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大当りパチンコ娘

1952年、新東宝、大草四郎脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

流行はづれの馬鹿よりも 流行の中の馬鹿の方がましである カント「人間学」

パチンコをしている課長の元にやって来た部下の女性が用事を伝えるが、君もやりたまえと勧められパチンコを始める。

税務署から電話だと良いながら、向かいの店から電話ごと主人がいるパチンコ店に持ち込んだ女房のため、電話コードでパチンコ屋の前の道が塞がれてしまう。

幼い子供2人を連れ、赤ん坊を背負った痩せた亭主が、パチンコをしている女房の所に来て、家事をし終わったと言いながら、小遣いをもらう。

パチンコ中の医者の元に、担架に乗せた患者を運んで来る看護婦たち。

その場で診察をしてもらう事になった患者も、パチンコ屋から出た所でけがをしたのだと言う。

パチンコ中の老夫婦の元に、孫が生まれたと言う電報が届いたので、それを読んだ二人は、又パチンコ仲間が増えたと喜ぶ。

山伏が、祈祷をしながらパチンコをし、玉が出たので、祝いの法螺を吹き始める。

古山産業の前には、たった一人募集したタイピストのために、寒い早朝から長い女性たちの列が出来ていた。

古山産業で雇われたばかりの小使い、金助(柳家金語楼)は、面接予定時間の10時までまだ時間があるので、女性たちを全員ビルの中に入れてやる。

こうした金助の若い女性に優しい態度を観ていた社員たちは、色気違いじゃないかなどと悪口を言っていた。

そんな金助、10時過ぎになってやって来た毛皮のショールに、赤いマニキュアと言う派手な中年女性に、募集しているのは25歳以下と言う条件だし、そんな派手な格好をしているような女はダメだと追い返そうとするが、その女性は「私は社長夫人ですよ!」と怒りながら入ってゆく。

社長室では、古山大作(古川緑波)社長自らが、一人一人、面接をしていたが、その質問は、荒巻久美子と言う女性を知らないかと言う奇妙なものだった。

応募者が知らないと答えると、側に控えていた秘書(小倉繁)が、電車賃を渡し帰ってもらうだけなので、タイピスト募集と信じ込んでいた応募者たちは怒りながら帰ってゆく。

そこに、社長夫人厚子(一の宮あつ子)が入って来るが、秘書たちも、その女性が誰だか分からず追い返そうとしたので、又、厚子は不機嫌になる。

厚子は、タイピスト募集などと言って、若い娘などを側に置くのは猫にカツブシのようなものでとんでもないと夫の古山を叱りつけると、今日は、長男の圭一が、軽井重工業社長の娘と見合いをする日なのだから早く帰ってなさいと言いつける。

しかし、古山は、実はタイピスト募集と言うのは表向きの事で、本当は、10年前、自分が戦争で兵隊に取られていた時、何度も心温まる慰問袋を送ってくれた「荒巻久美子」と言う、当時10歳くらいの少女に会いたいためなのだと説明する。

しかし、厚子は、そんな古い話をまだ考えているのかと馬鹿にしたので、お前には人情と言うのがないのかと古山も反発する。

あなたには、圭一と丸夫と言う二人の息子のことをもっと考えてくださいと言う厚子に対して、神経衰弱などと言って閉じこもりがちな圭一は情けない奴だと、古山は嘆くのだった。

その頃、軽井重工業社長夫妻と娘を、古山の家で相手していたのは、厚子の兄柴山(伴淳三郎)だったが、小学生の丸夫が投げ込んだボールを頭にぶつけられたあげく、そのボールを拾いに来た丸夫が、客に出していた茶菓子を勝手に持って行ってしまったので、慌てて、自分用の菓子を差し出して、無礼を謝罪するしかなかった。

とにかく、圭一を呼んで来ると立ち上がった柴山だったが、足がすっかりしびれきっていた。

圭一の部屋に来た柴山は、ベッドで寝ていると思っていた圭一を起こそうとするが、布団の中はもぬけの殻だった。

その頃、当の圭一(木戸新太郎)は、新宿にある「三楽軒パチンコ」の看板娘久美子(関千恵子)と、彼女が座っている玉売り場の前で話し込んでいた。

圭一のお目当ては自分だけであり、パチンコをする事自体には興味がない事を知っている久美子は、圭一に、中に入って手伝ってくれと頼む。

その時、久美子のまだ幼い弟健吉と妹ゆう子が小学校から帰って来て、又姉ちゃん目当てに来ていると圭一をからかったので、慌てた圭一は二人に小使いを渡してごまかすしかなかった。

古山産業の社長室にやって来た柴山は、軽井の家族は帰ってしまったと、妹厚子と古山に報告する。

「三楽軒」には、近所の「次郎長寿司」の主人河村(川田晴久)と、パン屋の田口(田端義夫)がやって来ていた。

二人ともパチンコの腕はプロ級で、河村は、たった一個のパチンコ玉だけ買って台に座るが、その一発で大当たりを当ててしまうし、それを忌々しそうに観ていた田口の方も、たった2円分の玉を買うだけだった。

奥の部屋にいた母親お時(清川虹子)に、又あの二人が来たと久美子が報告すると、あの二人には景品ばかり持って行かれて、このままでは店が成り立たなくなるよとお時はこぼすのだった。

「三楽軒」でパチンコをしていたクリーニング屋直吉(横山運平)は、帰ろうとして店の前に来た時、そこに置いてあった配達用の自転車がなくなっている事に気づき、どうしたら良いかと考えた末、もう一台置いてあった自転車に乗って走り去ろうとするが、その自転車には紐が結びつけてあり、持ち主である圭一が、紐を結びつけていた首を引っ張られて出て来る。

圭一から盗むなと文句を言われた直吉は、俺の方こそ、盗まれた当事者だと開き直る。

古山産業で掃除をしていた金助は、同僚の一平(昔々亭桃太郎)に、実は自分は昔、博打にのめり込み、5年前に家を飛び出した人間なんだと打ち明け始める。

それ以来、若い娘を観ると、別れた長女の久美子に見えると言う金助は、一時はバタ屋にまで身を落としたが、今では何とか、この会社に住まわせてもらえるようになったと言う。

別れた家族は今どうしているのか分かっているのか?と聞く一平に、実は、この向こうの商店街でパチンコ屋をやっているらしいんだと金助が答えると、急に目が輝いた一平は、パチンコ玉をポケットからとりだすと、実は自分もパチンコには目がないんだと言いだしたので、金助は呆れてしまう。

その頃、柴山が「三楽軒」にやって来る。

店では、八百屋の親父と息子が一緒にパチンコをやっていたが、ちょっと風呂に行っている間に、空き巣に入られたと女房が怒鳴り込んで来て、働こうとしない亭主を叩き始める。

妹からもらうへそくりを元に高利貸しをしていた柴山は、奥の部屋に座り込むと、お時から借金の取り立てをする。

「三楽軒」の元手を出していたのは彼だったからだ。

側でその話を聞いていた健吉は、柴山の似顔絵の横に「バカヤロー」と書いたものを手渡し、それを観た柴山が怒ると、妹のゆう子も、殺虫剤を吹きかけて来たので、たまらなくなって逃げ出すのだった。

その夜、寝ている子供たちの側で、こんな時、お父さんがいてくれたらと言う久美子を叱りつけたお時は、パン屋の老夫婦がゆう子を欲しいと言ってくださるので育ててもらおうと思っているのだ。一人いなくなるだけでも、家計が助かるからねと悲しそうに打ち明ける。

しかし、その話を、まだ寝入っていなかったゆう子は、布団の中でしっかり聞いてしまう。

その店の前で中の様子をうかがっていたのは金助だったが、怪しんで近づいて来た警官に懐中電灯を照らされたので、立ち小便をする振りをして、すごすごと帰るしかなかった。

ある日、次郎長寿司で、河村が得意の歌を歌いながら、すし飯の準備をしていると、久美子がやって来て、応対した女房に、これからはうちの店に来ないでくれないか。景品代が嵩んで困るのでと詫びる。

しかし、それを聞いた女房は、そっちこそ、うちのが行ったら断ってくれないと、うちの亭主と来たら最近パチンコばかりでちっとも仕事に精を出してくれずm店が立ち行かないとこぼしだし、止めに入った河村と喧嘩を始める始末。

パン屋でも、田口が歌いながらパン生地をこねていたが、隣の部屋で両親たちが、三楽軒の女の子がもらいたいと話をしているのを聞くと反対する。

そんな所に久美子が来て、寿司屋と同じような事を頼んだので、ボクは何のために毎日お土産を持って君の店に行くのか分からないのかい?と田口は嘆く。

久美子は、景品をいつもたくさん取ってゆくので、お土産はそのお返しでしょう?と住まして言うので、田口はますますがっかりしてしまう。

そんな商店街には、近々、WCA放送の街頭録音が行われるとポスターが貼られていた。

ある日、社長室に金助を呼んだ古山は、幼い字で「荒巻久美子」と名が書かれた慰問袋を見つめながら、確か君は荒巻と言う名前だそうで娘がいるそうだが、名は何と言うのかと尋ねる。

金助が、娘の名前は久美子と言うと答えると、やはり、そうだったか、ついに見つかったと感激した古山は、昔、彼女から慰問袋をもらった事を打ち明けると、まるで自分の娘のような気がすると言い出す。

しかし、それを聞いた金助は、自分が父親であり、一度や二度捨てたと言っても、血のつながった親子の関係がなくなる訳はないとムキになる。

古山の方も頑固一徹なので、言葉を引っ込めず、結局、二人はつかみ合いになったので、秘書が止めに入るが、二人の身体に押しつぶされてしまう。

「三楽軒」では、出て来たパチンコ玉をおかずに、弁当を食いながらパチンコをする客がいた。

小学校では、女性教師が、パチンコ玉を持っている子に手を上げさせていたが、一番たくさん持っていたのは古山丸夫で、全く持っていなかったのは、健吉を含め3人しかいない事が分かる。

みんな親や兄弟に連れて行ってもらうと言い、親がやっているので悪い事だとは思わないと言うので、PTAで問題にするしかないかと女性教師は考え込むが、同僚の女性教師は、PTAの人たちもみんなやっているから無駄だと言い出す。

そんな健吉は、パチンコ屋の子供だと他の子にからかわれたので、悲しくなってその場を離れ、一人帰る事にするが、妹のゆう子と出会ったので、一緒に帰る事にする。

ゆう子は、私、パン屋の田舎に行くんですって。私がいなくなったら、家が楽になるんですって…と、兄に打ち明ける。

ある日、「三楽軒」は休日だった。

田口は歌いながら、自転車でパンの配達をしていた。

一方、新宿御苑では、圭一と久美子がランデブー(デート)していた。

途中、橋の欄干に久美子と一緒に座った圭一は、君は看板娘だから、毎日いろいろな色男たちに声をかけられるだろうに、どうして僕を好きになったの?と聞く。

久美子は、他の男の人たちは、私とパチンコ両方が目的だと分かるけど、あなたはパチンコしないので、私だけが目当てだと分ているのでと恥ずかしそうに答える。

それを聞いて照れた圭一は、勢い余って後ろから池に落ちてしまう。

驚いた久美子が助けを呼ぶと、ちょうど近くを通りかかった田口が自転車を置き、助けに来てくれる。

しかし、圭一を池から持ち上げようとした田口も、重さに耐えかねて池に落ちてしまう。

何とか道に這い上がって来た二人だったが、礼を言いながら圭一と久美子がさっさと去って行ってしまったので、それを見送る田口はがっかりする。

さらに、自転車に戻った田口は、積んでいたパンがすべて盗まれている事に気づき、二重にがっかりしてしまう。

その頃、ゆう子と健吉は、パンを自宅で食べていたが、お時はゆう子に、今夜はお前の好きな卵焼きをたくさん作ってやるよと言葉をかけていた。

明日が、ゆう子をパン屋へ譲る日だったからだ。

健吉が、ゆう子はパン屋の娘なるの?と聞いて来たので、お時は、一時だけで、すぐに帰ってくるんだよと嘘を言ってごまかす。

ゆう子は、踊りたいので三味線を弾いてとお時に頼む。

その様子を店の外で聞いていた金助は、聞こえて来るお時の弾く三味線に合わせ、いつの間にか自分も踊りだしていたが、通行人から好奇の目で眺められているのに気づき、恥ずかしさのあまり、あわてて逃げ出す。

次郎長寿司では、今日も河村が歌いながら寿司を握っていたが、女房が出来上がった寿司が並んだ桶を受け取ろうとすると、うっかりひっくり返してしまうし、店内で寿司を食べていた客たちは、皆、口の中からパチンコ玉を吐き出す。

にぎり寿司の中にパチンコ玉が混じっているのだった。

古山の屋敷では、厚子が、丸夫がクラスで一番パチンコ玉を持っていたらしい。恥ずかしいわ。どうしてあんなものが流行るのかしら?と丸山に訴えていた。

そこに帰って来た圭一は、両親を前に、僕は軽井重工業の娘とは結婚しない。新宿のパチンコ屋の娘と結婚すると宣言したので、厚子は大反対する。

しかし、圭一は、許してもらえないなら、いよいよ病気になりますと反抗し、自室のベッドに潜り込んだので、付いてきた厚子は、今日からあなたを監禁します。一歩も部屋から出てはいけませんと叱りつける。

その夜、ランデブーから帰って来た久美子に、お時は、あんたは今日一日楽しかったろうけど、私はずっと泣いていたよと恨めしそうに訴える。

ゆう子は、パン屋の田舎に引き取られる事を知っているの?と久美子が聞くと、ただ遊びに行くだけと言ってあるとお時は答える。

しかし、その夜、ゆう子は自分の布団から出て、お時の布団に入り込んで来る。

それに気づいた久美子は、ゆう子は知っているのよ。今夜一晩だけしか一緒にいられないってと涙ぐみ、お時も自分にしがみついて眠るゆう子が不憫のあまり泣いていた。

翌朝、お時はゆう子を連れてパン屋にやって来る。

すると、老夫婦の姿が見えないのでお時が戸惑っていると、億からチンドン屋の格好をした夫婦が出て来て、ゆう子ちゃんはちんどん屋が好きだと聞いたので、少しでも私たちを好きになってもらうためにこんな格好をして待っていたと言い、その場でちんちんどんどんと演奏を始める。

ゆう子はうれしそうに、チンドン屋をやる老夫婦を見つめていたので、お時は涙ながらに後ずさって帰ってゆく。

しばらくして、母親がいない事に気づいたゆう子は、田口に母親の事を聞くが、もう帰ったと聞き、君は田舎に行きたくないだる?と聞かれると、首を振る。

その健気な姿を見た田口は、僕も失恋の事なんか忘れて頑張るぞ!君に教えられたと礼を言う。

ゆう子には、失恋の意味が分からなかったが、感激した田口からたくさんのパンを食べなさいと渡される。

しかし、それを観た老夫婦は、そんなにゆう子ちゃんに食べさせたら、おなかを痛くするじゃないかと呆れる。

「三楽軒」に秘書と一緒に来ていた古山は、玉売り場にいた久美子から、1000分玉を買おうとするが、久美子は、もうお客さんは300円も使っているので、もうおよしになったらと勧める。

その言葉を聞いた古山は、久美子の人柄に感激し、彼女こそこの家の娘だと聞くと、偉いぞと褒め、自分は古山圭一の父親であると名乗る。

奥の部屋にあげてもらった古山は、そこに飾ってあった写真立てに、昔自分が送った兵隊姿の自分の写真が入っているのに気づき、ますます感激して、自分こそ、あの時君が慰問袋を送った兵隊なんだと打ち明ける。

それを聞いた久美子もあまりの偶然に驚くが、さらに古山は、君のお父さんは金助と言うのだろう?今うちの会社で働いているよと聞かされると、ますます驚いてしまう。

その頃、外出していたお時は、店の前で金助に声をかけられるが、土下座して、これまでの事を謝罪する金助を無視する。

金助がそんな無情な…と嘆くと、無情なのは、女房子供を捨てるような人の方じゃないのかい?私は、死のうと思った事もあったが、今まで必死に頑張って子供たちを育てて来たんだ。二度と顔を出さない出遅れと言い捨てて、家に入ってしまう。

金助はそれ以上言い返す事も出来ず、すごすごと帰ってゆくのだった。

商店街では、WCA放送主催の街頭録音が始まっていた。

集まった群衆を前に、石田一松がバイオリンを弾きながら、昨今のパチンコブームをからかいながら「はは、のんきだね~♬」と人気節を歌っている。

まずインタビューされたのは石黒敬七で、パチンコは、不老長寿、中気の予防効果があるので大先生だと意見を述べる。

パチンコをすると、親指の根元に絶えず刺激を与えるので、それが脳の左側を刺激し、中気にならないのだと言う。

続いてマイクを向けられた徳川夢声は、自分はパチンコ亡国論を持っており、かえって、パチンコをしすぎて、おかしな刺激を脳に与え続けると半身不随になって寝込む事になる。さらに、寝込んでも、看病する女を妊娠させてしまい…とおかしな方へ話を持って行き始めたので、又、石田一松の歌が披露される。

そんな中、群集に交じって聞いていたクリーニング屋の直吉は、自分が盗まれた自転車を持っている子供を見つけ、その場で責め始める。

それに気づいた河村は、こいつは、以前うちで働いていた小僧だったが辞めさせたと言い出す。

騒ぎに気づいたアナウンサーが子供に盗んだ事情を聞くと、パチンコをやりたかったんだが、店を首になったので…と言い訳する。

家に戻った古山は、厚子から、パチンコ屋の娘と圭一が結婚するなんて、うちは世間の笑い者になりますと猛反対されていた。

しかし、古山は久美子さんを圭一の嫁にもらうよ。反対なら離縁するよと言いだしたので、怒って部屋を飛び出した厚子は、ちょうどやって来た弟の柴山に、どうにかならないかと相談する。

すると柴山は、少し運動費がかかるが出来ると請け負う。

河村は、いつものように歌を歌いながら魚をさばいていた。

その頃「三楽軒」に、若い荒くれ連中を引き連れてやって来た柴山は、全員パチンコ屋で遊んでいろと命じると、自分はお時に会い、貸金を返せるまで、久美子を預かると言い出す。

久美子は気丈にも、支度して来ると言って二階に上がる。

クリーニング屋の直吉は、三楽軒から荒くれ者たちに追い出されていた。

その時、久美子が柴山に連れて行かれそうになっているのを観た直吉は、それを止めようとする。

しかし、柴山は、パチンコをしていた子分にやれと命じるが、もうパチンコに夢中になていた子分は言う事を聞かない。

仕方がないので、別の子分に金を渡すと、その子分は表に立っていた直吉を投げ飛ばす。

やられた直吉は、急いでパン屋の田口に緊急事態を教えに行く。

「三楽軒」の店の前には、いつもの常連客たちが取り囲んでいた。

直吉は、パン屋から持って来た小麦粉を目つぶしとして子分たちに投げつけるが、田口は子分たちに殴られてしまう。

久美子とお時は、そんな田口に謝罪するが、そこに圭一がやって来ると、後は任せたと言う感じで、三人でさっさと立ち去ってしまう。

久美子に去られてしまった田口は、仕方なく、又子分たちに立ち向かうしかなかった。

孤軍奮闘戦っていた直吉が、子分たちに殴られているのを観ていた常連客たちは、いきり立ち、自分たちも子分たちに立ち向かってゆく。

その隙に、直吉は、次郎長寿司の河村に知らせに行く。

河村は、店に飾っていた日本刀を腰にさすと現場に駆けつけるが、刀を抜いてみると、中身の刀身はなかった。

慌てて店に駈け戻った河村は、女房と協力して大量のわさびをすり始める。

すり鉢一杯のわさびを持って再び三楽軒の前に戻って来た河村は、そのわさびを子分たちの顔に投げつけ始める。

常連の医者や坊さんも子分たちと戦っていた。

田口も、店から持って来たドロドロのパン生地を子分たちに投げつける。

山伏も祈祷で子分をやっつけていた。

八百屋も戦っていた。

店の中では、柴山が女性陣から取り囲まれ、身ぐるみはがされて下着姿にされていた。

「残酷だ、可哀想だ」と自らぼやきながら、柴山と子分たちは、商店街から逃げてゆく。

後日、金助を連れお時に会いに来た古山は、いろいろ言いたい事はあるだろうが、この光り輝くはげ頭を引っ掻いても良いので許してやってくれと頼んでいた。

その言葉に従い、金助が差し出したはげ頭を引っ掻きかけたお時だったが、私、何も言えません。この人が帰って来てくれた事がうれしいんですと泣き始める。

その言葉を聞いた金助も感激し、二人が抱き合った時、健吉が帰って来る。

健吉は、目の前にいるはげた男がお父さんだと知らされると感激して抱きつく。

久美子も戻って来るが、別れた頃、まだ赤ん坊だったが今は7つになっているはずのゆう子はどうしたと金助は聞く。

お時は、悲しそうに、ゆう子はもういませんと答えたので、死んだのか!と驚いた金助だったが、パン屋のお年寄りにもらってもらったんですと聞くと、金助は古山社長の許しを得て怒りだす。

ゆう子のために金を貯めたし、人形も持って来たんだと、金と土産を差し出す金助。

久美子は、パン屋に来て、先日のけんかでけがをしていた田口に、あなたの気持ちは前から分かっていましたと詫びる礼を言うと共に、ゆう子の事を聞くが、今頃はもう汽車に乗っている頃だと言う。

その言葉通り、田口の両親と共に列車に乗り田舎に向かっていたゆう子だったが、とある駅で、眠りこけているじいさんとゆう子を置いて婆さんが弁当を買って席に戻って来ると、ゆう子の姿は消えていた。

起きたじいさんは知らないと言う。

ゆう子は、汽車を降り、一人、線路を東京に向かって歩いていた。

「三楽軒」では、又いつもの日常が始まっていたが、一緒に暮らすようになった金助だけは、昔家族全員で撮った写真を見ながら、いなくなったゆう子の事を悲しんでいた。

その時、学校から帰って来た健吉が、もし、ゆう子が今帰って来たら叱らないかと言うので、金助は、叱らないが、そんな事はありっっこない。もしあったら逆立ちして、町内を三回回ってやるよと答える。

健吉は、一緒に連れて帰って来たゆう子を見せると、学校の運動場で一人で遊んでいたんだと説明する。

驚いたお時は、泣きながらゆう子を抱きしめ、感激した金助は、約束だからと言いながら、出来もしない逆立ちをしようとして健吉に止められる。

そんな所にやって来た田口は、両親には良く言っておく。良いんです。これで良いんですよと、恐縮するお時と金助に笑顔で答える。

いよいよ、久美子と圭一の結婚式の日がやって来て、花嫁衣装になった久美子は、店を出て商店街を歩いてゆく。

そんな中、田口だけは見物客の中に混じらず、一人パン屋の自室でギターを弾きながら、寂しく歌っていた。

そのカーテンを閉め切った窓の外を、久美子の花嫁衣装がシルエットとなって通り過ぎてゆく。

商店街のはずれで乗り込んだ久美子の車が遠ざかってゆく。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

競輪などと共に、一気に日本中に広がったパチンコ人気を皮肉ったコメディ。

誇張されているとは言え、猫もしゃくしも、日本中がパチンコに夢中になっていた当時の様子がうかがえる。

映画の衰退は、一般的にはテレビの普及に負けたと言う説があるが、パチンコや競輪の流行も大きかったと思う。

娯楽が一気に多様化し、映画人口はそうした他のジャンルに客を奪われたのだろう。

テレビの初期の頃から、コメディなどに良く登場していた関千恵子が、ヒロイン役を勤めているのが珍しい。

キドシンこと木戸新太郎も、ここでは喜劇役者と言うより二枚目として登場しており、三枚目的な演技をするのは新宿御苑で池に落ちるシーンくらい。

意外と重要な役を演じているのは、バタヤンこと歌手の田端義夫である。

片思いが破れ、傷心の唄を一人歌うラストは物悲しくも、心に残る名シーンである。

貧乏故の母子の別れと言うエピソードも通俗ながら、心にしみる。

街頭録音の時登場する、幾人かのゲストたちが珍しい。

特に、石黒敬七と言う人物は初めて知ったが、柔道家、放送タレント、随筆家と多彩な才能の持ち主だったらしく、NHKの「とんち教室」に関わった人らしい。

全体としては、ドタバタよりもペーソスの方に力点が置かれた作品と言うべきだろう。