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誰も知らない

2004年、「誰も知らない」製作委員会、是枝裕和脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

羽田から走る東京モノレール

一人の少年が赤い旅行鞄を持って乗っていたが、その爪は汚れ、服装も薄汚れていた。

タイトル

とあるマンションに引っ越して来た母子が、そのマンションの大家、吉永夫婦(串田和美、岡元夕紀子)に挨拶をしていた。

母親(YOU)は福島けい子と名乗り、息子(柳楽優弥)は、小6の明と挨拶する。

母親は、明は父親に似て、勉強も良くできるなどと自慢する。

やがて、引っ越し業者がマンションに到着し、荷物が運び込まれるが、業者が帰ったあと、二つの大きな旅行鞄から出て来たのは、次女のゆき(清水萌々子)と、次男の茂(木村飛影)だった。

母子二人と大家に言っていたのは噓で、実は、けい子には子供が4人いた。

明は、最後の一人である長女の京子(北浦愛)を駅に迎えに行く。

子供の数をごまかしていたのは、前の住居で、子供がうるさいとクレームがあったため、やむなく引っ越さざるをえなかったからだった。

その夜、そばを食べながら、けい子は子供たちに、ここで住むルールを教え込んでいた。

大きな声で騒がないことと、外に出ない。ベランダへも出てはだめと言うことだった。

一番うるさい茂には、特に念を入れて注意するが、洗濯機がベランダにある洗濯はどうするのか?と聞く京子に対しては、京子だけは特別に、ベランダに出て良いことにする。

その夜、けい子の横で寝ていた京子は、畳の新しい良い匂いがするとそっと語りかける。

翌朝、けい子は勤めに出かけて行く。

茂やゆきがテレビを観たりしている中、明は一人で近所のコンビニに買い物に出かける。

その夜、明は夕食用のカレーを一人で作る。

深夜、けい子が帰宅し、明がやっていた勉強を見てくれたりするが、そのとき、けい子に誰かからか携帯がかかって来る。

どうやら相手はカラオケからかけており、けい子を呼び出しているようだったが、さすがに、けい子は断る。

翌朝、京子はけい子に、学校行きたいと申し出るが、お父さんがいないと学校でいじめられるなどとけい子はごまかす。

ベランダで布団干しをしながら、けい子は明に、今好きな人がいると打ち明ける。

明は、又?と呆れるが、今度の人が結婚してくれたら、大きな家にも住めるし、あんたたちも学校に行けるし、京子も好きなピアノが弾けるとけい子は夢見るように語る。

ある晩遅く、酔って帰宅して来たけい子は、土産にもって来た寿司を食べさせようと、既に寝ていた茂やゆきを無理矢理起こす。

酔ったけい子は、起きて来た茂やゆきたちに、ダイニングでお茶を入れてやろうとしていた明の父親は羽田で働いていたのだと打ち明ける。

さらに、京子の父親は音楽プロデューサーで、自分は一時期歌手になろうとしていたのだと、京子にマニキュアを塗ってやりながら語る。

翌朝、明は、「しばらく留守にします。京子、茂、ゆきをよろしく」と書いたけい子も置き手紙と、まとまった金を発見する。

明は洗濯をしていた京子にそのことを打ち明け、多分、仕事の関係だと思うと言い添える。

その日、銀行で家賃の振込やコンビニで公共料金の振込を終えた明が、買い物を終え、雑誌コーナーで立ちこみした後、店を後にしようとすると、後から追って来た店長中延司(平泉成)が明を呼び止め、コンビニの事務所に連れ込むと、あれこれ家庭のことを聞き出す。

明は、袋に入っていた知らない商品に驚きながらも、父親はいないこと、母親が留守をしていることなどを正直に打ち明けるが、その時、新人の女子店員宮嶋さなえ(タテタカコ)が、その子が取ったのではなく、さっき漫画を呼んでいた別の子が入れたと思うと証言してくれる。

店長は驚き、誰にも言わないでくれと謝罪しながら、肉まんを明に持たせてくれる。

その夜、家計簿をつけている明の様子を見守っていた京子の指のマニキュアは、もうほとんど取れていた。

夜中、寝ていた京子は、明が一人起き上がり、どこかに電話をしている様子に気づく。

翌日、明は、タクシー会社に出かけ、タクシーの中で寝ていた運転手杉原(木村祐一)と会う。

杉原は、ゆきの父親である可能性の一人として明は前から知っていたのだった。

母親がもう一ヶ月も帰って来ないことを打ち明けた明だったが、杉原は、ゆきは俺に似ているか?と聞くだけで、何もしてくれそうにもなかった。

続いて明が向かったのは、パチンコ屋で働いている京橋(遠藤憲一)と言う男の所だった。

彼も又、ゆきの父親の可能性がある一人だった。

しかし、京橋も又、明の突然の訪問に困惑している一人であり、今の彼女がカード依存症で借金が増え、少しずつ返している所だなどと、金がないことを切り出すが、それでも、迷った末、これが最後だぞと明に言いながら5000円だけ渡してくれる。

京橋は、ゆきは自分の子供ではないと、別れ際に言い捨てる。

その頃、マンションでは、茂が窓際でいじっていたおもちゃの一部がベランダに落ちるが、それを拾おうと手を伸ばしているのを、姉たちに注意されていた。

しかし、その夜、突然、けい子が戻って来る。

子供たちは喜ぶが、大阪に行っていたなどと説明しながら色々土産を渡したけい子は、明と茂の髪を切ってやる。

自分もかまって欲しい京子は、母親のマニキュアをいじっていたが、床に落として中身をこぼしてしまったので、けい子に叱られる。

その後、けい子が、又、自分の荷物をまとめ始めたので、子供たちは不安感に襲われる。

そんな子供たちの気配を感じたのか、けい子は、クリスマスには帰って来ると言葉をかけ、翌朝、又マンションを出て行く。

そのけい子に付いて行った明は、相手に僕たちにこと話したの?と問いかけ、途中、話をするためマックに立ち寄ったけい子に、いつになったら学校に行かせてくれるの?前から言ってるけど、母さん、勝手なんだよ!と問いつめる。

けい子はいら立ち、学校に行かなくても偉くなった人はたくさんいる。勝手と言うなら、あんたのお父さんの方が勝手、急にいなくなったりして…と責任転嫁を始めたかと思うと、母さん、幸せになっちゃいけないの?などと逆ギレし出す。

その後、けい子から現金書留が届き、明たち兄弟だけの生活が又始まる。

京子は、けい子が拭き取った、床のマニキュアの痕を指でなどっていた。

クリスマスの日、明はコンビニ前でクリスマスケーキを売っていた店長中延と宮嶋の様子を眺め、夜、値下げするのを待って購入して帰る。

その途中、川に教科書を捨てている女子中学生と出会う。

その夜、夕食の後片付けをする明と京子は、母さんが帰って来なかったとこっそり話し合う。

明は思い切って、母親が勤めているはずの紳士売り売り場に電話をしてみるが、けい子は先月で退職したと聞かされる。

カップそばを食べる子供たち。

明は、現金書留の送り先に書いてあったけい子の川崎の住所の電話番号を「104」で聞くと、そこに電話してみる。

すると、「坂本です」と答えた声は明らかに母親のものだったので、何も言えなくなった明は、そのまま受話器を降ろしてしまう。

正月、いつもの「桜ヶ丘南店」のコンビニで買い物を済ませ、帰宅途中だった明は、コインランドリーで一人洗濯をしていた宮嶋を見かけたので、何となく会釈して、中に入ると、お年玉袋に、兄弟たちの名前を書いてもらい、それに金を入れて、母さんからもらったと言いながら、帰宅後、兄弟たちに渡す。

京子は受け取ったお年玉袋をそのまま今までのお年玉を入れた箱にしまうと、貯めてピアノを買うと言う。

母親を恋しがるゆきは、どうしても駅に迎えに行きたいと言い出したので、仕方なく、明は、母親が土産として与えたリュック型の熊のぬいぐるみを背負ったゆきに靴を履かせると、モノレールの駅まで連れて行ってやる。

マンションを出るとき、大家夫婦と出くわすが、明は親戚の子が一日だけ泊まっていると嘘をつく。

はじめて地元の商店街を歩くゆきは、駅前で座ると、以前明が買ってやったお菓子の最後の一つをうれしそうに食べる。

そんなゆきに、明は走り去るモノレールを見ながら、このモノレールは羽田に行くので、いつかこれに乗って飛行機観に行こうねと話しかける。

その後も、明の一人での買い物は続く。

ある日、公園を通った明は、落ちていた赤いボムボールを見つけ、しばし、それで遊ぶのだった。

その頃、部屋にこもっていた京子は、お年玉を入れた箱を確認し、去年まで母親からもらっていたお年玉の字と、今年明からもらったお年玉袋の宛名の字が全く違うことに気づいていた。

茂も、いつの間にかルールを忘れ、ベランダに出るようになっていた。

明は明で、勝手な行動をとるようになる。

見つけたゲーセンに入り、人のゲームを観ているうちにはまり出し、ゲーセン仲間とコンビニに出入りするようになっていたのだ。

やがて、その連中のチャリにも乗せてもらえるようになり、明は持ち金を公共料金の振込などに使わなくなって行く。

そして、いつしか、その友達たちが、マンションの部屋にやって来るようになる。

兄弟たちは、その明の勝手な行動に呆然とするしかなかった。

やがて、明たちの部屋は、明の仲間たちのたまり場のようになって来る。

最初は、ちょっかいをかけて来た茂も、相手にされないと気づくと孤立してしまう。

ある日、そんな友達とコンビニに行った明は、商品を万引きするよう強要される。

明はさすがにためらうが、友達が先に万引きをし、コンビニの隣の隙間で、明の分用に万引きしな商品を手渡しながら、俺たち友達だろう?今度は取って来いなどと言われると、もう何も言えなくなってしまうのだった。

その日の夜、兄弟皆が寝静まった中、明は一人でテレビゲームをしていた。

後日、明は、友達が通う中学の校門前で待ち受け、下校して来る友達を見つけると、新しいゲームを買ったので、又遊びに来ないかと誘ってみるが、塾があるからなどと言い、もう誰も相手をしてくれなかった。

遠ざかって行く友達たちは、明の身体が臭いなどとひそひそ話をしていた。

一人帰りかけた明は、女子中学生三人が面白そうに駐輪場の方を眺めて走り去って行くのを目撃する。

横を通り過ぎようと駐輪場の方を見やると、そこには、以前教科書を川に投げ込んでいた女子中学生が一人で立っていた。

近づいてみると、彼女が見ていた先には「天国の水口紗希へ」と書かれた小さな供物が置かれていた。

どうやら、彼女の名前が水口紗希(韓英恵)で、他のクラスメイトから陰湿ないじめを受けているのだった。

家にいた京子たちは、突然、入口のブザーが鳴ったので固まる。

ちょうど、家に帰り着いた明も、玄関前にいた郵便配達人を見て、物陰に隠れてやり過ごす。

部屋に戻った明は、寄って来たゆきが、しっかり明の服を握りしめて来たのを観る。

ある日、コンビニの前で女店員の宮嶋に、アルバイトがしたいのだがと持ちかけた明だったが、16になるまで無理と言われてしまう。

明のことを案じた宮嶋は、警察とか福祉事務所に届けた方が良いのではないかとアドバイスするが、そうすると、4人一緒に住めなくなる。前にもそうなって大変だったと打ち明ける。

帰宅した明が、残し少なくなった金を前に家計簿をつけていると、京子が自分で貯めていたお年玉全部を差し出す。

ピアノ買うんだろ?と明は問いかけるが、京子は良いのと答えるだけだった。

そんなある日、明は決心する。

ゆきや茂たちを、桜が満開の外ヘ連れて行くのだ。

思い切ってマンションの外に出た彼らは、コンビニに寄ると、大量の食品を買い込む。

そのレジを担当した宮嶋は、お母さん帰って来たの?と聞き、明はうんと答える。

近くの空き地で、土などを集めた明と茂は、姉妹たちと一緒にマンションへ戻ると、めいめい、食べ終えたカップ麺の容器に自分の名前を書き、それに土を入れ、外で拾って来た植物の種を植えることにする。

そのとき京子は部屋の電気が付かなくなっていることに気づく。

料金を滞納していたので、電気を止められてしまったのだ。

水道も止められた為、兄弟たちは、近所の公園の蛇口から水を運んで来るようになる。

その公園のベンチで一人腰を下ろし本を読んでいたのが水口紗希だった。

そんな紗希に近づいた茂は、学校行ってないのと話しかけ、ぼくも行ってないんだと教える。

そんな茂に、紗希は微笑んでしまう。

自然に、紗希もマンションの部屋に付いて来る。

ベランダに並んだ雑草の栽培はいつしか数が増えていた。

ゆきは、すっかりちびてしまったクレヨンで、お絵描きをしていた。

明は、自分のシャツの匂いを気にしていた。

そんな明に、京子が風邪引いたの?声が変と話しかけて来る。

ある日、外で出会った紗希が、髪洗っている?と明に聞いて来る。

お母さん、いつ帰って来るの?とも聞くので、もう帰って来ない…、多分と明は答える。

そんな明に、自販機のジュースを買って渡した紗希は、高級マンションの中に帰って行く。

夜、真っ暗な部屋の中で、明は、紗希からもらったジュースの蓋をじっと見つめていた。

ある時から、明は、コンビニの新しい店員広山潤(加瀬亮)から、売れ残りの弁当を、こっそり分けてもらうようになる。

ずっと家賃を滞納しているけい子の部屋に不審を抱いた大家の妻が、ある日、京子とゆき、紗希ら女の子だけが残っていた部屋にやって来て、あんたたち、親戚の子?と聞くので、全員頷いてしまう。

ある日、明に会った紗希は、お金を自分が作ると言い出し、駅で中年サラリーマンと待ち合わせをした後カラオケ手に入る。

その間、ずっと外で待っていた明に、店から出て来た紗希が金を差し出そうとすると、明は入らないと拒絶する。

紗希は、カラオケを一緒に歌っただけだよと教えるが、明はそのまま走って立ち去ってしまう。

茂も、いつしか、勝手にマンションから出歩くようになる。

自販機の釣り銭ボックスの中をのぞいて歩くのが習慣になったようだ。

明は、そんな茂が食べたいと言うカップそばを買って帰って来るが、肝心の茂が部屋にいないことに気づく。

京子は、押し入れの中に閉じこもっていた。

外に探しに出かけた明は、茂が近所の子供たちとリモコン遊びをしている所を見つけ、お前がそば食いたいと言うから買って来てやったんだろ?調子に乗るなよ!と言いながら、茂が遊んでいたおもちゃを蹴飛ばして帰る。

しかし、根っから楽観的な茂は、悪びれた風もなく、すぐに明の後から付いて帰って来て、ちゃっかりカップそばのかき揚げをかじるのだった。

雨の日も、明は公園の蛇口から水を運んでいた。

マンションでは、飲料用に冷蔵庫に入れていた水を、茂がベランダの植物にかけていた。

帰って来た明に、ゆきは、紗希ちゃん遊びに来る?と何度も尋ねるが、来ねえよ!と明は切れる。

いら立った明は、タンスに残っていた母親の衣装を外に引っ張り出す。

それを見た京子は止めてと止め、衣装を掴んでタンスの中に入り込んでしまう。

明は、もう帰って来ねえんだよ!と怒鳴りつけるが、それを聞いたゆきや茂は凍り付いたように黙り込む。

ある日、明は、中学校のグラウンドを金網の外に座って眺めていた。

中では野球の試合が始まろうとしていたが、どうやら一人、塾に行ってメンバーが足りないようだった。

明が気がつくと、中に立っていた少年野球の監督(寺島進)が、君、何年生?と明に話しかけて来る。

その後明は、グラウンドの中に招き入れられ、休んだメンバーの交代要員としてユニフォームを着せられ、野球の試合に出ることになる。

その頃、明の帰りを待ちわびていたゆきは、ベランダの所にイスを置き、その上につま先立ってずっと外を眺めていた。

ホワイトベアーズの一員として、楽しく野球を終え帰宅した明は、部屋の中で倒れて動かなくなっているゆきを発見する。

一緒にいた茂が言うには、イスから落ちたのだと言う。

明は、公衆電話で母親を呼び出そうとするが、けい子が電話口に出る前に、持っていた十円玉が切れてしまう。

薬局に行った明は、店員の目を盗み、薬を万引きして帰る。

その後、紗希に会いに来た明は、金を貸して欲しいと頼む。

ゆきに飛行機を見せてあげたいんだと言うのだった。

コンビニに向かった二人は、大量の菓子を買うが、それを売る中延店長は、ピクニックかい?などと愛想笑いをしてくる。

部屋に戻ると、母親からの現金書留が届いていた。

夜、ゆきの身体を旅行鞄に詰めようとした実だったが、いつの間にか成長していたらしく、ゆきの身体は前に入っていたバッグには入らないことに気づく。

それで、以前、茂が入って来た赤い旅行鞄の方に入れ、紗希と二人でモノレールに乗せ、羽田の近くまでやって来る。

飛行機が飛び立つ空き地の土を掘り始めた明は、ゆきの死体が入った鞄に土をかぶせるとき、今朝、ゆきの身体を触ったら、冷たくて気持ち悪かった…と、ためらいながらつぶやく。

その手を、そっと紗希が握りしめる。

ゆきの入った鞄を埋め終え、泥だらけになった明と紗希は、又モノレールに乗って帰るのだった。

翌日から、明たち兄弟は、又、コンビニで残りものの弁当をもらって買える生活を始める。

ゆきがいなくなった代わりに、紗希が一緒だった。

交差点に差し掛かった時、明は、上空から聞こえて来る飛行機の音に気を取られる。

気がつくと、茂がシャツを引っ張っていた。

信号が青に変わったのだった。

交差点を渡った所にある自販機の釣り銭ボックスを覗いていた茂は、公衆電話の方で小銭を発見したようだった。

うれしそうに、先を歩く明たちに合流する茂。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実際に起こったと言う無惨な幼児置き去り事件を元に作られた作品。

最初マンションに越して来た時、母親が自分の家族のことを大家に自慢話風に説明していた所や、母親が連れていた子供たちは皆父親が違っている点などは、現実の事件を参考にしているようだが、全体的には、かなり思い切ったアレンジがしてあるように感じる。

当初、責任感が強く、兄弟たちの面倒を良くみていた長男が、だんだん途中から、勝手な行動をとるようになる所とか、こちらもしっかりしていた長女が、やがて、閉所に閉じこもる逃避に走るようになったり、近所でいじめを受けて登校拒否をしていた女子中学生が登場する辺りは、監督独自の発想だと思われる。

一番幼く、長男に頼る以外にすべがない末っ子の女の子がいたいけな演技なだけに、最後の無惨さが胸を締め付けて来る。

母親を演じるYOUは、リアルにダメな母親に見える。

終止、きりっとしたまなざしで、現実を見つめている明を演じる柳楽優弥の存在感はすごい。

他の兄弟たちも皆うまいし、ちらり登場するゲスト陣たちも印象に残る。

暗い内容だが、特に陰々滅々とした描き方ではなく、淡々と描いているので、観ていて、嫌な気分になると言うようなことはない。

ラストも、救いがないと言うより、何か一抹の希望が見えると言うか、子供たちの生命力に期待を持たせるような終わり方になっている。