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続雲の上団五郎一座

1963年、宝塚映画、菊田一夫原作、蓮池義雄 +矢田良脚色、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

朝日劇場では、雲の上団五郎一座による、輪破太志(八波むと志)演ずるコウモリ安と、仁木のり蔵(三木のり平)演ずる切られ与三郎と言う名物コンビによる代わり映えのしないいつものアチャラカ芝居が行われていた。

切られ与三郎が娘に化け、呉服問屋をだますと言う「お嬢吉三」に舞台は変わっていた。

安が化けたお付きのものと呉服問屋で反物選びをしていた与三郎が化けた娘が、何か広げられた反物を盗んだように見せかけ、沢井俊夫(茶川一郎)扮した丁稚がそれを守山音弥(丘寵児)扮する店の主人に告げると、その場で主人が娘を詰問するが、娘が持っていたのは意外にもナイロンストッキングだったので、開き直ったコウモリ安に詫びの小判を差し出すと言う詐欺ネタ芝居であった。

まんまと詐欺が成功した安と与三郎が帰りかけると、市川雲丹之丞(森川信)扮する黒服面の武士が現れ、その方は男であろうと問いつめると、与三郎がケツをまくり、見栄を張ると言うとんだアチャラカだった。

それでも、客席の老人たちは喜んで観てくれていた。

しかし、実は団五郎一座、肝心の座長である団五郎がトラック事故で片足をなくしたため、今は病気療養中と言う有様だった。

劇場主の石川千代(清川虹子)は、昔は自分もどさ回りの役者だったのが、今では、老人相手のこんな商売に飽き飽きしており、近々劇場をパチンコ屋に改装する計画を立てていたが、一人息子の孝一(江原達怡)は、亡くなった父親に似たのか頑固で、劇場専務として、団五郎一座の芝居とこの芝居小屋をこのまま存続させようと粘っていた。

母親と意見が対立した孝一は、中学時代の先輩で、今は、朝日劇場近くでラーメン屋「珍味軒」をやっている恭介(フランキー堺)の所に相談に行く。

しかし、恭介は、出前を二人前作っている最中だったので、戻って来るまで留守番していてくれと孝一に頼んで店を後にする。

その頃、雲の上団五郎(榎本健一)は、一人娘の菊子(浜美枝)から薬を飲ませられていた。

そこにやって来たのが恭介で、出前として持って来たのは、団五郎と菊子への土産代わりだった。

実は、恭介は菊子の事を密かに想っていたのだった。

かねて、団五郎が好物だった「ワンタンめん」を差し出すと、恭介はサービスのつもりで持っていたこしょうを大量にふりかけ手渡すが、どんぶりを持って食べかけた団五郎と菊子は、くしゃみを連発するのだった。

朝日劇場の楽屋では、座長代理の守山音弥と市川雲丹之丞が、のり蔵と太志を前に、お前たちは台詞覚えが悪いので、今から稽古だと発破をかけていた。

しかし、ちょっと席を立った市川雲丹之丞が、今、音さんの奥さんから電話があって、今日は早く帰って来てくれと頼まれたと報告に来ると、守山音弥はあきらめて帰る事にする。

彼女との約束があったのり蔵と太志は、稽古がなくて良かったと帰りかけるが、裏口付近で、やって来た年増女とうれしそうに話し込んでいる雲丹之丞を発見、先ほどの電話の話は、実は雲丹之丞自身が女と早く帰りたいばかりの嘘だった事を悟る。

のり蔵は、その後、なじみのバーに行き、ホステスのユカ(瑳峨三智子)から、あんたは犬のコリーに似ているなどとからかわれながらも、いつまでも二人でいちゃいちゃしていたが、その様子をカウンターから面白くなさそうに睨みつけていたのが、この店の株主で、ユカに気がある土建屋の社長大野(天王寺虎之助)だった。

あまりに無視されてたまりかねた大野が、無理矢理ユカを自分の方に連れて行こうとしたので、ユカはあきらめたように、のり蔵に詫びて帰ってもらう。

アパート「浪花荘」に帰って来たのり蔵は、大家のお駒(ミヤコ蝶々)が、夫婦喧嘩をしている部屋のドアの鍵穴から、中の様子を面白そうにのぞいているのに出くわしたので、プライバシーの侵害だと注意する。

大家は、住人の生活ぶりを知らなくてはいけないなどと屁理屈を言うお駒を他所に、部屋に入ろうとドアを開けたのり蔵に、部屋の中から大量の品物が降り注いで来る。

間違って、夫婦喧嘩中の部屋を開けてしまったのだった。

ようやく自分の部屋にたどり着いたのり蔵を待っていたのは、主婦のようにエプロンを付け、アイロンがけをしていた太志だった。

太志は、ユカから愛していると言われたと、すっかりのぼせ上がっているのり蔵から、お前は恋人なんかいないだろうとバカにされると、自分にも故郷で待っているさゆりと言う恋人がいるんだと言い返す。

そんな太志が、窓辺で恋の歌を歌い始めると、5年も会っていないのなら、とっくに向こうは気が変わっているよなどと言いながら、のり蔵が邪魔をするように別の恋の歌を歌いはじる。

二人は相手の歌に引き込まれまいと、次々と、互いの恋の歌を歌っているうちに、いつしかムードが高まり、しっかり抱き合うのだった。

その時ドアが開き、お駒が呆れたように「何けつかしているんや、このアホ!」と言い放つのだった。

ある日、朝日劇場の前を通りかかった菊子に、孝一が、お父さんにはお盆興行にぜひ出てもらいたいとお愛想まじりで声をかけるが、菊子は、うちのお父さんの身体がどうなっても良いの?とふくれると、さっさと去って行ってしまう。

その後、「珍味軒」にやって来た菊子は、今度、話があるのでつきあってくれないかと恭介に相談するのだった。

その頃、大野の会社に来ていた千代は、今の朝日劇場をパチンコ屋にしたいので、取り壊しの見積もりをして欲しいと頼み、ちょうど今日は孝一がいないので、出来たら今日来て欲しいと依頼する。

承知した大野は、手下の小林らを劇場に差し向ける。

その頃、のり蔵は朝日劇場の舞台で守山音弥と市川雲丹之丞に、「仮名手本忠臣蔵」の塩治判官(浅野内匠守)の稽古をつけてもらっていたが、「珍味軒」に注文した中華そばがなかなか届かないので、腹が鳴るばかりで、少しも芝居に集中できないでいた。

切腹の直前、「由良之助はまだか?」と言うべき所も、つい「そばはまだか?」と言ってしまう有様。

やがて、由良之助が到着する芝居になった所で、「珍味軒」のそばも到着、思わず、のり蔵は、切腹用の小刀を箸代わりに、そばを食べ始めたので、横で芝居を付けていた守山音弥と市川雲丹之丞は呆れてしまう。

そこに、大野が差し向けた小林らが舞台にどかどかと上がり込んで来たので、稽古を邪魔された一座の人間ともみ合いになるが、小林は、ここの女将さんに頼まれたんだと言い、後に引こうとしなかった。

その頃、団十郎は、自宅の廊下で歩く練習をしていた。

それをうれしそうに診に来たのが、ずっと団十郎の面倒を見て来た医者の福原先生(徳川夢声)だった。

そこに、一座の沢井らが駆けつけて来て、劇場がなくなりそうだと団十郎に教えるが、それを聞いていた福原先生は、病人を刺激するようなことを言うなと叱りつける。

朝日劇場では、孝一が、がっかりする市川雲丹之丞を舞台袖で慰めていた。

雲丹之丞は、何とか新しい出し物で機嫌を結ぼうと、新劇ネタや義太夫入り「ウエストサイドストーリー」などと言う珍妙なアイデアを提案するが、自分がジョージ・チャキリスをやると言うに至っては、孝一に苦笑されるだけだった。

劇場を帰りかけた輪破太志には、「11時に着く、迎え頼む」と言うさゆりからの突然の電報が届いたので、慌てて駅に迎えに行く。

トイレに行って、太志がいなくなっているのに気づいたのり蔵の所には、ユカがやって来て、商売だから、愛しているくらいは言うけれど、それを真に受けた大野がしつこくて、帰る場所がないと泣きついて来る。

のり蔵は「商売だから、愛しているくらいは言う」と言う部分はちょっと気になったけれど、とりあえず、自分のアパートへ連れて帰る事にする。

そんなのり蔵の様子を、小屋番の留さん(沢村いき雄)が呆れて見ていた。

「珍味軒」では、菊子から先日頼まれた会うチャンスに、自分の気持ちを告白しようと決めた恭介が、伝票整理しながら、告白の練習をしていたが、そこに孝一がやって来る。

孝一は、お盆興行の出し物に迷っているので、何かアイデアはないかと言うので、恭介は、いろんなお化けが出て来る怪談ものはどうかと提案し、孝一に喜ばれる。

さらに孝一は、菊子ちゃんの事が好きで結婚したいんだけど、恥ずかしくて自分の口から言いだせないので、先輩から伝えて、菊子の気持ちを聞き出してくれないか?と頼む。

菊子は自分に気があると勘違いしていた恭介は、余裕の「上から目線」になり、他に好きな人がいたらどうする?と聞き返すが、孝一はその時はきっぱりあきらめると答える。

その頃、駅からさゆり(原知佐子)を連れて来た太志は、近くの公園のベンチにずっとさゆりと一緒に座っていた。

どうしてアパートへ連れて行ってくれないのか?と聞くさゆりに、友達がいるから…と考え込む太志だったが、さゆりは、女がいるのだろうと邪推する。

「浪花荘」では、脂下がったのり蔵がユカの足の裏をもんでやっていた。

本来高慢ちきなユカは地金を出して、おなかがすいたので何かないのかとねだり始める。

しかし、いつも家事一切は太志がすべてやっているので、茶のあり場所さえ見つけられないのり蔵が困っていると、そこに、太志がゆかりを連れて帰って来る。

真っ先にユカが出て太志を出迎えたのを見たさゆりは、やっぱり女がいた!と怒りだすが、太志は誤解だと当惑する。

のり蔵が出て来て、ユカとの事を説明したので、何とか納得したさゆりだったが、二人で暮らしていた部屋に、急に4人が同居する事になる。

のり蔵と太志は、互いに出て行ってくれと仲違いが始まるが、女二人は息が合ったようで、さゆりが土産に持って来た手作りクッキーを一緒に食べ始め、ユカは4人一緒に暮らせば良いじゃないと提案する。

結局、部屋を毛布をカーテン代わりに真ん中で二つにしきり、それぞれにカップルが収まる事にするが、その子に入って来たお駒が、部屋を改造するのは契約違反だし、既婚の男女が同じ部屋で寝泊まりするなど風紀便覧も甚だしい。夜寝るときは、男女が別々の場所に移動しなさいと叱りつけたので、その夜は、毛布カーテンで仕切られた両側に、さゆりとユカ、のり蔵と太志と言うコンビで寝る事になる。

全員、何となく物足りない気持ちで目覚めた朝だったが、二組の男女は晴れて互いにキスを交わす。

それを鍵穴からのぞいていたお駒は、このくらいは良いかと許すが、気がつくと、廊下のあちこちで住人の男女たちがキスをしていたので、すっかり呆れてしまう。

太志が作った朝食を4人で一緒に食べる事になるが、丸いちゃぶ台に座る位置で、又一悶着がある。

カップル同士が隣に座ると、目の前に相手のカップルが見える事になり、何となく気まずいからだった。

いろいろ座る位置を変えてみるが、どうやってもうまくいかない事に気づく。

ある日、約束通り、恭介は菊子と落ち合っていた。

てっきり遠出のデートだと思い込み、サンドイッチや紅茶などを携えて来た恭介だったが、菊子は近所の境内のベンチに座ってしまう。

恭介が思い切って、菊子に好きな人がいるかと聞くと、あっさり菊子はいると答える。

がっかりした恭介だったが、それはお父さんの事だと言う。

それを聞いた恭介は、菊子が恭介の事にも興味がない事を悟り、孝一が君と結婚したがっているので、その気持ちを受け入れてやってくれと頼む。

しかし、菊子は、自分でプロポーズできないような人は嫌いだし、そんな事を頼まれたあなたも嫌いだと言い捨てて帰ってしまう。

その頃、団五郎の所には千代が来ており、孝一にお盆興行から降ろしてくれと言ってくれないか。そして、あんたもそろそろ引退したらどうかと勧めていた。

今のままでは、菊子は嫁にも行けないし、商売でも始めるのなら、その準備金くらいは自分が出してやるとまで説得する千代の言葉を聞いていた団五郎は考え込む。

その千代が帰りかけると、菊子が戻って来る。

千代は、玄関先で出会った菊子に、父さんには当分休んでもらうよと優しく微笑みかける。

千代との話を知らずに父親の側に座った菊子に、団五郎は、お前、洋裁店をやりたがっていたな?と聞き、実は、俺は役者を辞めようと思っているのだと打ち明ける。

朝日劇場では、市川雲丹之丞が「アオとの別れ」を演じていた。

事務所にいた千代の元に電話が入り、大野から山内と言う人を紹介してもらったと言うので、孝一は、その人は高利貸しだろうと聞き返すが、千代は出かけようとする。

そこに、市川雲丹之丞が駆け込んで来て、今、座長が引退すると電話で知らせて来たと言う。

その団五郎の引退話を聞いてやって来た福原先生は、足が一本なくなっただけじゃないか。一本ある足を惜しんでいるんじゃないだろうね?お足って言うのは、使ってこそ生きるものだ。世の中には、耳や目が不自由でもバンドをやっている子供たちがいる。身体にハンデがあっても車の運転を習っている例もある。役者は舞台の上で死にたいと団五郎と言う役者が言っていたけれど、あんたのような雲の中の泥団子とは違うと手厳しい励ましの言葉をかけ帰ってゆく。

それを、じっと黙って聞いていた団五郎は、その直後、孝一が来たのを知ると、お盆興行から出してもらうよと告げ、花村菊十郎さんに出てもらっては?と提案までする。

お盆興行では怪談をやる事が決まったので、名和通(南都雄二)、沢井、太志、のり蔵たちは、スナックで、幽霊役をやりたいなどと雑談しながら酒を待っていたが、そこにやって来たのが大野で、ユカはどこにやったとのり蔵に絡んで来る。

のり蔵と太志は、嫌になってすぐその店を出るが、残った名和と沢井は、大野から、酒を飲ませてやるから話があると引き止められる。

アパートで食事の支度をしていた太志の側に来たさゆりが手伝おうとすると、太志から、君はユカさんみたいに、たまには化粧でもしろよ。いつまで経ってもあか抜けないねと言われて唖然としてしまう。

のり蔵は、新聞で新居の物件探しをしていたが、パジャマの袖の下が破れている事に気づくと、部屋に戻って来たさゆりが、縫ってあげましょうと優しい言葉をかける。

一方、ユカの方は太志の側に来て、料理が出来る人と結婚する女性は幸せだわと褒めていた。

翌日、家探しを周旋屋(遠藤太津朗)に聞きに来たのり蔵は、ちょうど良い家があると言われる。

同じ頃、別の周旋屋に来ていた太志も、権利金も敷金もなく、家賃1500円だけと言う格安物件を教えられ、すぐに契約してしまう。

周旋屋からの帰り道、太志は、風呂上がりのユカとばったり出会う。

アパートに戻って来た4人は、引っ越すために荷造りを始め、ユカはバーに挨拶に出かけ、さゆりは買い物に出てゆく。

その様子を入り口から見ていたお駒は、夫婦仲良う。幸せにならんとあかんよと笑顔で言うのだった。

ところが、その後、のり蔵が乗り込んだトラックと、太志が乗り込んだトラックは、同じ屋敷の前で鉢合わせになってしまう。

草深い屋敷の中から出て来た周旋屋は、申し訳ないが、手違いがあって、同じ部屋を二人別々にうてしまったらしいが、中は広いので、一緒に住めるはずだと言いながら、二人を家の中に招き入れる。

屋敷の中は荒れ放題で、障子はびりびりに破れている。

所々のユカは破れ、竹が生えている有様。

さらに、離れに案内されると、裏に古井戸があり、気味が悪い事おびただしかった。

それでも、周旋屋は、二人分の家賃と紹介料、合計6000円を受け取ると、例え一晩で求まると、もうこの金は返せない、それでは、お大事に…と言い残し、二人に、後で電気が付くまでと、ろうそくを手渡して帰ってしまう。

その後、のり蔵と太志が、裏の草薮をよく見てみると、そこは墓場だった。

ユカとさゆりは、その後もなかなかやって来なかった。

やがて、部屋の電灯が付くが、すぐに点滅しだす。

ちゃぶ台の前に座った二人は、床を踏むような不気味なきしり音を聞きおびえる。

見ると、部屋のタンスの漢音開きの扉が開いていたので、のり蔵が立ち上がって閉めると、又すぐに開いてしまう。

その内、太志も手伝うが、やっぱり扉は開いてしまう。

廊下に出ようとすると、不気味な油絵の入った額が大きな音を立てて傾いたので、おびえて二人はちゃぶ台の所に戻ってしまうが、そこで、電灯が消えてしまう。

仕方がないので、燭台の上にろうそくを立て、火をつけて、タバコを吸おうとしたのり蔵だったが、火にタバコを近づけると、燭台がすーっと動いてしまう。

気のせいかともう一度やると、逆方向に動くので、のり蔵はすっかりおびえ、ちゃぶ台の反対側で金の計算をしていた太志は顔を上げる。

のり蔵の話を聞いても、神経のせいだよと笑っていた太志は、自分もタバコをろうそくの火に近づけるが、のり蔵の証言通り、すーっと動いたので愕然としてしまう。

神経のせいだと自分を落ち着かせ、紙幣を数え始めた太志だったが、その数える声に、「三枚〜、四枚〜」と数える女の声が重なる。

のり蔵に変な声を出すなと言いながら、もう一度数え始めると、またもや、女の数える声が重なる。

またもや、神経のせいだと落ち着こうとした二人だったが、庭の古井戸の所に火玉が浮いているのに気づいたので、二人で無理に「怖くないったら、怖くない♬」と歌い始める。

その時、屋敷にさゆりがやって来る。

のり蔵と太志は、廊下に置いてあった大きなつづらの蓋が開いたのに気づいたので、中をのぞいてみようとすると、中から急に女の幽霊が出現する。

悲鳴を上げて、そこから逃げ出した二人だったが、のり蔵が、誰か自分を触っていると言いだす。

柱にしがみついていた二人の手を数えると、ちゃんと四本あったが、のり蔵の頭の上には、もう一本腕が乗っていた。

さらに逃げた二人は、誇りの積もった廊下に、点々と、赤い足跡がついて行くのを目撃する。

元の部屋に逃げ戻って来た二人だったが、御簾の背後を通る女の幽霊を目撃し、さらに、ふすまには不気味な影、さらに、首つり死体の人形が二人の上に落ちて来る。

その時、床が屋敷に到着するが、白装束の見知らぬ男が、部屋の中の様子を覗き込んでいたので、思わず「泥棒!」と声を上げる。

さゆりも、見知らぬ侵入者たちに気づき悲鳴を上げたので、すっかり気絶していたのり蔵と太志は目を覚ます。

ちゃぶ台のある部屋に行ってみると、そこには、ユカとさゆりから説教され、すっかりしょげて正座している4人の男女がいた。

その内の二人の男は名和と沢井だと、のり蔵と太志はすぐに気づく。

二人が言うには、土建屋に一日千円で頼まれてお化け役をやったのだと言う。

後ろに控えた男女は学生らしかった。

ここの屋敷は、周旋屋が常日頃、博打などで悪用している場所だったらしい。

さっきの幽霊騒ぎはみんな芝居と分かり、安心した太志とのり蔵だったが、その直後、又電気が消えてしまったので、燭台のろうそくに灯をともすが、その燭台がまた動いたので、その場にいた全員は凍り付いてしまう。

実は、部屋の外でおかしな二本の紐を見つけたさゆりが、仕掛けに気づき、おもしろ半分に引っ張っていただけだったのだが…

幽霊役の四人は怖がって逃げ出してしまうが、その直後、一旦ついた電灯がまた消えて真っ暗闇になったので、残った四人の男女は互いに抱き合う。

電灯がついてみると、抱き合っていたのは、のり蔵とさゆり、太志とユカだったが、互いに、これで良かった。元々好き同士だったのだと納得し合う。

後日、「珍味軒」にやって来た孝一は、今日は、母親の千代が高利貸しの山内の所に契約に行く日だが、自分はこれから、花村菊十郎をお盆興行の芝居に出てもらえるよう説得に出かけなければ行けないので、恭介が自分に代わって、山内の所に説得に行って欲しいと頼む。

恭介は、嫌々ながらも山内商事に出向いて山内(花菱アチャコ)と対面するが、最初から相手にされず、追い返されそうになる。

しかし、恭介は腹をくくり、孝一は、パチンコ屋などよりもっと大きな計画を立てているんだが、知っているかとかまをかける。

山内が話に乗って来ると、実は、今の場所に、7階立ての一大娯楽センターを建設する計画があり、映画館、劇場、ゴルフ練習場、ボウリング場にトルコ風呂、スケートリンクに名店街まで入れるつもりだとはったりをかます。

すると、山内は、自分も一つ乗せてくれと言いだし、その時やって来た千代には、契約はちょっと延期してくれと言いだす。

ニヤ付いて千代を迎えた恭介は、お盆興行まで待ってくれと千代に頼み、山内までが、興行が当たったら、あきらめて息子さんに譲るべきだと言いだす。

その頃、孝一は、花村菊十郎(柳家金語楼)の楽屋を訪れ、何とか、お盆興行に出てくれと頼み込んでいたが、なかなか菊十郎は承知しなかった。

そこに、恭介から孝一に電話が入り、契約の方はうまく行ったと報告がある。

つい口が滑ってしまったのだがと、恭介から7階建ての娯楽センターの事を聞いた孝一は、怒るどころか、むしろ積極的にそのアイデアに賛成するのだった。

この返事には、団五郎の家から電話をかけていた恭介も面食らってしまう。

いよいよお盆興行の幕が開く日がやって来た。

千代は、留さんに札束を渡し、これで、今日の芝居をめちゃめちゃにしてやってくれと頼み込んでいた。

芝居の出し物は「四谷怪談」で、民家伊右衛門役にしてくれてありがとうと、菊十郎が団五郎の楽屋に挨拶に来るが、楽屋では他の役者たちが、稽古の時と違う化粧をさせられみんな困惑していた。

そんな裏の騒ぎを知らない恭介は、入り口付近で孝一と、あの話はうまく行っていると話し合っていたが、外を菊子が通りかかったのを見た恭介は、とっさに孝一に病気になれとささやきながら、その身体を支えるまねをする。

それに気づいた菊子が様子を見に近づくと、孝一くんは病気らしいので面倒を見てやってくれと頼む。

心配した菊子は、孝一を父親団五郎の楽屋に連れて来て寝かせたので、団五郎も、あのヤブ医者を呼べと言いだす。

しかし、仮病を使っていた孝一は、そのまま菊子に、君の事が好きだよといきなり告白すると、起き上がって団五郎には、菊ちゃんと結婚させてくださいと頼む。

その日、朝日劇場は満員の盛況だった。

千代と山内も観客席の中に混じっていた。

舞台裏では留さんが、裏方たちや役者たちにどんどん金を手渡していた。

幕が上がり、団五郎一座おなじみの名コンビ、輪破太志のコウモリ安と、仁木のり蔵の切られ与三郎が、お富さんの家を訪ねて来る。

ところが、出て来たのは、お富さんではなく、赤ん坊を抱えたお岩様だったので、二人のコンビは面食らってしまう。

そこへ、守山音弥が扮した別のお岩様が出て来て、二人を驚かす。

場面が変わり、菊十郎の民家伊右衛門が登場して来た所で、紙吹雪で作った雪が舞って来る。

さらにそこに、今度は、市川雲丹之丞が扮した別の伊右衛門が登場したので、二人は互いに面食らいながらも、見栄を張り合うが、そこに、紙吹雪が入ったかごがそっくりそのまま落ちて来る。

その直後、菊十郎は団五郎の楽屋に、舞台がめちゃめちゃだと文句を言いに来る。

舞台では、二人のお岩様が登場し、「うらめしや」の合唱をしていた。

ところが、この趣向に客は大喜び。

その様子を見ていた山内は千代に、奥さんの負けだっせと耳打ちする。

事務所に向かった千代は、孝一から、留さんから何もかも聞いた。こんなに受けたのは、みんな母さんのおかげだよと感謝する。

千代の方も、これからは、お前が好きなようにおしと折れ、母子は久々に仲直りする。

舞台では、団五郎を中心に口上が始まっていた。

すると、後ろで頭を下げていた一座の一員の中に、いつの間にか、裃を着て混ざっていた福原先生が立ち上がり、まずは団五郎に向かい、まずは、これまでの悪口雑言、平にご容赦をと詫びる。

そして客席に向きなおると、団五郎の役者根性を褒めてやってくれと挨拶を始める。

客席から万雷の拍手が巻き起こると、この拍手がある限り、今後どんな苦難に出会おうと、団五郎は決して躊躇はしないでしょう。団五郎が転びかけたら、皆様、手を取って支えてやってくださいと、福原先生が断言する。

それを聞いていた団五郎は、「お手を拝借!」と客に頼み、全員で手拍子を始めるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「雲の上団五郎一座」(1962)の続編である。

主役団五郎を演じているエノケンこと榎本健一は、1952年当時、脱疽(だっそ)で右足の指を切断、1962年には病気が再発し、右足全部を切断後、義足を付けていた時期である。

この映画では、そのエノケンの状態をそのまま利用し、トラック事故で右足を亡くして義足を付けて療養中と言う設定になっている。

大半のシーンでは、布団に座っている状態。

一シーンで廊下をゆっくり歩いてみせるが、最後は舞台で正座して挨拶している。

相当、本人にはつらい撮影だったに違いない。

そのエノケンを励ますように仲間たちが集合し、さらに、徳川夢声までゲスト出演し、エノケンを劇中で励ましている。

そうした、喜劇王エノケンの当時の様子を知る資料的価値だけではなく、娯楽映画としても、それなりにまとまっている。

さすがに、今観て、びっくりするほど面白いとか、笑えると言った感じではないが、フランキー堺に浜美枝と言ったおなじみの布陣が、いかにも往年のプログラムピクチャーの典型を観ているような安心感を与えてくれる。

銭湯上がりのシーンでも厚化粧の瑳峨三智子と、実相寺監督夫人の原知佐子の出演が興味深い。

後半のお化け屋敷騒動がなかなか面白く出来ているので、ラストのお盆興行での四谷怪談が、精彩を欠いてしまったのは、ちょっと惜しい気がするが、三木のり平と八波むと志のコンビ芸を観ているだけでも楽しい気分にさせてくれる作品である。