1997年、角川春樹事務所、筒井康隆原作、伊藤亮二+桂千穂脚色、角川春樹脚色+監督作品。
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昭和55年1月15日(火)
女子高生芳山和子(中本奈奈)は、地元の神社で参拝していた。
飛騨市古川で、町内の真宗寺、本光寺、円光寺の三寺を巡拝する「三寺まいり」であった。
和子は心の中で、もどかしい思いに取り付かれていた。
15年前の、今日と同じ雪の日に、何かがあった…、誰かに会った…
それが思い出せないのだった。
今日も、その頃の同級生だった神谷真理子(浜谷真理子)と遠藤梢(山村久美)と一緒に、願い事を書いた灯篭を瀬戸川に流しに来たのだが、何を書いたか見せてとせがむ友達たちに、和子は、誰かに見せたらご利益がなくなると拒否する。
灯籠を流し終えた和子が、ふつ視線を上げると、向こうの通路に一人の青年が立って、こちらを見つめているのに気づく。
タイトル
昭和40年4月12日(月)
真理子、梢と一緒に下校途中だった和子は、部活途中の浅倉吾郎(早見城)から、ノートを貸してくれと声をかけられる。
しかし、和子は、まだ整理をしていないのでと貸し渋るので、真理子が代わりに貸してやると云い出す。
吾郎が去った後、どうして貸さなかったの?中学時代からの友達なんじゃないの?と真理子が聞くので、和子は、クラスも違うし、本当にノートを整理していないからと答える。
その後、和子は「星古美術店」の店の前に立ち止まり、熱心に中の様子を見始めたので、真理子と梢は不思議がるが、和子は古いものが好きなので…と言い、2人を先に帰すと、一人で店内を覗き込む。
その時、店主(渡瀬恒彦)が、中に入って観たら?と声をかけてくれる。
その言葉に勇気づけられ、店内に入ってあれこれ眺めていた和子だったが、すぐに、小さな木箱を見つけ手に取る。
それはオルゴールだったが、店主は、このオルゴールはあなたが来るのを待っていたに違いないと言い、100円で譲ってくれる。
帰宅すると、母の有紀子(倍賞美津子)が、帰宅が遅れるとの電話をして来た父親治男(伊武雅刀)に、ちょっとは家の事を考えてくれと文句を言っている所だった。
電話を代わった和子に、父は、急に設計の手直しをしなければならなくなったので、これから伊豆に行かなければいけなったと詫びを言う。
その後、母も、友人の長谷川さんと店を出す準備があると、出かけてしまったので、その日の夕食は、祖母のミチエ(久我美子)と和子の2人きりだった。
チエミは、和子が買って来たオルゴールを見ると、オルゴールの方が和子を見つけたのよと、骨董屋の主人と同じようなことを言う。
昭和40年4月13日(火)
高校の和子の教室では、担任の福島先生(野村宏伸)が、新入生の深町一夫(中村俊介)を紹介していた。
何でも、父親の仕事の関係でイギリスに行っていたそうで、今回、日本の大学に入るため、20歳ではあるが、このクラスに転入して来たらしい。
和子は、その顔を観て、一瞬驚く。
英語の授業の時、大原先生(早見優)が、55年の生涯を独身で過ごしたと言うエミリ・ディキンスンの詩「100年後には…」を訳すよう、生徒を名指しして行くが、梢、真理子に続いて刺された深町は、朗々と訳したので、クラス全員聞き惚れてしまうし、大原先生も感心する。
その後、和子たちのクラスは、歴史館に見学に出かける事になるが、バスで移動中、横に座った深町に、和子が、私、生まれる前から、深町君の事を事を知っていたような気がすると話しかけると、深町も、僕もそんな感じがすると答える。
深町は和子に、花は好きかと尋ね、自分が今世話になっている叔父の家には温室があり、そこには花がたくさんあるのだと教える。
「科野の里歴史館」にやって来た和子は、飛鳥・奈良時代の織物を観た深町が、当時は男の職工が織物を織っていたんだと言い出したので、そこに書いてある文字を、深町が読めた事に驚く。
その後、星先生(榎木孝明)に引率され、森将軍塚古墳に和子らは出かけ、ここが4世紀後半に作られた前方後円墳だと教えられる。
そんな中、一人、古墳の端から、周囲の風景を見つめている深町の事を、梢は変わっていると、和子に告げる。
ある日、水飲み場にいた吾郎の元に、以前貸していたノートを返しにもらいに来た真理子は、吾郎が教室に取りに帰った後に、ペンダント型時計を見つける。
それは、和子のものだと知っていたので、戻って来た吾郎に聞くと、はっきりした返事をしないので、好きなのね、和子が…と真理子は呟く。
昭和40年4月14日(水)
体育館での体育の授業中、真理子は和子に、時計を持っていたはずだけど?と聞くと、和子はなくしたと言う。
誰かにあげたんじゃないのね?と確認すると、和子は、あれ、おばあちゃんにもらった大切なものだと言うので、吾郎が持っていたと教えてやる。
それを聞いた和子は驚き、どうして、吾郎君が?と言うので、本人に聞いてみたらと真理子は答える。
その後、廊下に呼び出した吾郎に、時計を返してくれと頼んでいた和子だったが、ちょうど近づいて来た福島先生に、理科室の整理を手伝ってくれと頼まれたので、真理子と梢と共に、理科室に向かう。
しかし、思ったより、作業は手間取りそうだたので、男子にも手伝ってもらおうと云う事になり、福島先生と真理子と梢は、まだ残っているはずの深町を呼びに行く。
一人になった和子は、隣りの理科実験室から、何かが割れる音が聞こえたので、鍵でドアを開けると、隣りの部屋に入ってみる。
誰か人影を観た気がしたが、床にフラスコが割れており、何かの液体がこぼれていたので、それに手をのばした瞬間、和子は気絶してしまう。
気がつくと、和子は保健室のベッドに寝かされていた。
側には、心配そうに、福島先生、真理子、梢、深町が覗き込んでいた。
真理子たちは、なぜ、鍵を開けて、隣りの実験室なんかに入ったのかと聞くので、誰かがいたし、フラスコが割れていたと答えるが、全員不思議そうに、実験器具はそろっていたし、誰もいなかったと言う。
もう大丈夫と起き上がりかけた和子だったが、みんなの勧めで、深町に家まで送って行ってもらう事にする。
帰宅途中、和子は、フラスコの中の液体の臭いはラベンダーだと気づくが、その時、トラックが接近しているのに気づき、思わず、轢かれると目をつぶる。
しかし、深町は、しゃがみ込んだ和子に、大丈夫かと声をかける。
そんな2人の様子を遠くから見つめているヒゲの男2人がいた。
自宅に帰り、ベッドに横になっていた和子だったが、夕方の6時過ぎ頃、地震があったので起き上がり、下の階に降りると、祖母の無事を確認する。
気がつくとサイレン音が聞こえて来たので、窓から外を見ると、吾郎の家の近くで火の手が見えた。
急いで、様子を見るために吾郎の家に駆けつけた和子だったが、そこで、ジャンパー姿の深町を見かける。
和子が来ている事を家族から教えられた吾郎は近づいて来て、大した事なかった。心配してくれたのか?俺の事…と嬉しそうに話しかけて来るが、和子は、それには返事をせず、時計を返してもらおうと思ってと答える。
その時、和子は、自分の方を監視しているかのようなヒゲの男2人組を見かける。
和子の答えにがっかりしたような吾郎だったが、神社で待っていてくれと言い残し、家に取りに帰る。
神社で待っていると、話したい事があるからそこに座らないかと吾郎は言うので、和子は時計を返してと再度頼む。
吾郎は、どうしても、俺が持っていてはダメか?お守りだと思っているし、今度の試合に勝てそうなんだと言いながら、なかなか時計を出そうとしない。
やがて、ポケットから取り出した時計を和子に手渡そうとしながら、和子の手を握った吾郎は、好きなんだ!誰にも渡したくないんだと告白するが、「止めて!」とその手を振り払った和子は、神社から逃げ出しながら泣いていた。
昭和40年4月15日(木)
朝、自宅のベッドで目覚めた和子は、もう遅刻しそうな時間だと気づき、あわてて学校へ向かう。
途中で、真理子と梢と出会った和子は、昨日、大丈夫だった?と聞かれたので、地震の事だと思い返事をすると、真理子が心配していたのは保健室の事で、地震などなかったと真理子は答え、梢も知らないと言うので、和子は混乱する。
その日、和子は、一日中ぼーっとしてしまい、英語の授業では、大原先生から注意されてしまう。
放課後、深町に地震の事を聞いてみるが、深町も知らないと言うし、夕べ着ていたはずのジャンパーすら持っていないと言う。
深町は、どうしてみんなそんな事を言うの!と取り乱した和子を心配し、家まで送ろうかと言ってくれるが、和子は一人で帰宅する。
その日、自宅二階のベッドで寝ていた和子は、又地震で起き上がる。
目覚ましを見ると、昨日と同じ6時過ぎだった。
下に降り、祖母に心配ない、すぐに治まるはずだと告げた和子は、予想通り聞こえて来たサイレン音に導かれるように、吾郎の家に駈けて行く。
昨日と同じく、ジャンパーを着た深町にであったので、思わず駆け寄った和子は、助けて!私をここから連れてって!と頼む。
そんな和子の様子を、ヒゲの2人が見つめていた。
自宅に連れて帰った深町は、祖母に事情を話し、二回のベッドに和子を寝かせる。
落ち着いた和子が、深町が来ているジャンパーの事を指摘すると、今日、伯母が買って着てくれたのだと答えた深町は、学校で、和子が言っていたジャンパーの事を思い出したようだ。
深町は、きっと和子は予知夢を観たのだと説明する。
それは、福島先生も言っていたが、未来の記憶であり、和子は夢の中で今日の事を経験したんだろうと言う。
和子が、言いたい事があるの…と呟いた時、祖母が薬を持って来て、和子に飲ませる。
その時、深町は、先ほど気づいたオルゴールを素早くジャンパーのポケットの中にしのばせる。
そして、和子に対しては、話は明日学校で聞くと告げて、帰って行く。
下の降りて来た深町に対し、祖母は、あなたは、どこか遠い所から来たのねと話しかけ、その時、どこからともなく香って来た香りに気づいた祖母は、それがラベンダーだと気づく。
深町が、テーブルの上に置いてあった写真立ての写真に気づくと、祖母は、そこに写っているのは若い頃の自分で、昔、舞台に立っていた事があるのだと教える。
深町は、自分にも、あなたと同じ年頃の祖母がいたと打ち明ける。
和子の家からの帰り道、ポケットから取り出したオルゴールを寄稿としていた深町だったが、ヒゲの男2人が接近して来た事に気づくと、あわてて逃げ出し、橋から川に飛び込んで逃げる。
昭和40年4月16費(金)
学校で真理子から、気になる?深町君の事と聞かれた和子が戸惑っていると、今朝、学校に来る途中で会って、今日は学校に来られないから、これを渡してくれと頼まれたと言いながら、一冊のノートを手渡す。
その中には、10時、史跡公園と書いてあったので、急いで学校を飛び出した和子は、平出史跡公園に向かう。
そんな和子の様子を、ヒゲの男が校門の外で見張っていた。
公園に着いた和子だったが、深町の姿はなく、ベンチに腰をおろしていると、見知らぬ少女がキャンデーを手渡しに来る。
知らないお兄ちゃんから頼まれたと言うので、受け取ると、手紙が括り着けてあり、それを読んだ和子は、ガイダンス棟の二階で待っていた深町と出会う。
深町は、外にいるヒゲの男2人を観ながら、逃げろ!と和子に告げる。
和子は、深町について走り出すと、何とか、2人のヒゲ男をまいて、深町の自宅にたどり着く。
和子は、説明して!と深町に頼む。
深町は、自分が未来から来た。100年後の人間なんだと打ち明ける。
100年後の世界では、人間の隠された超能力を活性化させ、タイムリープも可能になっており、自由に過去や未来へ行っているのだと言う。
深町は大学でタイムリープとテレポーテーション(瞬間移動)の二つの能力を合体させ、好きな場所と時間へ移動する実験をしており、その薬を完成させたのだった。
温室の中に案内された和子は、そこに咲いているラベンダーを発見する。
深町は、薬に使った数種類のアルカロイドの中に紫蘇科のラベンダーも入っており、持って来た薬をタイムリープ中に壊れてしまったので、この花を集めるために、この家の住人になり、合成のため、学校の実験室を使ったと言うので、和子は、あの時の理科実験室の意味を知る。
どうしてこの時代に来たのかと聞くと、若い頃の祖母に会いに来たのだと言いながら、深町は、和子の家から盗んで来たオルゴールを出してみせる。
驚く和子に、これは、祖母の形見で自分が持って来たものなのだが、タイムリープする時なくしたものなので、祖母の手に渡るようにしたいんだと深町が説明したので、和子は喜んで了承する。
祖母に会えたのかと聞くと、時代を遡りすぎて、祖母はこの時代では5歳だったと深町は言うので、和子は、深町の思わぬそそっかしさを笑う。
深町は、祖母はとても大切な人だった。植物が好きで、良く自然の話と、人間がいかにそれらを破壊して行ったかを話してくれた。おばあさんは5歳だったけど、代わりに僕は君に出会えたと深町は話し続ける。
その後、2人は、まだ5歳の祖母に会いに行き、持って来たオルゴールを手渡す。
大切にしてね、おばあちゃんと深町が話しかけると、5歳の女の子は訳も分からないなりにこっくり頷くのだった。
その頃、深町の伯母に近づいたヒゲの2人は、深町の所在を聞き、不在だと知ると、何か光るものを伯母の顔に向け、記憶を消し去ってしまう。
和子は、平出遺跡公園の中の竪穴住居の中で、焚き火を囲んで、そのヒゲの2人組の正体に着いて深町に聞いていた。
深町によると、2人は時の番人なのだと言う。
2050年、地球の環境汚染は進み、科学がその修復に追いつけなくなってしまったため、そのおせんから逃げ出す人間が増えて来たのだと言う。
さらには、歴史の改変を企むものまで現れる始末で、そう言う人間を取り締まるために出来た「時間警察」なのだと言う。
深町は、無断でタイムリープしてしまったため、連れ戻されて裁判にかけられる運命にあり、最低10年は刑務所に入らなければ行けないらしい。
和子の予感は当り、深町は、暗くなったら行くと言う。
外に出て、林の中に身を潜めた2人だったが、和子が今度はどの時代に行くのかと聞くと、深町は、もっと過去へでも行くかな?と冗談っぽく言い、もう未来には戻らないと断言する。
それを聞いた和子は、自分も連れて行ってくれ。深町君とならどこへでも行くとすがりつくが、深町は、それは出来ない。自分などについて来ても、一生逃げ回るだけだと戸惑うが、和子はそうでも良いと聞かない。
深町は困ったように、あの優しいおばあさんはどうするんだ?と、和子の祖母の事を思い出させ、君の未来は決定しているので、変えては行けないのだ。昨日、君は、それを経験したばかりじゃないかと釘を刺す。
しかし、それを聞いた和子は疑問を口にする。
昨日の出来事は、その前に経験した出来事と、火事の後が違っていると言うのだ。
それを聞いた深町は驚く。
和子は、昨日は、深町君に連れられて家に帰ったけれど、その前の火事の時は、あの後、吾郎君と神社で会い、時計を返してもらったのだが、今は、その時計を持っていないと説明する。
その頃、帰宅した和子の父親治男は、妻の有紀子が吾郎からの電話で、和子が学校を早引けしたそうだけど大丈夫かと言う電話を受け驚いている様子を見ていた。
治男は有紀子に、和子はいつもこうなのか?君の監督不行き届きだと嫌みを言う。
深町は和子に、君はもう一度、神社で吾郎と会って、時計を返してもらわなければ行けない。ちょっとした狂いは、やがて大きな狂いになると説得しながら、タイムリープの薬が入った小瓶を取り出す。
和子はそれを受け取りながら、帰って来られる?又会えるわよね?と心配するが、深町はここで待っていると約束する。
小瓶の中の液体を飲んだ和子は、深町に言われる通り、神社へ向かったあの日の出来事を強く心に念じ始める。
和子は、神社で、吾郎に会っていた。
吾郎は、あの時のように、和子に告白して来るが、和子は、そんな事を言われると哀しくなると、きっぱり拒絶する。
それを聞いた吾郎は、やっぱり、あいつの事を…と悔しがる。
和子は、自分には時間が欲しい。訳は言えないけど…と説明すると、吾郎は理解してくれ、自分が悪かったと謝る。
その頃、和子の自宅では、母の有紀子が、帰って来ない和子を探して、立ち寄りそうな知人の家に電話をして廻っていた。
業を煮やした治男は、警察に届けようと言い出すが、側で聞いていた祖母のミチエは、和子なら大丈夫ですよと告げる。
元の、史跡公園に戻って来た和子は、一瞬、誰もいないので不安がるが、遺跡の上から自分を呼びかける深町に気づくと、喜んで近づいて行くと、吾郎から取り戻した時計を見せ、これで良かったの?と聞く。
深町は、和子を送って帰ると言うが、和子は帰らないとだだをこね、あなたがこの時代にいる限り、一緒にいたいと又すがりつくが、深町は、出来ない。連れて行けないんだと再度拒否する。
どうして、あなたは、私の前に現れたの?と言う和子の問いかけには、すまない…と答えるだけの深町。
どうして…と、その場にうずくまった和子に、クリスタルの棒を取り出した深町は、行く前に一つだけしておかなければいけない事がある。それは、僕に関する君の記憶を消す事だ。僕に会った者は全員、記憶を消される。奴らがどんな手でも使うので、君をそんな目に会わせたくないのだと説明する。
しかし、和子は、イヤ!そんな事!あなたを忘れるなんて、そんな事絶対出来ないと拒絶し、あなたが好きなの…、好きなのよ…。あなたを忘れたりしたら、私、生きて行けないと告白する。
その気持を知った深町は、和子を抱きしめる。
古墳の端に座った和子は、私達、もう一度会えるかしら?と呟き、深町は、会えるさ…、僕はいつか必ず、君に会いに戻って来ると約束し、和子は、私、ずっと待ってると答える。
古墳の階段を降りて去って行く深町を見送りながら、和子は「さよなら」と何度も叫んでいた。
もう、涙ではなく、笑顔だった。
しかし、史跡公園を後にした深町は、あのヒゲの2人に取り囲まれてしまう。
捕まった深町は、心配ない。彼女の記憶は自分が消した。一度消した人間軒億を又消すのは、法律で禁止されているはずだとクリスタル棒を出してみせる。
ヒゲの2人は、こんなものまで持ち出していたのか!と驚く。
やがて、警察から治男に電話がかかり、和子が見つかったので引き取りに来て欲しいとの連絡がある。
警察では、ヒゲの男2人に挟まれた深町と和子が対面させられていた。
しかし、和子は、深町の事など全く知らないと答える。
そこに、両親がそろって迎えに来たので、ヒゲの男たちは、和子は事件には関係なかったと説明し、そのまま連れて帰らせる。
廊下で両親と一緒に帰りかけていた和子は、反対側から、ヒゲの男に連れられ近づいて来る深町とすれ違う時、思わず、「深町君…」と思わず語りかけてしまう。
深町は「ダメだ!」と制するが、和子は堪らず、遠ざかって行く深町に向かって、「深町君!誰か、深町君を助けて!」と大声で呼びかけてしまう。
和子の記憶が消されていなかった事に気づいたヒゲの男が近づいて来ると、クリスタル棒で両親諸共、記憶を消してしまう。
その後、ヒゲの2人は深町を引き連れ、光に満ちたドアの向こう側に姿を消してしまう。
5月
和子は、テラスで「100年後には…」の詩を読み、物思いに耽っていた。
そこに近づいて来た祖母のミチエが、どうしたのかと尋ねると、和子は、どうしても思い出せない。何かがあったの。私は誰かに出会った…と呟く。
誰の事?とミチエが聞くと、思い出せない。声も顔も…、何も覚えてない…と和子は哀しむ。
するとミチエは、きっと、あのラベンダーの臭いのする男の人の事ねと言うので、誰の事?と和子が問うと、ミチエは、私には分からないわと答えるだけだった。
それでも、大丈夫、必ず思い出すわ。心はちゃんと覚えているからとミチエは慰める。
いつしか、和子の頬に涙が一筋伝っていた。
15年後
灯籠流しをしていた和子は、15年間、落としていた記憶の鍵を探していた。
その時、目の前に、見覚えのある青年を見かけたので、近づいて行くと、相手は「戻って来たよ」と語りかけて来る。
それは深町だった。
和子は、「本当に…、本当に、あなたなの?」と呟き、2人は互いに抱きしめあう。
和子は呟く。
「待っていたの…。私、ずっと待っていたの…」
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筒井康隆原作のジュブナイルの二度目の映画化。
白黒映像と、ゆったりしたリズムが、古風な映画を観ているようなムードに誘うが、全体としては、メリハリのない冗漫な感じになってしまっている。
ストーリー的には、一番原作に近い感じなのだが、後半の展開がまどろっこしく、和子と深町が互いに思いを告白し、最終的に「恋が成就してしまっている」ので、「時かけ」特有の青春の喪失感がなくなってしまい、安っぽい恋愛ドラマのような印象だけが残る凡作になってしまっているのが惜しまれる。
主人公芳山和子を演じている中本奈奈は、大人っぽい印象と言うか、ちょっと冷たい印象がある人なのも、感情移入しにくい所。
和子だけではなく、全体的に、登場人物に魅力が足りないように感じる。
演出にも冴えらしい部分が感じられず、いかにも、脚本をそのまま素人が撮ったと言ったような印象。
これを観ると、いかに、他の「時かけ」の演出がプロレベルかが良く分かる。
冒頭部のナレーションは原田知世が演じていたり、主題歌を松任谷由実が唄っていたり、角川映画ゆかりの俳優が、あちこちにゲスト出演したり…と、角川映画の片鱗…と云うか、残滓のようなものを感じる作品ではある。
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