1952年、松竹大船、野田高梧脚本、小津安二郎脚本+監督作品。
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佐竹妙子(木暮実千代)は、大磯の住む姪の山内節子(津島恵子)と共に、車で銀座の歌舞伎座へ向かっていた。
節子がジャン・マレーの話などをしていた時、道端を歩いていた、茂吉の後輩に当たる、のんちゃんこと岡田登(鶴田浩二)を追い抜いていったことに気づくが、あの人いつもそう、「のんちゃん雲に乗る」などと二人は愉快そうに噂をする。
歌舞伎を観た二人は、西銀座にある妙子の友人雨宮アヤ(淡島千景)の仕事場を訪れると、アヤは、パチンコが最近面白いとか、結婚すると大変などと話し始めるが、その後、節子は一人で映画に出かける。
気の置けない女二人になったので、これからどっか温泉にでも出かけないかと言うことになり、亭主への言い訳には節子を病気にしてしまおうと言うことになる。
すぐにその場から、妙子は夫が働いている東亜物産に電話を入れるが、夫の佐竹茂吉(佐分利信)が不在だった。
その頃、茂吉は入社試験を受けたと報告する登と喫茶店で会って雑談していた。
登が「CBS(消費者科学調査)」の話題など振ると、茂吉も知っていると答える。
登は、兄は戦死して、お袋も老けたなどと近況を話す。
やがて、鶴田は歌を唄い始める。
その日、帰宅した茂吉を待っていた妙子は、修善寺に学校の先生の謝恩会で行った節子が向こうで腹痛を起こしたんですってと嘘を言い始める。
それを聞いた茂吉は、盲腸じゃないか?と心配し、行ってやれよと勧めるが、そこに、事情を知らない当の節子が遊びに来てしまう。
嘘をついた妙子は、夫の手前、とぼけて見せるが、節子を別室に呼び寄せた妙子は、バカねあなた、アヤの所に寄らなかったのね?と八つ当たりし、その場でアヤに電話を入れると、妙子の言い訳は失敗したので、高子を病気にしましょうと提案する。
その後、黒田高子(上原葉子)と節子も誘って、修善寺温泉に旅行に来た妙子は、夫は少し鈍感なのよと、簡単に今回の修善寺行きを許してくれた茂吉の悪口を言いながら、部屋からその茂吉に電話をして、高子が盲腸なのと簡単に説明して受話器を降ろし、すぐにお帳場に酒の注文をするが、まだ電話は繋がっていたことに気づき慌てる。
アヤが「みみれの花〜咲く時〜♬」と娘時代のように唄い始めるが、そんな中、節子が気持ち悪いと言い出したので、寝かせることにする。
その頃、茂吉は、自宅の女中ふみ(小園蓉子)に、兄弟の予備隊の試験はどうした?などと聞いていた。
ふみは、上の兄は小学校の先生をしていますとなど答える。
修善寺の旅館で、窓から池の鯉にアヤが餌をやっていると、その中の黒い鯉を指しながら、鈍感さんに似ているでしょうと言いながら妙子もえさをまき始める。
それぞれの夫に似ている鯉を探しながら、夫が私が見えない所に行ってくれないかな?などと妙子はぼやく。
もう一晩泊まろうかなどと高子とアヤが言い出すが、隣の部屋で寝ていた節子は返事をしなかった。
東京に戻って来たある夜、ナイター見物に来ていた妙子、高子、アヤの三人組は、アヤの夫の京一郎(十朱久雄)の姿を見かけたので、野球好きでもないはずなのに?とアヤが、その動静を観察していると、京一郎は見知らぬ女と並んで腰掛け、ライターなど借りていた。
アヤ子は、西銀座にいる夫の浮気相手だと見当をつける。
その時、目白の佐竹妙子に、至急自宅へ戻るよう呼び出す場内アナウンスがある。
何事かと自宅に戻った妙子を待っていたのは、節子だった。
母親からお見合いを勧められ、それが嫌だったので逃げて来たと言う。
妙子は、しなきゃ駄目と言い聞かせるが、節子は嫌なこったと拒否する。
今年、満で21歳、数えで言うと23だと言う節子は、妙子もお見合いだって?と聞き、なぜ嘘なんか付いて修善寺行ったの?だから、大人って嫌い!私、結婚したって、夫の悪口なんて絶対に言わない!私、自分で探します!と憤慨するのだった。
妙子は、その内分かるわよと反論するが、私、人前で、夫を鈍感なんて決して言いませんから!と節子は責める。
会社で仕事をしていた茂吉は、大川社長(石川欣一)に呼ばれたので社長室に行くと、妙子の兄の山内直亮(柳永二郎)が来ており、妙子に一度、大磯に来るように言ってくれと声をかけられる。
社長の用事は、茂吉に一度、外国に行ってもらおうかと思っているとの打診だった。
部署に戻ると、登が来ており、面接を受けた会社に入れたので、保証人になってくれと報告する。
お礼にと言って、登は、近所にトンカツ屋に誘うので、5時頃、表で待っていてくれと茂吉は答える。
「カロリー軒」なるその店でごちそうになった茂吉は、その後、登に誘われて、近くのパチンコ屋に誘われる。
登は自分の家に来ないかと誘うが、茂吉は遠慮して、打っていたパチンコ台が出ないとガラスを叩く。
すると、店の主人が顔を見せるが、茂吉の顔を見ると驚く。
主人は茂吉が戦時中、班長をしていた小隊にいた平山定郎(笠智衆)だったのだ。
奇遇を喜んだ平山は、二人を奥の座敷に上がらせると、女房しげ(望月優子)に酒を出させると、昔を懐かしがる。
平山が、渋谷で高橋に会ったと教えると、茂吉も石田に会ったなどと戦友たちの話になる。
平山は、1年前からこの仕事を始めたが、早晩いかんようになると思う。こんなもんが流行るのは良くないと言い出し、シンガポール、ノースブリッジ…良かったですなあ。南十字星良かった…などと懐古にふけり、最後には軍歌を歌い出す始末。
久々に大磯の実家に帰って来た妙子は、節子はお見合いを承知したのかと、節子の母親の山内千鶴(三宅邦子)に聞くと、相手は慶応出で、書記官の息子なのだが、節子は最近、翻訳物などを読んでいるが、最近の本って大変だなどと教える。
その後、妙子と千鶴は節子と見合い相手(長谷部朋香)を連れ、歌舞伎を観に行くが、途中で節子がいなくなり、妙子と千鶴があわてて探しまわる事になる。
その頃、茂吉は、自宅に来た登に、保証書を渡してやっていたが、登は、競輪にいかないかと誘う。
パチンコも、純粋な孤独になれるので夢中になれるが、競輪は人生の縮図だなどと言うのだ。
出かけようと、女中のふみを探していた茂吉は、いつの間にかやって来ていた節子と出会う。
節子は見合いから逃げて来たのだと言う。
そりゃいかんと言う茂吉に、見合いなんて、野蛮なんですもの…と節子は譲らない。
その後、競輪場に来た茂吉と登は、節子もやって来たので驚いてしまう。
結局、前と同じく、カロリー軒の前のパチンコ屋に向かう三人だったが、茂吉は節子に、もう帰るよう説得し、今日、おじさんと一緒だったなんて言ってもらっちゃ困るよと言い残して、自分は先に帰宅する。
その後、節子は登と一緒にラーメンだと食べながら、見合いなんて封建主義よと、まだ文句を言っていたが、登は、ぼくは簡単主義だな。大きな神様から観れば、見合いも恋愛も同じですよと答える。
その夜、茂吉は節子の事を妙子と話題にするが、妙子は、あの子はいい気になっている。あなた、言ってやって頂戴と頼んでいたが、そこに、節子がやって来て、実家に帰ると母が怒るんですものと言う。
妙子の手前、茂吉は節子に説教をせざるを得なくなるが、妙子の姿が見えなくなると、パチンコの話になってしまう。
その時、又、妙子が戻って来て、二人の談笑を目撃してしまい、文句を言うので、茂吉は、だってしようがない。嫌だって言うのに無理に結婚させると、ぼくと君みたいな夫婦がもう一組できるだけはないかと、本音を言ってしまう。
それを聞いた妙子は「良くわかりました!」と怒って、自室に戻ってしまう。
茂吉は、まあ、しようがないよとつぶやく。
後日、アヤの事務所に来た妙子は、茂吉との事を打ち明ける。
アヤは、嘘をつかない夫婦なんてないわ。私たちだって、昔は、叱られながらも長いスカートをはいたじゃないと慰める。
その時、アヤの夫の京一郎がやって来て、ちょっと5000円ばかりと、アヤに無心したので、一応渡したアヤだったが、京一郎が部屋を出ると、追いかけて行き、金を取り戻すと、帰りなさい!家にと脅しつける。
部屋に戻って来たアヤは、妙子だって、どっかでご主人が好きなのよとなだめようとするが、妙子は、好きじゃない!とむくれ、そのまま帰ってしまう。
その夜、自室にこもっていた妙子を、ふみが食事の用意ができたと呼びに来たので、下に降りるが、先に食事を始めていた茂吉が、つい、みそ汁をご飯にかけて食べようとしたので、そんな食べ方、よして頂戴!嫌だって、申し上げたでしょう?止めて欲しいのと文句を言い、茂吉はうっかりしていたと謝罪するが、気持ちが収まらない妙子は席を立ってしまう。
茂吉は、給仕をしていたふみに出身地を尋ね、こういう汁掛け飯の食べ方はしないか?と聞くと、埼玉だと言うふみは、恥ずかしそうにしますと答える。
茂吉は、長野でもだよ。旨いんだがなぁ〜…と残念がり、二階の妙子の部屋に行くと、君、ご飯食べないのか?と聞くが、結構ですと言いながら、妙子は部屋を出て行ってしまう。
茂吉は、入浴した妙子を後で呼ぶようにふみに頼むと、自分は二階の自室に戻る。
入浴を済ました妙子が部屋にやって来ると、茂吉は食事の事を謝り、自分は、タバコは朝日がうまいし、列車だって三等が好きなんだ。これは育ちの問題であり、気安い感じが良いんだと説明するが、妙子は、もう結構と言葉を遮り、部屋を出て行ってしまう。
妙子は翌日、勝手に浜松に一人で旅行に出てしまう。
一方、出社した茂吉は、社長から、正式に外国行きを命じられる。
すぐに帰宅し、妻に報告しようとした茂吉だったが、妙子の姿はない。
ふみが渡した妙子の置き手紙には、当分、気の済むようにさせていただきますと書かれており、ふみが言うには、4、5日は留守にするらしいとの事。
茂吉は、心当たりの神戸市須磨区に住む、村山秀子宅へ電報を打つ。
とうとう茂吉が飛行機で出発する当日になるが、羽田に登や平山、山内千鶴と節子らも見送りに来ていたが、同じく見送りに来たアヤと高子は、肝心の妙子が来ていない事を知る。
その後、帰宅して来た妙子に会いに来たアヤが、何で須磨なんかに行ったの?と聞くと、秀子と神戸に行っていたし、(夫の出張の事は)知らなかったから、無理よと言う。
アヤと節子は呆れて帰って行く。
夜、ベッドに横になっていた節子は、玄関ブザーが聞こえたので下に降りてみると、茂吉がなぜか戻って来ていた。
飛行機が2時間飛んだら、エンジンの調子が悪くなり、引き返して来たので、出発は明日の9時になったと言う。
須磨、面白かったかい?と優しく聞いて来た茂吉に、妙子は、もうしない。あなたに黙って遠くにいくなんてもうしないと謝る。
茂吉は腹が減ったと言い出し、妙子は私もと言い出し、ふみを起こすのも可哀想だからと言いながら、二人して台所にそっと向かう。
パン、どう?と妙子が聞くと、茂吉はお茶漬けと一言答える。
妙子は、ぬかみそ樽を見つけると、はじめて自分の手で漬け物を引き出し、二人協力してお茶漬けの準備をすると、一緒に食卓を囲む。
ぬかみそ臭いと妙子が手を匂ってみせると、茂吉も、君の手も驚いているだろうねと冗談で返す。
おいしいわ、旨いねと会話をしながら、茶漬けをすするうちに、妙子が、悪かったわ、私…、分かんなかったの、遠慮のない気安さ。やっと分かったの、今…、バカね私と語り出す。
それを聞いた茂吉は、良いんだよ、分かってくれりゃ良いんだよ。お茶漬けだよ。お茶漬けなんだよ。夫婦は、このお茶漬けの味なんだ。今晩、帰って来て良かったよと答え、妙子も、私も良かった。帰って来て下さってと応じる。
茂吉は、分かってくれれば良いんだよと繰り返すのだった。
後日、アヤと高子、節子らに会った妙子は、お茶漬け食べたら、私、泣いちゃったの。謝っちゃったの、みんな…と打ち明ける。
あの人も泣いてんの。今日ほどうれしかった事ないって…。胸がすーっとして、身体が軽くなったのと妙子は続ける。
それを聞いたアヤは、男なんて、甲羅を干した亀なのよと言い出す。
外ではウサギとかけっこしてたり、浦島太郎乗せたりしているけど、修善寺の事もちゃんと知ってるの。
妙子は節子に、よく考えて男決めるのよ。男の人は頼もしさが一番大切なのよ。嫌だった事が、何もかも好きになったのなどと教える。
節子は、おじさま、ウルグアイで何してらっしゃるかしら?と、茂吉の事を想いながらつぶやく。
妙子の家を出た節子は登と帰ることになる。
節子から、妙子夫婦の話を聞いた登は、それは愉快と言い出し、男は結局、頼もしささと自慢する。後で後悔するんだ。分かってるんだなどと一人で悦に入っていた登だったが、節子が先に歩いていくと、慌てて追いかけるのだった。
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お馴染みの夫婦の危機と、その修復を描いた小津作品。
小暮実千代が、気が進まない見合い結婚をしたばかりに、終止、夫への不満や嫌悪感を持っていらついている有閑マダムに扮している。
その一方で、姪っ子には見合いを勧めると言う矛盾した行動をとっている。
今の結婚観とはかなり違う時代の作品だけに、一概に、今の感覚だけで妙子のキャラクターを判断してはいけないだろうが、かなり嫌な女に見える。
当時としても、一般庶民からすると、嫌な女に写っていたのではないかと思う。
しかしこれは、かなり、夫の茂吉と育って来た環境が違うと言う事を強調するために作られたキャラクターではないかと思う。
これほど、育ちが違う事は珍しかったかも知れないが、どう言う形の結婚であれ、夫婦間の価値観の相違と言うものは昔からあったはずだからだ。
その価値観の相違を「嫌悪感」に結びつけるか、「協調融和」に持って行くかは、夫婦双方の「知恵」と「忍耐」の差から生まれるのかも知れない。
子供がいない茂吉と妙子の夫婦生活が「仮面夫婦」になっているのは、一つには、互いのプライドとか、社会的対面と言う「世間体」もあるように思う。
それでも、一般家庭よりはかなり裕福なので、「仮面」のままで生活できてしまう所が、又、事態を厄介にしている。
ここに登場する妻たちは、皆、何とか結婚生活を維持しており、離婚者はいないと言う所がミソである。
小津作品で良くありがちな、離婚したドライなタイプの女友達と言うキャラクターが登場していないのだ。
淡島千景演ずるアヤは、ドライではあるが、気の弱そうな夫を掌で遊ばせている知的なキャラクターである。
登場シーンは少ないながら、いかにも気の弱そうな夫を演ずる十朱久雄の適役ぶりも愉快な所。
つまり、この作品での妻たちは、それなりに資産や自活力はありながら、離婚と言う道を最初から選ぼうとはしていない女たちであり、それは観ている観客が、仲が悪い、即離婚すれば良いのに…と言う単純な解決法を期待しないようにする工夫の一つではないかと思う。
離婚者がいると、必然的に「別れりゃ良いのよ」と言う会話が出て来るはずだからである。
佐分利信演ずる茂吉は、わがまま放題な妙子と対照的に、温厚で物わかりの良さそうな賢者風に見えるが、彼も又、気の強い妻を叱りつける事すらできず、事なかれで毎日を過ごしているだけのダメな男のようにも思える。
最後の夫婦間の和解も、別に、茂吉が積極的に何か行動して生まれた結果ではないからだ。
夫婦間の問題の原因は、両者に均等にあると言う事を描いているように感じる。
そんな鬱屈した大人たちとは対照的に、明るく脳天気気味で、歌など唄ってみせる、若き日の鶴田浩二のキャラクターが楽しく、節子の爛漫さと合わせて、映画を明るく彩っている。
ちなみに、高子を役を演じている上原葉子とは、上原謙の妻であり、加山雄三の母親である小桜葉子の事である。
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