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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

2008年、掛川正幸 +大友麻子脚本、若松孝二企画+製作+脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ここに描かれた事件はすべて事実だが、一部フィクションも含まれる。(と、テロップが出る)

1972年、かつて日本にも、革命を叫び、銃を手にした若者がいた。

1960年6月15日 新安保条約批准阻止の第2次実力行使のため、国会議事堂に全学連7000人が突入し警官隊と衝突。東大の樺美智子さんが死亡

1961年5月16日 韓国で軍事クーデターが起こる

1962年10月22日 ジョン・F・ケネディがキューバ危機についてテレビ演説

1966年5月 中国文化大革命

学生運動の主役は、当時の大学生、高校生たちであった。

三里塚闘争が始まる。

学費値上げなどに端を発する学生運動が全国で噴出し始める。

明大の学費値上げ反対闘争に参加している二人の女性がいた。

遠山美枝子(坂井真紀)と重信房子(伴杏里)だった。

この運動は失敗したが、政治党派を復活させた。

共産同( ブント)、中核、開放派、全派系、三派系全学連…

学生運動を通じて顔なじみになった遠山美枝子と重信房子は、互いの生活などを打ち明け合っていた。

遠山は明大の学生、重信はキッコーマンで働いていたそうで、当時21才だった。

1967年秋 ベトナム戦争

10月8日 佐藤首相訪米阻止闘争

1968年1月17日〜21日 エンタープライズ号寄港反対運動

1968年 4月4日 キング牧師暗殺

6月11日 明大キャンパス

この頃になると、どこにも所属しないノンセクトの武闘派が出現していた。

塩見孝也 (坂口拓)は、仲間たちに「世界同時革命が始まる」と演説をしていた。

10月21日 新宿争乱で734名が逮捕される。

安田講堂や東大本郷キャンパスで機動隊と学生の攻防が行われた。

お茶の水駅封鎖は神田解放戦線と呼ばれ、631名の逮捕者が出た。

共産同(ブント)の松本礼二は、武闘は早すぎると発言していた。

4.28 沖縄デー

関西派の塩見孝也は関東派と対立

7月2日 関東派では、塩見たちの追放を検討していた。

1969年7月6日 明大キャンパス

内ゲバが起こり、さらぎ徳二(佐野史郎)が負傷する。

その悲惨な事件を目撃した高橋は、重信に向かって、こんなの革命じゃないよな…と話しかける。

7月24日 東京医科大の高橋は、バリケード封鎖中の中央大学校内で、塩見を拷問、監禁する。

関西派の幹部たちは、この行動に反対を表明

望月が7月24日死亡する。

この時期、警察の大学への介入が始まる。

8月28日 城ヶ島

塩見が赤軍派議長として演説をしていた。

田宮隆弘、高原浩之、花園紀夫、山田孝らに混じり重信房子も参加していた。

1969年10月21日 国際反戦デー争乱で1505名逮捕

11月5日 山梨の大菩薩峠の「ふくちゃん屋」で一斉検挙が行われる。

ワンダーフォーゲルを装い、爆弾の実験をしていた学生53名が逮捕される。

11月16〜17日 佐藤首相訪米阻止闘争で2093名逮捕

1970年1月 大阪

高原は、以前、運動中に逃亡した森恒夫(地曵豪)を運動に復帰させるが、その後6月7日逮捕される。

3月15日 塩見が逮捕される。

3月31日 ハイジャックが起こる。

赤軍派は「赤軍罪」と言われ、次々と逮捕される。

6月23日 日米安保条約自動延長騒動で92名が逮捕された。

バーで落ち合った遠山美枝子と重信房子は、窮地に陥った学生運動の中、互いに励まし合う。

そこに、活動資金を持った男がやって来る。

12月18日 板上赤塚交番が襲撃され、警官の拳銃が奪われそうになるが、抵抗した別の警官によって二人の学生が銃撃され、渡部と佐藤は重傷、柴野が命を落とす。

坂口弘 (ARATA)、永田洋子(並木愛枝)、寺岡恒一 (佐生有語)、坂東國男(大西信満)らが、埼玉県蕨市のとある旅館に集結していた。

1971年 東京アジトで中央委員会をやる。党の武装化を進めなければ行けない。そのためには銃が必要だと話し合っていた。

青砥幹夫(伊達建士)、重信も参加していた。

1971年12月17日 栃木県内真岡市の塚田鉄砲店に侵入した吉田と瀬木は、猟銃を盗み出す。

2月22日 市原市の銀行襲撃

バーで再会した遠山美枝子に、重信房子は「奥平」名義でパスポートが取れたと教え、帰り道、互いに涙を流して別れを惜しむ。

2月20日、 重信は、レバノンへ脱出する。

森は永田洋子に活動資金を渡していた。

メンバーたちは、小袖ベースへと移動する。

森は、警官の銃を奪えとメンバーたちに檄を飛ばし、今後は革命左派と赤軍が合流し、連合赤軍と名乗ることを発表する。

マイクロバスで交番を襲撃しようと出かけたメンバーの中から2名の逃亡者が出たと、永田洋子が報告し、このベースを使うのも危険になって来たとは判断する。

メンバーたちは、高崎市内の新たなアジトへ移動する。

そこで、M作戦で生き残った山崎順(椋田涼)、進藤隆三郎(粕谷佳五)、植垣康博(中泉英雄)が合流する。

しかし、家を貸していた進藤隆三郎の恋人持原好子(桃生亜希子)は、夜遅くまで起きていてうるさい男性メンバーたちに切れる。

それでも、進藤隆三郎とは一緒にいたいと甘える美子。

森は、スパイを殲滅すると、ある日メンバーたちに通達する。

女たち3人に足止めされていた早岐やす子(田島寧子)は、やって来た男たちに殺害される。

男たちは山にこもることにするが、決断を迫られた持原好子は、進藤について山に登りたいと言い出す。

丹沢ベースに拠点を作ったメンバーたちに、加藤能敬(高野八誠)、加藤元久(タモト清嵐)、加藤倫教(小木戸利光)の加藤三兄弟が合流する。

中核派が、成田闘争で景観を殺したと報じられた新聞を読むメンバーたち。

その間も、川島、松本、瀬木らが、逃亡後、続々逮捕されていた。

懐かしいバーに一人やって来た遠山美枝子は、そこで金廣志(RIKIYA)と久々に再会する。

金は、中央委員会に入りたいのだが疑われているんだと悩みを打ち明けてきたので、遠山は、あまり落ち込まないように慰める。

12月3日 新倉ベース

岩田平治(岡部尚)や大槻節子(藤井由紀)らと共に、遠山も共同軍事訓練に参加していた。

しかし、どこか本気になりきれていなかった遠山の物見遊山的な様子を、基地の窓から永田洋子がジッと観察していた。

その日、遠山に対し永田は、あなたは何で山に来たの?どうして革命戦士になろうとしたの?何で化粧しているの?なんで髪の毛を伸ばしているの?と追求して来る。

他の女も、どうして指輪を外さないの?と遠山を責め始めたので、周囲にいた男たちは、遠山を弁護しようとするが、永田は、山岳ベースはこんなもんじゃないのよ、こんなの、とても一緒にやってられないと言いながら泣き始める。

それをじっと聞いていた森は、共産主義化するまで山を降ろさない。総括を要求する。今後、任務以外で山を下りるものは処刑すると全員に言い渡す。

次の日からも厳しい訓練が続き、遠山も、男と同じように訓練について行かなければならなかった。

金子みちよ(安部魔凛碧)も参加していた。

そんなある日、銃に傷がついていることが判明、森は、銃器係である進藤を叱咤し、遠山と二人で総括しろと命じる。

遠山は、総括ってどうやるの?と戸惑うが、森は激怒し、自己批判しろ!みんなで彼らが総括できるように指導して行くと全員に告げると、行方正時(川淳平)も含め、遠山と進藤にランニングを命じる。

その後、三人に総括の言葉を言わせるが、それを聞いていた森は、全く総括が出来ていない。もう一回続行!と、再度ランニングを命じるのだった。

その後、山を下りることになった森は、残ったメンバー二人を呼び、遠山は重信房子に基金を送っているはずだから、重信の居場所をそれとなく聞き出しておくように命じる。

遠山は、その後、メンバーらに重信の居場所を聞かれたので、仕方なく、メモに記して渡すしかなかった。

12月15日 群馬県榛名山に榛名ベースが完成し、森たちメンバーが集結する。

中村愛子(木全悦子)、伊藤和子(一ノ瀬めぐみ)ら女性陣や、山本順一(金野学武)、山本頼良(金野明日華)、山本保子(比久廉)ら家族も合流するが、加藤能敬は合流メンバーたちに、分派主義を批判したことを自己批判しろと迫り、永田洋子も、是政でパクられたはずなのに、何であんただけ出て来れたの?と責める。

そんなある日、遠山は、小屋の外に作られたドラム缶風呂に入っていた。

夜、加藤能敬は、外で小嶋和子(宮原真琴)が殺人を思い出し恐怖に怯え泣いているのに気づく。

小嶋は、山を降りたい、永田や森の言うことがちっとも分からないと故くはくし、感極まって加藤に抱きついて来る。

その様子も、小屋の中から、永田洋子がじっと見つめていた。

永田の報告を聞いた森は、加藤と小嶋の行動を批判し、殴ることは指導であると言い出し、全員で「総括」の名の下、加藤を男たち全員に、小嶋は女たちにそれぞれ殴らせる。

加藤の弟二人も、無理矢理、兄を殴るように命じられる。

そんな中、尾崎充男(鈴木良崇)が、「以前、俺のこと、プチブルと呼んだだろう」と言いながら加藤を殴ったのを聞いていた森と永田は、総括を個人的恨みに矮小化したと難癖をつけ始める。

そんな様子を観ていた女の一人が、こんなことして…、意味ないわとつぶやくのを、森派振り返って睨みつけ、遠山と進藤、行方の三人は総括を確認しろと告げ、榛名ベースに移動させられる。

森は、尾崎の総括は、腹に集中しろと全員に命じる。

こうしたリンチを受けた尾崎は、大晦日に死亡する。

森はさらに、持原好子を逃がした進藤隆三郎を「総括」の名の下に、全員でリンチする。

遠山と行方にも殴れと命じるが、遠山は出来ないと拒否する。

すると、永田洋子が、あんたはどうして山で服を着替えているの?と責めてきたので、遠山は仕方なく、泣きながら進藤を殴るしかなかった。

進藤隆三郎は、1月1日に死亡した。

その後、総括を求められた遠山は、生きていたいとしか答えられず、女たちから一斉に責められる。

そうした中、永田は、遠山に小嶋の死体を埋めさせようと提案する。

遠山は、その夜、一人で、小嶋和子の全裸の死体を背負って、外に掘られていた穴に埋める。

しかし、その後も森から総括を求められた遠山は、自分で自分自身を殴ってみろと言い出す。

それを聞いた永田も、男に流し目をして来た目を中心に殴れなどと言い出す。

それに素直に応ずる遠山。

やがて永田は、男にこびて来た顔がどうなったか、自分で確認しなさいよと言いながら、手鏡に映った遠山の顔を見せる。

そこには、晴れ上がって二目と見られなくなってしまった自分の顔があり、遠山は泣き崩れるのだった。

酷寒の外に縛られていた加藤能敬の死亡していることを、ある日、弟が発見する。

弟は、こんなことをして、今まで助かった奴なんか一人もいないじゃないかと悔しがる。

小屋の中で縛られていた遠山は、トイレにも行かせてもらえず、既に半分精神もおかしくなっていた。

そんな遠山の脳裏に時々浮かぶのは、自分が学生運動に参加し、重信房子と知り合った頃の楽しい思い出だった。

1月7日、遠山美枝子は死亡する。

1月9日には行方も死亡する。

永田洋子は、寺岡恒一も責め始め、森は、お前は処刑だと言い放ち、全員で首を絞めて殺害する。

森は、山崎に対し、なぜ後ろに下がっている?と聞き、山崎は、自分も人間を利用することがあるから…と自己批判する。

そんな中、岩田と中村がアジトから逃走する。

森はスターリング主義者だ!と激怒すると、ナイフで腹を刺し殺害、永田は、妊った金子みちよの総括を要求する。

そんなある日、奥沢が合流する。

群馬県迦葉山ベース

1月3日 山本が死亡

1月30日 大槻が死亡

金子みちよは、妊娠8ヶ月だったが死亡する。

耐えきれなくなった山本保子が脱走する。

そんな中、森と永田は、町のホテルで抱き合っていた。

前沢が脱走

2月12日 妙義山

山田が死亡したと坂口が、森と永田のいる部屋に報告に来るが、永田は夫である坂口と別れて、森と一緒になると告げる。

森も、僕は今まで、山に連れて来れるような女と結婚しなかったことを自己批判すると平然と言ってのけ、坂口が、少し二人きりにしてくれないかと言う言葉には素直に従い、部屋を出て行く。

永田と二人きりになった坂口は、総括のことをどう思う?僕はもう、「総括」の「意味が分からなくなった。寺岡すら総括したのが分からないと告白する。

やがて、榛名ベースが警察に発見されたと言う報道を新聞で知った一行は、雪山を移動し始める。

しかし、警察のヘリコプターに発見され、9人のメンバーたちは走って、木立の中に逃げ込む。。

夜、永田と森が捕まったと言うニュースを携帯ラジオで聞くメンバー。

2月19日 二手に分かれて逃亡していた4人が、駅で検挙される。

5人の別グループは南軽井沢付近でヘリに発見され、逃げるが、警官の追跡を受ける。

坂口弘、坂東國男、吉野雅邦、加藤倫教、加藤元久の5人は、銃で追っ手たちに銃撃を加えながら、浅間山に逃げ込む。

彼らが逃げ込んだのは「浅間山荘」だった。

中には、管理人の奥さん(奥貫薫)だけがいた。

同居人を聞くと、客は今スケートに行っており、夫は犬を連れて散歩に出ていると言う。

加藤元久は奥さんの両手を縛ると、自分たちでカレーを作って、むさぼるように食べ始める。

その時、突然電話が鳴るが、しばらく放っておくと鳴り止む。

近所の主婦が玄関を叩くが、これも放っておくと聞こえなくなる。

やがて、窓から、投光器の灯りが差し込んで来たので、5人は身構える。

坂口は、管理人の奥さんに、自分たちは決して暴力は振るわないから、奥さんも、自分たちのことを管理人として普通に接してくれと頼む。

5人は善後策を話し合い、奥さんを人質に強硬突破使用と言う声も挙ったが、その時、外から「弘!」と坂口を呼ぶ母親の声が拡声器を伝って聞こえて来る。

坂口は思わず「老けたな…」とつぶやいただけだった。

その後、文化人を名乗る男の声が玄関から聞こえ、自分が人質になるから奥さんを開放してくれと要求して来るが無視する。

催涙弾が打ち込まれたので、5人は二階へ逃げる。

夜になると、屋根を破るような物音が聞こえるが、坂口は奥さんに、音だけです。騙そうとしているんですと説明して落ち着かせる。

翌朝、奥さんの夫、弟、父親が呼びかける声が聞こえて来る。

奥さんは、自分をベランダに出して、無事だと言うことを肉親たちに伝えさせてくれ。それが駄目なら電話をさせてくれと頼むが、坂口は断る。

その後、坂東國男の名を呼ぶ母親の声が聞こえて来たので、肉親を使いやがってと怒った坂東は、猟銃を窓から発砲して答える。

そんな二階の部屋に、又催涙弾が投げ込まれ、放水も始まる。

全員、奥さんの寝室に逃げ込む。

全員ずぶぬれになるが、その後、見張り中のメンバーがビスケットを食べているのを見つけた他の仲間がクッキーこそ半革命の象徴だと文句を言い始め、言われた方も反論して、緊張感が高まるが、それを押さえた坂口は、奥さんに、今後も中立を守ってくれと頼む。

奥さんは、交換条件として、裁判になっても、私を証人として呼ばないで欲しいと訴える。

坂口は少し考えた後、承知する。

1972年2月28日 山荘の上空を飛んでいたヘリが、実力行使をするとアナウンスして来る。

メンバーたちは、必死に応戦、そんな中、奥さんは握り飯を作ってくれる。

それを食べながら、同志たちにも食べさせたかったな…と、死んで行ったものたちを思い出した会話が出ると、何言ってるんだ!俺たちみんな勇気がなかったんだ!坂口さん、あんたも勇気がなかったんだ!と、一番年下だった加藤元久がわめき出す。

それを坂口も、黙って聞くしかなかった。

放水が再開されたので、加藤元久は、玄関口に手製爆弾を投じて抵抗するが、機動隊が突入して来て来る。

1972年2月28日 5人は検挙され、未成年だった加藤元久だけは保護観察になる。

1973年1月1日 森恒夫は獄中で自殺する。

1972年5月30日 日本赤軍はテルアビブ空港で乱射事件を起こす。

1974年1月31日 シンガポールで日本赤軍がロイヤル・ダッチ・シェルの石油タンク爆破 

2001年 重信房子は赤軍の解散を宣言する。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

連合赤軍の成立と解散までをドキュメンタリー風に描いた映画

力作だとは感じるが、低予算であることに加え、劇中にも登場する重信房子などにも取材をしていることも関係してか、かなり意図的に淡々としたタッチで、客観的かつ時系列的にエピソードを羅列しているように見えるために、連合赤軍の歴史を知る資料的な意味合いは大きいと思うが、映画的な面白さを期待すると、もう一つ食いたりないような物足りなさが若干残る。

特に、タイプは全く違うが、「鬼畜大宴会」(1997)のような、学生運動リンチ事件をベースにした、本当の若者が独自の感性で作った狂気溢れる見せ物映画を観ていたりすると、この映画は、大人が善くも悪くも抑制を利かせて作ったインテリ映画のような無難な内容に見えてしまうのだ。

もちろん、これは通俗な娯楽映画を意図して作られたものではないので、あえて、連合赤軍を残虐非道な反社会的グループとか、異常者の集まりとして、おもしろおかしく描こうとしている訳ではないことは理解できる。

それでも、なぜかのめり込めない理由を考えると、それは「主役不在」の描き方になっているからだと思う。

前半部分は、一応、遠山美枝子が主役で、彼女の目を通して観た赤軍の変貌…と言う描き方なのかと思っていると、意外とそうでもなくなり、彼女も、単なる犠牲者の一人になってしまい、その辺から、一体誰の目線で描かれているのか曖昧な展開になって行く。

森恒夫や永田洋子も、きわめて重要なポジションにいる人物たちだが、どう考えても主役ではない。

特に、浅間山荘事件の前時点で彼らは逮捕されてしまっており、二度と画面に登場することはない。

その後、浅間山荘での中核になる坂口弘も、主役と言う印象ではない。

つまり、この作品、連合赤軍の歴史に関わった人物たちを総括的に描いてしまっているため、人物個々の掘り下げは何もないまま終わっているのだ。

おそらく、そこが「食い足りなさ」の原因だと思う。

これでは、資料で調べた連合赤軍の成り立ちを、再現フィルム風に映像化してみました…と言うだけではないか?

本来ドキュメンタリータッチとはそう言うものであり、劇中に登場している人物たちの大半は逮捕されたり、既に亡くなっている人たちなので、想像で勝手に作った心理描写などを混入させることは、あえて避けたと言うことかも知れないが、一番、観客が興味を持って知りたかったのは、その部分だったのではないだろうか?

参加メンバーたちは、元々は、普通のまじめな学生だったはずである。

その普通の若者たちが、どこでどうやって異常な心理、異常な行動、異常な集団に変化して行ったのか?

その内面が一番知りたいのだ。

ドキュメンタリータッチであっても、そこをえぐろうとする方法論はあったのではないか?

その一番核心部分を何となく避けてしまっているように見える所が、この作品を、何かぬるい印象にしてしまったように思えてならない。