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誰よりも金を愛す

1961年、新東宝、笠原良三脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

満員電車で通勤する十八代目小原庄助(三木のり平)は、胸ポケットに「空席50エンで買います」と札を立て、周囲の客の注意を引き、座っていた客が席を譲ると、50円払ってその席に座り、胸ポケットの札を裏返すと、そこには「100エンで席譲ります」と書かれてあった。

その札を観た紳士が100円で席を買うと、又、立ち上がった庄助は、胸ポケットを裏返し「空席50エンで買います」の方を客に見せるのだった。

庄助が勤めているのは兜町にある、「億万証券株式会社」と言う所だったが、やっている仕事は、各企業の銘柄が貼られた巨大な黒板に、紐で天井からぶら下がったブランコのような吊り椅子に一人腰掛け、瞬時に変わる相場を白墨で書いては消す事の繰り返しだった。

庄助が座っている吊り椅子は、他の社員がハンドルを操作して、右左上下を調整していた。

昼時になったので、新米女子社員が、男性社員たちの店屋物の注文を聞いて回るが、庄助にも聞こうとしたので、他の社員たちが、庄助は1奥貯めるまでは、一日一色しか食べないらしいよと教える。

庄助の吊り椅子の操作をしていたハンドル係が、女子社員が持って来たお茶を受け取り、うっかりハンドルから手を離してしまったので、ストッパーが付いていない吊り椅子もろとも、庄助は床に落下してしまう。

窓口では、女性客(山田五十鈴)が何の株を買おうか迷っている様子だったが、応対している社員が「新東宝株」が有望だと盛んに勧めるので、今、ダメなんじゃないの?でも、友人の花岡夢子さんもいるし、じゃあ、月ガラス止めて、新東宝買うわと言い出す。

その後、いかにも有閑マダムらしい女性客(清川虹子)が、株でスリルでも味わってみようと思ってと言いながら窓口に座る。

その時、黒板の吊り椅子に座って、一服していた庄助は、天井近くでねずみを見つけたので、その尻尾をつかみ、放り投げるが、そのねずみは有閑マダムの肩に落ちてしまう。

それに気づかないまま、社員と株の話に熱中していた有閑マダムは、急に立ち上がると、何かが着物の中に入り込んだと騒ぎだし、社員がねずみを取り出してみせると、それを観て気絶してしまう。

黒板の上方にいた庄助は、ふと下を見ると、そこに一万円札が一枚落ちていたので、椅子が降りた時、同じく札に気づき近づいて来たハンドル係より一瞬早くと拾う事に成功する。

その日、会社が終わり、屋台が並ぶ道を歩いて帰宅途中だった庄助は、正面から来た相撲取りにぶつかり、側に置いてあった米袋を積んだ荷車にぶつかってしまう。

しかし、その時、弾みで、米袋の一つが少し破れ、米が地面に落ちたので、すぐさまその米粒を持っていた袋に拾い集めると、ついでに、米袋の破れた穴から、強引に米を落として袋に詰めるのだった。

食堂に入った庄助は、飯だけを注文すると、帰って行く隣の客の食べ残しのご飯を、どんぶりの中でおにぎり状に丸め、懐に入れる。

さらにウエイトレスが片付けに来た小皿から、食い残しのおかずを素早くつまんで、飯をかき込むのだった。

アパートに帰って来た庄助は、どこからか盗んで来た塩を、住民のおばさんに売りつける。

又、どこかの盛り塩を持って来たんじゃないの?と疑うおばさんだったが、結局買ってしまう。

庄助は、天井裏を大家に内緒で借り受けている部屋に入り込むと、そこの女房に、家賃代わりとして、今拾って来たばかりの米を渡すが、袋の中の米を確認した主人は、釘やパチンコ玉が混じっていると皮肉を言う。

しかし、それはおまけだなどと言い繕いながら、庄助はさっさとはしごを下ろすと、天井裏に上って行くのだった。

天寿裏には、大きく「一億達成」と書かれた板が貼ってあったが、それは、大きなそろばんの裏側だった。

庄助は、早速その日の収支決算をその大きなそろばんで弾き始める。

柱には一億円までの目盛りを付けたグラフが刻んであり、そこにたまった金を棒グラフ状に書くようにしていた庄助だったが、東京に来て早10年になるのに、貯金額は10万円も貯まっておらず、このままでは一生、お袋に会えないかも知れないと心配し始める。

庄助は、国の会津磐梯山を出て来る時、一億円貯まるまでは故郷には帰らないと誓っていたからだ。

その時、庄助は、誰買い頭を叩かれたような気がした。

見ると、目の前に、「初」の字が書かれた三角頭巾を額に巻いた、眼鏡にちょんまげ姿の男が現れたではないか!

何と、初代小原庄助(トニー谷)だと言う。

初代小原庄助は、呪いの唄が聞こえないか?と18代庄助に問いかける。

それは、会津磐梯山の唄だった。

18代庄助は、母と二人で暮らしていた故郷の事を思い出す。

元々、由緒ある家柄だった小原家も、代々のご先祖が遊び好きだったため、すっかりダメになった…と、庄助の母親(花岡菊子)は、子供だった18代目庄助と、先祖の墓参りをするたびに教えていた。

初代は、今から10有余年前、俺が一代で築いた財産を、2代目から、お前の父に当たる17代目までの庄助が、すべて食いつぶしてしまった。

今こそお前は、これまでの祖先の汚名をそそぐような人間になれ。

人を見たら泥棒と思え。これから会津磐梯山の唄が聞こえたら、わしが何かとお前を助けてやると言い出す。

18代目は、上京した頃の事を思い出していた。

田舎から出て来たばかりの庄助の姿を怪しんだ二人の警官(谷幹一、関敬六)が呼び止め、どこに行くのかと事情を聞く。

家出と思った警官二人は、庄助の持っていたバッグを預かり、一緒に保護しようとするが、人を見たら泥棒と思えとの教えを受けていた庄助は、その二人の警官も泥棒だと思い込み、大きな声を上げたので、通行人が集まり始め、何となく立場が悪くなった警官二人は、焦ってその場から逃げ出してしまう。

10年前、「野良商店」と言う会社の小僧として働き始めた庄助だったが、社員たちからお使いを頼まれるたびに駄賃をせびり、あれこれ用意してある日用品なども強引に売りつけては小銭を集めていた。

そんな庄助に唯一優しくしてくれたのは、蓮果軒の出前持ちのミツ子(浜野桂子)だった。

彼女は、おかもちの中から人が食い残したトンカツや野菜などを取り出すと、それを一つのどんぶりの中に入れ、即製のカツ丼を作って、こっそり庄助に食べさせてくれていた。

その中には、時々、スプーンや変なものが混ざっていたが、金をとことん惜しむ生活をしていた庄助にはありがたいもてなしだった。

しかし、庄助はケチすぎたのが祟り、「野良商店」を首になってしまう。

ミツ子と遊園地でデートした庄助はその事を打ち明けるが、それを聞いたミツ子は、がっかりするどころか、一緒にゴーカートに乗りながら、一億、庄助が貯めたら何をしたいのか将来の夢を聞く。

庄助は、母親を故郷から呼び寄せ、大きな家や最新型の外車キャデラックを買い、君と結婚して、アメリカに行きたいなどと、次々と夢を語り始める。

二人はキャデラックに乗り、世界一周旅行をする夢を見ながらゴーカートを運転していたが、やがて、灌木の下を通過した際、二人とも服が枝に引っかかって脱げてしまったので、慌ててゴーカートを止めて、服を取りに戻る。

その後、庄助とベンチで語らうミツ子は、自分は一億なんていらない、今すぐ結婚したいと女心を吐露してみせたが、庄助が金に執着する態度を変えなかったので、ミツ子はベンチを立ち上がり立ち去ってしまう。

それを追いかけようと立ち上がろうとした庄助だったが、ベンチにズボンが貼り付いてしまい、尻の部分が破けてしまったので、ミツ子の後を追うのを諦めるが、ベンチに戻って、貼り付いた尻の部分の布地を引きはがしてみると、それはきれいなハート形だった。

屋根裏部屋で過去を回想していた庄助は、あの時結婚していれば、今頃子供がいただろうなと想像するのだった。

そんな18代目の様子を見守っていた初代庄助は、いよいよお前に金儲けの機会がやって来た。明日、お前は外交員になるはずだ。株の予想は俺が教えてやる。会津磐梯山の唄が聞こえたら、すぐに出て来てやると、そろばんを鳴らしながら言い残して消える。

翌朝、「億万証券」に出社した社長千成(並木一路)は、自分と一緒に社長室に入り込んで来た庄助に驚き、君は誰かと聞く。しかし、横にいた秘書の巴(香山光子)は、今日は、この人の言う通り株価が動いていると言う。

そんな事にはあまり興味がなかった社長が三人の名前を挙げ、呼んで来るよう秘書に命じると、その中に、初代が予想したように庄助の名前も入っていたので、書助はもう来ていますと自慢する。

そんな庄助を含めた三人の社員に、社長直々に、営業付き外交員がその場で任命される。

彼ら三人は、ライバルである「野良証券」も10億円の売り上げをぶちまけているそうだから、負けずにやってくれたまえと、社長から檄を飛ばされる。

張り切って表に飛び出した庄助は、目の不自由な人にまで「恵比寿投信信託」を勧めるが、もうその人は、「野良証券」の「ノックアウト投信信託」を買っていた。

庄助は次に、道で見かけた女性に声をかけるが、女性は返事もしないまま、どこかの化粧室に入って行く。

庄助も、ずっとその女性に付き添って化粧室に来てまで、「カープラン」なる商品の説明に勤めるが、女性はその場で服を脱ぎ始め、バタフライ姿になって舞台に出て行く。

実は彼女、ストリッパーだったのだが、庄助も一緒にズボンを脱ぐと、彼女について舞台に出ると、なおもしつこく、「カープラン」の説明を続けるのだった。

庄助は、怒った客たちから小屋の外に放り捨てられるが、ちょうどそこに通りかかった車の下敷きになってしまう。

しかし、すっぽり車体の下に入ったためか、無傷で這い出て来た庄助だったが、驚いて車から降りて来た女性は、その顔を見て驚愕する。

庄助の方も相手の女性の顔を見て驚く。

何と、車を運転していたのは、昔別れたミツ子だったからだ。

ミツ子は今や、ライバル野良証券の外交員になっており、車も会社に買わせたのだと言う。

久々に喫茶店で向き合ったミツ子は、庄助の今の仕事を聞いて来るが、庄助は本当の事が言えず、つい化粧品のセールスをしていると答えてしまう。

それを真に受けたミツ子は、自分とタイアップしないか?

団地で、化粧品を配る代わりに、私が証券を売るのだと言う。

その話を聞いた庄助は、トイレに行く振りをして、そのまま店から逃げてしまう。

後日、庄助は、マックスファクターの化粧品の車に乗り、団地にやって来ると、化粧品を各部屋ごとに配達して配り始める。

その団地の一室で物色していた空き巣の二人(佐山俊二、海野かつを)がいたが、急にチャイムが鳴ったので、驚いて壁の陰に隠れるが、そこに入って来た庄助と目が合ってしまい、やむを得ず、庄助を捕まえて縛り付けると、自分たちは、タンスの中から女物の衣装を取り出すと、それを着て女装すると、団地を逃げ出そうとする。

その空き巣二人とすれ違う形で、部屋の住人である夫人たちが帰って来るがその中の一人山之内夫人富士子(小桜京子)が、空き巣が来た衣装は自分のものと同じだと首を傾げる。

その間、空き巣に縛られ、部屋に転がされていた庄助は、壁に付いていた非常ベルを足で押す。

団地中にベルが響きだしたので、慌てた空き巣の二人は、貯水塔にのぼって行く。

そこに、紐を解いた庄助が出て来て、そこら中に集まっていた住民たちに、あそこに空き巣がいるので捕まえて来ると叫ぶと、何かを抱えて、塔をのぼって行く。

一番上までのぼった庄助は、そこにいた空き巣には無関心なようで、持って来た「恵比寿証券」の垂れ幕を塔の上から垂らし、空き巣の二人には、化粧品を使ってみろと命じる。

庄助の機転により、団地荒らしが捕まったと言うニュースは新聞にでかでかと載る。

これが話題となり、恵比寿投資は空前の売り上げをあげる事に鳴る。

窓口担当者たちは、次々に庄助の元に、何の株を買えば良いかと相談に来るが、その度に、テープレコーダーで「会津磐梯山」の曲をかけた庄助は、テーブルの下に現れた初代庄助から、上がる株の銘柄をこっそり聞いては、それを窓口係に伝えるのだった。

そんな庄助の元にやって来たのは、自分のアイデアを盗まれたと知って激怒したミツ子だった。

ミツ子は、これからは仇同士よと言いながら、庄助のレコーダーからテープリールを取ると、それを床に投げ捨て踏みにじって行く。

その頃、件の団地では、山之内夫人の夫が「富士子よ、さようなら」と言う遺書を書いていた。

なぜ死ぬのかと富士子が聞くと、ゴルフの道具が変えないので、課長に出世できないのだと山之内豊一(鮎川浩)が言うので、富士子は、だっこちゃん型のバッグを裂くと、その中に入れてあったへそくりを夫に与える。

しかし、その代わりに誓約書に署名するよう夫に頼み、豊一が渋ると、「イエスかノーか!」と迫り、「イエス」の答えを得る。

その山之内家の上下の部屋でも、恐妻家の夫が、強い女房にいじめられていた。

庄助は、その働きが認められ、営業部長に任命される。

出世した庄助は、馴染みの吊り椅子に乗って、社員たちに演説を始める。

しかし、その途中、付け髭が落ちて、下で聞いていた社長の額にくっついてしまう。

社長は気がついていなかったので、隣に立っていた秘書が取ってやる。

部長になっても、庄助の営業活動は変わらず、日舞の稽古をしながらも、周囲の弟子たちに、商品のビラを配るので、師匠に注意されて始末。

知り合った若い女にレストランに食事をさせていた庄助だったが、その女から3万円の株を買ってくれないかとねだられると、自分は何も食べていないのに、株だけは買ってやる。

そこにミツ子がやって来て、その女は野良証券の営業部員で自分の部下なのだ。いくらあなたが会社に儲けさせても、あなた自身は一文も儲かっていないくせにと庄助に捨て台詞を残して帰って行く。

ミツ子との話を終えた庄助がテーブルに戻ると、もう食事をさせていた女は消えており、1500円もの食事代の請求書が残っているだけだった。

がっかりして店の外に出た時、庄助は、走って来たトラックに轢かれてしまう。

集まった野次馬たちは、バラバラだと顔をしかめ、降りて来た運転手は、そのバラバラになった身体を集めると、荷台のマネキンたちと一緒に放り込む。

バラバラになったのは、積み荷だったマネキン人形だったのだが、はねられた庄助の方も、大けがを追ってしまい、すぐさま「最后之病院」に入院する。

その病院では、看護婦たちのストが行われていた。

入院した庄助は株の世界で有名人だったので、女客たちが殺到し、サイン攻めになっていた。

そこに、医者(宇津井健)が給仕係としてやって来る。

さらに、ミツ子もやって来て、庄助のお得意さんは全部いただいたと冷酷に告げると、部屋に置いてあった見舞いの品も全部もって帰ってしまう。

そこに、又、あの医者が戻って来て、溲瓶が見当たらないので、自分でトイレに行ってくれと言いながら出て行く。

庄助は、又落ち目になって来た。88カ所も骨折してしまうし…と嘆くが、その枕元で花を生けてあったのは花瓶ではなく、なくなったはずの溲瓶だった。

その直後、庄助の個室に見知らぬ外国人が入って来て、自分は追われているのでかくまってくれと言い出す。

訳を聞くと、金を持って来る宇宙人と会う約束をしたと言う。

変な外国人だったが、とりあえず隠してやった直後に、看護婦たちがやって来て、妙な外国人を見かけなかったか?あれは頭がおかしいのだと言いながら帰って行く。

庄助は、ロバート・キューリー(ウィリアム・ロス)なるその外国人の話に興味を持ったので、宇宙人に会うため、こっそり病室を抜け出すと、病院裏の林の中に入ってみるが、そこにいたのは、一組のアペックだけだった。

逃げ出したアベックのいた場所には、女性が脱いだ白いスカートが残っていたが、これは何だろうと庄助が不思議がると、キューリーは、宇宙人が降りた時に使ったパラシュートだと言う。

しかし、そこにやって来た警官に、最近、ここら辺でアベックを襲う通り魔だなと疑われ、二人とも捕まってしまう。

庄助と共に牢に入れられたキューリーは、実は自分は脳波の研究をしている科学者なのだが、研究する金がなくなったので困ったと言いだす。

キューリーはさらに、世の中派すべて脳派の影響を受けており、その脳波をコントロールする脳派ブレーキが完成すれば、世界から交通事故がなくなると言うので、庄助はだんだん話に興味を持ち始める。

そんな庄助の態度を見抜いたキューリーは、テストと称して、庄助に自分の目を見させ、催眠術をかける要領で、庄助が持っていた預金通帳と印鑑をそっくり受け取ってしまう。

さすがに、庄助が不安がったので、キューリーは、二人で会社を作りましょうと虫の良い返事をしてごまかす。

何とか無実が証明され、病室に戻った庄助だったが、初代庄助が出現し、あいつはインチキ毛唐じゃと、通帳をそっくり渡してしまった18代目の間抜けさを叱りつける。

しかし、人の良い18代目は、あの男の目はきれいでしたと反論したので、怒った初代は、もう知らん!株の予想もせんと言い残して、ドアの方へ消えてしまう。

思わず、その後にすがろうとした庄助だったが、ちょうど入って来た看護婦に抱きつく格好になってしまう。

初代庄助は、昔の女たちの例を呼び戻し、キューリーの研究を邪魔してやると声で知らせたので、それを聞いた18代目の庄助は、巫女(近松良枝)を訪ねると、2代目から17代目までのご先祖を全部出してくれと頼む。

値段を聞くと、Aクラス1000円で、16人だと16000円になると言うので、何とか値切って、1万円で何とかやってくれと話をまとめる。

巫女は、やおら逆立ちをしたりする、奇妙な踊りを始める。

やがて、駕篭に乗った三人の先祖(由利徹、南利明、八波むと志)が到着する。

その三人の庄助に会った18代目は、キューリーの所に女の例たちがいて仲良くしていると教える。

すると、全員女好きの先祖庄助たちは、喜んでキューリー研究所に向かう。

さらに、新たな先祖、二代目(花菱アチャコ)、八代目(田端義夫)、十七代目(千葉信男)、九代目(大宮敏充)、十代目(柳沢真一)、十四代目(堺駿二)、五代目(田崎潤)らが続々キューリー研究所にやって来て、みんな好き勝手に浮かれ始める。

それまで、キューリーの相手をしていた女の零たちは、面白い先祖たちの方に寄り添い始めたので、ようやく邪魔をするものがいなくなったキューリーは、背後でみんなが浮かれる中、黙々と研究を再開する。

この様子を見ていた初代庄助は、作戦が失敗したと知り怒りだすのだった。

その頃、庄助の顧客を奪ったミツ子の勤める野良証券は大流行り、一方、億万証券の方は、退院した庄助が復帰したにもかかわらず、すっかり閑古鳥が鳴くようになっていた。

初代が、出現してくれなくなったものだから、株の情報が全く分からなくなったからだ。

八卦やサイコロ占いなどで、何とか予想しようしていた庄助だったが、そんなものが当たるはずもなく、会津磐梯山の曲をかけようと、テープレコーダーを回すが、なぜか違う曲しか流れて来なかった。

最後には、やけになって、部下と一緒に会津磐梯山を歌い始める庄助だったが、とうとう社長に呼び出され、首だ!と喝を入れられるが、さすがにそれは脅しで、本当の所は休職を勧められる。

前途を悲観した庄助は、その日、屋根裏部屋の自室に戻ると、猫イラズを飲んで自殺しようとするが、飲んで横になっても一向に死ぬ気配がないので、薬の瓶を良く読むと、「人畜無害」と書いてあった。

しかたないので、首を吊ろうとするが、紐に首を入れて飛んだとたん、紐が切れ、庄助は屋根裏を突き抜け、下の階の床も突き破って、床下まで落下してしまう。

気がついた庄助は、初代庄助の女房(市川寿美礼)と言う霊が、はさみを持ってニヤニヤ笑いかけているのを観る。

どうやら彼女が、庄助の命を救ってくれたらしい。

彼女が言うには、初代庄助が寝言を言っているのを聞いた所によると、新しいお金儲けのチャンスが来たのだとの事。

何でも、東西の巨頭会談が行われるが、結果は大げんかで戦争が起こる。

そうなると、中立国の石油が値上がりするので、アンクロイヤン石油が高騰すると言うのだ。

これが最後のチャンスであり、やるのよ!と発破をかけられた庄助は、翌日、社長の出社を待ち受けると、命をかけて頑張りますから会社に戻して下さいと直訴する。

しかし、社長が相手にしないと、やっぱりダメかと引き下がりかけるが、庄助頑張れ!と言うご先祖の声を聞くと、もう一度社長に向かい、自分の目を見て下さいと言うなり、かつて、キューリーが自分にやったように、催眠術の要領で、社長の気持ちを自分に引き寄せることに成功する。

そして、アンクロイヤン株ですと断言する庄助。

間もなく、キャンディー大統領(榎本健一)とブルチョン書記長(柳家金語楼)による巨頭会談が始まるが、実際は将棋を指している。

その会談をテレビで見守っていたミツ子は、会談は成功し、平和になるので、アンクロイヤン石油は売りだと部下たちに指示を出す。

一方、会社に復帰した庄助は、どんどんアンクロイヤン石油株を買い続ける。

結局、初代の女房が予言した通り、二人の巨頭はつかみ合いのけんかになる。

億万証券では、社長が庄助を褒め讃えるために、社員たちを集め祝杯をあげていた。

そのビールのキャップを集めていた庄助は、女子社員から手紙を受け取ったので、一瞬ラブレターかと勘違いして遠慮するが、それは「邪魔ばかりしてごめんなさい。私は遠い所へ行きます」と書かれたミツ子からの別れの手紙だった。

驚いた庄助は、表に飛び出すとタクシーを拾い、ミツ子の車を追って横浜の港までやって来る。

そして、港にたたずんでいるミツ子を発見すると、身投げすると思い込み、助けようと駆け寄るが、目測を誤って自分が海に飛び込んでしまう。

いつの間に助けられたのか、病院で目覚めた庄助は、ミツ子が目の前で心配げに自分を見守っているのを知ると、結婚しよう!僕はお金を儲けた。故郷からお母さんも呼んで、三人で暮らそうとプロポーズする。

しかし、戦争は起きていなかった。

中立国が斡旋し、両巨頭の再会談が始まっていたのだ。

久々に出現した初代庄助は、わしの寝言を最後まできちんと聞かなかった女房の罰じゃと笑う。

それを知った庄助は、諦めるどころか、もう一遍やると言い出す。

それを聞いていたミツ子は、結婚しましょうと勧めるが、庄助は意地になったように、1億貯めるまではどこまでもやるんだと言う事を聞かなかった。

億万証券の前にやって来た庄助は、車に乗ったキューリーに声をかけられ同乗させられる。

とうとう「脳波ブレーキ」が完成したので、その実験をするのだと言う。

聞くと、1km先に時限爆弾が置いてあり、「脳波ブレーキ」が成功すれば、その直前で自動的に車が止まると言うのだ。

半信半疑で同乗していた庄助だったが、車は時限爆弾の上に来ても止まらず、爆発と共に吹き飛ばされ、海に落下してしまう。

庄助と共に研究所に戻って来たキューリーは、なぜ実験が失敗したのか分からないと悩む。

そこに、なぜか、ミツ子がふらりと現れる。

この辺に来たら、なぜか庄助さんに会える気がしたのだと言う。

その話を聞いていたキューリーは、「脳波は愛だ!」と発見する。

もう一度、改良した「脳波ブレーキ」の実験をしてみたキューリーと庄助は、見事に、時限爆弾の直前で車が止まった事に気づく。

実験は成功したのだ。

この発明は、ただちに世界中に広がり、「脳波ブレーキ」を買うために、世界中から羽田空港に外国人バイヤーたちが集まりだす。

彼らは、買値を聞いて来たキューリーに、10億、15億、20億と値をつり上げて行き、とうとう、30億のゲンナマを持って来たと言うバイヤー(ユセフ・トルコ)に売る事にする。

億万証券の前では、石油株に失敗した奥さん連中が大勢詰めかけ、抗議をしていた。

社長たちが必死に謝っていたが、そこに、ミツ子と共に車に乗ってやって来た庄助は、奥さん連中に詫びると、自分は脳波ブレーキの会社の社長になったので、その配当金で借金を返してくれとトランク一杯詰め込んで来た札束を社長に渡すと、自分はこれから会津に行って来ると言い残して出発する。

故郷で墓参りをしていた庄助とミツ子の前に現れた初代庄助は、自分は負けた。老兵はただ消え行くのみ…と告げて消えて行く。

墓に、酒をかけていた庄助たちの周囲では、いろんな形の墓たちが、愉快そうに踊っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

斎藤寅次郎監督が、三木のり平を「銭ゲバ」を連想させる守銭奴にして描いたナンセンスコメディ。

先祖の幽霊が株を予言し、長年怠け者のイメージがある小原庄助の末孫たる主人公を儲けさせようという発想や、途中から登場する、脳波の研究をしていると言う、風変わりな外国人科学者など、その奇想ぶりが面白い。

そのキューリーの実験を邪魔しようとする初代庄助と、それを阻止しようとする18代目との霊合戦がこの作品最大の見せ場で、次から次へとゲスト喜劇陣が登場して驚かせてくれる。

とは言え、この作品で一番驚かされるのは、宇津井健が出ている事だろう。

新東宝作品だから不思議ではないような気もするが、喜劇と宇津井健との組み合わせは、他に思いつかない。

特に面白い事をやっている訳ではなく、若手として出演させられただけなのかも知れないが、山田五十鈴の登場シーンと共に、大変貴重な映像のような気がする。

三木のり平と言えば、とぼけた脇役として笑いを取る人のイメージが強いが、この作品では主役として全力で頑張っている感じがする。

今まで観て来た斎藤寅次郎監督作品の中でも、かなり面白いと感じた作品である。