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次郎長意外伝 大暴れ三太郎笠

1957年、東宝、正岡容原案、小野田勇+キノトール脚本、青柳信雄監督作品

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

浪曲の広沢虎造が唸りながら、前編で登場した主だった登場人物を紹介して…

タイトル

前回の事件ですっかり名前を売った灰神楽の三太郎(三木のり平)は、次郎長一家の一室で、ごろごろしていた。

そこに、兄貴分の追分の三五郎(本郷秀雄)が、親分が呼んでいると呼びに来たので、呼び捨てにするなと息巻きながらも、親分には怒られるのかと三太郎は心配する。

そんな臆病な三太郎に、暇をもらうのかもしれねえぜと三五郎はからかう。

由貴路(越路吹雪)も同席していた親分次郎長(小堀明男)の前に座った三太郎は、長いわらじを履いてもらいたいと次郎長直々から言われたので、覚悟を決め、お世話になりやしたと頭を下げる。

そんな慌て者の三太郎の早合点に呆れながら、次郎長は、この由貴路の夫の敵を捜す旅に同行してほしいのだと説明する。

次郎長一家には、俺なんかより腕っ節の立つ男はいくらでもいるのに…と驚く三太郎に、お前なら、どんな事があっても、絶対、由貴路さんに対し、妙な気持ちなど抱かないからだと次郎長は笑う。

酒場「まりりん亭」で化粧をしていた女給のお紋(中田康子)は、三ちゃんが来たよと同僚から声をかけられたので、好きな三太郎が来たと思い込み、喜んで店に出るが、底で待っていたのは追分の三五郎だったのでがっかりする。

そんなお紋をからかうように、三五郎は、三太郎が由貴路と旅に出る事になり、明日の朝、一本杉の所で落ち合うそうだと情報を教えてやる。

その頃、旅支度をしていた三太郎は、亡くなった森の石松兄貴に会いたいなと言いながら、石松からもらった愛用のキセルで煙草を吹かしてみる。

すると、煙の中から、裸姿の森の石松(森繁久彌)が出てくる。

どうして裸なのかと三太郎が不思議がると、今風呂に入っていた所だと石松は寒がりながらも、将棋盤の上に腰を下ろして、お前は女に気をつけろ、その鼻に、女難の相が出ているから…と言いながら消えてしまう。

消えた空間から、石松のくしゃみが聞こえたので、今年の夏はバカでも風邪を引くらしいと三太郎は感心する。

翌朝、三太郎は、笠を目深に被った女性と旅に出かける。

その頃、次郎長一家の玄関に由貴路を発見した子分衆は驚く。

訳を聞くと、夕べ、三太郎はここで待っているので、ここに来るようにと使いがあったと言うではないか。

その頃、土手の所で一休みする事にした三太郎に、横に腰掛けた笠を被った女が、まりりん亭のお紋と言う方をどう思いますかと聞いてくる。

てっきり、相手を由貴路と思い込んでいた三太郎は、どちらかと言えばお嫌いですね。相手の方では俺の事を好きらしいけど…などと答える。

すると、横に座っていた女が笠を取り怒りだしたので、その顔を見てお紋だったと気づいた三太郎は、慌てて立ち上がると、その場を逃げ出す。

すべては、昨日、三五郎から、今朝の由貴路と三太郎の待ち合わせの場所を聞いていたお紋が嫉妬心からやったすり替わり芝居だったのだ。

そんな騒ぎも知らず、由貴路の方は、三太郎が通って来た道を一人で旅立っていた。

草むらに逃げ込んだ三太郎だったが、ちょうどそこに、高いびきをかいて寝ている太った浪人がいるではないか。

お紋に気づかれはしないかと、浪人のいびきにじりじりしていた三太郎だったが、やはり、そのいびきち三太郎のぼやきの声に気づいたお紋が居場所を見つけてやって来たので、三太郎はその場を離れるが、お紋に捕まってしまう。

その時、寝ていた浪人が起きて来て、三太郎を、お紋をたぶらかしているヤクザと勘違いし、自分は鼾狂四郎(千葉信男)と名乗ると、斬ろうと腰の刀を抜いてくる。

驚いた三太郎も名乗って、刀を抜くが、それを観ていたお紋が三太郎の方を応援し始めたので、それを見た鼾狂四郎は、自分が早合点していた事に気づくと、いきさつを二人に聞こうと刀をおさめる。

話を聞き終えた狂四郎は、それらしき武家の女なら、先ほどこの街道を通った際、宿を紹介してほしいと聞かれたので、宇佐美屋というこの先にある宿の宿を教えたやったので、これから一緒に行ってみようと言いだす。

喜んだ三太郎と、膨れっ面のまま付いて来たお紋は、狂四郎の言う宇佐美屋に一緒について来てみるが、玄関口を入っても誰も出てこない。

その内、狂四郎が洗い水など持って来たので、お武家様にそんな事をしていただかなくてもと三太郎が恐縮すると、実はこれが自分の今の仕事で、自分は食うために宿の呼び込みをやっており、武家の女の話は、二人をここに連れてくるための嘘だったと狂四郎が告白するではないか。

呆れた三太郎が、お紋を連れて、宿を出ようとしている時、奥から、宿の主人が転がり出て来て、けんちんの親分が来ているので追い返してほしいと狂四郎に言うではないか。

しかし、狂四郎は腕に全く自信がないらしく、用心棒としては全くの無能ぶり。

話を聞いた三太郎が、けんちんの親分とは、けんちんの豚十の事かと聞くとそうだと主人は言う。

ちょうどそこに、銭函を抱えた子分とけんちんの豚十(森川信)が、止めてくれとすがりつく女将おゆり(一の宮あつ子)と共に出てくる。

どうやら、前から勝手に、金を借りると守る気のない証文を書き、勝手に店の金を持って行っているらしい。

そんな豚十を前にした三太郎、最近、お前は清水の次郎長から盃をもらったばかりなのに、なんて事しているんだと声をかけると、相手を灰神楽の三太郎と気づいた豚十は、次郎長に知られては一大事と、急に態度を改めると、慌てて宿から逃げ出してゆく。

自分の組に帰って来た豚十は、困った事になったので子分たちと善後策を考える事になる。

下手に三太郎に手を出すと、次郎長一家にやられてしまうと心配する豚十の話を聞いていた用心棒の加倉井典膳(丘寵児)は、下手人がバレないようにやれば良いのだろうと口を出してくる。

夜、由貴路を探そうと宿を出しようとした三太郎に、お紋も一緒について来ようとするが、その時、三太郎の方にわざとぶつかった典膳は、因縁を付けて、三太郎に斬り掛かろうとする。

しかし、その騒ぎを見ていた野次馬の中に由貴路がおり、密かに小柄を投げつけて、典膳を倒してしまう。

三太郎とお紋は、相手が勝手に倒れてしまったので、てっきり三太郎自身が倒したと思い込んでしまう。

三太郎は、野次馬の中から声をかけて来た由貴路に気づくと、会えて良かったと喜ぶ。

一方、典膳がやられたとの知らせを受けた豚十は、三太郎がそんなに強いとは思わなかった。うっかり出来ないと表情を引き締めるのだった。

三太郎とお紋は、由貴路の歌に合わせて、踊りながら通りを歩いていたが、庶民的なものをごちそうしようと考えた三太郎は由貴路をおでんやに誘う。

すると、嫉妬したお紋が、芥子をたっぷり塗ったおでんを頬張ってみせ顔をしかめる。

それを見ていた由貴路も、同じように芥子をいっぱいつけたおでんを口に運び、辛くないと平気を装い、さすがに武家の方は違うと三太郎から感心される。

悔しがったお紋は、もっと庶民的な店に連れて行ってやると、由貴路をたいやき屋に誘うと、無理矢理大量のたいやきを口につめて食べだすが、顔中あんこをつけただけで惨めな結果に終わる。

その店を出た時、ちょうど会いに行く所だったと言う豚十と子分と出会った三太郎たちは、自分たちが勧進興行をやっているので観に来てほしいと、芝居小屋に案内される。

芝居小屋では、人間の本能を開放させると言う呼び込みの「ろかびりー」なる出し物を若い男女が舞台で演じていた。

つまらなそうに、その舞台を見学していた三太郎に、豚十の合図で、向かいの二階席から小柄を投げつけて来た浪人がいたが、三太郎の隣に座った由貴路に、ことごとくつかみ取られただけではなく、最後は投げ返されて倒れてしまう。

しかし、舞台を観ていた三太郎とお紋は、そんな事には全く気づいていなかった。

続いて「第二幕」として、舞台では、少し知的ハンデがあるかのような若い娘が踊っており、その娘に男三人が絡んで着物を脱がすと言う下品な芝居が始まるが、その三人男に見覚えがあった三太郎は、ずかずか舞台に上がり込むと、性懲りもなく、まだこんな事をやっているのかと、顔見知りの雁九郎(由利徹)、とろ八(八波むと志)、たこ七(南利明)を叱りつける。

しかし、三人男は、これは芝居なんだと怯え、娘役のお京(河内桃子)も、なぜ、こんな事をやらされているのか良くわからないと言うばかり。

芝居が中断し、客が騒ぎだしたので、芝居の裏方(沢村いき雄)が出て来て、三太郎に止めろと説教しだす。

さらに、客の中にいた、宍戸梅軒の孫で宍戸不乱軒(打越正八)なる浪人ものが鎖がまを持って舞台に上がって来たので、三太郎は相手をしなければならなくなる。

この様子を見ていた豚十は、自分たちとは無関係な剣客が現れて、三太郎を始末してくれそうな気配になったので、これ幸いとほくそ笑むのだった。

一方、三太郎のピンチに気が気ではないお紋は、いつの間にか、自分たちの後ろで寝ていた鼾狂四郎に助けてやってくれと頼むが、臆病な狂四郎は、鎖がまには弱いと言って動こうとしない。

その時、由貴路が素早く放った小柄が、不乱軒に刺さり、その場に倒れる。

またしても、三太郎は、自分の刀で切ったのだと勘違いしてしまうが、観ていた客たちは、やんやの大喝采。

豚十たちは、こそこそと芝居小屋から逃げ出してしまう。

組に戻って来た豚十は、心痛のあまり、寝込んでしまう。

そこに訪ねて来たのは、殺された宍戸不乱軒の兄で槍の名人と言う十時軍右衛門(有島一郎)であった。

軍右衛門は、豚十から接待を受けると、弟の敵を討ってやると息巻くが、結構、三太郎は腕が立つと聞くや、一計を案じ、豚十に耳打ちをする。

それを聞いた豚十は、それは名案と喜び、さっそく三太郎に宛てた手紙を書き始める。

その頃、宇佐美屋では、豚十の悪事を次郎長親分に知らせる手紙を書いた三太郎が、雁九郎、とろ八、たこ七トリオに持って行かせようとしていたが、そこにやって来た狂四郎が、今しがた、豚十の子分がこれを持って来たと手紙を三太郎に渡す。

それを読んだ三太郎は、三人組に手紙の使いを一時止めるように命じる。

豚十が改心したので、懺悔してお詫びしたいので、三太郎に組まで来てほしいと書いてあると言うのだ。

それを横で聞いていたお紋は、幡随院長兵衛の例もあるので、絶対に、相手の家の風呂には入らないでくれと頼む。

宇佐美屋を出た所で、大事な石松兄貴のキセルを忘れて来た事に気づいた三太郎は、雁九郎に部屋まで取りに行かせるが、雁九郎は、部屋にあったお紋のキセルの方を間違えて三太郎に渡してしまう。

豚十の組に単身やって来た三太郎は、出迎えた豚十から、想像通り風呂を勧められたので、丁重に断るが、それじゃあ、まだ俺の事が信用できないのか?第一、うちの風呂は、南蛮渡来の蒸し風呂で、いわば「トルコ風呂」なんだとまで食い下がられると、それ以上断る事も出来なくなり、では、自分は風呂で煙草を吸う癖があるので、タバコ盆を用意しておいてくれと注文を付ける。

蒸し風呂に入った三太郎を狙い、背後の板壁の外から、十時軍右衛門が槍を付いてくるが、ことごとく外れてしまう。

相手は手強いと、あっさりあきらめた十時軍右衛門に呆れた豚十は、だったらこのまま三太郎を蒸し焼きにしてしまえと子分たちに命ずる。

その頃、宇佐美屋で三太郎の事を一人案じていたお紋は、慌てず、花などを生けている由貴路の落ち着きぶりにいらつき、自室に戻ると、手酌をしながらタバコを吸おうとキセルに手を伸ばすが、その時、それが三太郎のものであり、間違えて三太郎が自分のキセルを持って行ってしまったと気づく。

タバコの煙を吐き出したお紋は、目の前に、石松が現れた事に気づく。

石松は、自分が死んだとたんに三太郎に乗り換えたお紋の薄情ぶりを恨んでみせたりするが、そのお紋から酒をつがれたりしているうちに、「風呂で…」と、何だか大切な事を思い出しかけていた事を言いだせないまま姿を消してしまう。

しかし、あんな奴、助けに行ってやる事はないと声だけは聞こえて来た。

その頃、三太郎は、蒸し風呂の中でふらふらになっていた。

はめられたと気づいた三太郎は、急いでキセルを吸い、石松に助けてもらおうとするが、口に持って来た時、初めて、間違ったキセルを持って来てしまった事に気づく。

倒れ込んだ三太郎を、今がチャンスなので殺してくれと豚十が軍右衛門にハッパをかけていた時、子分が、清水の次郎長の所から政がやって来たとの知らせが届く。

それは大政か小政か?と聞くと、中政だと言うではないか。

怪訝に思いながらも玄関に来た豚十は、朝で顔を隠したヤクザ風の人物から、三太郎はどこだ?風呂に入っているんだろうと追求される。

そのヤクザ分の男に化けていたのがお紋で、一緒にやって来た狂四郎に三太郎を助けに行かせると、自分は豚十の子分たち相手に大立ち回りを始める。

蒸し風呂の中では、ぐったり倒れ込んだ三太郎を刺そうと、軍右衛門が槍を構えた所だったが、その槍を押さえたのが、いつの間に来たのか、由貴路であった。

由貴路は、軍右衛門を、自分の夫を殺めた仇、蜘蛛の巣陣内だろうと言い、斬り掛かろうとする。

雁九郎、とろ八、たこ七トリオも乗り込んで来て、豚十の子分たち相手に戦い始める。

そうした中、臆病な豚十は、大きな柱の陰に隠れていたお紋に捕まってしまう。

風呂の中では、ふらふらになりながらも、もうろうと立ち上がった三太郎が軍右衛門に絡み付き、軍右衛門は全く手も足もでない状態になる。

しかし、自分は蜘蛛の巣陣内ではないと言い張ると、鼻の中にほくろがあるはずと言う由貴路に、顔をじっくりあらためさせるのであった。

その顔にはほくろはなかった。

人違いと分かった由貴路は、軍右衛門を解き放つと、又、楽しい旅が続けられるから良かったなどと、三太郎に笑いかけるのであった。

翌朝、宇佐美屋の前では、出発しようとする由貴路とお紋の前に、自分も一緒に連れて行ってくれと、お京が出てくる。

さらに、鼾狂四郎、三人トリオ、あげくの果てには、十時軍右衛門まで、一緒に旅に行きたいなどとやってくる。

集まったみんなは肝心の三太郎の姿を探しまわるが、当の三太郎は、そんな連中と一緒の旅はごめんとばかりに、一人、先に出かけていたのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「次郎長意外伝 灰神楽の三太郎」(1957)に続くコメディ時代劇シリーズ2作目で、このシリーズ自体、東宝「次郎長三国志」(1952〜1954)のスピンオフのような体裁になっている。

つまり、次郎長を演ずる小堀明男や、森の石松を演ずる森繁久彌などは、そのままの姿で再登場している。

ひょっとすると、石松役の森繁人気にあやかって、新しいコメディものを考えたのかもしれない。

武芸に秀でた由貴路を演じている越路吹雪なども、「次郎長三国志」での、男勝りのお園などとキャラクターに近い部分がある。

ストーリー自体は他愛無いアチャラカ(どたばた喜劇)だが、肩のこらない小品と言った印象の出来になっている。

眠狂四郎に対する鼾(いびき)狂四郎、宍戸梅軒に対する宍戸不乱軒(フランケン)などのパロディも、下らないながら楽しい。

脱線トリオがあまり活躍しないのがちょっと物足りないが、森川信のあちゃらかを観ているだけでもうれしくなる。

後年、大映で色っぽい女優となる中田康子が、何だか、「若い頃の団令子」みたいな丸顔の太眉顔で登場しているのも興味深い。

ひょっとすると、団令子とイメージがだぶってしまったのが、東宝で芽がでなかった理由なのかもしれないなどと想像した。