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拳銃(コルト)は俺のパスポート

1967年、日活、藤原審爾原作、山田信夫+永原秀一脚本、野村孝監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

島津組の島津(嵐寛寿郎)が車で屋敷を出発する。

その島津の車を先行して走る車を運転する金子(本郷淳)は、助手席に乗った殺し屋の上村周治(宍戸錠)に、後の車に乗った島津と用心棒の船木(深江章喜)の顔を覚えさせると、あの車の窓ガラスも、島津の事務所ビルの窓も、皆防弾ガラスだと教える。

島津は、金子のボスである大田原組の大田原(佐々木孝丸)と手を組もうと画策していた。

島津は、いつも4時過ぎに事務所を出発し、自宅には5時に帰るのが習慣であり、その島津があの屋敷にいるのは、後一日だけなのだとも教える。

事務所に到着した運転手は、上村と先崎の二人分のパスポートと、飛行機の搭乗券と前金を上村に手渡し、残りの金は仕事が成功したと確認された時点で渡すと説明する。

上村は、できるだけ、あんた方に分かりやすい方法でやるさと返す。

依頼人である運転手は、この港は島津組のシマであり、関西からやって来た島津組に、我々は仕事を奪われたのだと言う。

その後、秘密の射撃練習場に案内してもらった上村は、先客がいることに気づく。

その先客三好(宮部昭夫)の腕前も大したものだったが、上村も臆するどころか、堂々とその男と並ぶと、標的に向かって銃撃練習を始める。

二人の腕前は互角のようだった。

その頃、上村の弟分である先崎駿(ジェリー藤尾)は、車の修理工場で、普通のブレーキの他にもう一つブレーキを取り付けさせる特殊な改造を依頼した車を受け取っていた。

上村は、島津と大田原が出会う屋敷の茶室が狙えるマンションの空き部屋があることに目をつけ、管理人(中村是好)に部屋を見せて欲しいと頼む。

部屋に案内された上村は、気に入ったと手付金を管理人に渡すと、鍵を受け取り、もうしばらく見てみたいと部屋に残る。

管理人が立ち去った後、上村は、持っていたバッグから、組み立て式のライフルを取り出すと、組み立て始める。

管理人は、一旦下に戻ろうとしていたが、今貸した部屋の前に落ちていたタバコの箱に気づき戻ると拾い上げる。

窓を開けた上村は、火のついたタバコを外に差し出し、風の方向を計る。

間もなく、大田原がやって来て、茶室に入ると、島津が立てた茶を受け取ろうとしていた。

その瞬間、島津は額を撃ち抜かれた折れたので、大田原と警護のものたちは唖然としてしまう。

すぐさま銃をバッグに戻し、マンションの外に出た上村は、外で待機していた先崎の車に乗り込み脱出し、現場に急行する救急車とすれ違う。

スクラップ工場に来た上村は、ライフルの入ったバッグを、スクラップしてもらう。

車で空港へ向かう先崎は、もったいないと惜しがるが、同乗した上村は、これで証拠は何もなくなったとうそぶく。

ドライブスルーで、残りの金を受け取った上村と先崎は空港に到着するが、そこに金子からの無線が入り、島津組が待っているので逃げろとの指示がある。

しかし、上村は先崎を促すと、空港の中に侵入する。

エアフランス405便に搭乗予定の二人を呼ぶアナウンスが聞こえていたが、二人は無視して、バーカウンターにたどり着くが、二人を待ち構えた島津組の男に捕まってしまう。

乗る予定だった飛行機が飛び立つ中、二人は自分たちが乗って来た車の後部座席に再び乗せられ、島津組の男二人が前に乗り込み空港を後にするが、スピードが出ている時、先が、後部座席下に取り付けていたブレーキを踏んだため、車はスピンを起こし、前に乗っていた島津組の二人はフロントガラスに頭を強打し死亡する。

金子に指示を受けようと無線で連絡すると、横浜の村上町にあるレストラン渚館と言う店へ迎えとの指示がある。

横浜に到着した二人は、乗って来た車を埠頭から海に落とし始末する。

渚館の裏口に入った二人は、出迎えたお辰(武智豊子)と言う婆さんから、二階の21号室に入れと言われる。

狭い部屋だったが、そこにベッドメイキングのためやって来た美奈(小林千登勢)と言う娘は、窓は開けない方が良い。前にうっかり開けて撃たれた人がいるからと忠告する。

上村が金子から聞いていた電話番号に電話をしてくれと頼むと、美奈はベッドの下の隠し戸を開け、その中に電話が入っていることを示す。

上村が電話をした相手は、大田原から話を受けていた津川(内田朝雄)と言う男だったが、明日、14号船でエモール号に乗り込ませてやると約束する。

そこに、島津組の幹部・千崎(江角英明)がやって来て、この辺で船と言えばあんたしかない。見つけたらよろしくと言い、100万の金を置いて帰って行く。

積川は子分に、連中に電話して、渚館に近寄るなと言ってやれと命じて、部下を下がらせた後、それまでマッサージをさせていた女をベッドに誘う。

レストラン渚館には、船員(野呂圭介)たちが食事に押し掛けていた。彼らのお目当ては、若い美奈だった。

その後、島津組の千崎らが裏口にやって来て、応対に出た美奈に、二階の部屋に案内させるが、21号室にも別の部屋にも、船員たちが休憩をしているだけで、上村たちの姿は発見できなかった。

外に出た千崎たちは、車の痕跡が残っていないか調べるが、見つけることが出来なかった。

美奈は、鶏小屋に餌をやっていたが、そこにやって来た常連客の雲州(高本均)が、自分の母ちゃんになってくれとプロポーズして来る。

美奈は微妙な表情でその言葉を聞きながら、前にも同じような人がいたけど殺されてしまった。私には死神が付いているの…と、寂しげに断る。

そこに戻って来た千崎は雲州を追い払うと、美奈に向かい、子供に金を送っているそうだがと言いながら、いきなり頬を殴りつける。

そんな渚館に新たな殺し屋(草薙幸二郎)がやって来て、千崎たちと合流する。

レストランの方では、美奈のスカートをめくった客に雲州が水をかけたので、緊張が高まるが、美奈が哀しげに、止めて頂戴!と叫んだので、全員静まってしまう。

その頃、上村と塩崎は、別の食堂にトラックで乗り付けると、その地のモーテルに泊まる。

翌朝も、食堂に停まっていたトラックの運転手に金を渡し、相談事をする。

殺し屋は、金子を乗った車を追い回し、金子を捕まえると、銃で脅し、ドブネズミがいる所に案内しろと命ずる。

金子の車で、艀船がある港に連れて行かせると、車を降りた殺し屋は自分はそこで待つと言う。

やがて、タクシーが近づいて来たので、殺し屋は緊張するが、それは運転手が港に立ち小便に来ただけだった。

その後、今度はトラックが近づいて来たので、殺し屋は運転席を狙い撃つが、そのまま金子の白い車もろとも、海に突き落とされてしまう。

トラックの運転席から降りて来た上村と塩崎は、側に立っていた金子に、次の連絡船の予定時間を聞くが、金子は次の予定はないと答える。

塩崎は、トラックの荷台に縛って乗せていた運転手たちを外に出すと、金をさらに渡し、迷惑をかけたことを詫びていた。

金子は、二人に渚館に行ってくれと頼む。

渚館に戻って来た上村たちは、飯を食わせてくれと美奈に頼む。

21号室に上がろうとする二人に、美奈はそこは危険だから、自分の部屋を使ってくれと勧める。

美奈は、二人が戻って来たのを喜んでいる風だったが、お辰の方は、うちをめちゃめちゃにするつもりじゃないだろうね?と明らかに迷惑顔で、あいつらお尋ね者だよと美奈にも注意する。

久々に落ち着いた上村は、部屋にあったギターを塩崎に手渡すと、久々に唄ってくれと頼み、塩崎は得意の歌声を披露する。

その甘い歌声に上村や美奈は聞き惚れていたが、やがて唄っていた塩崎は眠りに落ちる。

二人の食事を運んで来た美奈は、薬を使ったの?と上村に聞き、この方が良いんだと上村は答える。

お辰は、あんたらがやったんじゃないだろうね?死人が港で上がったよ。岸壁は警察で一杯だよと上村に知らせに来て、早く出て行ってくれと言い出す。

しかし、それを横で聞いていた美奈は、おばさんは定期便トラックのガソリンを盗んで良いの?と嫌みを言い、お辰の口を塞ぐ。

お辰は仕方なさそうに、ダルマ船に弁当を持って行ってくれと美奈に頼む。

その話を聞いていた上村は、自分をそのダルマ船に連れて行ってくれと頼む。

美奈は、千崎はやって来ないと言うが、上村は眠っている塩崎に宛てた置き手紙を書き始める。

そして、そっと優しく毛布をかけてやるのだった。

その頃、大田原が若い男を連れ、津川の屋敷にやって来る。

上村を伴い、トラックでダルマ船に向かう途中、美奈は、ダム螺旋で育ち、ずっと水上生活者と呼ばれていた自分の過去を語り出す。

その頃、千崎に会った。

決して逃げられはしないのに、逃げてばっかり…、もう逃げるのはしたくない。

自分たちは似ていると思わない?と上村に問いかける。

それを聞いていた上村は、逃げているんじゃない。生きているんだ。今度だって、何とかここを抜け出してみせると答える。

津川に対面した大田原は、島津組と手を組んだと報告する。

若い男は島津組の二代目(杉良太郎)だった。

津川と大田原は、自分たちの子分たちを渚館に向かわせる。

その頃、ダルマ船に弁当を持って来た美奈は、船長(山田禅二)に、一緒に連れて来た上村ともう一人を明日の船に乗せてくれないかと頼む。

船長は美奈の頼みとあって快く承知するが、もう一人と言うのは美奈のことかと聞く。

美奈は違うと言うが、少し考えた後、もし船に空席があるのなら、自分も乗せてくれないかと頼む。

その会話を花札をしながら聞いていた船員たちは、ここで育ったものは、どこへも行けんのやぞと美奈に告げる。

その頃、渚館で目覚め、自分が一人になっていることを知った塩崎は、突然やって来た大田原と津川の子分たちに捕まってしまう。

お辰も、津川さんが上村を探しているんだと、子分たちに脅される。

トラックに乗り、渚館に戻って来ていた美奈だったが、渚館の前に見知らぬ男たちが待ち伏せていることに気づくと、そのまま通り過ぎることにする。

一人トラックを降り、渚館に戻って来た美奈は、塩崎の姿が消えており、部屋に血の痕が残っていることに気づく。

そうした美奈の様子を、渚館に残っていた津川の子分(吉田毅=沖田駿一郎)が密かに監視していた。

その頃、塩崎は、津川の屋敷に連れて来られていた。

津川は大田原と島津二代目に、ダルマ船の連中は団結が固くて、一種の治外法権になっており、自分たちにも容易に近づけないと説明する。

そこに、見張りの男から電話があり、美奈が一人で渚館に戻って来たことを津川は知る。

渚館から出て行こうとする美奈に、お辰は、弟分は連れて行かれた。あの男も殺されるよ。それでも出て行くのかい?と止めようとする。

その直後、美奈は子分に捕まり、津川の屋敷にいる千崎と電話で話させられる。

千崎は、舎弟をことを奴に知らせろ。死なせたくなかったら、屋敷に来るように伝えろと命ずる。

その後、ダルマ船に戻って来た美奈は、千崎は一人で逃げていたと伝えるが、それを聞いた上村は信じなかった。

そこに、車で駆けつけて来た千崎がダルマ船に近づこうとするが、船員たちが阻止しようと立ちふさがる。

千崎は、あの男と話をしに来ただけだと説明する。

上村が姿を見せると、舎弟を人質として預かっていると千崎が言うので、それを聞いた上村は、お目当ては俺か?と確認し、奴の命の保証がないかぎり、自分は出頭しないと答える。

船の出港時間を確認した千崎は、子ネズミは船が出るまで手出しはしないと約束し、帰って行く。

しかし、その会話を聞いていた美奈は、千崎の話を信じるの?と上村に問いかける。

上村と美奈が乗った出航直前の船に、塩崎を乗せた津川の子分たちの小舟が近づいて来る。

船に塩崎が乗り込んで来る時、美奈の背中に銃を突きつけながら、上村は安心させてやれと命じる。

美奈は、船に乗り込んで来た塩崎によけいなことは言わないでいた。

上村と再会した感激で、抱き合う二人だったが、上村は塩崎を殴って気絶させ、その身体を美奈に預けると、こんな約束するなんてバカよと嘆く美奈を残し、自分は船を降りると、船長が操縦するダルマ船に一人乗り込む。

港に到着した上村は公衆電話から津川に電話を入れると、明日の午前7時、埋め立て地に行くと伝える。

出航した船の船室内で気づいた塩崎は、美奈がいるだけで、上村の姿が見えないことに気づくと、自分が一人取り残されたことに気づき、外に出ると、「兄貴〜!」と、遠ざかって行く港に向かって叫ぶのだった。

その後、埋め立て地に一人やって来た上村は、相手が何の武器を持ってやって来るか想像し始める。

自分が拳銃を使って相手をすると、せいぜい3人くらいしか殺せないことは明らかだった。

散弾銃か?

上村は、すぐさま津川の屋敷に向かうと、その庭先が見える場所から、双眼鏡を使って相手の動きを監視し始める。

津川や大田原、島津二代目を前に、千崎は、上村は散弾銃を持ってやって来ることを想定し、その威力を披露していた。

周囲へ銃声を気づかせないために、ヘリコプターが飛んでいる音をスピーカーで流し始めると、その場で散弾銃を、大田原の車に向けて発射してみせる。

しかし、防弾ガラスを使った大田原の車のフロントガラスを、弾は通過しないことが分かる。

その後、上村は、ダイナマイトや懐中時計を購入すると、スイッチを入れると5秒後に爆発するようセットした時限爆弾作りを密かに始める。

時限爆弾には強力な磁石が付けられ、スイッチは、上村の手首に付けた金具と連動していた。

翌朝、6時半に目覚めた上村は、ゴルフバッグを提げてタクシーで早めに埋め立て地に向かう。

ゴルフバッグから取り出したのは散弾銃だった。

そして、一緒に持って来たスコップで、四角く穴を掘り始める。

人一人が入るくらいの大きさに穴が掘り上がると、用意して来た時限爆弾をその中に置こうとするが、そこにハエが一匹うごめいていることに気づくと、じっと、そのはえが飛び立つまで見つめている。

やがて、千崎や津川、島津二代目、大田原らが乗った車が近づいて来る。

窓を開け、千崎が撃って来たので、上村も散弾銃で応戦するが、すぐに弾が切れたので、持っていたベレッタで撃ち続け、車が接近し、千崎の銃弾が当たると、上村は掘っておいた穴の中に身体ごと倒れ込む。

その直後、穴の上を、千崎たちが乗った車が走り抜けて行く。

5秒後、その車は大爆発を起こしていた。

穴の中に落ちた上村の腕の金具が外れ、スイッチが入った時限爆弾は、磁石の力で自動車の底に貼り付いたのだった。

燃え上がる車の前にある穴の中から、傷ついた上村が這い上がって来る。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

宍戸錠主演のハードボイルド映画。

まるで「ゴルゴ13」のようなクールなスナイパーを演じている宍戸錠と、草薙幸二郎や江角英明が演ずる札付きの殺し屋たちと対決する様がサスペンスフルに描かれている。

宍戸錠の弟分で、歌が巧い塩崎役のジェリー藤尾や、狭い町を脱出したがっている薄幸な女、美奈を演ずる小林千登勢など、なかなか魅力的な脇役も印象的である。

なかでも、内田朝雄のスケベジジイぶりは絶品。

まだ新人扱いで、セリフが何もない杉良太郎の若い姿が見れるのも貴重である。

なかなか渋い秀作だと思う。