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秋日和

1960年、松竹大船、里見弴原作、野田高梧脚本、小津安二郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京タワーの風景

三輪秋子(原節子)の亭主三輪周三の七回忌に招かれた、高校時代から三輪と親友だった田口秀三(中村伸郎)、平山精一郎(北竜二)、それに三輪の元部下だった社員(須賀不二男)などが、客がそろうまでの間、料亭の部屋でビフテキの話などしている。

平山の方は、妻に先立たれて足掛け5年になる大学教授だった。

秋子と、その娘のアヤ子(司葉子)が脇で控えていると、そこに周三の兄で、伊香保で旅館を営んでいる三輪周吉(笠智衆)がやって来る。

平山は、先日はせがれがスケートに行き、世話になったそうで…と礼を言う。

田口の方も、平山から分けてもらった伊香保土産のワラビは周吉からもらったものだったと知ると、この年になると、ああいうものが旨く感じるようになるなどと、又、食べ物の話をする。

やがて読経が始まるが、そこに、遅れて来た間宮宗一 (佐分利信)が加わって座る。

隣に座っていた田口が「始まったばかりだ」と教えると、間宮は「(来るのが)早すぎたかな」と答える。

読経が済み、先に帰った周吉以外の三人男たちは酒を飲んでくつろぐ。

秋子は、田口さんに頼まれたので、お坊さんには短くしてくれとお願いしていたんですが…と、集まってくれた昔なじみの三人に恐縮する。

アヤ子の話題になり、周三が死んだ時は18だったが、今は24になったと知ると、田口は、29才で東大の建築出、今は大林組にいる男に心当たりがあると言い出す。

秋子が周三と結婚したのは20の時だったのだ。

その話は笑って聞き流し、秋子とアヤ子が先に帰ると、残った三人男は、娘も良いが、自分たちには、母親の秋子の方が良い。色気が出て来たと言う話になる。

あんな美人を嫁にもらったのでは短命なのも仕方ないなどと雑談している所に女将(高橋とよ)が挨拶に来たので、間宮は「ご亭主は長生きでしょう?」と皮肉を言う。

昔、本郷三丁目に薬屋があり、そこにきれいな娘がいた。今帰ったあの人なんだよと田口が秋子の若い頃から知っていることを女将と平山に打ち明ける。

自分と間宮は、秋子目当てに、いろいろな薬を買いに行ったものだが、それを三輪に持って行かれたと言うのだ。

女将は、イモリの黒焼きを買えば良かったのにと冗談を言いながら去って行く。

田口と間宮は、あんな女将が女房だと亭主は毎晩プロレスか?短命かも…などと又皮肉を言い合う。

帰宅した田口は、日高家に嫁いだ洋子(田代百合子)のバッグが置いてあり、先方の義母とうまくいかないようで帰って来ており、4〜5日いるらしいと、妻ののぶ子(三宅邦子)から聞く。

そこに、風呂から上がって来た洋子が顔を出し、家を出て来た理由は不満の集積よとあっけらかんと答える。

田口はのぶ子に、アヤ子の夢入り先にと考えていた友達の弟のことを聞くが、もう決まったと知らされがっかりする。

そんな田口の様子を見ながら、本当は秋子さんの方でしょう?昔、薬を買ったんでしょう?と皮肉る。

そこに、息子の和男(設楽幸嗣)が、風呂が沸きすぎていると教えに来たので、田口は風呂へと向かう。

後日、秋子が、間宮の勤めている会社にやって来たので、田口の話のことを間宮は聞くが、もう決まっていたんだそうですと秋子は笑って答える。

間宮は、これから、手伝っている友達の服飾学院に行かねばならないと言う秋子を昼食に誘う。

ウナギ屋にやって来た間宮は、さっき会社のエレベーターの所で会った男覚えているかいと秋子に聞く。

秋子が気づかなかったと言うと、うちのバスケットのキャプテンをやっている男だと言いながら、パイプを手にしたので、それに気づいた秋子は、三輪がイギリスに行った時に買ったパイプが数本あるので、もらっていただけませんか?と聞く。

その夜、帰宅した間宮から、アヤ子の結婚相手として、社員の後藤の話を聞いた娘の路子(桑野みゆき)は、後藤さんは良いと言い出す。早稲田の政経を出ていて、実家は伏見の酒屋だと、やけに詳しい事情を知っている。

一緒に聞いていた妻の文子(沢村貞子)は、相変わらずおきれい?と意味ありげな目つきで間宮を見る。

あなただってお好きなんでしょう?と秋子のことを言っていることが分かった間宮は、それは田口だよとごまかすが、お薬買ったんでしょう?と文子は嫌な笑い方をする。

その日帰宅した秋子は、間宮から聞かされた後藤と言う男の話をアヤ子にするが、アヤ子は、そのお話お断りしてよ、私、まだ、お嫁に行きたくないのと冷たく返事をする。

好きな人、本当にいないの?と秋子は心配して聞き直すが、アヤ子は、お断りしての一点張り。

アヤ子は、でも、良いのかしら?と案ずる母親に、これからも仲良くしましょうと握手を求める。

桑田服飾学院で授業を教えていた秋子が控え室に戻って来ると、友人で学院長の栄(南美江)の夫、桑田種吉(十朱久雄)が、アヤ子用に用意していたらしい見合い写真を秋子に見せる。

しかし、秋子は申し訳なさそうに、アヤ子は、まだ結婚したくないって…と断る。

そこに、そのアヤ子から電話がかかって来て、今日会社が終わった後、和光の角で会おうと約束する。

アヤ子が勤めていた会社の同僚佐々木百合子(岡田茉莉子)は、隣に座っているアヤ子に、帰りに買い物に付き合わないかと誘うが、アヤ子はもう約束があるのでダメだと断る。

恋人か?と怪しんだ百合子だったが、アヤ子はお母さんとよと笑う。

その日の昼休み、アヤ子は、間宮の会社に、秋子が約束していたパイプを届けに来るが、そこへ書類を持って来たのが後藤庄太郎(佐田啓二)だった。

間宮は、部屋を出かけた後藤を呼び止めると、このお嬢さんだよ。君を振ったのは…と、アヤ子を指して教える。

後藤は、ああそうですかと感慨もなく答え、会釈して出て行く。

アヤ子は、間宮の意地悪を嫌って、そそくさと部屋を出るが、ちょうどそこに、又書類も持って戻って来た後藤と廊下ですれ違ったので、ばつが悪くなるが、後藤は、東邦商事にお勤めだそうですね。経理の杉山によろしく行って下さい。同じ大学だったんですと話しかけて来る。

その夜、アヤ子と一緒に映画を観た後、「若松」と言う店で食事をした秋子は、あなたが嫁いでしまうと、こんなことできなくなるわねと話し、それにしても、寿退社をする同僚の送別会にハイキングなんて…と、アヤ子の話に呆れる。

帰宅後、アヤ子は、明日のハイキングに持って行く固定スープを買い忘れて来たと首をすくめる。

そんなアヤ子のことを、お父さんそっくりと秋子は言う。

アヤ子は、一度温泉にでも行きましょうと母親を誘う。

秋子は、昔、親子で出かけた修善寺のことを覚えている?と聞くと、アヤ子は覚えていると言う。

バタピーを池のコイにやったら、翌日、白い腹を上にして浮かんでいたので驚いたとアヤ子は答える。

お母さんのお母さんだって、我慢してくれていたのよ。そういうもんよ、親子ってと秋子はアヤ子に話す。

翌日の日曜日、アヤ子は、会社の同僚7人で、結婚する同僚の送別ハイキングへ出かける。

到着した山荘で、男たちは麻雀を始めるが、アヤ子に、三和商事の後藤、振ったんだって?新宿のトリスバーで会ったよと話しかけて来たのは、後藤の学友だったと言う杉山常男(渡辺文雄)だった。

同僚の新婚旅行を、会社の屋上から見送ることにしたアヤ子と百合子は、通り過ぎて行く列車を見守るが、窓から花束を振ると約束していた同僚の姿は見つけられなかったのでがっかりする。

二人は、その日の披露宴にも呼ばれなかったのだ。

アヤ子は、みんな離れて行くのよと悟ったように言うが、百合子は、私たちの友情が結婚までのつなぎなら寂しいじゃないとふくれる。

ある日、銀座で、ゴルフボールを買った間宮が、ゴルフショップの前の喫茶店に入ると、そこで、後藤と一緒に来ていたアヤ子を観かけ驚く。

間宮は二人に同席するよう誘うが、後藤は、杉山と一緒だったので帰ってしまう。

アヤ子だけが間宮のテーブルに座り、後藤とは杉山の紹介で、今日はじめて会ったのだと説明する。

後藤ってどう?と間宮が聞くと、アヤ子は知らない!とふくれる。

好きなんだね?じゃあ話は簡単じゃない?結婚だよと間宮は話を進めるが、アヤ子は、私の場合、母と一緒です。好きと言うことと、結婚は別に考えたいと答える。

間宮は、君はよっぽど、お母さんが好きなんだねと間宮が感心すると、良くけんかもするとアヤ子が答えたので、よっぽど好きでないとけんかなんかしないさと間宮は笑う。

後日、ゴルフ場で会った田口と平林に、アヤ子と後藤の話を間宮がすると、田口は、まずお母さんを片付けるんだねと言い出す。

間宮が田口に、秋子さんに再婚の意思があるかどうか聞いてみろと勧めるが、相手はどうすると言うことになり、その場にいた平林はどうだと言い出す。

クラブハウスで、ビールを飲みながら、二人の話を聞いていた平林は、自分のことが話題に出てちょっと驚くが、級友三輪の細君をもらうなんて、不道徳だと迷惑がる。

しかし、田口と間宮は、替わってやりたいよと平林の顔を見る。

その日、帰宅した平林は、ちょっと落ち込んでいたが、一人息子の幸一(三上真一郎)に、どうしたのかと聞かれたので、結婚を勧められたと打ち明ける。

相手は誰かと言うので、三輪のおばさんだと教えると、幸一は後妻をもらった方が良い。俺が結婚したら、父さん、俺の所に来るだろうし、それは迷惑だからとドライなことを言い出す。

その言葉を聞いた平林は、息子が自分の再婚に賛成してくれることを知ると、急に元気が出たように体操など始める。

翌日、間宮の会社にやって来た平林は、この間の話を田口に進めさせてくれないかと恥ずかしそうに頼む。

間宮は、平林の変心ぶりに呆れながら、急にかゆいと頃出来たんだね?どこがかゆいんだか知らないが…と惚けながら、日東電気の田口に電話を入れてみるが、田口は不在だと知る。

その間、そわそわしていた平林は、トイレに行くと言いながら部屋を出て行く。

バー「ルナ」で、間宮と田口が飲んでいる。

秋子の所に話を持って行った田口の話では、妙なことになった。秋子は死んだ亭主の話をするばかりで、まるで再婚話など持ち出せる雰囲気ではなかったと言う。

間宮は、平山は本気なんだぜと、ちょっと気にする。

田口は、秋子が相変わらずきれいだったと、二人きりで会って来たことをあれこれ披露し、あげくの果てにパイプまでもらって来たと、取り出してみせながら、かゆい所には、メンソレでも塗っといてもらうんだねと言う始末。

そこに期待しながらやって来たのが平林で、話の展開を聞きたがるが、迎えた田口と間宮は、二人そろってパイプで鼻の横をさすったりしながら、急いじゃいかんとなだめるだけ。

間宮の家に遊びに来ていたのぶ子は、帰宅した間宮から秋子と平林の話を聞くと、私だって断るわと呆れて文子に語りかける。

そんな親たちを尻目に、路子はナイターを観に出かける。

のぶ子は文子に、自分たちの若かった時代の方が良かった。少女過激に憧れていたくらい。今は、ロカビリーだのプレスリーだのってなどと、まだおしゃべりし続けていたが、間宮は、じゃあ、アヤちゃんの方から片付けますよ、ご忠言に従ってと女房たちに答える。

ある日の昼休み、いつものウナギ屋にアヤ子を呼び出した間宮は、単刀直入に、後藤のことは好きか嫌いかと聞き、嫌いじゃありませんと言う返事を聞くと、後藤もそう言っているので進めていいね?と話を畳み掛け、困るようなことはさせないよ、もしお母さんが再婚されるとしたらどうする?と、考え込んでいる文子の気持ち察して続ける。

それを聞いたアヤ子は、その話、もう決まっているんですか?と問いかけるが、相手は平山だと聞くと、又考え込んでしまう。

帰宅したアヤ子はずっと無言で、事情を知らない秋子があれこれ話しかけても、返事すらしなかった。

アヤ子は、お母さん、何か隠していることない?再婚なさるの?平山さんは、お父さんのお友達じゃない。汚らしい。そんなの大嫌い!と、何のことか分からず返事が出来ない秋子に言い捨てて、そのまま部屋を飛び出して行く。

「笹屋」と言う寿司屋にやって来たアヤ子に気づいた女将のひさ(桜むつ子)は、義娘の百合子を呼び、百合子は二階にアヤ子を上げる。

百合子の父が、寿司屋の主人芳太郎(竹田法一)で、貝好きな常連客(菅原通済)の相手をしていた。

アヤ子から事情を聞いた百合子は、分かるけど、勝手すぎない?自分には好きな人があって、お母さんには厳しいの?と疑問を口にする。

自分も、今のお母さんは後妻だけれど気にしなかった。お父さん、だらしのない人だけど仕方ない。世の中、そんなにきれいなものじゃないと大人びたアドバイスをする。

そこに、ひさが寿司を持って上がって来るが、一緒に食べようと誘う百合子の言葉に返事もせず、アヤ子は帰ると言い出す。

そんなアヤ子に、百合子は、ああ帰れ!帰れ!何さ、赤ん坊!と冷たく言い放つ。

帰宅したアヤ子を待っていた秋子は、あんたこそ隠しているんじゃない?後藤さんのこと。お母さん、いつ言ってくれるのか、待っていたのよ。どうして言ってくれなかったの?と問いかける。

それに対し、アヤ子は沈黙を続ける。

翌朝、出社したアヤ子はまだ黙り込んでおり、その様子を観た百合子は、怒ってろ、怒ってろ、今日も明日もあさっても…とからかう。

その日、後藤とラーメン屋で会い、事情を話したアヤ子は、そりゃいかんな、けんかしちゃいかんよとなだめられる。

ぼくなんか、母を早く亡くしたんで、けんかなんかしなけりゃ良かったと後悔しているんだと昔話をし出す。

後藤が中学3年の頃、空腹で帰宅したのに飯が出来ていなかったので、かんしゃくを起こして家にあった布袋人形を全部壊してしまった。その時のおふくろの顔が忘れられない。その年の秋に死んじゃったんだと言う。

それを聞いたアヤ子は、素直にそうねと答える。

その夜、秋子のアパートにやって来た百合子は、アヤ子はどこに行っていると思う?夕べ、色々聞いたのと、昨日、自分の家にアヤ子が来たことを教え、おばさん、再婚した方が良い。アヤ子が結婚したとき重荷になるもの、おばさまさえ決めれば、アヤ子、決めるって言ってたわと続ける。

しかし、秋子が平山との話は本当に知らないのだと聞くと、じゃあ、どうなんだろう、そんなこと言いふらして…と百合子は不思議がる。

そこにアヤ子が帰って来て、帰ってよ!と言うので、百合子も帰るわよ!と返事をし、部屋を後にする。

翌日、間宮の会社に平山がやって来て、変なことになって、おかしなのが来たと言い、間宮を応接室まで連れて行く。

そこには田口も来ており、百合子が立っていた。

平山は、アヤちゃんのお友達なんだそうだと間宮に百合子を紹介する。

間宮と会った百合子は、どうしてあなた方は、静かな池に石を投げ込むようなことをしたんです?そうして、平和な家庭を乱すようなことをするんです?おばさま、この人のことなど、ご存じないじゃないですか!と追求する。

平山は、君の所は応接室があるからまだ良いけど、ぼくの所は学校でこれをやられたんだぞと迷惑そうに間宮を観る。

間宮は唖然とし、手違いは重々謝る。三輪のおばさま、再婚の意思ありですか?と逆に質問する。

それに対し、百合子はありますと答え、このおじさまなら、良いわ、素敵と、平山のことを褒めたので、急に緊張した平山は又トイレに行く。

その後、三人の男と飲み明かした百合子は、シメとして、自分の寿司屋に黙って連れて来る。

何も知らない田口は、こんな場末のチャチな店の方が旨いんだなどと言い出す。

酔った百合子は平山に向かい、平山君、三輪のおばさま、幸せにできる?愛せる?永久によと問いかけ、平山はうれしそうに、出来るよと答えるが、そこにひさが帰って来たので、この店が百合子の自宅だと言うことがバレる。

しかし、百合子は、しらっとして、ここのお勘定払うのよと平山に命ずる。

アヤ子の結婚が決まり、百合子は杉山と、会社の屋上で話をしていた。

百合子は、自分だって、母さんには気を使っているのだと言い、杉山が、又、送別会、山に行くかとの提案に、行こ、行こと応ずる。

アヤ子は秋子と、伊香保の周吉の旅館に旅行に来ていた。

二人に挨拶に来た周吉は、アヤ子の結婚を喜びながらも、本当は秋子のことの方が心配だったと打ち明ける。

周吉が去り、二人きりになった秋子は、隣の布団にアヤ子を招く。

アヤ子は、昔、修学旅行の最後の日が嫌だった。お母さん、そんなことなかった?と、親子水入らず最後の旅行の寂しさを訴えるが、秋子は、アヤちゃん、お母さん、再婚するの、汚らしいって言ったわね。母さん、結婚は、お父さんでたくさん。今から、又、麓から山を登るなんてもう懲り懲り。母さんのこと、気にしないで、後藤さんの方へ行って良いのよと話す。

あんなアパートと一緒じゃどうしようもない。あなたには、これからどんな幸せが待っているか分からないじゃない。お母さんはお母さんで、どうにでもなるわよ。お母さん、嘘ついたなんて思わないでね。分かるわね?分かってくれるわねと言い聞かせる。

翌朝、修学旅行の女学生たちが記念撮影をしている中、甘味所で汁粉を食べていた秋子とアヤ子は、亡くなった周三のことを思い出しながら、こうして二人きりでの旅行もこれが最後ね、幸せになってよと話し合っていた。

後藤とアヤ子の結婚式には百合子も招かれていたが、同じく招かれていた平山は元気がなかった。

そんな中、後藤とアヤ子の婚礼写真の撮影が始まる。

式の後、料亭に集まった真美や、田口、平山の三人は酒を飲みながら、大分、ごたごたしたけど、面白かったと話し合っていた。

そんな中、俺だけダシに使われて面白くなかったよ。お前らは良いよ、パイプもらったからと言うのは、振られた平山だった。

しかし、世の中って、よってたかって複雑にしてたんだな。面白かったね、あの寿司屋の娘…などと、田口と間宮はのんきそうに振り返る。

そんな二人を恨めしそうに観ながら、しかし、秋子さん、どうするつもりかね?かゆい所は、依然としてかゆいよとふてくされるのだった。

そんな平山は無視して、他に何かないかねと間宮はつぶやき、田口が、お前の所のお嬢はどうかね?などと言い出したので、間宮はむっとして、まだまだ…、お前たちには絶対頼まんと断言する。

その頃、一人アパートへ帰って来た秋子が就寝の準備をしていると、土産を携えて百合子が訪ねて来て、おばさま、私ちょくちょく来て良い?と尋ねる。

秋子が喜ぶと、良かった、おばさま元気で…、良いお母様持って、アヤ子幸せよと言い残し帰って行く。

一人になった秋子は電気を消し、布団の上に座り込むが、結婚式に着ていった紋付をじっと見つめながら、静かに微笑むのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

昭和35年芸術祭参加作品。

「晩春」(1949)と基本的には同じテーマと言って良い。

セルフリメイクと呼んでも良いような気さえする。

「晩春」では娘役だった原節子が、この作品では母親役に転じている。

親子二人きりで仲睦まじく暮らす家庭があり、それを、他人が娘の方の嫁入りのお節介を焼いて、親子の仲が一時険悪な雰囲気になり、自分が娘の結婚の妨げになっていると悟った親が再婚をすると嘘を付き、娘を結婚させると言う展開は同じである。

キャラクター設定も良く似ており、「晩春」で杉村春子が演じたおせっかいな叔母さんに当たるのが、この作品での中年男三人組であり、月丘夢路が演じていたドライな出戻り女の北川アヤに当たるのが、岡田茉莉子演ずる百合子である。

親の再婚話を知った娘が悩み、友人の家に相談に行くが、ドライな返事をされたため、怒ってすぐに帰る所や、結婚前に親子水入らずの旅行に出る所など、同じ展開が使われている。

「晩春」と違っているのは、ユーモア表現が増していることであろう。

今回、おせっかい役となる三人を演じている北竜二、佐分利信、中村伸郎らが、特に大げさなことをするでもなく、淡々と話したり行動したりしている所が、いちいち昔なじみ同士の無邪気さと言うか、おじさんの中の幼児性のような部分があり、そこが同じ大人の目線で観ていると、何ともおかしいのである。

しかし、この中年男の悪乗りに振り回される若い娘の方はたまったものではない。

ここで、生きの良い寿司屋の娘百合子が思わぬ行動に出る。

余計なお節介を焼いて家庭に波風を立てる三人中年男を、猛然と叱責するのだ。

この行動が、「晩春」に残った、親子共々、何となく、他人のおせっかいの理不尽さの犠牲になってしまったような「もやもや感」を払拭する、痛快さになっている。

当時の岡田茉莉子の愛らしさは、そう言うことをやっても憎めないだけでなく、他の役者たちを食ってしまうくらい魅力的なキャラクターになり得ている所がすごい。

「晩春」が、親子二人のいたわり合いに焦点が絞られていたのに対し、この作品では、その親子関係に加え、外側にいる中年男三人と、生きの良い百合子の方にも焦点が向けられているため、根底は同じながら、かなり印象が違った作品になっているようにも思える。

「晩春」では画面に登場しなかった娘の結婚相手が、今回ははっきり佐田啓二と言うイケメンとして登場しているため、娘自身の結婚への抵抗感が最初から希薄なのも、印象を変えている一因かも知れない。

男親と女親の違いもあるにせよ、ラストの親の心理描写も「晩春」とは違ったものになっている。