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にっぽんGメン 第二話 難船崎の血闘

1950年、東横映画、比佐芳武脚本、松田定次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

神戸海上保安庁を背景に、保安庁には9つの部署があるとの説明がある。

その一つ、警務課では、最近、怪電波を傍受していた。

これまでの怪電波記録を再調査した結果、どうやら密輸の合図らしいと見当をつけた警務課長の繁藤(市川右太衛門)は、部下の田宮に出航命令を出す。

とある海上では、きすぐれ(酩酊)の弥太(月形龍之介)率いるギャング一味が、船から荷物を海上へ落としていた。

アル中の弥太は、荷物を落とし終えた部下たちに、直ちに外海へ向かうように命ずる。

しばらく経って、海面に浮かんだその荷物を引っ掛けて船に運び上げていたのは、仙蔵(進藤英太郎)とその配下たちだった。

見張りをやっていた留吉は、近づいて来る船に気づき、猟銃を発砲する。

近づいて来た船が荷物の正式な受取人であり、仙蔵らは密輸の横取りをしていたのだった。

外海へ進路を向けていた弥太たちは、接近して来る海上保安庁の巡視艇に気づくと、船に残っていた白砂糖など、時価300万相当の密輸品を海に廃棄すべきかどうか迷い出す。

一方、仙蔵の船に迫っていた巡視艇は、海上に浮かんだ女の溺死体らしき姿を発見する。

繁藤課長は、密輸船の追跡と女の引き上げのどちらを優先するか迷うが、結局、女を救うため、巡視艇の方向を変える決断をする。

救出した女は死んでおらず、三日後、病院のベッドで目を覚ましたので、国警の坪内刑事を連れた繁藤が、その女に事情を聞きに来る。

女は、中川マリ(市川春代)と言うキャバレー歌手だと名乗る。

上京した彼女は、シルク貿易をやっている里見文雄と言う男と付き合っていたが、その里美から正式に結婚を申し込まれたので、一昨日の7日に東京を発って当地の山の手にある、お屋敷風の家に連れて来られた。

夕食の後、紅茶を飲んだ所、急に眠くなり、気がついたら、船の中で縛られていた。

自分の他にも、7、8人の女性が縛られていたと言う。

その状況で、どうしてあなた一人だけが海に浮かんでいたのかと坪内から聞かれたマリは、船が出航して1時間くらいすると、45、6くらいの船長に自分だけ呼び出され甲板上に連れて来られたので、その船長の隙を付き、海に飛び込んだのだとマリは答える。

その船長の特徴を聞くと、右の手首に蛇の入れ墨があったと言う。

短い事情聴取を終えた繁藤は、自分の妹の服と靴を、もし良かったら使ってくれとマリに渡し、さらに当座の金も渡そうとするが、マリは金は辞退し、しばらくこちらで働くと言い出す。

保安庁に戻って来た繁藤は、海で逃がした船の仙蔵には心当たりがあった。

そこへ、海に浮かんだ荷物を一つ発見したとの報告が入ったので、やはり、あの海上では密輸が行われていたのだと繁藤は確信する。

繁藤は、知りあいの女易者茂原かなえに、仙蔵が出入りしているキャバレー「新世界」の前で店を開かせ、出入りの客の様子を監視させることにする。

その「新世界」にやって来たのは、実業家風の都筑(大友柳太郎)と言う男、お目当ては、尾月かおる(朝雲照代)と言う美女ホステスらしかった。

その「新世界」の支配人に、この店で働かせて欲しいと申し込みに来ていたのが、退院した中川マリだった。

都筑は、かおるをテーブルに呼ぶと、大きなダイヤがはまった指輪を手渡す。

かおるは無頓着に指輪を受け取ると、側を通ったマリの顔を見る。

歌手が歌い、客たちが踊っていたフロアを横切り、奥まった席に近づいたマリは、そこで飲んでいた弥太を見つけるが、すっかり酩酊していた弥太は機嫌が悪いようで、グラスをフロアに投げつけマリを追い払ってしまう。

弥太は、近くのテーブルで、先ほどからずっと突っ伏している男が気にかかっていた。

ボーイの安村を呼び、その男の事を聞くと、さっきから北海道の話ばかりしていたから、きっとそっちから来た奴だろうと言う。

弥太は、海坊主の仙蔵の行動を怪しんでおり、配下の辰に、奴に手を引かせるよう命じる。

そんな「新世界」に、当の仙蔵が、子分の留吉を連れてやって来る。

留吉は、都筑と踊っていたかおるを横取りするとそのまま無理矢理踊り出す。

軟弱そうな都筑は、一言の抗議もできず、留吉のなすがままに身を引く。

仙蔵は、弥太から声をかけられると、平然と同じテーブルに腰を下ろし、全員に酒を配れとバーテンに呼びかける。

仙蔵は、弥太からねちねち景気が良さそうだなと皮肉られても気にしないようで、確かに今上げ潮に乗っていると平然と答える。

そんな仙蔵に弥太は、ここは一つ、別の部屋で一勝負しないかと札束を出してみせる。

仙蔵は、その話にすんなり乗る。

かおると踊り終わった留吉は、親分の姿を探すが、別室の鉄火場で一勝負し終えた仙蔵の姿を見つけると安心する。

どうやら勝負に勝った様子の仙蔵は、大量の札束を背広のポケットにねじ込むと、上機嫌で帰ろうとしていた。

仙蔵と留吉が店を後にすると、弥太は、子分の渋川(加東大介)に目配せし、後を付けるよう命じる。

「新世界」を出る仙蔵と留吉、そして、その後を追った弥太の子分たち数名の姿を、易者のかなえはしっかり確認する。

その頃、仙蔵は、近くのテーブルで酔いつぶれていた男を起こそうとしていたが、男はいっこうに起きる気配がなかった。

人気のない裏町に入った仙蔵は留吉に、後ろから付けて来る奴らに気をつけるよう耳打ちする。弥太が自分を狙っている事は先刻承知だったのだ。

弥太の子分は、仙蔵を挟み撃ちにする形で待ち構え、前から発砲する。

仙蔵は被弾し、その場に倒れるが、たまたま近くにいた坪内刑事が銃声に気づき、現場に駆けつけて来たので、背後に隠れていた渋川が撃ってしまう。

倒れた渋川が取り落とした拳銃を拾う渋川。

「新世界」の中では、弥太が辰に、きな臭え奴だと言いながら、まだテーブルで寝ている男を起こすよう命じていたが、気がつくと、酔いつぶれていたはずの男は、テーブルに突っ伏したまま、両脇から2丁拳銃の銃口を覗かせている事に気づく。

その直後、2丁拳銃が火を噴き、バーテンの後ろに並べられた酒瓶や、壁にかけられていた美女の絵に穴を開けて行く。

撃ち終わった男は不機嫌そうに起き上がると、店長を呼び、料金を払うと、壊したものの弁償もしたいと申し出るが、怯えた店長は、酒瓶は飾り物だし、絵の両頬にあいた穴はえくぼなので、結構ですとお愛想を言う。

その様子を観ていた仙蔵は、愉快そうに笑うと、帰りかけた男に名前を聞く。

男は、リャンコ(両個)の政吉(片岡千恵蔵)と答えたので、気に入った様子の仙蔵は、自分も自己紹介すると、この店の裏に自分のドヤがあるので、客人になるなら不足はないと誘う。

海上保安庁では、仙蔵の死体と一緒に発見された坪内刑事が重体で入院中である事を聞いた繁藤は、心配しながらも、栗原部長に、国警の根川刑事部長が仙蔵一味を探っている所だが、自分は中川マリ誘拐事件の方を追っていると報告していた。

そこへ、双子島の医者から、右肩に猟銃で撃たれた傷のある患者がいたが、脅かされていたので今まで報告が遅れていたとの知らせを田宮が持って来る。

田宮は、夕凪峠を通過した船は一隻だけだったと繁藤に教えるが、そのとき、栗原部長が電話を受け、たった今、坪内刑事が亡くなったと知らせる。

それを聞いた繁藤の顔が厳しくなる。

「新世界」のテーブルで、坪内刑事が死亡したニュースが乗った朝刊を食い入るように読みふける政吉に、一緒に酒を飲んでいた弥太は不機嫌になり、いつも新聞を読むようなまねは止めろと言いながら酒を勧めると、「けど…」と毎回口答えする政吉の口癖も止めろと怒り出す。

しかし、とぼけた政吉は酒を飲みながらも「けど…」を連発し、坪内刑事と言う奴は、翌三日も生き延びていたななどと感心するので、ますます弥太の機嫌は悪くなるばかり。

そんな酒浸りの弥太は、苦しい時にも飲むのが酒だとくだをまくが、そのときカウンターで酒を注文した中川マリを目にとめた政吉は、自分もいっぱい酒をついでやる。

マリは政吉に、里見文雄と言う男を知らないかと聞くが、政吉が知らないと答えると去って行く。

テーブルに戻って来た政吉は、今の女は誰だと弥太に聞く。

弥太が、歌い手の中川マリだと教えると、あいつは俺の心にドキドキするものを残して行きやがったと政吉が言い出したので、あいつはヒモ付きで、そのヒモと言うのは俺の事だと弥太が言い聞かす。

しかし、政吉は、この件については、一歩も引かねえぜと反抗する。

「新世界」の前では、女易者のかなえに客の振りをして近づいた繁藤が、仙蔵がこの店を出て行った夜、渋川がその後を追いかけ、又、美智子さんからの報告では、裏口から数名の男たちも出て行ったらしいと、仙蔵失踪当夜の事情を仕入れていた。

「新世界」のフロアでは、マリが歌い、その曲に合わせ、都筑とかおるら客たちが踊っていたが、柱の所に立ち尽くした政吉は、じっとマリだけを見つめていた。

店に客として入って来た繁藤に気づいたマリは、挨拶をして一緒のテーブルに座る。

繁藤は、里見の手がかりは見つかりましたかと問いかけるが、マリはまだだと答える。

繁藤がタバコに火を付けようとライターを持ち上げると、その手を突然握った政吉が、自分が加えていたタバコの方に近づけ火をつけてしまう。

さらに政吉は二人の間に勝手に座って、繁藤に絡み始める。

政吉の無礼に怒ったマリは、この方を誰だと思っているの?海上保安庁の課長さんよと正体を明かし、繁藤を慌てさせるが、政吉は全く動じなかった。

その様子を別のテーブルから観ていたかおるは、同じテーブルの続きに止めてやってくれと頼むが、気弱そうな都筑が動こうとしなかったので、自ら立ち上がり、繁藤の方に近づくと、一緒に踊っていただけませんかと繁藤に声をかける。

しかし、繁藤は政吉を見ながら、君から逃げるために立ちたくないと良い、その場を動こうとはしなかった。

すると、政吉は明治時代の硬貨を取り出し、中川マリを指しながら、勝負に負けたらこの女から手を引けと言い出し、テーブルの上で回し始める。

しかし、繁藤は、この人には何の未練もないと言い放ち、回り終わった硬貨を掴むと、満身の力を込め折り曲げてしまうとテーブルに戻し、そのまま店を出て行く。

その後を追おうとした政吉に近づいて来た弥太が止める。

その時、一人の浮浪児が店に入って来ると、弥太はどの人だい?と聞くので、俺だと答えた弥太は、その浮浪児から紙を受け取る。

中を開けて読むと、「一人と一人、仙蔵兄貴のお礼が言いたい。一番倉庫の広場で待っている。留」と書いてあった。

呼び出し通りに一人で出かけた弥太は、空き地で待っていた留吉に、何で勝負をする?と問いかける。

留吉がドスを取り出したので、弥太もドスを抜き互いににらみ合うが、そのとき、留吉が背後を見て、いっぱいはめやがったな!差しで勝負と言いながら、あれは何だと顔で促したので、酔った仙蔵が後ろを振り返ると、その隙を狙って留吉がドスを腹に突き立てて来る。

弥太も、組み付いて来た留吉の背中にドスを突き刺しとどめを刺すが、その後、よろけながら「新世界」に戻って来る。

戻って来た弥太が倒れたのに気づいた渋川や政吉が、驚いて駆け寄って来る。

虫の息の弥太は、マスターと支配人を呼べと渋川に命じ、ポケットから呼び出し状を出させて政吉に読ませる。

だからあれほど飲むなの言ったのに…と政吉が悔しがると、飲もうと飲むまいと、幕切れはどうせこんなもんさ…と弥太は自嘲する。

そして、駆けつけて来た支配人とマスターに向かい、頼みがある。政市の事なんだが、俺の名代、跡継ぎにしてやってくれ。こいつは腕の立つ男だと頼む。

その場にいた全員が承知すると、政吉は最期のウィスキーを、弥太に飲ませてやる。

弥太は、俺と言う奴は、生涯ろくな事はして来なかったが、最期に一つだけ良い事をしたようだと言い残し、がっくりと息絶えてしまう。

その頃、繁藤の元には、田宮から、留吉の死体が発見されたとの電話連絡が入っていた。

ある日、浜田を連れ、繁藤に挨拶しに繁藤の家に近づいていた中川マリは、偶然、かおるがが先に繁藤の家に入って行くのを目撃する。

実は、ホステスのかおるとして「新世界」に潜入していたのは、繁藤の実の妹、繁藤美智子だったのだ。

その後、車で都筑邸に一人やって来たマリは、ソファーで雑誌を読んでいた都筑に、先ほど目撃した事実を報告、あんたが惚れた女は、実はスパイだったのだとあざけりながら教える。

実は、毎晩のように「新世界」に通う、気の弱そうな都筑こそ、密輸組織の大ボスであり、マリはその情婦だったのだ。

あの夜だって、都筑のピンチを救うためにマリは海に身を投げたのである。

それほど思いを寄せている都筑が、最近は、かおるに首ったけ状態である事に、常々店でのマリは嫉妬の気持ちを燃え上がらせていたのだった。

愛憎相半ばする都筑に詰め寄ったマリだったが、都筑からいきなり抱きしめられると、惚れた女の弱みで、すぐさま熱い接吻を交わし、めろめろになるのだった。

都筑は、そんなマリを無視し、子分たちを呼び寄せると、弥太の死体を埋めたとの報告を受ける。

都筑は、今度の仕事では万一の事を考えて、脱出用に「はやぶさ号」を用意しておくように命じると、繁藤美智子と奴だけはただでは置かないと吐き捨てるのだった。

保安庁では、繁藤が栗原部長に、密輸事件の解明はかなり進んでおり、きすぐれの弥太が犯人だと思うが、もうその弥太も死んでいるでしょうと報告していた。

栗原部長の方は、13時10分、又、13号怪電波をキャッチしたと教える。

そのとき、近くを通っていた船は、あの番の船と同じだったと聞かされた繁藤は、中が絵あまり誘拐事件は解決しましたよと言い出す。

「新世界」にやって来た中川マリに近づいた繁藤は、事情聴取を少し補足していただきたいので、保安庁か私の自宅までご同行願いたいと申し出る。

マリは承知し、一緒についていた雨宮に店の事を頼んで、繁藤に付いて行く。

店に来た雨宮は政吉に、弥太の配当金を受け取るので付いて来て欲しいと伝える。

一方、マリが繁藤に連れて行かれた事を雨宮から聞いた都筑は、渋川を呼ぶと、マリを監視し、万一の時は処分するよう命じる。

都筑邸に連れて来られた政吉に、雨宮は、我々の本部だと教える。

一方、繁藤の自宅にやって来たマリは、二年前に亡くしたまち子と言う繁藤の妻が、マリそっくりだったと聞かされ、この際、あなたも素直になって欲しい。自供の全面訂正をやって欲しいのだと迫られていた。

しかし、マリは、失礼しますわと言い残し帰ろうとするので、繁藤は止める。

その頃、「新世界」でかおると会っていた都筑は、やたらと時計の方を気にしながら、実は、今夜9時半に出かけなければ行けないのだと説明していた。

その事を兄の繁藤に知らせようと、裏口から店を飛び出して近くの公衆電話に駆け込んだかおるだったが、電話を取る前に、ずっと監視していた都筑の子分に捕まると、麻酔で眠らされ、そのまま都筑の車に引きづり込まれると拉致されてしまう。

「新世界」の前で様子を観ていた女易者のかなえは、ホステスたちが帰る所を目撃、なぜか急に店は早じまいし、かおるは姿を消した事を知る。

繁藤の自宅では、まだ、マリが、前の証言を変えようとせず粘っていた。

そのとき、女中が、芝原かなえと言う人から電話だと知らせに来たので、席を立った繁藤は、急にマリが逃げ出そうとしたので、電話を放り出し、マリを部屋に戻そうともみ合う。

その様子を窓の外から見はっていた渋川は、拳銃を発射、マリは背中を撃たれてしまう。

驚いてマリを抱きかかえた繁藤に、マリは、「仲間が私を撃った…。はやぶさが…、海を渡って…」と意味不明な言葉を残し息絶える。

そのとき、女中が慌てた様子で、大変なことが起こったようですから早く電話に出て下さいと言うので、又電話を取ると、かなえから、かおること妹の美智子が失踪してしまった事を聞かされる。

事態の緊急性を悟った繁藤は、直ちに海上保安庁の宿直に電話を入れ、ただちに出撃準備をするように命じる。

屋敷に戻って来た都筑は、連れて来たかおること美智子を、政吉に縛らせる。

海上保安庁に戻って来た繁藤は制服姿になり、部下たちと共に、巡視艇を出発させる。

屋敷で目を覚ました美智子は、そこにいた政吉や都筑の姿に驚く。

都筑は自分の正体を明かすと、君も化けの皮をはがしたらどうだいと美智子に迫って来る。

美智子は何のことは分からないととぼけるが、都筑は、君は、海上保安庁の繁藤課長の妹美智子だねと詰め寄る。

それでも美智子が答えようとしないので、部下に、壁にかけてあった鞭を取らせ、美智子を締め上げるよう命じた都筑だったが、それを観た政吉は、そんなまどろっこしいやり方じゃなく、俺が吐かせてやると言いながら、自分の拳銃を取り出すと、片足を挙げた股の下から撃ったり、曲撃ちで、イスに縛られた美智子の頭すれすれの所を撃ち抜いて行く。

その銃を取り上げた都筑も、美智子を狙って発射する。

美智子ががっくりうなだれたので、当たったかと思った政吉が近づいて確認すると、美智子は恐怖で気絶しただけだった。

二階に美智子を連れて行って戻って来た政吉に、都筑は銃を向けたまま、今度はお前の化けの皮をはぐと言い出す。

何のことだと言う政吉は、都筑に促されるまま後ろを振り向くと、他の子分たち全員が、自分に銃を向けていることに気づく。

俺をサツのスパイだとでも言うのかと言う政吉に、サツそのものだ。お前が繁藤と店で会ったとき、テーブルの下で、足を使い連絡を取り合っていたことに気づかなかったと思うかと都筑は言う。

さらに、今受け取ったお前のブローニング銃の番号は、国家警察の拳銃リストに載っていると、リストを写した写真とその場で照合してみせ、その番号から、お前が部長刑事、相原正人であることも判明したと言うではないか。

それを聞いていた政吉は、確かに自分は相原正人だと正体を明かし、北海道から赴任して来たばかりだと説明する。

そして、弥太も最初からちゃんと俺の正体を見抜いていたに違いないが、俺を後がまに選んだのは奴の最期の良心だったんだと告げた相原は、とっさに部屋から逃げ出すと、外からドアに鍵をかけてしまう。

二階に上り、部屋の隅に置いてあった無線機に気づいた相原は、気がついていた美智子に無線はできますねと確認する。

美智子が、一応兄から手ほどきは受けていると答えると、相原は保安庁に連絡を頼む。

保安庁の無線係野村(沼田曜一)は、怪電波をキャッチしたと栗原部長に報告、それが窮地を知らせる美智子からの連絡と知ると、ただちに巡視艇に通達される。

「はやぶさ」と言うヒントしか持っておらず、目的地を決めかねていた繁藤は、本部からの無線で、難船崎都筑邸に美智子と相原が捕らえられていると聞くと、ただちに巡視艇を向かわせる。

都筑邸では、倒した敵が持っていた銃も拾い、2丁拳銃になった相原が二階から必死の応戦をしていた。

都筑から様子を見て来いと言われた渋川は、靴を脱ぎ、足音を消すと、そっと階段をよじ上り、弾を込めていた相原に気づき発砲するが、一瞬早く気づいた相原は身を隠し、渋川を射殺する。

海からは、繁登裏が乗った巡視艇が接近し、陸からは、バイクを先頭に、トラックの荷台に立った大勢の国警部隊が難船崎に近づいていた。

銃の弾が切れた相原は、右腕に負傷しながら、何とか傷の手当をしてくれた美智子を隣の部屋に連れ込むと、さらにドアの鍵をかけ最期の砦とする。

繁藤ら海上保安庁一行は、難船崎に到着し、上陸すると、外で見はっていた子分たちと銃撃戦を始めながら、じりじりと都筑邸に近づいて行く。

国警部隊も都筑邸に近づいていた。

美智子は諦めかけていたが、相原は最後まで諦めてはダメだと力づける。

しかし、最後のドアも破られ、入って来た都筑から銃を向けられる。

次の瞬間、手を上げろと言う声が響いたかと思うと、都筑の背後に、繁藤率いる海上保安庁の隊員たちが、銃を向けて立っていた。

繁藤に促され、子分たちは素直に銃を捨てるが、銃を撃とうとした都筑だったが、繁藤によってその手を射抜かれ、銃を取り落としてしまう。

都筑一味が連行されて行く中、美智子を守った相原に近づいた繁藤は、しっかりと握手をして、互いに微笑み合うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

山の御大こと片岡千恵蔵と、北大路の御大こと市川右太衛門の二大スターがダブル主演した現代アクション。

戦後しばらく、GHQによって、時代劇製作が禁止されていた時代の作品である。

片岡千恵蔵扮するリャンコの政吉が、キャバレーのテーブルに酔いつぶれている所辺りから、どこかで観た内容だと気づいたが、これは、同じ比佐芳武脚本、松田定次監督で東映東京で作られた「奴の拳銃は地獄だぜ」(1958)の元ネタである。

つまり、「奴の拳銃は地獄だぜ」は、この作品の焼き直しと言うか、リメイクだった訳だ。

井上仙三を演ずる新藤英太郎は、両作品に同じ役で出ている。

2丁拳銃の名手の主人公を演じている片岡千恵蔵も、劇中の本名の違いこそあれ、リャンコの政吉と言う通り名は同じである。

クライマックスで、短い片足を挙げ、その下から曲撃ちを披露する所なども全く同じ趣向である。

一方の市川右太衛門の方は、千恵蔵ほどのアクション的見せ場はないが、マリを追いつめる尋問シーンでの「切々とした説得芝居」の見せ場が用意されている。

比佐芳武の脚本らしく、妙に堅苦しい言い回しを、両スターが早口でしゃべるので、慣れていないとなかなか付いて行けないかも知れない。

海上保安庁の話なのに、海上でのアクションがないに等しく、大半がキャバレーと都筑邸と言うセットの中での話と言うのが、ちょっと物足りなくもないが、片岡千恵蔵のユーモラスなキャラクターと、悪役月形龍之介の掛け合いの面白さなどもあり、テンポ良く進む展開は、今観ても飽きさせない。

本作での儲け役は、何と言っても月形龍之介だろう。

アル中で気性は激しいが、仲間には情が熱いワルを好演している。

片岡千恵蔵と市川右太衛門が、はじめて相見えるライターでタバコの火をつけるシーンは、まるで、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソン共演の「さらば友よ」(1968)の有名なラストシーンを連想させるようなキザな演出である。

海上保安庁の無線係として沼田曜一が出ているのも珍しい。