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三太と千代ノ山

1952年、新理研映画+大日本相撲協会映画部、青木茂原作、山本嘉次郎 木村英一脚本、小田基義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

おらあ、三太(神戸文彦)だ。

オラの村には、狐も狸も河童もいる。

オラのじいさん、仙爺(徳川夢声)は、鮎釣りの名人なんだが、今は、焼酎を飲み過ぎ病気になっている。

家で寝込んでいた仙爺は、俺の病気は焼酎のせいではなく、化け物の仕業だと言い出したので、横で聞いていた三太は笑う。

それでも、仙爺は真剣な顔で、隣りの青二村では、最近、夜な夜な、便所の外に化け物が出ると言う噂で持ち切りで、その化け物は大人しく、ただ、お辞儀をするだけらしいのだが、噂は東京にまで広がり、雑誌やラジオ局が取材に来たほどだと言いながら、「サンデー毎日」に載っていたコラムを見せる。

それを読んだ三太は、仙爺は、この雑誌の記事を読んで詳しいだけだったのだと知るが、仙爺は、この頃毎晩、嫌な夢を見てうなされると言うし、一緒に聞いていた婆さま(小峰千代子)も、この頃、仙爺は、真夜中になると大きな声を出してうなされていると言う。

仙爺は、自分に憑いた化け物を退治してくれと三太に頼む。

井戸端にいた両親(今村源兵 、藤間清江)にその事を話すと、「大方、カワウソの事だろう」などと無関心そうに言う。

学校で、留(山口旦訓)、定(佐藤淳) 、お花坊(北村あけみ)ら友達にこの事を話すと、花荻先生だったら、「この村には迷信が多い」と言うんだろうな…と、皆、結婚して学校を辞めた花荻先生( 左幸子)の事を思い出す。

皆、優しかった花荻先生の事が大好きだったのだ。

そんな大好きだった花荻先生が、どうしてお嫁に行ったのか、子供たちは不思議がるが、お花坊ら女子たちは、女はお嫁に行かなければいけないものなのだとしたり顔で話すので、三太たち男子は取り残されてしまう。

三太は、又化け物の話に戻し、新聞に載った途端、隣村に化け物が出なくなったらしいので、ひょっとすると、今度はこちらの村に出るのではないかと言い出す。

酒屋の音さん(岸井明)は、その日も、一升瓶を洗いながら、のんきに唄を歌っていた。

そんな音さんに、又、見せの酒を飲んだな?昼間っから歌なんか歌って!と文句を言いに来たのは女房(田中筆子)。

音さんは、のど自慢の練習をしているだけだと反論し、女房が店に戻ると、女房の悪口を言い出すが、そこに又女房が戻って来て怒ったので、先ほどから、側で隠れて様子を見ていた三太たちは大笑いする。

三太は音さんに質問があると言い、隣村の化け物が、こっちの村に引っ越して来たって本当か?と聞くと、それよりもっとすごい話があると言い出した音さんは、音さんの10倍以上もある巨人が近々、この村にやって来ると言うので、さすがの三太たちも、又、音さんの嘘が始まったと呆れる。

しかし、留たちは、でも本当かも知れない。新聞にそんな事が出ていたと言い出す。

それは、ヒマラヤで雪男の足跡らしきものが見つかったと言う記事だった。

翌日、音さんから、釣り場で待っていろと言われた三太たちは、朝早く行って、やって来る巨人を捕まえようと、河原に大きな落とし穴を作っておく。

すると、そこに、音さんと大きな男がやって来るが、大きな男の方が落とし穴に落ちてしまい、それを見た音さんは驚いて「人殺し〜!」と大声を上げる。

その日、学校では、校長先生(藤原釜足)が、運動場の掲示板に「横綱 千代ノ山」と書くと、みんなの前に立って、今度、中野町に、千代の山が巡業でやって来る。そして千代の山は、2、3日早く、この村に来て、鮎釣りをする事になっているが、場所前の西洋のために来るのだから、みんなは、決して話しかけたり邪魔をしてはいけないと注意する。

すると、整列して聞いていた留が急に泣き出し、校長が訳を聞くと、「千代ノ山を殺してしまった」のだと言う。

怪我でもされたら、村の恥、日本の恥ではすまず、全世界の恥だと大袈裟な事を校長は言い、いつもの通り、首謀者の三太を、日が暮れるまで、そこで立ってろと命ずる。

一人、運動場で立たされていた三太は、こんな時、花荻先生がいてくれたらな〜…と想像する。

空想の中の、花荻先生は、校長先生のやり方を批判し、三太には宿題をしなくても良いなどと優しい事を言ってくれる。

しかし、三太の気がかりは、落とし穴に落とした千代ノ山の事。

本当に怪我をしたのか鑑定がてら、お見舞いに行こうと思いつく。

村の旅館に泊っていた千代ノ山に友達も連れ出かけた三太は、二階でくつろいでいた千代ノ山が、何ともないのを見て、一安心する。

相撲取りがあの程度で怪我をしてたまるかと言い出した千代ノ山は、その場で立ち上がって四股を踏み始める。

すると、宿が揺れ出したので、外で二階を見上げていたお花坊たちは、三太が千代ノ山に殺されたと思い込む。

ではどうして釣りをしないのか?と三太が聞くと、どうせ釣れないからつまらないと千代ノ山が言うので、それなら、オラのじいさんが、鮎の動線を教えてくれると三太は教える。

すると、千代ノ山は、お礼には何をすれば良い?と聞くので、身体を触らせてくれと言う三太の希望をあっさり了解してくれたので、三太は下で見上げていた留やお花坊たちにも声をかける。

子供たちは喜んで、二階に上がって来ると、千代ノ山の身体に触り始める。

家に帰り、仙爺にこの事を告げると、横綱を案内するのだったら、自分が行くと言い出し、身体を起こしかけるが、やはり動けないので、オラが死んだらもう、釣り場に詳しい奴がいなくなるので、今のうちの前に教えてやるから、その代わり、焼酎を買って来いなどと言い出す。

翌日早く、仙爺から聞いた穴場に、音さんと千代ノ山を案内する三太だったが、噂を聞きつけた友達たちも遠くから千代ノ山に声をかけ、その内、全員ゾロゾロと後を付いて来る。

それに気づいた三太は、くるりと回れ右をすると、横綱は静養に来ているのだから、声をかけたり邪魔をしてはいけないと、校長先生のまねをし、全員をその場から回れ右をさせ、帰させてしまう。

その日、音さんは、三太に千代ノ山が昨日の礼にと、中野町の相撲場に呼んでくれたと言うので、三太や留、定らは音さんと共に、夜明け前に村を出発し、中野町の相撲場に向かう。

そこでは、土俵が作られており、大勢の見物客たちが見守る中、憧れの千代ノ山や栃錦らが稽古の最中だった。

その内、千代ノ山が、三太、一丁来るか?と胸を出して来たので、三太は上着を脱ぎ、千代ノ山に飛びかかって行く。

でも、全く千代ノ山が動こうとしなかったので、留と定も、同じように、上半身裸になって飛びかかるが、千代ノ山は動じようとはしなかった。

その後、外で、ちゃんこ鍋をごちそうになり、その後は、5貫目もあると言う横綱を付けた千代ノ山の土俵入りを見る事も出来た。

千代ノ山はその後、三太たちの村を通って、自動車で走り去って行く。

三太たちは、橋の上を通過する千代ノ山の自動車を、下の河原から、全員、手を振って見送るのだった。

もちろん千代ノ山は、三太のお陰で釣れた、たくさんの鮎をお土産に持って行ったと言う。

やがて、夏休みになった。

毎日、宿題もせず、川で遊びまくっていた三太たちは、どこからともなく聞こえて来る女の歌声を耳にし、何だろうと首を傾げる。

お花坊が、花荻先生の声に似ていると言い出すが、お嫁に行った花荻先生が、こんな所にいるはずがないと三太は半信半疑。

それでも気になるので、声のする方へ向かうと、川の中で、一人の女性が水着姿で泳いでいる。

よく観てみると、それはやっぱり、花荻先生だったので、みんなは喜んで川に降りて行く。

何しに来たのかと聞くと、ちょっと来てみたくなったのだと言う。

宿題はしているかと聞く花荻先生に、お花坊たち女の子グループは頷くが、三太や留たちは、恥ずかしそうに顔を背ける。

お花坊は、判らない所があると言い出し、ブタが子ブタを5匹生み、その子ブタが親になって、また5匹子ブタを生み、これを5回繰り返したら何匹になるか?と言う問題だと言う。

すぐに、確立の問題ねと微笑んだ花荻先生は、橋の下の日陰で教えると言い出すが、三太たち、宿題をしていない子たちには教えないと言う。

取り残されてふて腐れた三太たちだったが、花荻先生と女子たちがいる真上の橋桁が一部壊れているのを発見、その部分に向かうと、壊れている所から下を覗いてみる。

そんな三太たちの前にやって来たのは、何と、校長先生だった。

何をしているのかと言われた三太は、アリの観察をしていたとごまかすが、校長が橋桁から下を覗こうとしたので、そこではないと否定するが、すぐに嘘を見破った校長先生は、下にいた花荻先生に気がつく。

その後、校長と会った花荻先生は、なぜか泣いていた。

その事を、家に帰って両親に話すと、父親は、それは、夫婦喧嘩をしたのだと言い、女房なんて…と文句を言い出したので、側で聞いていた母親の方も、何を言う、亭主の方こそ…と、夫婦喧嘩になりそうだったので、三太は、二人を取りなす。

やがて、学校が始まった。

運動場で遊んでいた三太は、ある日、校長から呼ばれる。

何も悪い事をしていなかったので変だとは思ったが、つい、ごめんなさいと謝ってしまう三太。

校長の用事とは、花荻先生から手紙が来て、河童淵で泳いだ時、金の指輪をなくしてしまったのだと言う。

それを聞いた三太は、河童淵なら、良く知っているので、自分が探してやると承知するが、校長は、この事は花荻先生にとっては恥なので、絶対人に言ってはいけないぞと口止めをする。

翌日から、河童淵で指輪探しを始めた三太だったが、そこにやって来た音さんは、実は、千代ノ山から本場所の切符を送って来たのだと言う。

喜んで河原に上がって来た三太だったが、音さんから毎日毎日何をしているのだと聞かれたので、答えに窮する。

言えないと言うと、それなら切符は渡せないなどと、音さんは意地悪を言い出したので、仕方なく、河童のすを探しているのだと嘘をつく。

信じようとはしなかった音さんだったが、三太が真面目に言うので、信用したのか、切符を渡してくれる。

しかし、音さんは、お供の店員に、仲間に、河童退治と言って、ここで遊んでいようと耳打ちする。

間もなく、籠を持って、音さんと仲間たちが、河童淵に近づいて来たので、困ってしまった三太は、急いで酒屋の女房を呼びに行く。

それを聞いた女房は、あんな太った亭主が水に入ったら、死んでしまうではないかと驚き、すぐに河童淵に駈けて行く。

その様子に気づいた村人たちも、何事かと後に付いて来る。

河童淵にいた音さんは、やって来た女房の姿に気づき驚くが、河原で喧嘩になってしまったので、その後は又、三太だけで、ゆっくり指輪を探す事が出来るようになる。

そんな三太の様子を、お花坊が、岩陰からこっそり覗いていたが、その内、水に潜っていた三太がなかなか浮かび上がって来なくなる。

実は、三太は、川の中で足を石に挟まれて身動き出来なくなっていたのだ。

お花坊は、心配し、三太の名前を呼び続けていたが、やがて、何とか三太が浮かび上がって来る。

お花坊は、助けを呼びに行こうとするが、三太は、河童に足をくじかれたと言う。

足をけがした三太は、花荻先生に手紙を出し、まだ指輪は見つかっていない。自分は足をけがしてしまったので、相撲に行けなくなった。代わりに先生が行ってくれと切符が同封されていた。

千代ノ山は、夏場所の千秋楽を迎えていた。

最終戦、千代ノ山は土俵で勝負を始める。

その様子を、怪我をした三太は、家でラジオで聞いていた。

その様子を見ていた母親は、せっかく切符をもらっていながら、馬鹿な子だよと呆れていた。

千代ノ山は、相手を倒し、見事優勝する。

優勝インタビューを受けた千代ノ山は、優勝の喜びを語った後、せっかく坊やと仲良しになったのに、怪我をして来られなかったのが残念と語る。

その放送を聞いていた三太の家に、相撲に行っているはずの花荻先生とご主人が訪ねて来たではないか。

先生は、今回は大変申し訳ない事をしてしまった。実は指輪は、家で見つかったのだと言い、ご主人も、自分たちのつまらない事で迷惑をかけてごめんと詫びる。

それを聞いた三太ががっかりし、いきなり松葉杖を持って外に出て行くと、川が見える所まで一人でやって来て、おらあ、三太だ!ちっとも哀しくねえだ!と負け惜しみを叫ぶのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

NHKの連続放送劇「三太物語」の映画化シリーズの一本で、46分の中編である。

農村で、元気一杯の三太が活躍する話らしいが、本作の話だけを見ていると、どうも釈然としない展開になっているような気がする。

この物語の後半部分は、一体何を子供たちに伝えようとしているのか良く分からないのだ。

結婚して学校を辞めた花荻先生が、夫婦喧嘩をして一時期、村に戻って来る。

その時、泳いだ指輪をなくしたので、探して欲しいと校長に手紙を出して来た…と云う部分がまずおかしい。

そんな手紙を出せば、三太でなくても、誰かが指輪を探さねばならなくなり、明らかにはた迷惑な依頼である。

また、それを、三太に頼んでいる校長の姿勢も良く分からない。

夏休み中ならともかく、すでに二学期が始まっているのに、連日学校を休ませてまで、指輪探しをさせているのだ。

これは、どう考えても、教育者としてはあるまじき姿勢である。

三太の方からしてみれば、憧れの花荻先生に喜んでもらおうと、毎日必死に仕事をしたのに、結局、それは骨折り損のくたびれ儲けだっただけではなく、もう一つの憧れだった千代ノ山との再会もふいにしてしまうと言う、何とも後味の悪い結末。

何か、三太がいたずらをした結果…と云うなら、まだ、「因果応報」と言う事で、理解出来なくもないが、ここでの三太は、全くの、純真で善意の子供である。

その善意の子供が、踏んだり蹴ったり…と云うのが、見ていて嫌な気分にさせるのだ。

当時、これを見ていた子供たちは、三太の最後の叫びを、どう言う気持で聞いたのだろうか?

現実の厳しさ、理不尽さ…と云う事を伝えたかったのだろうか?

山本嘉次郎も脚本に参加しているだけに、その意図が良く分からない。

千代ノ山や栃錦ら、あまり見覚えのない、当時の人気力士の姿が見れるのが、何より本作の見所だろう。

左幸子の若々しい姿も魅力的だが、子供たちが、いなくなった花荻先生の事を思い出すシーン。

合成で、子供たちの背後に花荻先生の姿が浮かび上がって来るのだが、白黒作品と言う事もあり、合成が実に見事で、まるで幽霊でも出現するようにはっきり見えるのも不思議な感じである。