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薔薇合戦

1950年、松竹京都+映画芸術協会、丹羽文雄原作、西亀元貞脚本、成瀬巳喜男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

有楽町

里見雛子(若山セツ子)は、義兄と同じ百合化粧品に勤める茂木(安部徹)に声をかけられ、気が進まないまま車に同乗してしまう。

茂木は雛子に、最近会社の雰囲気が悪くて…と話すが、雛子が何も知らない様子なのを知ると、姉さんは、あなたに何も話さないの?と不思議がる。

雛子の姉真砂 (三宅邦子)の夫里見剛三(小林立美)は、真砂と共に百合化粧品の乗っ取りを画策をしていたが、病気を患ってしまい、今や背任横領の罪で会社から訴えられそうな状況になっていた。

家で寝たきりになった夫に、帳簿の穴埋めを何とかしないと…と心配していた真砂は、医者を呼びに出かける。

その頃、料亭「すみだ」に連れて来た雛子に、百合化粧品の内部資料を渡した茂木は、前々から雛子のことが好きだったなどと言い出し、雛子を困惑させていた。

こんな時にそんなことを言い出すなんて卑怯だと雛子に言われた茂木は、自分が卑怯なら、里見君と君の姉さんは詐欺師だよと反論する。

その後、病状が悪化し、医者の往診を受けていた里見は、笠原さんに何とかしてもらおうとつぶやき、真砂は、自分がお願いすると夫に約束する。

茂木と別れ帰宅して来た雛子に、先に帰宅していた三女の千鈴(桂木洋子)は、義兄さん、ダメらしいのと教える。

里見の死後、茂木が、百合化粧品の代理人として水野(静山繁男)と言う弁護士を従えて里見家を訪れると、水野の横領金として78万円を請求して来る。

雛子が茂木と密かに出会っていることなど知らない千鈴は、兄さんの敵だったんでしょう?何しに来たのかしら?などと、突然やって来た茂木のことを詮索していた。

茂木が帰り、妹たちに合流した真砂は、里見が着服したと78万も請求されたと教えるが、それを聞いた千鈴は、義兄さんだって、会社を乗っ取ろうとしたんだから腹黒いわとずけずけと言う。

その直後、真砂が出かけると、雛子は、姉さんは一人になった方がやりやすいのよ。卍巧くやるわと千鈴に言う。

その言葉通り、笠原宅広(進藤英太郎)の屋敷を訪れた真砂は、新会社設立の計画と資金提供を申し出る。

これからはあなたとより昵懇にしたいと、笠原はすぐに了承するが、利潤だけはきっちり頂戴すると、実業家らしい言葉を吐く。

笠原のバックアップを得た真砂は、百合化粧品の社員たちも引き抜くと、自ら社長となり、新会社「ニゲラ化粧品」を華々しく立ち上げる。

映画雑誌「シネ・ロマンス」で働いていた千鈴は、ある日、姉の真砂から電話を受け、東洋映画の宣伝部にいる園池雀太郎(鶴田浩二)に連絡してくれないかと依頼される。

ニゲラ化粧品の宣伝部に引き抜く為だった。

その後、園池のアパートを訪ねた真砂を出迎えたのは、園池の子分格らしい尾関(青山宏)だった。

さらに、部屋の中には園池だけではなく、彼が離婚した先妻までいた。

先妻は、色々嫌みを言ってくるが、真砂は気にせず、園池と尾関を共にニゲラ化粧品に迎える話をまとめる。

入社した園池と尾関は、踊っているだけで痩せると言う「ニゲラ美容科学研究所」を見学し、それをどう宣伝するか考えることになる。

園池の入社を祝うためニゲラ化粧品に来た雛子と千鈴に、真砂は園池と共に夕食を一緒にしようと誘う。

「スエヒロ」での夕食を終えた雛子と千鈴は、一足先に帰宅し、笠原のことを噂し合う。

千鈴は、姉さんのパトロンよとあっさり答え、姉さん、急に若返ったでしょうと皮肉を言う。

さらに、千鈴は、近々自分は家を出ようと思っていると雛子に打ち明けるのだった。

ある日、会社で「ニゲラ月報」と言う宣伝誌の打ち合わせを尾関としていた園池は、雛子を試写会に誘い、千鈴とも合流する為に、喫茶店で時間つぶしをしていたが、そこに先妻が現れ、尾関さんが邪魔してくれと連絡して来たと言う。

雛子と園池は、すぐに席を立とうとするが、園池に近づいた前妻は、これでも、元妻だから、あなたがどんな女が好きかくらいは分かるつもりよと愉快そうに耳打ちする。

後日、会社で働いていた雛子に、茂木が電話をしてきて、迷惑がる雛子に、6時半に渋谷図書館で待っていると一方的に連絡して来る。

その日、園池と喫茶店で会っていた千鈴は、「流行」と言う雑誌の江島さんって知っているか?と聞き、結婚してみようと思っているといきなり伝える。

万事にドライな千鈴は、結婚も事務的に考え、何事でも経験だと思ってやっているつもりと言うので、聞いていた園池はあっけにとられる。

料亭「すみだ」に渋々やって来た雛子は、茂木との約束を取り消してもらいたいと申し出るが、茂木は、書類もちゃんと渡したんだし、自分は本当に君のことが好きなんだ。家内を亡くした後、里見君も、君をやっても良いと話していたなどと迫る。

一方、「シネ・ロマンス」の編集部で一人残業してた千鈴の元にやって来たのが江島彦二(大坂志郎)だった。

千鈴は、自分がアパートを借りても、あなたには鍵は渡さない。生活はあなたに頼らないから、あなたも私に頼らないでねと釘を刺すのだった。

その日、茂木から無理矢理、自宅前まで車で送ってもらった雛子だったが、その直後、別の車で帰って来た真砂が、二人を目撃してしまう。

家に入った真砂は雛子を自室に呼ぶと、何で茂木さんと付き合っているの?あの人は、私たちの敵じゃない?と問いつめる。

その頃、千鈴の方は、江島と一緒に自宅近くまで帰って来ており、路上でキスをして家に入る。

陰で、そんな犠牲が払われていたなんて知らなかったと愕然とする真砂に対し、雛子は、茂木さんとは何ともないのだと必死に抗弁する。

そんな二人の会話を、千鈴は耳にしてしまう。

ニゲラ化粧品の躍進は凄まじく、次々に百合化粧品契約店を奪って行く。

ある日、百合化粧品から引っ張って来ていた日夏泰介(永田光男)と言う男性社員を呼んだ真砂は、雛子をもらってくれないか?と言い出す。

社長からの突然の申し出に喜んだ日夏は、数日考えさせてくれと返事をし席に戻って来てからも、にやけていたので、同僚の女性社員山下喜代子 (若杉曜子)は何事かと不思議がるのだった。

雛子が真砂の決めた相手と突然結婚することになったことを知った千鈴は、日夏さんにとっては出世よねと、自宅で、人のことばかりを気にし自分の意志がない雛子に皮肉を言う。

自分はいよいよ家を出て結婚する。アパートを借りて、試験的に結婚するのだと打ち明ける千鈴の言葉を聞いた雛子は心配するが、自分の身体のことは自分で責任を持てば良いじゃない?姉さん、今度は私を誰と結婚させるつもりなんでしょう?と嫌味まじりに答える。

即日、園池に会った千鈴は、どうして姉さんに手を出さなかったの?あの人はどうせ人形みたいな人なんだから、所有した方が勝ちだったのよと打ち明け、姉さん誘って、逃げ出したら良いのよなどと無責任な提案までする。

しかし、後日、雛子は、真砂の決めた通り、日夏と結婚して、列車で新婚旅行に出かけていた。

一方、千鈴の方も、アパートに遊びに来た江島に、どうして女は男に弱いのか分かったような気がする。生理的な理由かしら?などと甘えかかっていた。

もっと結婚って興奮する体験かと思っていたがそうでもなかったと言いながらも、今夜は泊まって行ってくれと千鈴は懇願する。

しかし、江島は、きっぱり断って帰ると言い出す。

園池の方は、その日もアパートにやって来た先妻から復縁を迫られていたが、君に愛情を持てないんだと冷たく返事をしていた。

ある日、園池が、社長室で「ニゲラ月報」の打ち合わせを真砂としているとき、小島と言う相手から電話をもらった真砂は、園池を部屋から出すと、急にうれしそうに、6時頃、家に来てくれと電話の相手に頼む。

その日、真砂の家にやって来た小島(岩井半四郎)と言うのっぺりした二枚目風の男に対し、真砂は甘えかかるように、笠原とは何の関係もなく、あの人は、私の身体まで搾取しているのと打ち明けると、家で働いてみないか?と誘いかける。

そこにアパート暮らしを始めていた千鈴が急に服を取りに帰って来たので、小島を、お能を観に行く時の友達だと紹介すると、千鈴の部屋に行き二人きりになると、あなたが出て行って、姉さんとっても寂しいの。園池さんどう思う?と聞いて来る。

千鈴は、自分は雛子姉さんのような結婚はしたくない。我が道を行くと答え、すでに江島と結婚していると言うことは打ち明けなかった。

アパートに戻った千鈴は、江島が外で待っていたことに気づくと、うれしくなって部屋に上げるが、江島が千鈴に見せたのは、1万円借りたと言う借用書だった。

来月にはきっと返すと甘えて来た江島に、千鈴は、始めにそれぞれの生活は別々だと言ったでしょう?と憮然とするが、江島は、社長である姉がバックにいる千鈴のことをすっかり当てにしているようだった。

途中からひがみ始めた江島の機嫌を損ねたくなかった千鈴は、仕方なく、持っていた5000円だけ渡すが、江島は調子に乗り、残りの5000円分、何か品物を寄越せと抱きついて来てキスをする。

後日、雛子の新婚家庭にやって来た千鈴は、男って、何のかのとさんざんいじめといて、後でかわいがろうとするなどとのろけ話をし始め、2時からの試写会に一緒に出かけない?園池さんも来るわよと誘うのだった。

ニゲラ化粧品社長室では、容器の選定を一人行っていた真砂が、書類を持って来た日夏に、雛子はどうしています?あの子、引っ込み思案だから、出来るだけ外に出すようにしてあげて下さいと頼んでいた。

久しぶりに妹と試写会に出向いた雛子は、そこで園池と再開するが、その試写会に出席していた山下喜代子が、仲睦まじく話す彼らの様子を目撃してしまう。

その頃、真砂は、営業部長(井上晴夫)から、営業の片岡が急に辞めたいと言っているので、日夏を抜擢したらどうでしょうと提案していた。

しかし、真砂は、女社長だから身びいきしたと言われたくないので、それは止めましょう。外部に出来そうな人を知っていますと告げていた。

会社に戻って来た山下は、日夏に、試写会で雛子と園池が会っていたことを報告する。

その後、料亭「すみだ」に山下を連れて来た日夏は、近々、販売店を銀座や新宿などの盛り場に新設するつもりだから、その時は君に任せようと思うと話しかけ、地盤が出来たら独立するんだと告白すると、喜代ちゃん、ぼくは安心したいんだ。あいつは冷たい人形なんだと雛子の悪口を言う。

山下は、園池さんが好きなんじゃないの?と女の勘を教えるが、そのとき女将がやって来て、茂木さんは時々きれいな女性とここに来たことがあると教えたので、それを聞いた日夏の顔色が変わる。

泥酔して帰宅した日夏を懐抱する雛子が訳を聞くと、姉さんに聞けば良いなどと不機嫌な日夏は、姉さんのお陰で出世などしたくない。部長が推薦してくれたのに、外から人を連れて来るなんて…。主任なんかならなくて良いんだ。君を妻にもら他方がうれしいんだなどと言いながら、抱きつこうする。

しかし雛子が気分が優れないからと断るとすると、君は、ぼくと一緒じゃ気分が優れないんだろう?お前たち姉妹は、何を考えているのか分からない!俺は馬鹿な男さ!と暴れ始める。

ある日、千鈴のアパートに、赤ん坊を背負った見知らぬ女(千石規子)が訪ねて来て、ずけずけと部屋に上がり込むなり、赤ん坊を降ろしながら、江島が大変お世話になったそうだが、江島はあんたの男妾なんですってね?と言い出す。

あなたは一体誰ですと緊張した千鈴に、女は、自分は江島のれっきとした妻ですと名乗る。

別居結婚って言うんだったね?と平然と聞く女は、江島が千鈴からもらった着物の質札を見つけたので江島が白状したのだと教える。

呆然とする千鈴に女は、江島は少ししかお金を持って来ない。病院にかかっている赤ん坊の為に1万円ばかり都合してもらえたら御の字よと落ち着いて答える。

ニゲラ化粧品の新しい会計主任として園池たち社員たちに紹介されたのは小島だった。

小島があまりにも若かったので、日夏は営業部長に愚痴っていた。

都内に販売店を増やす話はどうなかったのか?と聞く日夏に、部長は、社長の所でストップしたままなんだと打ち明ける。

そんな会社にやって来た千鈴は、屋上で園池に江島のことで相談を持ちかける。

身体を与えたことは、好きだったので後悔していない。別居結婚なんていい加減だけど、結婚よと気丈に言う千鈴に、園池は慰める言葉もなかった。

話の成り行きで、前の奥さん、どうしているの?と振られた園池は、どっかのホールで働いているそうだと教える。

その夜、「HOT POINT」と言うバーに酔って入って来た日夏は、先客として飲んでいた茂木と出会う。

茂木は、かつての同僚を隣に招くと、園池にはどのくらい払っているの?とか、日夏君は絶対に首にならないからうらやましいなどと、下びた話題を振って来る。

奥さんは元気かね?君は天下の果報者だ。ぼくは去年妻を亡くしてから寂しいよなどと世辞を言い出した茂木に、急に、目が据わった日夏は絡み出す。

「すみだ」には、誰と行っているんだ?と問いつめて来たのだ。

慌てた茂木は、あの時は、君の奥さんになるとは思わなかったんだと急に低姿勢になった茂木だったが、積もり積もった鬱積が突如爆発した日夏は、そんな茂木につかみかかって行く。

深夜帰宅した日夏は、風呂が沸いたと知らせに来た雛子に、俺は良い。お前が入れと言い出す。

雛子は、もう遅いので…と断ろうとするが、人の言葉は素直に聞け!と怒鳴られると、従うしかなかった。

雛子が入浴していると、外の炊き釜の所に来た日夏は、中から気づいた雛子がちょうど良いと断っているにもかかわらず、どんどん薪をくべ、風呂を熱くして行く。

たまらなくなり、浴室を出ようとした雛子だったが、扉が外から施錠されていることに気づく。

何度も、あなた!と叫ぶ雛子だったが、日夏はそのまま部屋に戻ろうとする。

しかし、さすがに良心の呵責に耐えかねて浴室に向かうが、雛子は浴室で失神していた。

その際、流産したことが分かり、20日間も入院することになった雛子を、千鈴が見舞いに来る。

雛子は、自分が身体が弱いから、お産は無理だったのと言い、風呂では滑っただけだと嘘をつく。

そんな雛子に、毎日のように花を贈って来る人があるらしく、その日も看護婦が預かって部屋に来る。

その送り主に興味がありそうだった雛子は、小嶋さんは姉さんの良い人なのと雛子に教える。

その小島は、ニゲラ化粧品の社長室で、帳簿を見せながら、社長の判がなく、代わりに日夏の判が押してある使途不明金がいくつかあると指摘していた。

どうやら、仲間も2.3人いるらしいと言う小島の報告を聞いた真砂は、思わず小島にしなだれかかるが、そこにノックもせず入って来た尾関に見られてしまう。

真砂は、尾関に営業部長を呼んで来させるが、小島から、日夏には愛人がおり、それは営業の山下だと教えられると驚く。

山下喜代子は、日夏を自分のアパートに呼び、酔って絡んでいた。

日夏は、会社でまずいことをやってしまったと後悔していたが、その付き合いをしてしまった山下の方もヤケになっており、自分はどうしてくれる?こうなりゃ、あんたの行く所、どこまでも付いて行くしかないとくだを巻いていた。

予想通り、日夏は、札幌出張所への左遷が命じられる。

その事例を手渡した営業部長は、しっかり頑張ってくれたまえと言うしかなかった。

その日、入院中の雛子を見舞っていた尾関と園池は、やって来た日夏に挨拶をして帰る。

日夏は、札幌出張所詰めになった。君も来てくれるね?と頼むが、返事をしない雛子の態度を観ると、分かった!君の気持ちは分かっていたんだと言い出し、毎日花を贈って来るのはあいつなんだろう?園池はああ見えてドンファンなんだ。奥さんの浮気を知ると、すぐに別れたんだと悪口を言い出す。

すると、雛子の方も、あなたは湯殿で私を殺そうとしたんです、あなたは恐ろしい人です!と珍しく言い返し、泣き出す。

思わぬ妻の反抗に気持ちが折れた日夏は、ぼくの思い違いだったら謝るよ、とても一人では北海道に行けない。これから新規蒔き直しでやろうと雛子をなだめるのだった。

ある日、真砂の社長室にやって来た江島は、「女社長 色と慾の二筋道」と題された原稿を差し出し、これを書いた男と知りあいで預かったものだが、こんなものが世間にバレたら大変でしょう…と強請って来る。

真砂はいくらか?と聞くと、3本でどうだと言うので、3万円ねと返事をすると、私がどんな男かは、千鈴さんにお聞きくださいと、江島は意味ありげに教える。

そこに園池が入って来て、江島を外に連れ出すと、君は強請をやるような男じゃないと言い聞かし、追い返すと、真砂には、口止め料を払ったら、相手は味をしめるだけですと忠告する。

真砂は、あなたは、私って女を軽蔑なさいます?女ってダメねと自嘲すると、江島と千鈴のことを聞こうとするが、園池は良く知らないとごまかす。

そこに小島がやって来る。

一方、雛子に会いに来た千鈴は、日夏は北海道で山下と同棲しているらしいと教え、別れるつもり?と聞いていた。

雛子は翌日、園池に相談しに来るが、ちょうど園池は小島と一緒に、社長室で、藤村歌劇団を招くイベントの打ち合わせ中だった。

その間、雛子の相手をしていた尾関は、入院中、花を贈っていたのは園池だったとこっそり教えていた。

やがて、園池が戻って来たので、花の礼を言う雛子だったが、ちょっと尾関をにらんだ園池は、雛子を外へ連れ出す。

そんな園池に、尾関は今夜、一杯おごれと合図をしていた。

雛子は、北海道へ行く事を園池に打ち明ける。

園池は、日夏が同棲をしていることも知っていたのかと驚くが、雛子さんはこれまで、姉さんのロボットでした。それが、日夏まで不幸にしてしまったんですと教えると、日夏に会って、自分の意志で話していらっしゃいと勧める。

それを聞いた雛子は、私の思うままに振る舞っていいんですね?と確認するのだった。

その日、千鈴もニゲラにやって来るが、園池は約束通り、尾関とビアホールで飲んでいた。

尾関は、ニゲラももう先が見えて来たな。君はニゲラに入って後悔していないか?と園池に聞いていた。

その夜、真砂は、自宅に来ていた小島に、今は雛子も自宅に戻っている時なので、前の用に来て欲しくないと婉曲に慣れ慣れしい付き合いを断っていた。

しかし、どうしても笠原と手が切れないと言うことですか?ぼくはあなたのなぶりものではないんだ。もう父にも打ち明けてしまったんですと、小島は真砂に迫る。

真砂は、興奮する小島を前に、今の私には事業の方が大事なのと言い切る。

その日、帰宅した園池は、部屋の前で待っていた千鈴を観て驚く。

訳を聞くと、江島がアパートに来て、奥さんと別れたので、もう一度一緒になってくれと頼んで来たので逃げて来たけれど、恋愛そのものには諦めない。今日はここに泊まると言い出す。

困惑した園池は断り、どうしてもここに泊まるなら、自分は近くの友人に所に行くと言うと、お願いだから、今夜はこの部屋から出ないでと千鈴は懇願する。

そんなことも知らずに、自宅に戻っていた雛子は、園池が編集した「ニゲラ月報」を読んでいた。

その夜、園池は、自分のベッドに千鈴を寝かせ、自分は床に毛布を引いて寝ることにするが、ベッドの千鈴はずっと泣き通しだった。

翌朝、新婚気取りで、園池に新聞を渡した千鈴だったが、ふとその一面を観て興味を惹かれる。

そこには、江島が売り込んで来た里見さん姉妹の醜聞が載った「真相実話」と言う雑誌の広告が載っていたからだった。

それを指摘された園池は、まさか、江島が本当に売り込んだと知り悔しがる。

しかし千鈴の方は動揺するどころか、かえってニゲラの宣伝になるんじゃない?それを宣伝に利用しないなんて宣伝部長らしくもないなどと悪ぶって言い出したので、思わずビンタした園池は、それが世間に知れたら、姉さんの立場がどうなるか分かりそうなもんじゃないか!と叱りつける。

出社すると、早速尾関が「真相実話」を熱心に読みふけっていたので、それを取り上げた園池は、雑誌社に売ったのは実は茂木で、茂木に売り込んだのが江島だと教える。

尾関は、社長は今、笠原に呼ばれて出て行ったよと、愉快そうに伝える。

その日、自宅に戻って来た千鈴は、昨日は園池さんの所に泊まって来て、朝は、パンとコーヒーを自分が準備したのだと雛子にわざと教える。

園池さんとなら、こんな生活もまんざらじゃないなって言いながら、千鈴は泣き出していた。

雛子は、ソノイケさんだったら、きちんと責任を取って下さるはずよ。私、ソノイケさんとお会いすると言い出した雛子に、謝りながらも千鈴は、まだ何も知らない様子の雛子に、買って来た「真相実話」を出してみせるのだった。

会社では、真砂が、小島が出社しなくなったと言う営業部長に、もう出て来ないでしょうから、あなたが未収代金をどしどし処理して!と命じていた。

帰宅した真砂は、雛子から北海道に行く事を聞かされると、わざわざ北海道に行く必要はありませんと言い聞かせる。

ニゲラも立ち行かなくなったし、あんな男にまだ未練があるの?と聞く真砂だったが、あんな男と結婚させたのはどなたです!と、珍しく雛子が声を荒げる。

日夏と一緒になって、色々哀しいことがありました。でみ、今、あの人が山下さんと幸せになりたいなら、そうしてやりたいのと雛子はしっかり自分の意見を言う。

それを聞いた真砂は、今までのことは自分が悪かった。今度は私も、分相応の小さなお店でも経営しようと思っているのだと打ち明ける。

千鈴のアパートに来た雛子は、園池さんとは会えないのか?と聞くが、家で話したことは全部噓だったのだと詫びた千鈴は、まさか、そのことで北海道へ発つんじゃないでしょうね?と聞き、もしそんなことだったら、北海道へは行かないでねと頼む。

ちょっと呆然とした雛子だったが、千鈴に、そろそろ家に戻るように諭し、もう、姉さんも、今度は気がついたことでしょうと優しく慰めるのだった。

雨が降る中、傘もささずに自宅に戻って来た千鈴は、私のこと、怒っているんでしょう?と聞くが、真砂は、過ぎたことは仕方ないわ。姉さんにも責任あるんですもの…と許す。

千鈴は、雛子姉さんの北海道行きのことで、今まで園池さんを探していたのだと打ち明ける。

上野駅で、青森行き列車に乗り込んでいた雛子は、ホームにやって来た園池の姿を発見して喜ぶ。

園池は、千鈴から聞いて来たと言い、いってらっしゃいと送り出す。

自宅では、真砂が、責任は皆にあるのね。私たち、やり直しねとつぶやいていた。

雛ちゃん、帰って来るかしら?と案ずる姉に、千鈴はきっと帰ってくるわよと励ます。

雨が上がったようね?と、縁側から外を見やった真砂と千鈴は、あら、月かしら?と空を見上げるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

性格が異なる三姉妹の生き様を描いた文芸作品。

今観ると、三人の女性の生き様が、それぞれ「女の浅知恵で愚かしい」と言う男目線で描かれているように思えてならない。

どちらかと言うと女性向けの映画だと思うが、当時の女性客は、この描き方で納得していたのだろうか?

長女の真砂は、上昇志向のある野心家タイプだが、仕事が順調にいき出すと、すぐに若い燕といちゃつき出すようなタイプの女として描かれており、これは、ステレオタイプな男像をそのまま女性に投影しただけの男発想キャラクターではないだろうか?

人形のように自分の意志をあまり持たず、人のことばかり気にして生きている次女の雛子も、当時は、そう言う女性もいたのかも?と想像するくらいで、あまりピンと来る人物には見えない。

三女の千鈴にしても、ドライな考え方のモダンガールとして一見描いているようで、実は、単なる「世間知らずの夢見る夢子さん」に描いているようにも見える。

とは言え、それらの印象は、全部、今の感覚で観た場合の話であって、戦後間もない頃の女性にしてみれば、どのタイプも、どこかしら共感できる、理想が込められたキャラクターだったのかもしれない。

そして、この物語は、そうした当時の女性の理想像が、現実の前ではもろくも崩れ去ると言う現実を突きつけている。

結局、女性は慎ましやかで、分相応の生き方をしなさいと説いているようにも感じられる。

そう言う結論も、当時の女性は納得できたのだろうか?

特に女性限定と言うことではなく、青春の理想と挫折物語として捕らえるべき内容なのかも知れない。

古い時代の作品なので、後年のイメージとはかなり違うキャラクターとして登場している例が多く、例えば、鶴田浩二が、やけに二枚目のインテリとして描かれていたり、長女真砂を演じている三宅邦子が主役と言うのも珍しいような気がする。

美人なのだが、小津作品などでは脇のイメージが強い人だからだ。

大坂志郎の生活力のない二枚目役と言うのもあまり観たことがないような気がする。

真砂の若き燕として登場する岩井半四郎などは、正直、キャスト表を見なければ、誰だか分からない始末。

千石規子のように、当時から面影があまり変わらないので、登場したとたんに分かる存在も凄いけれど。

ちょっと幸薄そうな若山セツ子や、世間知らずの令嬢なのに、悪党ぶったり、ドライな言動をもてあそんでいる千鈴を演ずる可愛らしい桂木洋子は、観た目通りの適材なのかも知れない。