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大笑い江戸っ子祭

1959年、宝塚映画、蓮池義雄+淀橋太郎脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

唄の得意なお菊(雪村いづみ)が、歌を歌いながら、富くじの宣伝を手伝っていた。

そのお菊に夢中だった古物商伊勢屋の息子与太郎(立原博)と彦三郎(佐々十郎)は、見物客の一番前に陣取り、うっとり唄に聞き惚れていた。

そんな鼻の下を伸ばしている二人から、巾着をすり取ったのは銀次(坊屋三郎)だったが、それを目撃した女の子に指摘され、逃げ出そうとして、くず屋の荷車の所で女の子と追いかけっこになる。

いよいよ、最後の富くじの一枚だけが売れ残ったので、お菊はちょうど通りかかった、同じ長屋仲間であるくず屋の久六(三木のり平)を呼び止めると、「鶴の千番」の残り札を1文で無理矢理売りつけてしまう。

その後、長屋に帰る途中のお菊は、友達である伊勢屋の娘お露(環三千世)が道ばたで何かを待っているのに出会うが、その直後、同じ長屋に住む呉服商の次郎吉(西川鯉次郎)が帰って来たので、彼がお目当てだったのかと察する。

その頃、長屋の大家である伊勢屋源兵衛(益田喜頓)は、一つ開いた部屋に「貸家」の看板を取り付けていたが、古い玄関の軒先から頭の上に崩れた木材が落ちかかって来る。

痛がって長屋を通りかかった源兵衛は、今度は、通路におしめを干してあった紐に首が引っかかってしまう。

文句を言いながら、その紐の下をくぐった源兵衛は、目の見えない按摩の富の市内海突破)が捨てた水をまともに浴びてしまう。

散々な目に遭いながら、長屋の中にある地蔵に手を合わせようとした源兵衛だったが、肝心の御神体がなくなっている事に気づき、その場にいた長屋の連中に聞くが、誰も知らないと答えるだけ。

良く見ると、地蔵の隣の家の前に置かれた漬け物樽の上に漬物石代わりに置かれているではないか。

呆れた源兵衛が、その家の女房おなみ(汐風亭子)に注意して、御神体を元の場所に戻している時、次郎吉が帰って来たので、明日、娘のお露のために、新調したいから、家に来ておくれと頼んで帰ってゆく。

その後、おなみの亭主三次(夏目俊二)が帰って来たので、おなみは息子の亀坊を家に呼び戻す。

そこに、お菊が帰って来て、義姉のお春(朝雲照代)に、兄さんまだ帰って来ないの?と聞く。

お菊の兄の魚屋八五郎(有島一郎)は大の酒好きで、最近ちっとも仕事をしないのだった。

その日も、近所の飲み屋で女将(若水ヤエ子)相手に飲んだくれていたが、そこに通りかかった久六は、八五郎を見つけたので、一緒に帰ろうと誘う。

すると八五郎は、ここの勘定を頼むと言い出し、お人好しの久六は、2朱550文もの勘定を自分で出してやり、酔った八五郎の身体を、自分の荷車に乗せようとする。

ところが、久六が車に乗せたのは、八五郎の着物だけで、中身はすっぽり外れて、女将が外に連れ出して来る。

その頃、八五郎の家では、為三(小原新二)が来て、今のままだと、八五郎はお得意さんでしくじるぜと忠告していた。

そこに泥酔した八五郎が帰って来たので、為三は呆れて帰るし、お菊は怒り、お春は、今日限り、お暇をいただきたいと頭を下げるので、さすがにちょっと反省した八五郎は、明日の朝はちゃんと早起きして魚河岸に行くと言い残して布団に潜り込むのだった。

一方、家に帰り着き、家の前で夕食の準備をしていた久六は、ゴミ駕篭の中に隠れていた女の子を見つけ、驚くと共に、早く帰りなさいと諭す。

しかし、その子には、帰るうちもないのだと言うではないか。

寂しげに帰りかけた女の子は、久六が作っていた土鍋のふたを開けて「煮えたよ」と良いながら帰りかけたので、さすがに、腹を空かしているのだと気づいた久六は、その子を家にあげ、夕飯を食べさせてやるのだった。

事情を聞くと、お弓(翼ひろみ)と言うその女の子は、自分を祖母に預けた両親が江戸に出て行ったっきり帰って来なくなり、その祖母も死んだので、一人両親を捜しに江戸に出て来たのだと言う。

同情し、しばらくこの家にいて良いと久六から言われた女の子は、おじさんは食べないの?と聞くが、食べようにも、夕食用のご飯は全部女の子が平らげてしまっていたので、おじさんはお腹いっぱいと、我慢するしかなかった。

翌朝、お菊とお春は、まだ寝ていた八五郎を無理矢理叩き起こすと、天秤棒を担がせ、魚河岸に向かわせる。

ところが、まだ夢見心地だった八五郎は、そのまま久六の家に入り込んで来たので、驚いた久六が追い出す。

久六が、親を捜して江戸に来たお弓と言う女の子をしばらく家にいさせる事にしたと言う話を来きながら、次郎吉は商売に出かける。

途中、川の水で顔を洗っていた八五郎だったが、ふと水の中を見ると巾着が落ちており、拾って中を見ると、ぎっしり小判が詰まっているではないか。

驚いた八五郎は、走って長屋に帰ると、富の市とぶつかりながら、家に飛び込む。

驚いたお春がどうしたのかと聞くと、拾って来た巾着から小判を取り出した八五郎は、拾ったのだと説明し、これだけあれば、表通りに店が出せるとうれしそうだったが、それを聞いたお春は、拾ったものなら、御上に届けなければ行けないと言い出す。

それでも八五郎は、それは身投げした奴のものかもしれないし、泥棒が落としたものかも知れないと反論するが、お春は、自分が預かっておくと巾着を受け取る。

伊勢屋では、馴染みの河内屋和助(山茶花究)が来ており、源兵衛が保証人になってくれたおかげで、正兵衛さんから千両借りる事が出来、これで商売が成功すると感謝していた。

河内屋が帰った後、ずっと店先で居眠りしていた息子の与太郎に、お前ももう25になったのだから、もっとしっかりしろと源兵衛は叱りつけるが、当の与太郎は、27になったんだと妙な反論をする。

その時、キザな眼鏡をかけた、植木屋平蔵(トニー谷)と名乗るの客が入って来て、長屋の空き家はいくらだと聞いて来る。

応対した源兵衛は、相手の態度が悪いので断ると、客は憤慨して帰ってしまう。

その後、今度は、鉄砲鍛冶の金太(柳家金語楼)なる客がやって来て、同じ家を借りたいがいくらだと言う。

今度の客も、高飛車で態度が悪かったので断ると、怒った金太は、側にあった柄杓で源兵衛の頭をぽかりと殴る始末。

伊勢屋の奥の部屋では、明日見合いがあると言うお露に、反ものを持って来た次郎吉が、私をどこかに連れて逃げてと迫られ、とんでもない、私なんかと驚いていた。

その頃、八五郎は、宿屋仲間をみんな家に呼び込み、大盤振る舞いの真っ最中だった。

一方、茶店で働くお菊を目当てにやって来た彦三郎は、何皿もお団子を頼み、無理矢理食べていた。

その時、伊勢屋の女房が、お菊を呼びに来て、お露が大変な事になったと家に連れてゆく。

伊勢屋では、お露が謎の病気で寝込んでしまったので、源兵衛は医者の良玄(古川縁波)に往診に来てもらうが、良玄は、文字通り、その場で匙を投げてみせる。

伊勢屋の店先には、大久保忠左衛門(堺駿二)なる老いた侍がやって来て、応対した与太郎に、小刀を見せてくれと頼んでいた。

与太郎がすぐに小刀を渡すが、それを受け取った大久保は、抜こうとしてもなぜか抜けない。

与太郎が言うには、それは子供のおもちゃの木刀だから、絶対に抜けないのだと言うではないか。

呆れた大久保が、抜けるものはないのか?と聞くと、これはすぐ抜けると言いながら、仏像の首を抜き始めたので、さすがに大久保は怒りだしてしまう。

寝込んだお露と二人きりになったお菊は、仮病を使っている訳を聞き出す。

八五郎は、すっかり寝入ってしまっていて、起きた所でお春に水をくれと頼むが、水を差し出したのは、帰宅した妹のお菊だった。

お春が、長屋連中に大盤振る舞いをしてしまったが、この支払いは一体どうするつもりかと聞いて来たので、拾った百両渡したじゃないかと八五郎は不思議がる。

しかし、お春が何の話だか分からないと言い出したので、聞いていたお菊も、何を寝ぼけているのかと兄の頭をぽかりと棒で叩く。

お酒を飲むから、酔ってつい気が大きくなるのだから、どうかもう酒早め手遅れとお春が頼むと、確かに夢かも知れないと反省した八五郎は、すまない。もう一生涯酒は飲まずに、明日から一生懸命働くと約束するのだった。

翌日、伊勢屋の前は人だかりがしていた。

お露が、お菊の助言を受け、屋根の上に登って見合いに抵抗すると言うストライキを始めていたのだった。

下でハラハラ見上げていた源兵衛に、一緒に見上げていたお菊は、もっとおやんなさいとお露をけしかける。

お露は、自分で目隠しをして、屋根から降りようとし始める。

驚いた源兵衛に、お菊が、次郎吉さんとお露さんの仲を認める?と迫るが、源兵衛は抵抗する。

しかし、屋根ぎりぎりの端までお露が来て、落ちそうになったのを見ると、さすがに源兵衛も折れて、許すと言い出す。

作戦が成功し喜んだお菊だったが、目隠ししたままのお露は、危うく本当に落ちかけて、何とか屋根の端にしがみつくのだった。

長屋では、三次が息子の亀吉(富松千代志)を連れ、観音様にお参りに出かけようとしていた。

新しい着物を来た亀吉を、うらやましそうに見送ったお弓は、一人寂しく歌を歌い始めるのだった。

そんな不憫なお弓の姿を良玄と久六も観ていた。

久六は、家財道具を一切荷車に積み込むと、お弓を呼び、一緒の伊勢屋に出向き、これを買ってくれと与太郎に頼む。

しかし、与太郎はまとめても100文にしかならないと言うので、お弓は競り合うように値段をつり上げてゆき、とうとう3分で売る事に成功する。

その3文で晴れ着を買い、お弓に着せてやった久六は、手をつないで観音様をお参りに行くのだった。

その頃、次郎吉は、通りを行く子供たちの姿を見ていた一人の年増から、10歳くらいの女の子向きの反物を見せてくれないかと呼び止められる。

玄関先で品物を見せていると、太助(森川信)と言うその年増の亭主らしき男も出て来て挨拶をして来る。

そこは、勘七(榎本健一)と言う目明かしの家らしく、夫婦は、住み込みの下働きをやっているらしかった。

その勘七から呼ばれた太助は、肩をもめと言われたのでやり始めるが、そんなやり方ではダメだ。代わってみろと言われ、自分が親分の席に座ると、立ち上がった勘七が力を込めて肩をもんで教える。

その教え通り、太助は勘七の肩を力一杯もみ始めたので、勘七は持った湯のみからお茶が溢れ出す始末だった。

そこに、子分の松公(西岡タツオ)がやって来て、二代目ねずみ小僧が現れたと知らせる。

その話を玄関先で聞いたお時(坪内美詠子)と言う年増は、実は自分たち夫婦は、女の子を田舎の祖母に預け、蕎麦屋でもやろうと江戸にやって来たが、二代目ねずみ小僧に有り金全部を盗まれてしまったので、今では、こうした所にいるのだと打ち明ける。

ねずみ小僧と言えば、金持ちから盗んだ金を貧しい人に恵んでやる義族なのでは?と、次郎吉が不思議がると、近頃は相手かまわず盗んでいるようで、ねずみ小僧も地に堕ちたねえとお時は嘆息するのだった。

その日、長屋に帰って来た次郎吉は、墨で何かを書こうとしていた久六の家に来ると、お弓の両親を見つけたと教える。

喜んだお弓が、お父つぁんは今何をしているの?と聞くので、次郎吉は、目明かしの親分だよと嘘をつく。

その夜、寝ていた久六の布団を押し上げて、床下から上がって来たのは、泥棒の五郎八(八波むと志)だったが、部屋の棚から荷物を取ろうとしても手応えがない。タンスの引き出しを引くとしても手応えがない。

実は全部、家財道具が何もなくなった久六が、寂しくなったねと言うお弓の言葉をヒントに、墨で描いた家財道具の絵だったのだ。

仕方ないので、久六がくるまっていた布団を盗もうと引っ張るが、久六は布団にしがみついており、目を覚ますと、あんた誰と聞いて来る。

金を出せと五郎八がすごむと、子供が起きるから小さな声で、と久六は頼む。

さらに、金は全くないと、久六が空っぽの巾着を見せたので、がっかりした五郎八は帰ろうとする。

それを観た久六は、表に出て裏木戸を閉めてしまうと、この長屋は袋のねずみになってしまうので、そこで「泥棒!」と叫んだら、長屋中の住民が棒を持って駆けつけて来るだろうと脅す。

そんな、おれを震撼寒からしむ事を言うなよと戻って来た五郎八に、久六は、明日の商売の元手がないので、1朱だけ金をくれないか?どうせ盗んだものだろう?と頼む。

仕方なく、1朱を差し出した五郎八が帰ろうとすると、又、外に出ようとした久六が、前と同じ事を言って脅すので、又、五郎八は戻って来ざるを得なくなる。

明日の朝飯を買う金がないので、それでは商売の時声が出せない。すまないが、もう1朱置いて行ってくれないかと久六が言うので、力なく言う通りにした五郎八だったが、その後も同じ事をされ、結局、持っていた3朱全部久六に渡して、すごすごと帰ろうとすると、又、久六が外へ出ようとしたので、もう許してくれとしがみつくが、久六は便所に行くだけだよと答える。

翌朝、次郎吉は、お弓を連れて勘七の家に向かう。

そんなお弓を見送る久六の姿を見ていたお春は、あんたも寂しくなるねと同情し、いっその事、嫁をもらわないか?良い人がいるんだよと言い出す。

久六は喜ぶが、その内、自分のような貧乏人の所に来る相手の女には何か訳ありだと気づくと警戒し始める。

お春は、あいては窮屈な所で暮らして来た人なので、貧乏には耐えられるだろうけど、ちょいと言葉遣いが丁寧すぎるだけなんだよと安心させ、今夜連れて来ると言う。

一方、勘七の家に来た次郎吉は、お時にお弓を会わせる。

驚いて抱きしめたお時は、太助も呼び、太助もお弓の姿に驚くと抱きしめる。

その間、表で勘七の帰りを待っていた次郎吉は、ねずみ小僧を捕まえたくないか、自分が手引きをするので、その代わり頼みたい事があると言いながら、勘七に耳打ちする。

家に入って来た勘七と松公は、突然、出迎えた太助に向かい、親分ただ今帰りましたと頭を下げて来たので、太助はあっけにとられる。

しかし、この人たち誰?とお弓から聞かれた太助は、どう対応して良いのか判断に迷ったあげく、結局、子分と下男だよと言い、勘七たちに廊下の掃除を言いつけるしかなかった。

しかし、すぐに勘七たちは怒りだし、家を飛び出そうとしたので、それを次郎吉は玄関口で止め、ねずみ小僧を捕まえたくないのですか?今夜7つ頃、某所を見張っていて下さいと引き止める。

仕方なく又、太助の元に戻って来た勘七は、以前やったように、互いに肩のもみ合いっこを始める。

その後、煙草を買って来いと言われ、出かけようとした勘七に近づいて来たお弓は、親分さん、お父さんのためにごめんなさいと頭を下げる。

勘の良いお弓は、とっくに親分と父親の関係を見抜いていたのだった。

それを知った勘七は、良いんだ、この方が元気になるからと出かけようとすると、お弓はちゃっかり、焼き芋も買って来てねとねだるのだった。

その頃、伊勢屋の店先では、雄之助(南都雄二)、お蝶(ミヤコ蝶々)夫婦がやって来て、久六が売ったタンスを買おうとしていた。

応対した与太郎がなかなか安く売ろうとしないので、お蝶は雄之助相手に夫婦喧嘩を始める。

それを止めようとした与太郎だったが、やはり値引きには応じようとしないので、お蝶はとうとう、そこら辺にあった骨董品を片っ端から投げつけ始めたので、とうとう折れた与太郎は、安く二人にタンスを売ってやる事にする。

すると、急に態度が変わったお蝶は、夫にべたべたしだすのだった。

夫婦喧嘩は、全部、芝居だったのだ。

その直後、伊勢屋を訪れた河内屋和助と正兵衛(渡辺篤)は、品物を積んで江戸に向かっていた船がしけにあって遭難してしまったので、保証金として千両出してくれと源兵衛に告げに来る。

その夜、久六の家にやって来たお春は、今、相手を連れて来たと教える。

八五郎に案内され、久六の家にやって来たのは、見るからにおとなしそうで上品な女だった。

お春と八五郎がさっさと帰ってしまい、二人きりになった久六が、女房になる女に名前を聞くと、「自らことの姓名を問わんと申すや?」と妙な事を言い出したので、久六は驚いてしまう。

女はさらに、「自らことの姓名は、父は元京都の産にして、姓は安藤、名は慶蔵、字(あざな)を五光と申せしが、わが母の名は千代女と申せしが、ある夜丹頂(たんちょう)の鶴(つる)を夢みて、わらわをはら めるがゆえ、たらちねの胎内をいでしときは、鶴女(つるじよ)鶴女と申せしが、それは幼名、成長ののち、これを改め、清女(きよじよ)と申しはべるなり」と長々と答える。

翌日の茶屋「さくら亭」では、歌うお菊の様子を、又、団子を食いながら、与太郎と彦三郎がうっとり眺めていた。

そんな客の中に、珍しく次郎吉が酒を一人で飲んでいるのを見つけたお菊が近づいて話しかけると、近々旅に出るのだと言い、お露に届けてくれと手紙を渡す。

その手紙には、自分こそ、世間を騒がす二代目ねずみ小僧であり、これから捕まるつもりだと書かれてあった。

それを読んだお露は泣き出し、一緒に読ませてもらったお菊も、旅に出るとはこういう事だったのかと初めて理解する。

次郎吉から言われた通り、7つ頃、勘七と松公は某所を見張っていた。

勘七の家では、寝付いたお弓の寝顔を観ながら、田舎に帰って、元の百姓に戻ろうか?とお時と太助が話し合っていたが、その時窓の障子を突き破って財布が投げ込まれる。

中を改めて見ると手紙が同封されており、あの呉服屋こそが、二代目ねずみ小僧で、自分たちから金を奪ったのはその偽者だったのかと気づく。

手紙にはさらに、偽者がやった事とは言え、お詫びは自分がしたい。この金は自分が働いて貯めた金できれいなものなので、蕎麦屋を作る足しにでもしてくれと書き添えられていた。

やがて、勘七たちの前に、黒づくめのねずみ小僧が出現し、大捕り物の結果、勘七がおびえながら近づくと、あっけなくねずみ小僧は自ら転んで捕まってしまう。

頬被りを取ってみると、中から現れたのは、あの呉服屋の次郎吉だった。

翌朝、久六は、お清(藤間紫)から、又馬鹿丁寧な口調で「しらげの所在はいかに?」と起こされる。

「しらげ」とは何の事かと聞くと「白米」のことだと言うので、部屋の隅の箱に入っていると教える。

長屋の井戸端では、富の市が、ねずみ小僧と言うのは、次郎吉の事だったらしいねとみんなと話し込んでいた。

そんな長屋の連中の所にやって来た与太郎が、お父つぁんの源兵衛がみんなを呼んでいると知らせに来る。

押っ取り刀で、伊勢屋に集まった長屋の面々だったが、保証金を払わなくては行けなくなり、あの長屋も全部手放す事になった。

次の所有者がみんなを追い立てる事になるかも知れないと事情を話すと、長屋の面々は、みんなで金を出し合って伊勢屋さんを助けようと言い出す。

しかし、保証金と言うのは千両だと源兵衛が告げると、みんなすごすごと帰ってゆくしかなかった。

それでも、長屋に戻って来た面々は、出せるだけの小銭を集める。

全部で1両2分600にしかならなかった。

これじゃあ、博打の元手にもならないとがっかりする八五郎の言葉を聞いていたお春は、家に呼び込むと、いくらくらい元手があれば良いのかと聞いて来る。

八五郎が、50…、いや100両は欲しいと言うと、お春はあるよと言い出し、壺から金役を取り出してみせる。

それこそ、以前、八五郎が拾って来た巾着袋だった。

やっぱりあれは夢じゃなかったんだと驚く八五郎に、お春は、実は御上に届けておいたんだけど、持ち主が現れないので、昨日、お下げになったんだよと言うではないか。

喜んだ八五郎がそれを持って賭場に出かけようとすると、前の三次さんも儲かっているらしいから、一緒に付いて行ってもらいなとお春は言う。

結局、八五郎、三次、占い師の雲竹斎(丘寵児)と3人で出かけ、雲竹斎の出す占い通りに張ってみるが、ことごとく外れ、雲竹斎は、占いが当たるくらいなら、わしは貧乏はしていないと捨て台詞を残し途中で逃げ帰ってしまうし、結局、元手の百両は全部すってしまう事になる。

がっかりして帰りかけた八五郎だったが、その時、三次が、そういえば今日は富くじの当たりの発表がある日だと言い出す。

早速境内に行ってみると、目隠しをした娘が、一枚の当たり札を突き刺し、「鶴の千番」が当たったと発表する。

それを聞いた三次は、俺のは「亀の千番だ」とがっかりする。

しかし、その発表を聞いていたお菊が、その「鶴の千番」なら、確か久六さんに売ったはずだと八五郎に教える。

その側では、スリの銀次も、その話をしっかり聞いていた。

その頃、その久六は、お清に、町民言葉を教え込んでいたが、そこに飛び込んで来た八五郎が、富くじが当たったと教え、その札はどこにあると久六に迫る。

最初は、何の話か分からない様子の久六だったが、八五郎からゆっくり事情を聞かされると、そういえば確かに、お菊から富くじを買った気がする。どこにしまったっけ?と言い出す。

久六は、札の在処をすっかり忘れていたのだった。

それではと言う事で、長屋の連中が総出で、久六の家の中を引っ掻き回して札を探し始める。

探す人間の中には、いつの間にか、銀次も紛れ込んでいた。

そんな中、一人、お清だけは、のんびりお茶など持って来て、必死で探しまわっている八五郎らに飲ませようとしていた。

久六は、食事中だった隣の家の畳の下から顔を出してしまう有様で、札はどこにも見当たらない事が分かっただけだった。

屋根裏までも探して、雀の巣しか発見できなかった八五郎は、ところで、タンスはどこにあると聞いて来たので、久六は、家財道具一式、伊勢屋に売り払ってしまった事を思い出す。

すぐに、伊勢屋に飛んで行った八五郎と久六だったが、与太郎に聞くと、タンスは髪結いの雄之助とお蝶夫婦に、鎧兜一式は大久保忠左衛門に、神棚は某にと三点は既に売れてしまったと言う。

手分けして探す事にし、久六は髪結いの雄之助の家に向かうが、声をかけても誰もいない。

仕方ないので勝手に上がり込み、タンスの中を物色している所に、雄之助が帰って来たので、久六はひとまず隠れる事にする。

着物がタンスから出ているのを観た雄之助は、さては、お蝶の奴、男を作ったなと勘ぐる。

そこに風呂から帰って来たお蝶が、やはり、タンスの前に散らかった着物を観て、あんた、やっぱり女を作って、今から逃げようとしていたんでしょうと難癖をつけ始める。

やがて、おなじみの夫婦喧嘩が始まったので、それを止めに入った久六は、この着物を出したのは実は自分で、タンスの中に富くじが入ってなかったかと聞くが、ないと聞くと、すぐさま家を飛び出してゆく。

一方、大久保忠左衛門は、先祖が徳川家康から貰い受けた先祖伝来の短冊をなくしてしまったので、切腹しようとしている所だった。

家来に介錯を頼み、いざ、腹を斬ろうと身構えた時、やって来た八五郎と三次が、鎧兜はどこにある?と聞きに来たので、大久保は切腹を中断し、勝手に探せと奥に通す。

その鎧兜はすぐに見つかったが、いくら探しても富くじはない。

富くじを知らないかと大久保に八五郎が聞いたので、又しても切腹を中断した大久保は、好き勝手に探せと命ずる。

すると、部屋の中から、ガチャンガチャンとものが割れるすごい音が聞こえて来たので、もはや切腹する気も失せた大久保が、何事かと奥の部屋に入ると、八五郎と三次が、家の家財道具一切を引っ掻き回していた。

何をするんじゃ!と怒りかけた大久保だったが、ふと足下を見ると、そこに、あれほど探し求めていた先祖伝来の短冊があるではないか!

「鳴かざれば 鳴くまで待とう ホトトギス」と書かれたその短冊を見つけた大久保は、これで腹を斬る必要もなくなった。お前たち、良くぞ、部屋をめちゃめちゃにしてくれたと、八五郎たちに礼を言うのだった。

とうとう最後の神棚を買った客の所に来た八五郎が、神棚の所在を聞くと、以前、酒を飲んだ帰り、酒代代わりに花見茶屋に置いて来たと言うではないか。

八五郎、三次、久六たちは、全員、お菊が働いていた「さくら屋」へ向かい、主人から神棚を見せてもらうと、その中をあらため始める。

すると、中の箱を突然奪った男がいた。

ずっと八五郎たちを付けねらっていた銀次だった。

銀次とその子分は、八五郎たちと箱の奪い合いを始め、とうとう箱は取り戻すが、その中に、お目当ての富くじは入っていなかった。

その頃、長屋では、お弓を連れたお時が、お弓が世話になったお礼の挨拶に訪れていた。

そこに、しょげた久六と八五郎が帰って来る。

長屋の連中に、とうとう見つからなかったと報告しているのを聞いていたお弓は、何を探しているのと久六に聞く。

久六が富くじだと教えると、それなら、おじさんの所の押し入れのふすまがあんまり汚かったから、私がつぎはぎ用に貼ったわとお弓が言うではないか。

それっとばかりに、家に飛び込んだ久六と八五郎が、押し入れのふすまをはがし、その裏を観てみると、確かに「鶴の千番」の富くじが貼付けてあった。

喜び勇んだ二人は、そのふすまを持って、金に替えて来るために出かけようとするが、久六に近づいたお清が、又、意味不明な丁寧な言葉を発した。

どうやら、浮気をしたら、痣が出来るくらいつねりますよと言う意味らしかった。

それを聞いた八五郎は、笑いながら、こいつならそんな心配はないよと保証して出かける。

太助とお時夫婦は、念願の蕎麦屋を開店していた。

一方、富くじでもらった千両箱を横に置いた源兵衛、おなみ夫婦は、招待した長屋の連中を前に、これで、あの長屋はみんなのものになったのだと教える。

酒宴が始まり、お菊は、又、明るく歌い始め、その唄に合わせ、全員が踊りだすのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「芝浜」「たらちね」「千両箱」などの落語をベースに作られた時代劇コメディ。

貧乏長屋に住む、人情派の久六に三木のり平、酒好きで働かなかった八五郎に有島一郎と言う芸達者二人を中心に、当時の人気者たちが総出演して、にぎやかに話を盛り上げている。

いくつか見所が用意されているが、「男はつらいよ」の初代「おいちゃん」こと森川信とエノケンとの肩のもみ合いのコントや、三木のり平と八波むと志との掛け合いコントなどが特に面白い。

親を訪ねる人情話もうまく絡んでおり、最後の最後まで話を引っ張る手腕は見事と言うしかない。

通常、いくつかの話をくっつけて一本にまとめると、エピソードの羅列で終わってしまう事もあるが、この作品は、その点、かなりうまくいっているように感じる。

エノケンも、まだ何とか動けている感じがうれしい。