓太郎も出かけようと準備をしていた所に、平一郎に連れられて、実と勇が帰って来る。

駅前で二人はテレビを観ていたのだと平一郎は説明する。

節子に促され、家に上がった二人だったが、廊下にテレビの箱が置いてあることに気づく。

民子が、富沢のおじさんが持って来てくれたのだと教え、啓太郎も、二人とも勉強するんだぞと諭す。

節子がご飯は?と聞くと、英語の先生に、駅前で、ラーメンとシュウマイをおごってもらったと勇が答える。

勉強部屋へ戻った二人は喜びを爆発する良いにはしゃぎ回るが、それを観ていた啓太郎は、テレビ返しちゃうぞと脅すが、その表情を観ていた勇は、噓だよ!あの顔、噓だよ!あ、笑ったと啓太郎の表情を読み、部屋の中でフラフープを回し始める。

翌朝、実と勇兄弟は、善一と幸造の家に、明るく挨拶をしながら迎えに来る。

その様子を観たきく江は、又首を傾げる。

しげの家に来たきく江は、林さんの子、愛想良いの、どういうの?と伝える。

そこにとよ子が通りかかったので、同じことを伝えると、とよ子は、あんたたちの思い過ごしよ。林さんの家は皆さん、良い方よと言うではないか。

きく江は、買い物に出かけたとよ子を見ながら、何か買ってもらったのよとしげにつぶやく。

一緒に学校に出かける実は、もう軽石は止めて、昨日からごぼうに変えたんだと言いながら、幸造に自分の額を押させ、軽やかなおならを披露する。

それをまねるように、勇も額を押さえさせ、可愛らしいおならをして自慢する。

幸造もやってみるが、又しても、情けなさそうな顔になり立ちすくむ。

実と勇は、先に進みながら不思議そうに立ち止まった幸造を見守るが、幸造はゆっくり自宅に戻って行く。

その頃、駅で電車を待っていた節子は、同じホームにいたことに気づいた平一郎も西銀座に行く所だと知ると、今日はよい天気ですね。面白い形の雲ですねと会話を始める。

自宅に戻り、又、ズボンとパンツを脱いだ状態になった幸造は、ぼく死なないね。軽石飲んじゃったんだと情けなさそうに母親のきく江に話かける。

しかし、きく江は、こんなことで学校を休んでしまった幸造がパンツを求めるので、もう、おなかが直るまで、パンツ履くのお止し!と無茶な叱り方をするのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

テレビに憧れる子供たちを中心に、互いに干渉し合う機会が多い、集合アパートでの奥さんたちや主人たちの人間模様をユーモラスに描いた小津作品。

テレビを欲しがり家出までしてしまう実と勇兄弟が来ているのは、胸に一文字のラインが入った「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)の一平のセーターそのもの。

テレビがやって来た日の彼らの喜び、それを観て喜ぶ父親たちの姿と…、こちらもまさに「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代と世界である。

「ALWAYS 三丁目の夕日」が、この作品を参考にしているのは確かだと思う。

とにかく、勇ちゃんの愛らしさにつきると言っていいくらい、勇ちゃんが可愛らしい。

頑固なその兄実や、おなかを壊しており、おならごっこをするたびにちびってしまう、幸造の情けなさそうな表情もおかしい。

大人たちの方も個性豊かで、きみ江の母親役の産婆みつ江を演じる三好栄子の存在感も圧巻。

東野英治郎、田中春男、殿山泰司ら、いかにも情けなさそうなおじさんたち。

対称的に、長岡輝子や高橋とよ、沢村貞子ら名脇役女優たちもリアルなおばさんたちを演じている。

生活感がないヒモ風の夫を演じている大泉滉のひょうひょうとした風情も愉快。