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嫁入聟取花合戦

1949年、新東宝+吉本プロダクション、八住利雄脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

日めくり暦がめくられ、12月30日から31日の大晦日になる。

銀座にある太陽劇場の舞台で、ローラースケートを履いた役者の卵、道夫(木戸新太郎)が、踊り子たちとレビューを披露している。

質屋「やなぎ屋」では、主人の金助(柳家金語楼)が、今日は大晦日だから忙しくなるぞ。みんな、正月だけはちゃんと迎えたいと、無理して質草を出しに来たり、命の2番目に大切なものを持って来たりするから、今日は夜通しだと、息子で店の手伝いもしている三吉に言い聞かせていた。

そんな話を聞き流していた三吉が、拭き掃除を終えたバケツの水を店の前に撒いた時、ちょうど店に入ろうとしていた客にかかってしまう。

その男こそ、太陽劇場で踊っていた道夫だったが、持って来た背広を2000円で買ってくれと言う。

しかし、金助は500円なら預かると言って金を手渡し、道夫がすごすごと帰っていたのを観ると、分かったろう?1000円と思ったら500円と言うのが駆け引きだ。相手は、何としてでも金が欲しいので、安くても金を受け取ると商売のコツを教える。

預かった背広をしまいかけた金助だったが、襟元の汚れが気になったので、三吉に揮発油を持って来させ、それで襟元を拭き始めるが、畳に置いていた揮発油の瓶が倒れて背広にかかってしまう。

慌てた金助は、背広のポケットの中は濡れなかったと手を差し込んでみるが、その中に手紙が入ったままだった事に気づく。

観ると、宛名はちゃんと書いてあり「世田谷区福町 松竹梅アパート 下村菊枝様」、裏には「道夫より」と書いてある。

封が開いていたので、ラブレターだと思い込んだ金助は、好奇心から中の手紙を取り出して読み始めるが、その文章には、「今日中にあなたに会えないと、あなたは天国に行ってしまうと聞きました。私は、1日の午前中に必ず君の所へ行きます」などと深刻な事が書いてあるではないか。

さっきの客が出し忘れたんだと分かった金助だが、三吉に確認すると、あの客が出した米穀通帳の住所を控えていなかったと言う。

このままでは、この手紙は相手に届かないので、下村菊枝と言う女性は、今日中に死んでしまうかもしれないと案じ始めた金助は、居ても経ってもいられなくなって、自分がこの住所に届けに行くので、その間、誰が来ても、お父さんが居ないから分かりませんと返事をするのだと三吉に言いつける。

そこにやって来たのが、以前、カメラを預けた客で横山円造(横山エンタツ)と言い、実は自分は探偵なのだが、中に入ったフィルムがどうしても居ると客から電報を受け取ったので、速急にフィルムだけを返してくれと言いだす。

それは、苦労して撮った現場写真だと言いながら、横山は、その時の事を詳しく語りだす。

実はそれは、道夫と菊枝のデートを偵察していたのであったが、話を聞いているだけの金助に二人の事が分かるはずがない。

二人の恋人は池のボートをこぎながら歌って楽しんでいたが、それを横山は、岸から生えた木の枝に登って撮ろうとし、ボートが通り過ぎた瞬間、誤って池に落ちてしまったのだと言う。

しかし、金助は、今急用で出かける所だし、金か質物を持って来なければ質草は返せないと金助が断り、店を出て行ってしまう。

困った横山は、残っていた三吉に頼み込むが、三吉は今しがた、父親に言われた通り、相手にしなかった。

金助は、松竹梅アパートを探して回り、途中で、赤ん坊を背負った老人(昔々亭桃太郎)に聞いてみるが、耳が遠くて、全く会話が成立しなかった。

その頃、松竹梅アパートでは、菊枝の部屋に、大阪から父親の花兵衛(花菱アチャコ)が突然上京してやって来ていた。

大晦日にわざわざ来るなんて、何か用でもあったの?と菊枝が不思議がると、お前、最近男でも出来たんと違うか?キャバレー勤めをしているといろんな男とも会うだろうし…と突然兵衛は言いだす。

菊枝は驚いて口をつぐんでしまうが、兵衛はますますそんな娘の態度を怪しみ、あれやこれやと聞き出そうとし始める。

ヒステリーね。母さんが死んでずっと父さん一人だから…と呆れた菊枝は、窓の外を見ながら、太陽劇場でタップを踊っている道夫の事を思い出していたが、突然、何かを思いつくと、アパートのおじさんの所へ行くと言って部屋を出てゆく。

その間、部屋に残った花兵衛は、菊枝のタンスの引き出しを物色し始める。

管理人(小倉繁)を呼び出した菊枝は、父親の事を話し、おじさんの知り合いだと聞いた出雲結婚相談所でお父さんの結婚相手を見つけてもらえないかと相談する。

話を聞いた管理人は快諾し、すぐに電話をしてみようと言ってくれる。

その後、部屋に帰って来た菊枝は、引き出しの中からいろんなものを引っ張りだしていた花兵衛の行動に呆れながらも、親孝行したい。明日はお年玉をあげたいのと言いだす。

その頃、金助はまだ、松竹梅アパートを探しあぐねていたが、ひげの男からあそこだと教えられたので、そこに行ってみると、確かに「松竹梅…」と書いてある。

側に女が立っていたので、ちょっとつかぬ事をおうかがいしますが…と頭を下げると、その女はいきなり金助のはげ頭をぴしゃりと叩く。

驚いた金助だったが、表札を良く読んでみると「松竹梅脳病院」と書いてあるではないか。

今頭を叩いたのも、ここの患者だったのだ。

その女患者や自分を首相だと言い張っている男などを、看護士たちが病院内に連れて入るのを見とれていた金助だったが、一人の看護士が、金助の事まで患者だと思い込み、病院内に連れ込もうとしたので、慌てた金助は、その手を振り切って逃げ出す。

一方、横山探偵事務所に帰って来た横山は、留守番をしていた弟子新吉(坊屋太郎)の姿を観ると、何か思いついたらしく、急に、新吉を机の上に押し倒すと、彼が来ていた背広上下を脱がせ始める。

下着姿になり寒がる新吉に、花兵衛さんい写真を返すにはこれしか方法がないのだと弁解しながら、横山は、今はぎ取った背広を風呂敷に包み始める。

その頃、松竹梅アパートの管理人は、知り合いで結婚相談所をやっている出雲女史(清川虹子)に電話をかけ、菊枝さんと言う人のお父さんのお相手を見つけてくれないかと依頼していた。

お父さんは面白い顔の持ち主だと聞いた出雲女史は、任せてくださいと太鼓判を押す。

そんな中、何とか看護士の追跡を振り切った金助は、一息ついた場所が、目指す松竹梅アパートだった事を知り一安心する。

中に入って管理人に菊枝の事を聞いた金助だったが、菊枝さんなら、お父さんと結婚相談所へ出かけたと聞くと、そのお父さんは、娘が今日自殺する事は知らないんだと一人愕然とし、水を一杯と頼むが、管理人が差し出したのは、今掃除で使っていたバケツの水だった。

菊枝と花兵衛は、東京見物で近所の公園を散策していたが、そこら中にアベックが抱き合っているのを観た花兵衛はイライラしだす。

やがて、大きな岩を数人掛かりでトラックの荷台に載せようと悪戦苦闘している人夫たちを見かけた花兵衛は、自ら進んで声をかけると、たった一人で園大きな岩を抱え上げ、トラックに荷台にあげてしまう。

最近、恥ずかしいくらいに元気がみなぎっているんだと自慢する花兵衛に、菊枝は、結婚相談所へ行ってみないか?そろそろお父さんも結婚した方が良いわと勧める。

それを聞いた花兵衛は、そう思ってくれるか?と聞き返すと、急にもじもじしだし、わしの泊まっている旅館に来てくれと菊枝に頼む。

その頃、助手の背広を持ち込んで、何とかこれで、フィルムを出してくれと「やなぎ屋」に戻って頼んでいた横山だったが、何せ店番をしているのが三吉だけだったので、どうする事も出来ないままだった。

金助は、出雲結婚相談所にやって来る。

中に入り、下村菊枝さんは?と聞いた金助だったが、出迎えた出雲女史は、面白い顔と言う共通項から、金助の事を電話で頼まれた田舎のお大尽、花兵衛が来たと思い込み、一方的にしゃべりながら金助を椅子に座らせると、太鼓を叩き、紐を引く。

すると、カーテンが開き、その奥には、大きな額縁の中に、晴れ着を来たおかちめんこが見合い写真のポーズで座っていた。

金助は、訳が分からず、菊枝さんは?と口を開きかけるが、またまた、それをおしゃべりで押さえた出雲女史は、太鼓を叩き、もう一度紐を引く。

今度は、額縁からはみ出すほどの長身の女性が立っていた。

金助が気に入っていないと早合点した出雲女史は、その後も、もんぺ姿の女性やバンプ風の女、子だくさんの年増など、次々に見せてゆき、最後には、金助に太鼓を叩かせてカーテンを引かせると、何と、自分自身が額縁の後ろから現れ、金助にしなだれかかって来る始末だった。

たまらなくなった金助が逃げようとすると、出雲女史は、化け猫のように手を操り、金助の身体を引き寄せるのだった。

同じ頃、当の花兵衛は菊枝を、東京での自分の定宿である「極楽旅館」に連れて来ていた。

父親花兵衛が妙にニコニコしながら、実は、友人と二人でここに泊まっているのだと遠回しに言うのを聞いた菊枝は、事情を察し、すぐに、出雲結婚相談所に電話をすると、先ほどの依頼を断る事にする。

その電話を受けた出雲女史は、自分が花兵衛と思い込んでいた男が全くの別人だったと知ると、自分の勘違いを忘れ、かんしゃくを起こし、箒で金助をたたき出すのだった。

極楽旅館では、花兵衛が菊枝の了解を得たので、奥に控えていたおまさ(一の宮あつ子)を部屋に呼び入れる。

一方、どうしても写真のフィルムを手に入れる事が出来ない探偵の横山は、「歌占い師」なる怪しげな店に来て、金助の行方を占ってもらっていた。

歌占い師(川田晴久)は、怪しげな歌を歌いながら筮竹やさいころなどを操っていたが、「東西南北好きな所へ行け」などと適当なご託宣を言うので、横山が怒ると、最後に「辰巳の方向だ」と教える。

その言葉を信じた横山は、どんどん辰巳の方角に向かって突き進み始める。

結婚式真っ最中の会場の中を突っ切ったり、塀を乗り越え、鍋釜修理やの頭を踏みつけたりしながら、横山はとにかくまっすぐ辰巳の方向を向いて進むが、やがて、柔道指南所の中に入ると、入り口に投げ飛ばされてしまう。

それを何度か繰り返しているうちに、ちょうど表を通りかかった金助とぶつかり、再会を果たす。

道夫は、その日も、太陽劇場の舞台で踊っていた。

極楽旅館では、花兵衛が菊枝に、お前に送ってやった晴れ着を着せてみせてくれないか。あれは実は、このおまさが仕立ててくれたものなんだと頼んでいた。

しかし、それを聞いた菊枝の顔色が変わる。

さらにおまさは、義理の娘になった菊枝に、せめてもの親心として現金を手渡す。

今のご時世だから、それで株券なり証券を買いなさいと勧めた花兵衛は、実はこのおまさは可哀想な人で、一人息子がありながら、その息子は、単身上京後、毎月仕送りをして来るだけで住所も知らせず、今はどこに居るのか分からないのだと教える。

ようやく、金助と一緒に質屋に戻ってフィルムの入ったを手に入れた横山は、金助が探している下村菊枝と言う名前を聞いて、それなら自分が知っていると言いだす。

その後、横山は金助を連れて、歌手のとみ子(渡辺はま子)が歌っていたキャバレーにやって来ると、あの歌手が菊枝の事を知っているのだと教え、自分はホステス相手にビールを飲みながら、祝儀を出せと迫る。

金助は、菊枝の行方を知るためだったらと、仕方なく、ホステスたちに祝儀を出すが、酔った横山から踊れと命じられる。

嫌々ながらも、金助は女装し、踊り子たちと一緒にステージで踊り始める。

歌い終わったとみ子が横山の席に来ると、自分は写真の現像を忘れていたので帰るが、ここの勘定は全部、あの親父からもらってくれと言い残して去る。

屈辱に耐えかね、女装のかつらをはぎ取り、席に戻って来た金助は、とみ子に菊枝の事を尋ねるが、今日は休みで、お父さんと二人で東京見物するそうだと教えられただけだった。

おまけに、ここの勘定も払ってくれと言われた金助は愕然としながらも、財布を取り出すしかなかった。

表の通りに出た金助は、通行人の中に若い女性を見つけると、下村菊枝さんじゃないですか?と声をかけながら帰っていたが、人ごみの中で、首に鎖が巻き付く。

その鎖を引いて行くと、今しがたスリがすって行った財布につながっていた。

その財布を持っていたスリはあきらめて去ってゆき、金助は周囲の通行人に向かい、こうして財布に鎖を付けておけば安全ですよと自慢するのだった。

その直後、父親らしき男といた娘に下村菊枝さんでは?と手をかけた金助だったが、その娘は柔道の名手だったらしく、簡単に投げ飛ばされてしまう。

地面に叩き付けられた金助に声をかけたのは、岡部みつ子と言う名前で以前晴れ着を質に入れた菊枝だった。

今すぐ、あの晴れ着を出したいと言うので、仕方なく店に戻ってみると、あろう事か、店の前は訪れた客の人だかりが出来ており、警官が人をさばいている有様。

菊枝を連れた金助が店に入ろうとすると、その警官に止められ、列の後ろに並べと言われる。

自分はここの主人だと説明しても、警官は聞く耳を持たなかった。

仕方ないので、裏口から店に入った金助は、菊枝に晴れ着を返した後、又、菊枝を探して店を出ようとする。

金助には、今晴れ着を渡した娘こそ、探し求める菊枝だとは分からなかったからだった。

しかし、さすがに店先で待ちくたびれた客たちが騒ぎだしたので、金助は店の仕事をやるしかなくなる。

一方、極楽旅館にやって来た横山は、依頼主である花兵衛に、持って来た写真と請求書を一緒に渡していた。

しかし、その写真は水の中から撮ったものか、歪んでいるだけで何が写っているのかさっぱり分からないものだったので、花兵衛はこれは何か?と聞くが、横山の方は、茶菓子をどんどん食うばかりで、請求書の事しか言わず、最終的には自分にもさっぱり分からんと答えるだけだった。

あきれ果てた花兵衛とおまさは、歌占い師の所へ来ると、おまさの息子の行方を占ってもらう。

歌占い師は、又しても怪しげな歌を歌いながら、もっと金を出せと要求すると、「東西南北、劇場じゃ!」と言う。

金助の質屋「やなぎ屋」は、殺到する客の応対でてんてこ舞いの最中だった。

店先に本物の牛を連れて来て質草にしてくれと言う客や、芝居の小道具と言い、大きなつづらを持ち込んで来る客。

そのつづらの中をあらためようと蓋を金助が開けてみると、中から、びっくり箱の仕掛けでお化けの人形が飛び出して来たので、金助は腰を抜かしてしまう。

そうした中、客が持ち込んだ懐中時計を観て今の時刻を知った金助は、こうしちゃいられないと、又あわてて店を飛び出してゆくのだった。

太陽劇場の舞台では、道夫が又ローラースケートの踊りを披露している最中だったが、その舞台袖では、母親のおまさと花兵衛がうれしそうに息子の姿を見つめていた。

踊りが終わり袖に引き上げて来た道夫は、そこで待っていたのが母親だと知ると感激して抱きつく。

まだまだ、しがない役者ですみませんと謝る道夫の態度を観た花兵衛は感心するが、道夫は花兵衛の正体が分からずぽかんとしている。

それも道理なので、花兵衛は恥ずかしそうに、おまさとの関係を打ち明け、あんたの義父さんですと自己紹介するのだった。

又、群衆の中で菊枝を探していた金助だったが、そこに先ほどのスリが警官に捕まって連行されて行くのにすれ違う。

スリは金助の顔を見ると、鎖の切れた財布を返してゆく。

油断大敵、鎖を付けていた財布をいつの間にかすられていたのだ。

その時金助は、あの道夫が両親と共にタクシーに乗り込むのを見つけたので後を追うが、追いつけるはずがなかった。

松竹梅アパートの菊枝の部屋に集まったおまさと花兵衛を前に、道夫はこれまでの話を聞き、実は先月、仕送りの金がなかったので、菊枝さんに頼んで、晴れ着を質に入れてもらっていたのだと打ち明ける。

つまり、花兵衛からもらったり、道夫の仕送りをためた金を小遣いとして譲り受けた菊枝が、そのお金で質屋から取り戻して来た晴れ着は、その菊枝が仕立てたものだったと言う堂々巡りにみんな気づき笑い合う。

そこに、へとへとになってやって来たのが金助だった。

金助は道夫に背広の中から見つけた手紙を返すが、それを観た道夫は、それはいらない、実は芝居ようの小道具でいっぱい持っているからと打ち明けたので、金助は、今日一日の自分の苦労は何だったのかと倒れ込むのだった。

菊枝も呆れて、私の事なんか心配するからはげるのよと、きついことを言う始末。

それでも後日、あの出雲女史と仲良くなった金助は、花兵衛とおまさ、道夫と菊枝コンビと一緒のバスに乗り込み、合同新婚旅行に出かけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

喜劇の天才、斎藤寅次郎監督が、当時人気者だった柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコ、キドシンこと木戸新太郎などをメインにしたコメディ映画。

この作品でのキドシンは、特に笑いを取るイメージではなく、あくまでも二枚目的なポジションで、舞台パフォーマンスを随所で披露している。

太陽劇場があるのは銀座のようだが、その銀座の様子は、ミニチュアで作っているように見える。

ゲスト出演している渡辺はま子の歌声が聴けるのが貴重かもしれない。

そんなにハチャメチャな感じでもないが、いかにも正月映画(公開は1月11日)らしい設定で、気軽に観れて、そこそこ楽しい大衆娯楽映画の一本である。