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競輪上人行状記

1963年、日活、寺内大吉原作、大西信行+今村昌平脚色、西村昭五郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

競輪の昭和33年度金杯レースの看板をバックにタイトル

駅で、青梅から家出して来た教え子の小酒井サチ子(伊藤アイ子)に、東京って怖い所なんだと叱りながら、帰りの切符を買ってやっていた中学教師伴春道(小沢昭一)だが、サチ子は、おばさんの所に行ってはダメかと、住所を記した紙を見せる。

見ると、サチ子のおばの家と言うのは春道の家の側の江東区だったが、一度、青梅に帰ってからだと言い聞かせ、自分はトイレに入る。

その間、外で待たせてサチ子に心安げに声をかけて来たのは、春道の近所に住むぽん引きのブラック婆(武智豊子)だった。

それに気づき、慌ててトイレから飛び出して来た春道に、ブラック婆は、あんたの兄さんが死んだ。この子の面倒は私が見るからと言いだしたので、兄の玄道(河合健二)が死んだことを初めて知った春道は、驚いて、サチ子を連れ、実家の宝寺院に帰ることにする。

通夜が行われていた宝妙院の門前の堤防の上には、ブラック婆の息子で知的ハンデのあるオサム(江角英明)が、いつも首からぶら下げている8mmカメラを覗いていた。

そんなオサムに、早く窯を焚け!と叱りつけたのは、檀家総代で銭湯「山の湯」の主人山県(嵯峨善兵)。

そこに春道とサチ子を乗せたタクシーが到着し、出向いていた葬儀屋の色川(加藤武)と、友人の僧侶芳順(高原駿雄)が降りて来た春道に挨拶をする。

寺に入った春道は、嫁いだ妹の佐山徳子(松本典子)や、夫を亡くし呆然とした義姉のみの子(南田洋子)に久々に出会う。

父親で、宝寺院の住職である伴玄海 (加藤嘉)は、葬儀屋と玄道の葬式の打ち合わせをしている所だったので、顔を出した春道は、こんな貧乏寺に一生を捧げた兄さんのために、盛大な葬式にしてやってくれと皮肉まじりに頼む。

外では、サチ子にオサムが話しかけていたが、そこに、連絡をしておいたサチ子のおばが出迎えに来てサチ子を引き取り、オサムの方も、ブラック婆が呼びに来る。

夫の遺影の前で、一人座っていたみの子は、突如、棺桶の中から玄道が起き上がって来て、みの子の身体をむち打ち始める幻影を見て、その場に昏倒する。

そこにやって来た春道は、一人、「許して!」とか「もっとぶって!」とうわごとを言いながら倒れて苦しんでいる義姉を見つけると、疲れているのだから、もう寝た方が良いと勧める。

数日後、みの子はもう仕事を再開しており、持ち込まれた犬の死骸の重さを量り、子供と一緒にやって来た父親から回向料を徴収していた。

中学でバレー部の練習をしていた春道は、小酒井サチ子(伊藤アイ子)が、急に腹痛を起こしてしゃがみ込んだので駆け寄る。

その後、担任の鏡味(小山田宗徳)と共に、サチ子の家を訪れた春道は、サチ子が妊娠をしていたことを告げると、相手に心当たりはないかと聞くが、両親とも不機嫌そうに知らないと首を振るだけだった。

鏡味は、三中へでも転校させる方が良いと両親にアドバイスするが、ご内聞にお願いしますと頭を下げて見送った母親を後に、帰り道、春道は、そんな小手先のごまかしでは問題は解決しないと鏡味に話しかける。

しかし、君はサチ子を妊娠させた相手が誰か分からないのか?あの義父だよ。本当の貧乏と言うものを君は知らないんだと鏡味から指摘されると、驚愕して黙り込むしかなかった。

鏡味と共に、芳順が居眠りをしていた下宿に戻った春道の元に、父親から手紙が届いていた。

鏡味は、家の住職になるのを嫌い、中学の教師になり、バレーボールで子供たちを教育することが出来ると思い込んでいる春道に、そろそろ家に戻った方が良い。お前は絶対坊主になる!と言いきる。

その言葉通り、春道はその後、宝寺院に戻ってお経を読んでいた。

そんな春道の側にやって来た父、玄海は、宗祖様の宝刀を受け継ぐために、みのと一緒にならんかと勧める。

前々から、義姉のことを好きだった春道は、一緒になるのはかまわないが、本当の坊主にはならんと言いきる。

その返事に不機嫌になった玄海は、表の塀でも洗って来い。水道代が助かると叱りつける。

外は雨が降っていたからだ。

外に出た春道は、先に、みの子が黙々と塀を洗っている姿を見つけ、ヤケになって一緒に塀を洗い始めるが、すぐに、木の刺を指に刺してしまう。

そんな春道に近づいて来て、歯で指の刺を抜いてやるみの子の様子を塀の穴から興味深そうにのぞいていたのは、仕事を持って来た色川と芳順だった。

仮の姿とは言え、坊主の仕事を始めるのは気が進まない春道だったが、無下に断る訳にもいかず、芳順と共に、貧しい家の葬式に出かけお経を読むが、子供に向かい、仕事に追われ死んじまった父ちゃんみたいになるより、こんな楽な仕事をする大人になる方が良いよなどと、目の前で嫌みを言われながら女房から出された貧相な食事を前に、春道は全く手が出せなかった。

一方、平気で、そんな食事もきれいに平らげた芳順に、帰り道、口直しに飲もうと誘われた春道は、「おしの」と言う焼き鳥屋で、一杯飲んで帰ることにする。

春道は、俗っぽい考え方を言う芳順に対し説教するが、その会話を聞いていた女将のおしの(初井言栄)は、笑わせるんじゃない。犬や猫の死骸ばかり持ち込まれるので「犬寺」と呼ばれている宝寺院の実態も知らないで何を言うのか。あんたが食べているその焼き鳥の肉だって、宝寺院から買った犬の肉なんだよと言われ、思わず食べていた肉を吐いてしまう。

寺に帰った春道は、一人、犬の死骸を埋めようとしていたみの子を見つけると、犬の肉を売るようなまねは止めてくれと言い聞かすが、みの子は、衛生的に処理しているので大丈夫だし、寺の経営が苦しいのだと言うばかり。

そこへサチ子のおばがやって来て、又家出をして、浅草の変な店で働いているらしいと相談する。

聞けば、ブラック婆が世話をした店らしいと言う。

すぐに、その店に出向き、サチ子を連れ戻して来た春道は、檀家総代の山県の銭湯「山の湯」で使ってくれと頼みに出かける。

それを引き受けた山県は、寺の本堂の再建を早くやって欲しいと春道に頼む。

しかし、サチ子の方はのんきに、風呂炊き係のオサムに肩車され、隣の映画館でやっている「荒野の嵐」と言う西部劇を、裏の板塀の隙間から覗き込んで喜んでいた。

その頼みを実現しようと、翌日から、春道は檀家周りを始め、本堂再建のための資金協力を頼むが、どこの家でも、金など出してくれる所はなかった。

そんな春道に、布団の中で話を聞いていた玄海は、みのに持って来させた溲瓶に放尿しながら、金を出してくれそうな松戸のご隠居の所へでも行けと発破をかけられる。

やけになった春道が、翌日パチンコで油を売っていると、それを見かけたブラック婆が声をかけて来て、サチ子が「山の湯」を辞めさせられてそうだと教える。

すぐさま「山の湯」に向かって事情を聞いた春道だったが、応対した女房の作子(三崎千恵子)は、番台から、昨日の売上の15000円をそっくり盗んで逃げられたと文句を言われて愕然としてしまう。

その後も、檀家周りを続けた春道だったが、もうお寺は辞めさせていただくなどと、若い奥さんから言われたりすると絶望的な気持ちになるしかなかった。

そんな帰り道、春道は、「松戸競輪」の看板を目にし、試しに出かけて、誰も買っていない不人気の車券を少し購入してみる。

すると、ビギナーズラックで、その車券が当たってしまい、まとまった金を手にした春道は、飲んで帰ると、残りの金を集金の金だと言ってみの子に手渡す。

そして、酔った勢いで、みの子にキスをする。

法妙院の財源はここにあったんだと競輪に目覚めた春道は、その日からずっぽり競輪にはまってしまう。

そんなある日、競輪場で出会った色川から、2、3日内には、でっかい仕事葬式が出るよ。こんなうだるような暑い季節は死人が多いなどとからかわれてしまう。

帰宅した春道には来客が待っていた。

中学教師仲間の鏡味だった。

転校と言う小手先の解決法を取らなかった小堺サチ子はどうした?とからかい気味に聞いて来たので、男を作っていなくなったと憮然として答える春道。

退職願を出しといて良かったな。現職の教師のままだったら、大問題になってた所だと鏡味が言いだしたので、春道は驚愕してしまう。

退職届など出した覚えはなかったからだ。

すぐに、父親玄海の仕業だと気づいた春道は、校長に自分は退職願など出していないと伝えてくれと頼むが、欠員がいるまま新学期を始めるわけにはいかないから、校長はもう退職願を受理してしまったと鏡味は教える。

激怒した春道は、本堂再建要資金として150万近くあった銀行通帳を持ち出すと、競輪場に出かける。

そこで会った色川が、ちょっとした情報を持っていると聞くと、その話に乗り、いくら外れてもムキになり、結局、貯金を全部すってしまう。

泥酔して寺に戻って来た春道から、再建資金を全部競輪に使ってしまったと聞いたみの子は泣き出す。

そんなみの子に抱きついて行った春道だったが、拒絶され蹴飛ばされてしまう。

そんな現場を見ていたのが玄海で、何をしとる?と聞いて来たので、父さんが言う通り結婚をしようとしていたのだが、義姉さんは貞女だ。兄さんに操を立てるつもりだとふてくされた春道。

競輪は面白いかと玄海が聞くので、春道が即座に面白いと答えると、玄海は怒らず、昔は屈託のある人は寺に来たものだが、今では競輪に行くんだなと冷静につぶやく。

退職願のことを詰問した春道に、玄海は、お前が迷っていたからだ。寺のためお前のためにやったことだと言うので、春道も、私も考えました。もう金輪際、寺のことは考えません。子の寺を出て行きますと言うと、表に飛び出す。

驚いた玄海は、立ち去っていたみの子を呼ぶ。

外に出たみの子は、墓場で卒塔婆をたたき壊しなあら泣いていた春道を見つける。

玄海の方も、泣きながら仏壇を拝んでいた。

すっかり自堕落になった春道は、安酒を飲みながら競輪通いを続け、予想屋に当たり散らして、逆に仲間たちから袋だたきにあったりする。

深夜寺に戻り、井戸の所で吐いていた春道は、兄の息子の道夫(竹川清明)が玄関口でまだ起きているのに気づき、不思議に思って寺の中に入るが、部屋では、顔に白布をかけられた父の玄海を囲んでいる親戚の姿があった。

別室に行ってみると、電気も付けない暗い部屋の中で、一人座ったみの子が、法妙院はお前の好きにして良い。その代わり、悔いのないようにやり抜いてみろ。ただ道夫のことだけは頼むと玄海が遺言を残されたと言い終え、泣き始めると、春道も思わず泣き出していた。

正規の修行に入る前の準備的な行である「加行(けぎょう)」を受けるため、山奥の本院にこもることにした春道は、まじめに一ヶ月を過ごす。

いよいよ山を下りる時、周囲の仲間たちは、皆一様に、山を下りたら酒や女など俗っぽいことをやりたいなどと口々に話していたが、春道は何も答えなかった。

そんな春道に来客があると言うので外に出てみると、来ていたのは徳子の夫で義弟の佐山了雲 (高橋昌也)だった。

どうやら、町会議員に立候補するので、春道にも協力を頼みに来たらしいと分かり、お前たちのやっていることは、民衆から遊離していると嫌みを言った春道だったが、まだあなたも加行をすませただけではないか、これからどうするつもりだと聞かれると、死んだ親父のやったことから始めようと思う。まず、坊主になってみると春道は凛として答える。

寺に戻った春道は、人が変わったように檀家参りを始め、「おしま」の隣のおかつの家に勝手に上がり込んでお経を唱えたりするようになったので、それを知ったおしまは、新興の「せいこう会」に押されるようになったからやと皮肉を言う。

山県に会いに来た春道は、お宅の地所は、内の土地にかなり食い込んでいると言い始め、先代と山県との間で交わしていたらしい借用証書を見せながら、戦後13年分の地代を払ってくれとまで言い出す。

それを聞いた山県は、こんな絶縁状みたいなものを渡して良いのかといきりたつが、春道は冷淡にも、あなたも、次の選挙にお出になるんでしょうから、今、名誉職が一つでも減るのは嫌でしょうと言い返す。

寺に戻った春道は、妹の徳子が金を出そうとしたので、そんな選挙資金みたいなものはもらえないと断る。

そんな春道に、みの子が「あの子が表に…」と知らせに来る。

雨の中、傘もささずに門前に立っていたのは、行方不明だった小酒井サチ子だった。

サチ子は、「山の湯」から盗んだ金の一部を手渡そうとすると、「山の湯」から連れ出したのは義夫であり、金を取って来いとそそのかしたのも義父だったのだと言う。

今は、その義父と、代々木の飯場で一緒にいるのだと言うので、翌日、その義父に会いに行った春道は、金輪際、サチ子に会うのは止めてくれと言い渡す。

寺に戻って来た春道は、父親の遺影に手を合わせながら、みの子に、自分はこの寺の住職として生きることに決めたので、結婚してくれないかと頼む。

黙って聞いていたみの子だったが、一つだけ聞いておいて欲しいことがある。

道夫のことなんですが、あの子は玄道の子ではないんです。

玄道は子供が出来ない身体だったので、あれは、お父さんの子なんですと言い出す。

それを聞いた春道は、父親がみの子と寝ている姿が浮かんで来て、思わず、目の前の遺影を取り上げると、みの子の身体に投げつける。

そして、出て行け!出て行ってくれ!とみの子に怒鳴りつける。

それからの春道は、又競輪場通いを始める。

寺久々に仕事を持って法妙院にやって来た来た芳順 は、みの子の代わりにろうそくの機会を回しているサチ子の姿を見て驚く。

そんな芳順に、春道は奥さんはもう帰って来ないだろうと、他人事のように告げる。

ある日、色川と出会った春道は、わざわざ競輪場までいかなくても、身近な所に飲み屋があると教えられる。

それは、「おしま」の向かいにある「不動産屋」だった。

色川からの紹介で入った飲み屋の方も、今日は持ち合わせがないと言う春道に、法名院さんだったら間違いないからとツケで賭けさせてくれたので、その日以来、春道は、どっぷり飲み屋通いが始まり、葬儀の現場で、遺族の前にいた春道に、勝負の結果を色川が耳打ちするまでになる。

そんなある日、外出から帰って来た春道は、ブラック婆から山県が寺に来たと教えられたので、地代を払う気になったかと想像するが、どうやら寺にある再建資金を調べに来たらしいと聞くと青くなる。

さらに、ブラック婆から、サッチャンとはもう出来たのか?と下司なことを聞かれたので怒った春道だったが、もし良かったら、うちの家のオサムの嫁にくれないかと言いだす。

オサムには一生食べるのには困らないだけのものは残してあるとの申し出だったが、サチ子には早すぎると断ると、寺の中にいたサチ子には、もうオサムなんかとは付き合うなと怒鳴りつける。

後日、妹、徳子に会いに、了雲の慈念寺に出かけた春道は、選挙運動を手助けしても良いと申し出るが、徳子は冷たく、もう選挙資金は第本院に出してもらったと答え、義姉さんも出て行ったんじゃ、あの寺もどうしようもないし、まさか、再建資金に手を付けちゃいないでしょうね?と疑問を口にする。

その後、春道は、大きな寺院の賽銭箱の側で、中に入っている大量の賽銭を思い浮かべている自分に気づく。

競輪場では、落ちていた札束を見つけ、落とした貧しそうな老婆と奪い合い、取って逃げると言う醜態まで見せる。

夜中、寺に戻った春道は、外で待っていたサチ子から、帰らない方が良い。変な人が来ているからと教えられる。

そっと塀の陰から寺の方をのぞいてみると、確かにヤクザ風の男が立っていた。

すぐさま、サチ子を連れ、食事中だったブラック婆の家に飛び込んだ春道は、サチ子をオサムにやるからいくらくれる?と言い出す。

しかし、ブラック婆は、もう止めた。後が怖いや、バカと叩かれたので、逆上したあまり、その場でブラック婆の首を締め始める。

気がつくと、側に立っていたオサムが、その様子を8mmで撮影していたので、思わず手を離した春道は、夜遅くなって、寺に戻ることにする。

寺の中は物色したように荒らされており、ひどいことしやがる…とつぶやいた春道だったが、ひどいのはどっちだと言う声に驚く。

やくざたちがまだ残っていたのだ。

やくざたちにぼこぼこにされた春道は、千住に金があると言い訳すると、一人のヤクザを伴い、道夫とアパート暮らしをしていたみの子の所に行き、金を無心すると、土手の所でその金を渡す振りをして、ヤクザを突き落とすと、自分は走って逃げ去る。

しかし、すぐに、競輪場で見つかってしまった春道は、不動産屋の飲み屋の所に連れて来られると、法妙院の土地の所有権委譲の書類に無理矢理拇印を押されそうになる。

法妙院を買いたいと言う人がいるんだと言うのみやの言葉を聞いた春道は、慈念寺の仕業だな?寺院の売り買いは出来ないはずだと抵抗するが、おたくの宗派では出来ないかも知れないが、別の宗派では出来るんだ、買うのは芳順だと教えられる。

おしま共々「れいこう会」に入り、そのおしまから金を出してもらったのだと言う。

それを聞いた春道は、愕然としながらも最後の意地を見せ、土地代から、借金を差し引いた差額の50万をくれと言い出す。

飲み屋は、慈念寺にでも寄付しようと思っていたが、首でも吊られたらたまらないのでと言いながら、その場で50万を渡して来る。

春道は、その金で、最後の大勝負に出る腹づもりだった。

翌日、競輪場に向かった春道は、7レース一本に賭けるつもりで席に着くが、気がつくと、隣に座っていた女、辰代(渡辺美佐子)が、紐で身体を柵に結びつけている。

訳を聞くと、よけいなレースに手を出さないように、自分で縛っているのだと言う。

同じギャンブル好きとして、女の気持ちを理解した春道は、相手も7レース一本に絞っていると聞き喜ぶ。

6レース目になった時、辰代が、必死に紐をほどこうとし始め、もう我慢できないと言い出したので、もう1レースで7レースだと、春道は彼女の気持ちを落ち着かせる。

いよいよ7レースになり、二人は食い入るように勝負の行方を見守る。

2と4がほぼ同時にゴールし、結果は写真判定となる。

春道は2-4と賭けており、辰代の方は4-2だった。

結果は2-4で、春道は大金を受け取る。

帰りのタクシーに乗り込もうとしていた春道に近づいて来た辰代は、静岡のおばあちゃんおところに行こうと思うが、もう汽車賃すら残っていないので、3000円貸してくれないかと言い出す。

春道が金を渡すと、ただで借りるのは気がすまないので、代償として自分を買ってくれと言い出す。

辰代を連れ、ホテルの入って先に風呂から上がって来た春道は、ジュースをもらっておいたと言う辰代からジュースを受け取ろうとするが、思わず手が滑って、コップを落としてしまう。

どこまでもツイテいる…とつぶやいた辰代は、自分の分を飲み干すと苦い。最後の私の運まで奪った人…と漏らす。

事情を察した春道が驚いて辰代を見つめる中、苦しみだした辰代は、一緒に死にたかったと言いながら春道の身体にしがみつこうと迫るが、春道から振り払われると、カーテンを引きちぎりながら倒れる。

気まずい気持ちのまま食堂でカレーを食べた春道は、寺に帰ろうとするが、又、外でサチ子が待ち受けていた。

見ると、法妙院には「立ち入り禁止」の看板が打ち付けられ、門にはかんぬきが打ち付けられていた。

数日後、みの子のアパートにやって来た春道は、寺に戻ってくれ。芳順に買われた寺は、自分が二倍以上の金を払って買い戻したし、再建資金も取り戻した。

道夫こそが、あの寺を告ぐ資格があるのだと頼む。

あなたはどうするのかとみの子に聞かれた春道は、自分はあの子と寺を出ると答える。

その後、サチ子と二人で東北へ向かう列車に乗り込んだ春道に、サチ子がどこへ行くのかと聞くと、まず青森まで行こう。その後の事は分からない。どこまでも先生について来るねと念を押す。

それから5年後、すっかり町会議員にも当選し、仙台の僧侶と一緒に車を走らせていた佐山了雲は、僧衣を身に着け、サチ子と共に旅を続けていた春道に遭遇したので、車を止めさせ声をかける。

春道は、負け犬なりに意地っ張りは直らんようで、こうしてそれなりにやっているよと胸を張り別れる。

車に戻った了雲は、隣の席に座った僧侶から今のは誰ですか?と問われると、「競輪上人です」と答える。

その競輪上人こと春道は、今日も競輪場の中で、多くの民衆を前に、仏の道と競輪の車券の買い方をだぶらせて饒舌に語りかけ、大人気の予想屋として商売を続けるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

小沢昭一主演の、生来のまじめさ故に、現実の残酷さ、惨さに絶えきれず、ギャンブルにのめり込んで行ってしまう一人の男の葛藤を描く映画。

ギャンブルの快楽と残酷さを、縁がないと思われる聖職者と重ねている発想が見事で、原作自体の力もあるのだろうが、とにかく、人物描写、展開共々面白いと言うしかなく、まごうことなく名作だと思う。

出て来る役者たちは皆達者な人たちだが、そうした人たちを相手に一歩を後に引かない名演技を見せる小沢昭一には驚かされる。

まさに代表作の一本だろう。

 


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