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おば捨て山の月

1982年、東映教育映画部、新美南吉原作、矢吹公郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ああ、何と浅ましいことだろう…

ああ、なんと残酷なことだろう…

山に住む狐のゴン太と狸のポン吉は嘆いていた。

ひどい殿さま、いたもんだ…

昔、おじいさんやおばあさんが嫌いな殿様がいました。

役にも立たないし、汚いし…と言う殿さまは、70を越した年寄りたちを島送りにしていました。

元々お年寄りですし、島には食べるものなどないので、島尾栗にされたお年寄りたちは、島に着くとすぐに死んでしまったのです。

国中の人々は、殿さまを恨みましたが、どうすることもできませんでした。

タイトル

その国に住む段々畑の与助は、最近、気が気ではありませんでした。

彼と二人暮らしをしている母親も、70を過ぎていたからです。

ある満月の夜、家の外で思案していた与助は、知らないお役人に捕まって島送りになるくらいなら、自分で母親を山の奥に捨てることにしようと決意する。

しかし、囲炉裏の前で編み物をしている母の姿を見ると、なかなか言い出す勇気が出ない。

良い月だな、おっ母ぁ…と言うと、母は、十五夜だなと答える。

西の山に登ってみねえか?と言った与助だったが、言ったとたんに後悔し、後の言葉が出て来ない。

すると、母親が、連れてっておくれと言うではないか。

与助は、その言葉に勇気づけられるように、母親を背負うと、山を登り始める。

すると、背中の母親は、時々、木の小枝を折って、道に捨てて行く。

何をしているんだい?と聞く与助に、母は何でもないと言うだけ。

やがて、西の山の頂上に着いた与助の姿に気づいたゴン太とポン吉が気づいて、草むらに隠れる。

ゴン太とポン吉は、与助のことを知っているので、今頃何しに来たのかと不思議がり、じっと様子をもうかがうことにする。

母親を降ろした与助は急に泣き出したので、母親がどうしたのかと聞くと、許してくれ。おっ母ぁが70になったので、島流しになると思って…と訳を離し始める。

それを聞いた母親は、泣かんでええ。おらぁ、何もかも知っとった。お前は昔からよう噓を付けんかったからのう。役人に島流しにされるより、息子に捨てられた方がええ。道に迷わないように、枝を折って来たから、枝のある道を探してお帰りと優しく諭す。

それを聞いた与助はたまらなくなって走るように山を降りて行く。

残された母親の前に出て来たゴン太とポン吉は、お月様、どうか、与助のおっ母ぁをお助けください。どうか、与助さんが戻って来てくれますようにと願うのだった。

家にたどり着いた与助は、おっ母、寒くないか?おらのことを恨んでねえか?と悩むが、道に迷わないように、枝を折って来たから、枝のある道を探してお帰り…と言ってくれた母親の最後の言葉を思い出すとたまらなくなり、「おっ母ぁ!」と叫ぶと、又、山道を走って登り始める。

与助を呼びに行こうと山道を駆け下りていたゴン太は、登って来る与助の姿に気づくと草むらに身を潜めながらも、大喜びしていた。

結局。母親の元に戻って来た与助は、又背負って家に帰ることにする。

こっそり後をついて来たゴン太とポン吉が家の様子をうかがっていると、与助は、家の床の下に穴を掘って地下室を作っている所だった。

母親をそこでかくまうのだと気づいたゴン太とポン吉も、中に入り込んで、穴堀を手伝ってやることにする。

こうして、地下室は完成し、母親は、可愛いゴン太とポン吉と一緒に、そこで住むことにする。

この頃は、どこの国でも、互いの国を広げようとにらみ合っていた。

ある時、隣の国の殿さまから殿さまに手紙が届き、知恵比べだ。灰の縄を作ってみろ。できなければ攻め込むぞと書かれてあった。

驚いた殿さまは、家来たちに聞いてみたが、誰も灰の縄の作り方など知らなかった。

それで、村に高札を立て、できるものには褒美を使わすと触れ回った。

それを観ていた二人の子供は、人がいなくなると、その高札を抜き取り、与助の家の前に立てると、止すけさんがこれを観てくれれば良いのだが…、もう70を超えた人は与助のおっ母ぁしかいないと言う。

その時、馬に乗った役人が近づいて来たので、二人の子供は草むらに姿を消す。

二人は、ゴン太とポン吉が化けた姿だったのだ。

与助は、高札を見つけると、こんな所に立てたかな?と首を傾げながらも、家の中にいる与助を呼び出し。お前には母がいたな?と聞く。

与助は怯えながら、もう死んだと答える。

役人は、疑わしそうだったが、そこに出てきた二人の子供が、本当だよ。ちゃんとこの目で観たよと証言したので、役人は信じ、そのまま帰ってしまう。

後に残った与助は、今いた子供たちの姿が消えたことを不思議がるが、高札にも気づき、その内容を読むと、家の中の地下室にいる母親に聞いてみる。

すると、母親は、簡単なことだ。縄に塩を付けて燃やすと、なかなか崩れないと教えてくれる。

言われた通りにやってみると、本当に、灰の縄ができたので、それを持って与助は城の殿さまに見せに行く。

殿さまは大層喜び、与助に褒美を取らすのだった。

隣の殿さまも、その結果を知り驚いたが、その後、二頭のメス馬を連れて来ると、どちらが母馬でどちらが子馬か見分けよ。分からねば攻めるぞと、またまた挑戦して来る。

二匹の馬は、全く同じように見えたので、困りきった殿さまは、又家来たちに知恵を借りるが、誰も分からない。

仕方がないので、又、高札に、できたものには望み通りの褒美をやると書き出して村に立てた所、又、二人の子供に化けたゴン太とポン吉が、その高札を止す家の家の前に立て、それを読んだ与助が母親に聞くと、簡単なことだと答えを教えてくれた。

与助は、又城の殿さまに会いに行き、飼い葉桶を二頭の雌馬の前に置く。

すると、片方の馬が食べ始める。

それを観ていた殿さまが、どちらが母で、どちらが子なのだと聞くと、与助は、今食べているのが子馬でございます。

どんな親でも子を思わぬ親はおりません。まず、腹をすかせた子供に食べさせ、余り物を食うのが母ですと答える。

その答えを聞いた殿さまは感心し、隣の国の殿さまも、恐れをなして逃げ出したと、使者が知らせに来る。

すっかり喜んだ殿さまは、与助に何でも望み通りの褒美を取らせると言うと、与助はひざまずき、お願いがありますと頭を下げる。

わしの母の命を助けて下さいと言うのだ。

どう言うことかと殿さまが問い返すと、与助は、70になる母親を島流しにされるのを恐れ、死んだと偽り、かくまっていたと正直に打ち明け、どんなに年を取ろうと、私には母親です。灰の縄も、馬の見分け方も母に聞きました。年寄りは物知りです…と切々と訴えるんだった。

それを聞いた殿さまは、そちの望み、かなえてつかわすぞと言い出す。

与助、良く言ってくれた。そちの言葉が、余の間違った考えを正してくれた。わしは、幼い頃、両親を亡くしたので、親の温情と言うのを知ることがなかった。今日限り、島流しも止めると殿さまは改心する。

その後、与助と母親は、ゴン太とポン吉と共に、山の頂上で月を観ていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

霊友会企画、東映動画制作の22分の短編教育アニメ。

楢山節考を連想させる「姨捨伝説」をベースに、年寄りの大切さを教える内容になっている。

年寄りも世の中に必要と説く所は、ややきれいごとと言うか、偽善めいた部分もないではないが、とりあえず、親子の情を描く所は普遍的な見所だろう。

クイズ形式にして子供の好奇心に訴えかけ、テーマを伝えようとする原作者の発想は面白いと感じる。

狐と狸のキャラクターも愛らしく、ほのぼのタッチの絵柄も好ましい。