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空想天国

1968年、渡辺プロ+東宝、田波靖男脚本、松森健監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

原子力空母エンターティナー号が佐世保に入港すると言うので、全国学生連盟の入港反対デモを中心に、日本中が騒然となっていた。

そんな中、「反核」文字の入ったヘルメットを被った田丸圭太郎 (谷啓)は、潜水艦の潜望鏡で「エンターティナー号」を確認しながら、助手のガマラに魚雷発射を命じる。

魚雷は見事命中し、エンターティナー号大爆発の余波を受け、圭太郎の潜水艦も破損し、大量の水がなだれ込んで来る。

その圭太郎に駆け寄って来たのが一人の女性、ずぶぬれになりながら、圭太郎を助けようとする…

圭太郎さん!

その声は、聞き慣れたマミー(京塚昌子)の声だった。

そのマミーが言うには、今しがた大きな地震があったそうだが、圭太郎は気がつかなかった。

目覚めた圭太郎は、すごすごと起き上がると、紐を引き、自動収納ベッドを棚の中にしまい込む。

夫に先立たれたマミーは、息子の圭太郎と二人暮らしだったが、その口やかましさにいつも圭太郎はいら立ち、人形のガマラに愚痴をこぼすのだった。

すると、小さなガマラ人形が巨大化し、人間と同じくらいになると、圭太郎に負ぶさるようにと手招きしてくれたので、圭太郎はうれしくなって、ガマラに負ぶさると、「出発進行!」と叫んで、一緒に窓から大空に向かって飛び出すのだった。

タイトル

もちろん、大きなガマラとの空中散歩は、圭太郎の白昼夢だった。

気の弱い圭太郎は、いつも白昼夢を見て憂さを晴らす癖があったのだ。

スーツに着替えた圭太郎は、人形のガマラに別れの挨拶をすると、勤め先である「山水建設」に出社する。

エレベーターに乗り込もうとすると、少し遅れて来た部長秘書の秋山美智子(北あけみ)と、圭太郎と同じ設計課の同僚前野孝(宝田明)が乗り込んで来る。

プレイボーイの前野は、圭太郎が一緒に乗っている事など忘れたように、美智子にアタックをし始める。

さらに、到着階に着くと、レディファーストだと言い美智子を先に出した前野が、その後付いて降りたので、最後になった圭太郎が降りようとした所で扉が閉まってしまい、又エレベーターは下りはじめたので、圭太郎はその中から「バカヤロー!」とむなしく叫ぶしかなかった。

設計室で設計を始めた圭太郎だったが、その図面を盗み見た前野は「その程度か…」とバカにする。

そこに、美智子から電話が入ったので、受話器を取った前野は、圭太郎に部長が呼んでいると教える。

その後、自分も美智子の側に来た前野は、ピードルの子供をもらってくれないかと言いながら、彼女に色目を使う。

近藤部長 (藤岡琢也)は、やって来た圭太郎に、今朝方起こった「海東沖大地震」のテレビニュースを見せながら、うちが設計した海東孝行が倒壊したので、その原因調査に向かって欲しい。工事を受け取った黒田組の手抜きの疑いがあるから、相手に丸め込まれないように注意するようにと忠告される。

すぐさま帰宅した圭太郎は、マミーに急に出張する事になったと報告し、着替えの用意を頼むと、自分は二階の自室に旅行の準備をしに上がる。

列車に乗り出発した圭太郎は、海東駅に到着、改札口を出て表に出た所で汗を拭いていると、きれいな娘(酒井和歌子)が近づいて来て、山水建設の社員かと聞くと、自分の父親は、あの建物の下敷きになって死んだと言いながら、いきなり圭太郎の頬をビンタする。

その娘が立ち去った直後、ひげを蓄えた下請けの黒田組の黒田(藤木悠)が、赤青黄色と言う派手なアロハを来た子分らしき三人を引き連れてやって来て、今の娘は、潰れた高校の校長の娘と教えると、いきなり今日はゆっくり休んで、調査は明日のしようと言い出す。

その後、圭太郎が連れて来られたのは料亭で、三人の芸者たち(西岡慶子、中川さかゆ、矢野陽子)から接待され、夜一人で寝ていた圭太郎の元に、その中の一人の芸者が潜んで来ると、床に入って来ようとしたので、驚いた圭太郎が自分は呼んでいないと言うと、社長さんが何もかもご承知だと言うではないか。

黒田の手厚すぎる摂待には裏がある事に気づいた圭太郎は、深夜だったにもかかわらず、すぐさま着替えて外出をすると言い出したので、襦袢姿になっていた芸者は驚いてしまう。

倒壊した海東高校にやって来て建物の様子をざっと見た圭太郎は、花束を供えに来ていたあの娘と出会う。

そこに近づいた圭太郎は、花束に手を合わせると、倒壊の原因が分かったと言いながら、その娘を柱に部分に連れて来ると、持参した設計図と照らし合わせながら、鉄骨の太さが指定より細すぎる事や、セメントがすかすかな状態である事を指摘し、下請けの黒田組が手を抜いた事が原因であると教える。

その時、隠れていた黒田と、あの三人の子分が現れ、原因を見抜いた圭太郎に迫って来たので、圭太郎は颯爽と戦い始める。

玄関口の階段を駆け上り、シャンデリアに捕まると、ハリウッド映画のアクション俳優のように、黒田と子分たちをなぎ倒してしまう。

こうして海東駅から帰郷する事になった圭太郎を見送りに来た娘を、動き始めた列車のデッキに乗せた圭太郎は、娘の求めに応じ、キスをしようとするのだが…

圭太郎がキスをしていたのは、自室のガマラ人形だった。

今までのは全部、出張前の自宅で見ていた圭太郎の夢だったのだ。

マミーにせかされて部屋を飛び出した圭太郎は、肝心の高校の設計図を部屋に置き忘れてしまう。

電車で海東駅に降り立った圭太郎は、夢と同じように、改札口を出た所で汗を拭き、娘が北方向に目をやると、思った通り、あの娘が近づいて来たので喜ぶが、その娘は通行人とぶつかって財布の中身を落としてしまう。

近づいて行って、中身を拾ってあげた圭太郎だったが、良く見ると、顔を上げた娘は、全くの別人だった。

そこに、夢と同じ黒田が近づいて来るが、連れの三人は、きちんとネクタイを締めたサラリーマン風だった。

しかも、黒田は、今すぐに高校に調査に行こうと言い出すではないか。

黒田は、百年に一度の大地震だったと、想定外の被災だった事を強調するが、夢で予習していた圭太郎は、倒壊の原因は手抜き工事だ!と喝破する。

意外な事に、黒田は反論せず、それなら設計図を見せてくれと言い出す。

その時になって、圭太郎は、その肝心の設計図を持って来ていない事に気づく。

黒田は、そんな間抜けな圭太郎を蔑むように、あの予算で設計通り出来ない事はあんたの方も承知のはずだと冷静に返して来て、同行の社員たち(田中浩、権藤幸彦、木村博人)も、自分たちの仕事にケチをつけるんですかと丁寧に責めて来る。

それを喧嘩を売られたと勝手に介錯した圭太郎は、夢の中と同じく階段を駆け上ると、シャンデリアにぶら下がるが、体重でコードが伸びて、そのまますとんと床に降りただけだった。

そんな圭太郎の一人相撲に呆れたように、黒田は少しおとなしくさせろと社員たちに命じるが、そこにやって来たのが、設計図を携えた前野だった。

前野は、圭太郎の非礼を詫びると、ここは自分が丸くおさめると黒田と話し合う。

その後、前野と圭太郎は、夢の中のように料亭に連れて行かれるが、やって来た三人の芸者にモテまくるのは前野だけだったので、ふてくされた圭太郎は、ビールの瓶を一人でラッパ飲みする。

かくして、すっかり出張では恥をかいただけだった圭太郎は、帰京後、又、ガマラ人形に出かける挨拶をし、独特のリズム&ポーズを取りながら、自室を出ようとしていたが、マミーがいきなりドアを開けたので、額を強打してしまう。

マミーの用事は、会社の帰りに、コートのボタンを買って来てくれと言うものだった。

出社後、又しても部長に呼ばれた圭太郎は、出張での不始末を先に詫びるが、部長の用事はその事ではなく、どんな形にもなるプラスチックの新建材を我が社で発明したので、車並みの値段で新築住宅を売り出したいので、その設計図を書いてくれと言うものだった。

圭太郎は、「極秘」のハンコが押された、新建材のデータを貰い受け、誰にも言うなと固く口止めされる。

しかし、隣の秘書室から、そっとドアを開け、美智子がその話を盗み聞きしていた。

そこに、前野がやって来て、美智子に、今日、自分が出るサッカーの試合があるので観に来ないかとチケットを渡して帰って行く。

その直後、部長室から圭太郎が出て来たので、今日は土曜日だけど、午後空いてない?と美智子の方から誘いの言葉をかける。

圭太郎は、秘密書類の封筒を持ったまま、美智子と前野が出ているサッカーの試合見物に連れて行かれる。

美智子の前ではナイスシュートを見せると意気込んでいた前野だったが、実際には、ゴール前で外してしまう。

それを観ていた圭太郎は、僕だったらもっときれいに決められたのにな~…とつぶやく。

次の瞬間、ユニフォーム姿になった圭太郎がチームに合流し、圭太郎は、ヘディングで見事にゴールを決めてみせる。

その時、観客の中から、「圭太郎さ~ん!」と呼ぶ声が聞こえたので、そちらに目をやると、そこにいたのは、あの校長の娘だった。

喜んだ瞬間、前野が蹴ったボールが、客席にいた圭太郎の額を直撃し、夢は途切れてしまう。

試合後、サッカー場を出た美智子は、絆創膏を額に貼った圭太郎に、前野からプードルをもらう事になったので、その犬小屋を設計してくれないかと頼む。

快く承知した圭太郎だったが、そきに、オープンカーに乗った前野が近づいて来て、美智子に銀座でビールでも飲まないかと誘ったので、圭太郎は自分も一緒に連れて行ってくれと頼むが、この車は二人乗りだとあっさり前野から断られ、美智子だけがそのまま車に乗り去って行ってしまう。

帰宅後、設計を自室でやっていた圭太郎は、マミーが夕食を持って来て、ボタンを買って来てくれたか?と聞いてきたので忘れたと詫びる。

マミーが出て行った後、仕事の邪魔をされ、面白くない圭太郎は人形ガマラに色々愚痴を言うが、等身大に変身したガマラがファイト!と応援してくれる。

翌朝、圭太郎を呼んだ近藤部長は、圭太郎が書いた設計図が気に入られ、重役会で課長に抜擢することになったと言われる。

さらに、社長が君の才能に惚れ込んで、娘の結婚相手になって欲しいと言っていると見合い写真を見せてながら伝えたので、その写真を見てみると、何と、あの夢に出て来た校長の娘ではないか!

すぐに「いただきます」と答えた圭太郎は、無事社長令嬢と式を挙げ、パンナムでハワイに新婚旅行に飛ぶと、ウクレレを弾きながら楽しく歌い始めるのだった。

もちろん、その横では、あの娘が笑顔で一緒に踊ってくれていた。

もちろん、それも自室で見ていた夢だった。

マミーが、片付かないから、早く夕食を食べてくれと文句を言いに来たので、夢心地でフラダンスを踊っていた圭太郎は、又不機嫌になる。

翌日、喫茶店で美智子と出会った圭太郎は、犬小屋の設計図を渡そうとして、うっかり、一緒に持って来た新建材用の住宅設計図を見せてしまう。

間違いに気づき、慌てて取り替えている時に、やって来た前野が、プードルが天パーにかかって死んじゃったのであげられなくなったと美智子に言い、そのお詫びとして食事をごちそうすると連れて行ってしまう。

頭に来た圭太郎は、持っていた犬小屋の設計図を破いたつもりだったが、実はそれは、新建材用の住宅の設計図の方だったことに気づかなかった。

ちょうど、そこに近藤部長が通りかかり、仕事の方はどうなっとると聞いて来たので、もう出来ていますと、犬小屋の設計図が入った封筒を渡してしまった圭太郎は、社長には娘さんがいますか?とつい聞いてしまうが、確か一人いるよとうるさそうに去って行く部長の背中を見ながら、思わず頬が緩むのだった。

その後、表参道付近を歩いていた圭太郎は、マミーから頼まれたコート用のボタンを探し始めるが、ショーウィンドーの中に飾ってあるウエディングドレスを着たマネキン人形の顔があの娘に見えたので、思わず、そのウェディングドレス姿のマネキン人形ごと買って帰る。

マミーは、またもやコートのボタンを買って来ず、マネキンなどを買って来た圭太郎に呆れ、マネキンの顔をつついてみせるが、それに起こった圭太郎は、モデルガンを取り出すとマミーを部屋から追い出す。

その時、ガンマン姿になった等身大のガマラが、よろけながら窓から入って来て、固めのジャックにやられた。奴はお前を狙っていると警告して倒れる。

すると、ウェディングドレスを来たあの娘が生き返り、ジャックは、私をあなたに取られたので怒っているの。私があの人のお嫁になるわと自己犠牲の言葉を吐いたので、ガンマン姿になった圭太郎は、片目のジャックと決闘しに行く。

崖下で出会ったジャック(宝田明)と決闘した結果、見事に勝った圭太郎だったが、ガンベルトに銃をしまう時、暴発して、ズボンがずり落ちてしまう。

翌日、近藤部長に呼ばれた圭太郎は、夢のような展開を予想し、ニコニコ顔で話を聞くが、しかめっ面の部長が差し出したのは、昨日渡した犬の設計図だったので、自分の間違いに気づいた圭太郎は、本物の設計図は破ってしまたと謝る。

しかし、重役会で恥をかいた部長の激怒は収まらず、次の人事異動、首を洗って待っていろと宣告される。

結局、圭太郎は守衛に格下げになてしまう。

ある日、社長の運転手(沢村いき雄)から、車を見ていてくれと頼まれた圭太郎は、後部座席に乗り込むと、自分が社長になった夢を見て、近藤部長に首を言い渡し、憂さを晴らすしかなかったが、そこへその近藤部長本人がやって来て、後部座席でふんぞり返っていた圭太郎を叱って外に出す。

そこへ現れたのが社長(藤田まこと)で、その後ろから見慣れぬ娘(豊浦美子)が付き添っており、そこにやって来た守衛長山村(佐田豊)からも注意を受けた沢村いき雄が、その場にいた前野に今の娘のことを聞くと、あれが社長令嬢だと言うので、圭太郎は信じられなかった。

夜、会社内を見回っていた圭太郎は、新建材のデータが入っていた金庫を開けている賊が物色中の現場を発見、飛び込んで行って捕まえようとするが、殴られて植木鉢の側に倒れてしまう。

しかし、夢の中の圭太郎は、そのまま三人の賊を屋上まで追いつめると、格闘の末、金網越しに逃げようとしていた賊の一人の首を羽交い締めにするのだった。

大丈夫ですか?と言う声で気がついた圭太郎は、植木鉢の観葉植物を締め上げていた。

振り返ってその声の主を見ると、何と、今までずっと夢に出て来たあの娘ではないか。

聞くと、守衛長の娘で山村宏子と言うらしい。

父親を訪ねて宿直室に来たが、父親の姿が見えないのでここへ来たと言うので、不安を感じた圭太郎が部屋を出ようとしていた時、銃声が聞こえたので、階段を下りて行くと、そこに守衛長の山村が腹を撃たれて倒れていた。

救急車を呼びに圭太郎が去った後、宏子は、階段に落ちていた鍵を拾い上げる。

その後、入院した守衛長を見舞いに出かけた圭太郎は、宏子から拾った鍵を渡され相談されたので、調べておくと預かる。

宏子は病院の外まで圭太郎を見送ってくれたが、そこに又、オープンカーに乗った前野がやって来て、会社の代理として果物籠を宏子に渡して、病院に入ろうとしたので、今は眠っていて迷惑だからと圭太郎が制する。

どうやら前野は、宏子にも目をつけたようで、これから毎日来ると言いだしたので、秘書の秋山君はどうしたんだと聞いた圭太郎は、会社へ向かう前野のオープンカーに乗ろうとした所で発車され、車にぶら下がったまま走って行く。

会社には刑事(ハナ肇、桜井センリ)が来ており、昨日の強盗事件の事情を聞かれる圭太郎だったが、そこへドアの外で聞き耳を立てていた秋山美智子がお茶を運んで来たので、側にいた近藤部長が、この部屋の鍵を持っているのは君だったよね?と聞くと、昨日はちゃんと鍵をかけて圭太郎に預けて帰ったと美智子は答える。

啓太郎は確かに預かっていたと答えるが、この男が手引きでもしないとこのドアは開きませんなと、嫌みを言いだしたので、冷や汗が出た圭太郎がズボンのポケットからハンカチを出し顔を拭こうとした時、一緒に入れていた宏子から預かった鍵が床に落ちてしまう。

それに気づいた刑事が、これはここの部屋の合鍵じゃないかと詰問して来たので、それは、昨日、被害者の娘の宏子さんが拾ったものを預かっていたのだと圭太郎が弁解すると、すぐさま、一緒にその宏子に会いに行こうと、山村が入院している城南病院へ連れて行かれる。

その一部始終を聞いていた美智子は、すぐさま会社を出ると公衆電話に入り、合鍵を拾われたので、宏子と言う娘を捕まえて欲しい。警察は圭太郎のことを疑っているので好都合だと、何者かに報告する。

そこに近づいて来たのが、何も知らない前野で、ドライブでもしないかと声をかけて来るが、美智子はごまかして断る。

その後、城南病院にいた宏子は、刑事を名乗る男から事情を聞きたいと呼び出され、車に乗せられそうになるが、中には怪しげな外国人(ハンス・ホルネフ)が乗っていたので、抵抗するがそのまま拉致されてしまう。

その車とすれ違うように病院に到着したのが、圭太郎を乗せた刑事たちのパトカーだった。

圭太郎は、遠ざかって行く車の中に宏子の姿を見たような気がして、気になって振り返っていた。

病室にやって来た刑事と圭太郎は、ちょうど部屋から出て来た看護婦(田辺和佳子)から、たった今、刑事と名乗る人に宏子は連れて行かれたと聞くと、その男の人相を聞き始める。

看護婦は、あなた方よりあか抜けていたなどとぬけぬけと答えるが、その隙を狙ってその場を逃げ出した圭太郎は、パトカーの運転をしていた警官もうまく外におびき出し、パトカーを奪って宏子の車を追いかけ始める。

目指す車を追いつめた所で、前方からもパトカーが接近し挟み撃ちの形になったので、外国人たちは諦めて車を止めるが、前方のパトカーから降り立った刑事たちが逮捕したのは、外国人たちではなく、パトカーから降りて来た圭太郎の方だったので、外国人たちの車はそのまま走り去ってしまう。

その頃、秋山美智子は、会社を出てタクシーを拾うと、原宿へと向かう。

それをこっそり観察していた前野は、美智子が会う男に興味が沸き、こっそり後を追跡し始める。

美智子がやって来たのは、宏子を縛って連れて来た外国人たちのアジトの部屋だった。

そんな美智子はドジを踏み、前野に付けられて来たと他の子分たちから指摘された美智子は、子分や外国人にしばらく隠れているように命じると、自分からドアを開け、前野を部屋の中に入れる。

誰もいない部屋を見せて追い返そうとした美智子だったが、タバコを吸おうとして、灰皿の上に葉巻の吸い殻を発見した前野は、トイレを貸してくれと言いだす。

バスルームに入った前野は、棚の中からひげ剃りを発見、美智子が嘘をついていることを見破るが、その時風呂の中からうめき声が聞こえたので、ふたを開けてみると、縛られた宏子が入っていたので、あなたを助けに来たのだととっさにごまかして救い出す。

そこに、賊たちが入って来たので、格闘を始めた前野だったが、カーテンの背後に隠れていた外国人に、拳銃で殴られ失神してしまう。

一方、警察の牢に入れられた圭太郎は、看守(小松政夫)から事情聴取を始めるのでと、取調室への移動を命じられていた。

廊下の途中で、トイレの横を通る時、急に腹痛を起こした振りをした圭太郎はトイレに行かせてくれと訴え許される。

トイレの中に入った圭太郎は、服を脱ぐと、窓から下に放り投げ、スリッパを手洗い場の上にそろえておくと、個室に入り、悲鳴を上げる。

その声に驚いてトイレの中に入って来た看守は、そろえてあるスリッパに気づくと、窓の下を除いてみると、人の形に服が落ちているので、てっきり身投げしたとうろたえて、外に飛び出る。

その隙に、圭太郎はトイレから外へ逃げる。

看守の呼び声に気づいた刑事たちがトイレの中にやって来るが、窓には格子がはまっているので、あんな太った男がここから出られるはずがないじゃないかと指摘し、下を除くと、服を取ろうと駆け寄った圭太郎の姿を見つけたので、逃亡したと気づく。

慌てて、圭太郎を追いかける刑事たちだったが、圭太郎は道場に逃げ込むと、そこにおいてあった剣道着に着替え、刑事たちの目をくらますことに成功するが、新人警官と間違えた先輩から、いっちょもんでやると、剣道の相手をさせられてしまう。

すると、又、圭太郎の白昼夢が始まる。

圭太郎は、月形半平太のような時代劇ヒーローの姿になっており、賊に襲われていた宏子を助けようとチャンバラを始める。

しかし、現実では、簡単に打ちのめされてしまった。

道場を出て、面を脱ぎ、裏門から逃げ出そうとしていた圭太郎だったが、そこに刑事たちがやって来たので、慌てて、水道で顔を洗う振りをしてごまかす。

刑事たちをやり過ごした後、裏門から脱出した圭太郎は、剣道着を道々に脱ぎ捨てながら走り去る。

それに気づいて追いかけた刑事たちは、走っていたランニング姿の男を捕まえるが、それは、マラソンランナー(頭師孝雄)だった。

下着姿になった圭太郎は、そのマラソンの中に紛れ込んでいた。

それはテレビ中継されていたので、車の中のトランジスタテレビで観ていた美智子たちは、圭太郎に気づくと、レースから抜け出た所を拉致する。

例の外国人は、海岸近くにある別荘に来ると、圭太郎を捕まえたとボス(平田昭彦)に報告していた。

警察は、圭太郎を犯人だと思っているので、彼らには好都合だったのだ。

圭太郎は、先に連れて来られていた宏子や前野と共に、縛られて物置小屋に閉じ込められていた。

前野が言うには、連中は産業スパイであり、美智子はその一味だったらしい。

早くこんな所から出たいと悲しむ宏子の姿を見た圭太郎は、うめき声を発し、見張り役の外国人を呼ぶと、トイレに行きたいと訴え紐を外させる。

その時、宏子が、苦しそうに足を動かし、外国人の目を引きつけたので、背後から圭太郎は、棒で外国人の頭を殴りつけるが、棒は簡単に折れてしまうやわなものだったので、逆に外国人を怒らせてしまう。

しかし、圭太郎に襲いかかろうとした外国人の足を、前野が引っ掻け、転んだ所に、上に紐で吊るされていた鉄材を落として気絶させた圭太郎は、その外国人が着ていた洋服を奪って、前野、宏子と共に、逃走を図る。

物置小屋を出た所で、気がついた外国人が騒ぎだしたので、ボスたちも気づき、後を追いかけて来る。

海岸に着いた圭太郎たちは、そこにあったゴムボートに乗って逃げようとするが、3人乗るのは無理なようだったので、圭太郎は自分が残って奴らの相手をしているから、その隙に逃げ出してくれと前野と宏子に告げる。

そして、上着に入っていた拳銃を取り出すと、追って来た産業スパイ一味に呼びかけ気を引くと、宏子さん~ん!愛しているよ!達者で暮らせ~1と、遠ざかって行くゴムボートに呼びかけるのだった。

圭太郎は、又、白昼夢を見ていた。

そこでの圭太郎は、敵に囲まれ、一人戦う戦時中の兵隊だった。

そこに駆け寄って来た宏子は、一緒に玉砕しましょうと決死の覚悟を訴えるが、圭太郎もその気になったとき、兵隊姿のガマラが現れ、地雷のスイッチを出してみせる。

ガマラがスイッチを押すと、敵軍の地面が大爆発を起こし、それに勢いづいた圭太郎は「突撃!」と叫んで、崖から身を乗り出そうとして現実に戻る。

産業スパイたちは、近づいて来たパトカーの音に慌てて逃げ出そうとするが、全員、警察によって逮捕される。

圭太郎の側にやって来た刑事たちは、捕まると覚悟を決めた圭太郎に頷くと、捕まった犯人グループたちの様子を指差し、安心させる。

疑いが晴れたと気づいた圭太郎は、急に緊張が解け、その場でへなへなと崩れ落ちるのだった。

産業スパイを捕まえ、機密書類を無事取り戻した功績を認められた圭太郎は、部長に昇格していた。

部長室にやって来た彼を出迎えたのは、秘書になった宏子だった。

うれしくなった圭太郎は、宏子に、会社では部長と呼ばずに圭太郎と名前を呼んでくれと頼むと、宏子が言うその日のスケジュールを聞くが、その日は、前野と社長令嬢との結婚式が予定されていた。

圭太郎は、宏子が前野と結婚するとばかり思っていたと言いだすが、宏子はそんな約束はしていませんと無表情に答える。

そこで、自分と結婚しましょうと切り出した圭太郎だったが、その申し出もあっさり振られてしい、何さ、この蒸かし過ぎの肉まん!とののしられてしまう。

その後、圭太郎は、前野と令嬢の結婚式に出席する。

常務になっていた近藤から、その内、君の世話もさせてもらうよとささやかれた圭太郎だったが、一生自分は結婚などしないと拒絶する。

家に帰って来た圭太郎は、土産に持って来た赤飯を見ながら、早くあんたも結婚して欲しいと言いだしたマミーにも切れ、二階に上がる。

自室に入った圭太郎は、ウェデングドレスを着たマネキンの頭を思わず叩くが、良く見ると、それは本物の宏子で、彼女は涙を流していた。

驚いた圭太郎に、さっきはごめんなさい。急にあんなことを言われたので混乱したのだが、あなたの本当の気持ちは分かっていたと言うではないか。

本当に、目をつぶって、キスをせがむ宏子の顔を前にした圭太郎は、置いてあった人形ガマラにすまなそうに後ろを向かせかけ、押し入れにしまってしまうのだった。

ウェディングドレスを着た宏子と結婚式をすませた圭太郎は、一緒に手を取り、池のあるほとりにやって来るが、足を滑らせて落ちてしまい、それを助けようとした宏子も池に落ちてしまうのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

谷啓の名前の由来になっているダニー・ケイ主演の「虹を掴む男」の日本版とでも言うべき内容のナベプロ映画。

ケロヨンのパクリのような「ガマラ」と言う着ぐるみ人形が出て来る所が時代を感じさせる。

「虹を掴む男」の方では、主人公が白昼夢を見るシーンは、観客にもそれと分かるような暗転の演出がしてあるのに対し、こちらの作品では全くそのような夢と現実を描き分ける演出がない。

そのため、観ている方も、最初のうちは、どこまでが現実で、どこまでが夢の世界の話なのか区別がつかず、少し戸惑うことになるが、それも狙いなのかも知れない。

それと言うのも、冒頭の本当の寝ているときの夢のシーンでは、アニメ表現を交えた表現になっているからだ。

つまり、本当の夢はアニメとの合成、白昼夢の描写では、わざとそれと分かる演出を避け、観客を煙に巻こうとしていたように思える。

しばらく観ていると、観客も、これは白昼夢だなと自然に分かるようになるが、最後のハッピーエンドは現実の出来事なのか白昼夢なのか、観客にもはっきりせず、観る人各々の判断にゆだねているような気がする。

一見、安易な物まね企画のように見え、実は結構、独自の工夫をこらされていたのではないか?

谷啓が、アクション俳優のようにいろいろなシチュエーションで活躍すると言う所が見所で、当時の谷啓の人気ぶりがうかがえる。

その谷啓が扮している圭太郎は、内気で、人形にしか本心を話せず、妄想の世界に逃れることでしか生き甲斐を感じられない、今で言う「オタク」である。

当時はまだ、そうした若者は「変人」と見られていたのだろうが、今では、特に珍しくもない普通にいる一般的な若者像である。

映画に現実が追いついたのかも知れない。

黒田組の社員の一人を演じている田中浩は「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい」と言う、丸大ハムのCMに父親役として出ていた俳優である。

マミーを演じている京塚昌子は、ちょうどこの時期、テレビの人気ドラマ「肝っ玉かあさん」(1968〜1972)で有名になった女優。

まだあどけなさが残るワコちゃんこと酒井和歌子が初々しい。