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セーラー服と機関銃(完璧版)

1981年、角川春樹事務所+キティ・フィルム、赤川次郎原作、田中陽造脚本、相米慎二監督作品。

※最初にストーリーを詳細に書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

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雨の中、疾走するボロ車には、拳銃を持ったヤクザらしき男が二人乗って、急いでいた。

老いたヤクザ星流志(藤原釜足)を往診していた尾田医師(円広志)は、家族を呼ばれた方が良い。もう、間に合わないと思うが…と、布団の周囲に集まった子分たちに、おずおずと告げる。

脇に控えていた佐久間真(渡瀬恒彦)は、そんなものはいねえと告げる。

自分に出来る事は、苦しさを和らげる事くらいしかないと言う尾田医師は、驚くほどでかい注射器を取り出したので、子分たちが不思議がると、自分は人間用の注射は持っていないと尾田医師が済まなそうに言う。

彼が、犬猫病院の医師とは気づかずに連れて来てしまった子分たちは焦る。

政(大門正明)、ヒコ(林家しん平)、明(酒井敏也)と、脇に控えた子分たちの名前を呼びかけた星流志は、上半身を起こすと、跡目に付いて言っておく。甥の奴に頼んでくれと言うので、佐久間は、その名前を尋ねる。

数日後、腕に喪章を付けた女学生星泉(薬師丸ひろ子)が、ブリッジをしながら、「カスバの女」を口ずさんでいた。

そこに、同じ美術部仲間である智生(柳澤慎吾)、哲夫(岡竜也)、周平(光石研)がやって来て、一緒に、ママが死んだ後、妻であり子であり、母でもあった泉のパパが焼かれている窯の前に立ち、合掌する。

泉の周囲に、炎が立ち上り、タイトル

パパの遺骨を持って、自宅マンションに一人帰って来た泉は、エレベーターの中で、口紅を手で拭い取ると、一人になっちゃった。でも大丈夫…と独り言を言う。

エレベーターを降りてみると、部屋の前に、見知らぬ女性が立ている事に気づく。

マユミ(風祭ゆき)と名乗った、その女性は、タカシから、あなたの事は聞いていると、泉から部屋の中に招き入れられると、パパの名前を親し気に告げる。

マユミは、一通の手紙を泉に手渡す。

それは、商社マンとして海外出張が多かったパパが、泉を頼むとマユミに宛てた内容だった。

どう言う関係なのか気になった泉は、あなたは、パパの愛人ですか?と聞くが、マユミは答えない。

かくして、マユミと泉は一緒に住む事になる。

翌日、高校の美術部にいた泉は、智生が、窓から校門の方を見下ろして、大勢のヤクザのような連中が集まっていると教えられる。

気が強い泉は、他の生徒や教師たちが、裏門から帰るように呼びかけていたにもかかわらず、堂々と、一人で校門に向かう。

そんな泉の前に出て来た佐久間は、「星泉さんですね?」と確認した後、「お迎えに参りました」と、車に乗せ、そのまま走り去る。

事務所に連れて来られた泉は、壁に、自分の名前が「4代目」として書いた垂れ幕が下がっている事に気づく。

目高組は、戦前からある由緒あるヤクザと説明した佐久間は、先代の遺言で、星タカシさんに跡目を御願いに行ったら、交通事故で亡くなったと知り、その葬儀場で泉を見かけたのだと言う。

甥御さんがダメな場合は、その直系に継がせてくれと言う遺言なので…と聞かされた泉だったが、自分はただの女子高生であり、組長になるなんて出来るはずがないと断るが、佐久間は、組長に年齢性別の区別はない。経験を積めば良いのですと説得する。

しかし、その経験とは何か?喧嘩とか博打、人殺しの事ですか?と泉は呆れ、嫌です!冗談止めて下さい!と固辞する。

すると、佐久間は、しようがない…、諦めるか…と呟き、解散式だ!松の木組に殴り込みする。みんな、一緒に死んでくれるか!と子分3人に言い出す。

それを聞いていた泉は驚いて、どうして解散するのに殴り込みなんかするのか?第一、さっき、校門の所に並んでいた大勢のやくざたちはどうしたのかと泉が聞くと。あれは、借り物で、目高組は自分たち4人だけなのだと、佐久間が説明し、その場で「解散!」と叫ぶと、酒を飲み干す。

泉は、そんな4人に向かい、殴り込みをするのは、私が許しません!私、組長になりますと言い、「お嬢さん!」と感激して呼びかけた佐久間に対し、組長と呼んで下さいと命じる。

子分たちは喜び、固めの盃や!と気勢を上げる。

小さなおちょこで5杯くらい酒を飲んだだけだったのだが、翌日、泉は二日酔いでマンションで休んでいた。

マユミが、病欠と言う事で、学校に電話をしておいたと言う。

泉は、父があなたのどこに惹かれたのか良く分からない。取り立てて美人でもないし、頭がシャープでもない。となると、やっぱり、身体かな?などとマユミをからかう。

マユミは、目高組って、本筋のヤクザなのよ。私は昔、ぐれていた事があり知っているのだと言う。

その時、佐久間から電話があり、自動車に乗せられた泉は、挨拶回りに行くと言われる。

浜口組の表向きの顔である浜口物産と言う会社ビルに来た泉は、社長に待たされている間、窓から見える小さな目高組のビルの屋上にあるものは何かと聞く。

すると、佐久間は、墓だと教える。

そこに、松の木組の組長関根(佐藤允)がやって来て、泉を信組長だと佐久間から教えられると、吹き出してしまう。

すると、泉は、そこに置いてあった花瓶の水を関根に浴びせかける。

一気に険悪なムードになったとこで、浜口が呼び出すアナウンスが聞こえたので、泉は佐久間と社長室へと入る。

浜口(北村和夫)社長は、日本映画を部屋の中で上映していた。

翌日、目高組の事務所では、松の木組に奪われていたシマが戻ったし、祝いとして、浜口物産から酒樽まで届いたと、政らが大喜びしていた。

そんな瞬間、外から、マシンガンの銃撃を受ける。

こうした騒ぎもあり、泉は学校を退学させられてしまう。

美術部の仲良しトリオや、他の友達たちが、窓から声援を送ってくれる中、泉は一人学校を去ろうとしていたが、その時、新宿署の黒木と言う刑事が声をかけて来て、亡くなったお父さんの事で話があると言う。

喫茶店で話を聞くと、父親は、空港でトレーラーに轢かれたのだが、そのお父さんは、自宅に小さな包みを持って帰らなかったかと聞いて来る。どうやら、密輸が絡んでいると言うのだ。

さっき、マンションの方へうかがった時、部屋にいた女性は誰ですかと黒木刑事が聞くので、泉は、親戚のものですと答える。

ところが、帰り際、黒木刑事は妙なことを言う。

あの女性は、土田つねみと言う名前で指名手配されている写真を見た事があると言うのだ。

帰宅した泉は、又すぐ、黒木刑事を呼び出す事になる。

部屋の中が、何かを探していたかのように、めちゃくちゃに荒らされていたからだ。

智生たち、美術部トリオも心配して来てくれていたが、マユミの姿が消えていたので、どう言う関係だったのかと黒木刑事から確認された泉は、一緒に暮らせと書かれた父親の手紙を持っていたと教える。

泉を連れ外に出た黒木は、お父さんは麻薬の運び屋で、ずっとマークされていたのだと教える。

そんな黒木刑事とべったりくっついている泉の後から付いて来ていた美術部トリオの面々は、泉が誘惑されていると焦る。

喫茶店で、黒木と泉が会話をしていると、今度は、心配した目高組の三人が窓から覗き込んでいた。

黒木刑事と別れた後、泉は、美術部トリオや目高組トリオと共に、大きな観音像の前でたむろして時間を過ごす。

ふと、泉がヒコに、バイクに乗せてとせがんだので、張り切ったヒコは、通りに出て、ちょうど通りかかった暴走族の頭から、バイクを借りると、後ろに泉を乗せ、暴走族と一緒に大通りに走り出る。

泉がヒコに、どうして目高組に入ったのかと聞くと、他に向いている職業がなかったからと恥ずかしそうにヒコは答える。

翌日、泉が事務所に行ってみると、何と、部屋の中が、女の子向きに模様替されていた。

佐久間が言うには、最近、組の金回りが良くなったと言う。

ヒコの姿が見えないので、泉が不思議がっていると、電話がかかり、政が出ると、何かが階段に置いてあると言っていると言い、電話を切ると、階段下に降りてみると、そこにヒコの暴行された遺体が置いてあった。

佐久間は、松の木組の仕業だと口走り、それを聞いた泉は、殴り込みに行く!と言って、一人で松の木組に向かう。

松の木組の工事現場の事務所に来た泉は、ヒコをやったのは松の木組ではないかと聞くが、応対した関根は、機関銃を撃ち込んだのは自分たちだが、浜口からの指示で、それ以後は手出ししていないと言い、子分たちに、泉を痛めつけるように命ずる。

泉は、クレーンから吊り下げられ、セメントの中に漬けられる。

その時、関根に佐久間から電話が入り、組長に手を出したら、お前の馬鹿息子を生かしちゃおかないぞと脅されたので、窓から子分たちに、止めるように呼びかける。

マンションに戻って来た泉は、佐久間から、ヤクザの怖さ、身に染みましたか?と聞かれるが、断固として戦うと、気が強い所を見せる。

佐久間は泉に、「太っちょ」って知りませんか?三大寺一と言う男の事なんだが、麻薬が絡んでいるとしたら、あの太っちょしか考えられないと言う。

ヒコの遺骨を納めたビルの屋上の墓で、佐久間は、麻薬はどっかにあるはずです。もう、あんな無茶は止めて下さいと注意するが、泉から、ヒコを殺されて悔しくないの?と問われると、子分の代わりはいても、組長の代わりはないんですと答えたので、泉から、冷た〜い!そんな人だったんですか、佐久間さんってと言われてしまう。

その夜は、ガード役を仰せつかった明が泉をマンションまで送って行く。

やがて、電話が鳴り、出てみると、相手はマユミだった。会って、許してもらいたい事があると言う。

マユミ指定のバーにやって来た泉は、マユミが中学時代にはアル中、高校時代にはポン中になり、大学では薬が自由に出来そうだと言うので、薬学部に入ったが、医局のヘロインを盗んでぼろぼろになり、酒と薬を両方飲んで、雨の中車を飛ばしていた時、タカシに会ったのだと言う過去を打ち明けられる。

それを聞いていた泉は、あなたの本名は土田つねみで、前科があるそうね?と斬り込む。

マユミは、マンションの事も、全部私に背負わせたいのね?と苦笑いし、「カスバの女」を口ずさみ始めたので、泉も一緒に唄い出す。

それは、パパが好きな歌だった。

マユミは、好きな男が出来た。許してくれると言うが、泉は、あなたは偽物でしょう?お芝居止めて!と怒鳴りつけ、そのまま店を後にする。

それでも、店の中で唄うマユミと、外で唄う泉の「カスバの女」はハモっていた。

帰り道、泉は、車から出て来た男に殴られ、車に引きずり込まれるとそのまま連れ去られる。

後部座席で横に座った男に向かって泉は、佐久間さんを殺しに来たんでしょうと聞くと、男は、兄貴は昔は、人斬りと呼ばれていたと意外な事を言い出す。

男は、萩原が来たって伝えてくれと泉を外に出す。

泉が佐久間の家の中に入ると、中から女の喘ぎ声が聞こえて来た。

恐る恐る中を覗いてみると、そこには、佐久間とマユミが抱き合っていた。

佐久間が荻原(寺田農)と話し合っている間、泉とマユミは外の公園でブランコに乗って時間を潰す事にする。

泉は、汚いわよ。まるで、獣じゃないとマユミを非難する。

萩原は、役が目高組に廻ったらしい。返してくれ。あの女に頼め。あれは太っちょの娘だと佐久間に告げる。

萩原が帰った後、佐久間は、マユミの事を泉から聞き、知り合いだったと知る。

泉は、普通は付き合う時、相手の名前くらい聞くんじゃない?と皮肉るが、佐久間は、ヤクザってものが良く分かったでしょう。腹の中はドロドロに腐っちまっているんです。その臭いから逃れるため、てめえより、もっと臭えものにたかってみたくなるんですと自嘲したので、泉は、マユミさんも腐っているの?と聞く。

分かんねえです…と云いながらも、佐久間は、あいつの死んじまった昔の愛人の、私は代わりじゃないですか?と苦々しく答えるのだった。

その後、事務所に行った泉は、浜口からディナーへ招待されたと聞き、無謀にも一人で出かけて行く。

浜口から豪華なディナーをごちそうになった泉は、食後のカクテルを勧められるがままに飲み、これで、浜口物産と目高組は対等な付き合いが出来ると思い込むが、まだ、組長同士は結びついたとは言えないと浜口が笑って迫って来た時、身体の自由が利かなくなっている事に気づく。

カクテルに薬が仕込まれていたのだ。

そんな泉を、浜口が二階の寝室に連れて行こうとした時、三大寺マユミがやって来たとの知らせがあり、マユミが単身乗り込んで来ると、佐久間はあんたにもしもの事があったら、刺し違えるつもりよと泉に教え、自ら服を脱ぎながら、浜口を連れ、二階に向かう。

ふらふらになりながらも、表に出た泉は、そこで待っていた佐久間に抱きかかえられる。

泉は、マユミが自分の身代わりになった事を詫びるが、佐久間は、あいつとはもう終わったんだと答えるだけだった。

翌日、泉が事務所に行くと、政がやって来て、今朝から誰かに付けられているような気がすると言う。

その後、自宅マンションにいた泉を、黒木刑事が訪ねて来るが、ガード役として表に立っていた明が面会を断る。

すると、黒木は、明を痛めつけ始める。

明は、何とかドスを取り出して威嚇するが、逆に黒木からドスを取られて、腹を刺されてしまう。

黒木は、その場は帰って行くが、明は泉の部屋に入り、異常を知らせる。

泉は、明の怪我の手当をし始めるが、明は、泉の事をお袋の臭いがすると言い出し、急に泉に抱きついてしまう。

やがて、我に帰って、あわてて謝罪した明だったが、その時、ドアのチャイムが鳴ったので、出てみると、そこに立っていた荻原から、いきなり射殺されてしまう。

泉は、荻原に連れ出され、得体の知れない宗教施設のような場所に案内される。

そこに現れたのは、両足が義足になっており、松葉杖で四つん這いになって歩く、不気味な姿の太っちょこと三大寺一(三國連太郎)だった。

太っちょは、自分にもあなたのように眸の美しい娘がおった…と言いながら、あの包みはどうしました?ヘロイン…と問いかけて来たので、泉は知らないと答える。

ちょっとした手違いで、そっちの手に渡ってしまったので返して欲しいと、なおも迫る太っちょは、自分は神の代行をしている。昔、自殺しかけた事があって、地雷を床に仕掛け、その上に立っていたと、両足を失った由来を話し始める。

地雷は、バランスを崩すと爆発する仕掛けになっており、自分は3日間、その上に立ち続けた。最後は、生と死が入り交じり、快感だったと言う。

泉は十字架に縛られ、マシンガンを乱射させると言う拷問を受ける。

その頃、一人カスバの女を口ずさんでいたマユミの元にやって来た佐久間は、父さんの山荘を教えてくれ。話して誤解を解くと頭を下げていた。

しかし、マユミは、話して解決するとは思っちゃいないでしょう?命を捨てに行くようなものよと、佐久間をなだめようとする。

泉は、地雷の上に立たされていた。

泉は気丈にも、太っちょのおじさん、精神病院に行った方が良いと、窓の向こうからこちらを眺めている太っちょに声をかけるが、太っちょは、ヘロイン患者が日本中に増え、七転八倒する所をゆっくり観たいんだと笑う。

泉が「悪魔!」とののしると、太っちょは、「ありがとう。それは私にとって、最高の賛辞だ」と喜ぶ。

その時、部屋の中に入って来たマユミが、泉の身体を抱きしめ、パパ、電流、切ってと頼む。

ヘロインの場所を教えて上げると言うのだ。

泉とマユミは、ドレス姿に着替えさせられ、黒木刑事も一緒に、太っちょとの食事に付き合う事になる。

マユミは、ヘロインは、ローションの瓶に入れ、マンションにあると教える。

それを聞いた黒木刑事は、ヒコを殺したのは自分だと告白する。

顔を見られたので仕方なく…と黒木は嘯く。

泉のパパ、タカシは、マユミにヘロインを渡していたのだ。

黒木は、席を立ち、泉のマンションに向かう。

その間、太っちょは出された料理に舌鼓を打っていたが、マユミが、その料理は猿の脳みそだと教えると、気分が悪くなった泉は、萩原に付き添われトイレに向かう。

途中、飾り窓の裏側に隠れていた佐久間が萩原に停まれと声をかけ、萩原が振り向いて発砲すると、佐久間も萩原の足を撃ち抜く。

廊下に降り立った佐久間は、泉にも銃を手渡すと、逃げるように指示するが、やがて、二人とも、手術室に閉じ込められてしまい、まんまと敵の罠に引っかかったとこに気づく。

二人は入り口を封鎖しようとするが、すぐに突破され、車いすで入って来た太っちょは、「生体解剖をやり直す」と言いながら、その場で足カバーを外すと、折り曲げていた足を伸ばし、車いすから立ってみせる。

義足だったのは、泉を脅すためにお芝居だったのだ。

泉を指差し、「素っ裸にして、解剖台に括り付けろ」と部下に命ずる太っちょに銃を向け、発砲したのはマユミだった。

車いすに崩れ込んだ太っちょの死体に近寄ったマユミは、変ね、パパのこんな優しい顔は初めて…と呟く。

泉のマンションに来ていた黒木刑事は、電話が鳴り出したので受話器を取ろうとするが思うようにならない。

彼は血まみれになっており、瀕死の状態だったのだ。

何とか、受話器を取り上げた黒木は、電話して来た泉に、やられた。浜口物産にヘロインを取られた。萩原が裏切った。泉ちゃん、あんた良い娘だ。好きだったよ。バイバイ…と告げると、その場に倒れる。

泉は、どうして、たった一袋のヘロインで、こんなに人が死ぬのかと怒るが、佐久間が、金になるからだと冷静に教える。

泉は、そんな佐久間に、一緒に行ってくれる?浜口物産に殴り込みよ!と告げる。

佐久間に、刑務所時代惚れたと言う政も加え、3人で浜口物産に乗り込んで行く。

相変わらず、日本映画を部屋で上映していた浜口の社長室に入った泉は、そこに、浜口物産の重役になったと言う萩原がいる事に気づく。

浜口のテーブルの上には、ヘロインが入ったローションの瓶が並んでいた。

浜口は、やって来た泉に、太っちょのシマの一部を目高組に任せようと提案して来るが、泉は、本当に欲しいのはヘロインよ。全部もらいますから!と啖呵を切ると、マシンガンを乱射し、ローションの瓶を全て破壊してしまう。

その直後、泉は「快感!」と呟く。

そのまま帰りかけた3人だったが、政が腹を射たれたので、すかさず、佐久間が、撃った萩原の頭を狙い撃つ。

2丁拳銃を持った泉が、動こうとする浜口たちを牽制する中、佐久間は瀕死の政をおんぶして、部屋を後にする。

事務所に戻って来た泉と佐久間は、ビルの屋上にあった組の墓をドラム缶で全部消却してしまう。

佐久間は、目高組はこれでお終いだと言う。

泉は、自分が組長になったばかりに、組を潰してしまったと謝罪するが、佐久間は、最後に一花咲かさせてもらった。もう、自分たちは他人です。自分は、田舎に引っ越し、ひっそり暮らすと告げる。

泉は佐久間に、しっかり堅気になると誓わせ、佐久間も、堅気になって、お嬢さんのマンションを訪ねますよと約束する。

それから数ヶ月後…

学校に復学した泉は、再会した美術部トリオに、マユミはアメリカに行ったと報告する。

そんな泉を訪ねて、又、見知らぬ刑事が校門の所にやって来る。

泉が連れて行かれた警察の死体安置所に横たわっていたのは、佐久間だった。

北海道から東京に出張して来て、あなたのマンションを訪れたようだが、不在だったので、名刺だけ郵便受けに入れて帰る途中、ヤクザの喧嘩を目撃、仲裁しようと中に入り、ドスで胸を一突きされ、即死だったと、刑事は説明する。

泉は、約束通り堅気になっていた佐久間の死体の唇にキスをする。

その後、高層ビルの前の歩道でハーモニカを吹いていた泉は、刑事からもらった佐久間の名刺を破り捨て、ハーモニカも放り投げる。

新宿伊勢丹の前にやって来た泉は、小さな子供が二人遊んでいるのを見つけ、一緒に、マシンガンを撃つまねをしながら、地下鉄の通風口の上に立つ。

地下鉄が通過する際の風が地上に吹き出し、泉のスカートがめくれあがる。

生まれて初めてのキスを、オジンにあげてしまった。私、愚かな女になりそうです…マル

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

当時、角川書店がプッシュしていた人気作家赤川次郎のジュブナイル小説を、これ又、角川映画のアイドルとして人気上昇中だった薬師丸ひろ子で映画化した作品で、子供向けのヤクザファンタジーと言った内容になっている。

どう考えても荒唐無稽な設定なのだが、その荒唐無稽さやアイドル映画と言う概念を逆手に取り、相米慎二監督は思いつくまま自由奔放に撮っているように見える。

何だか、一画面一画面、突飛な事をやってやろうとする実験精神に満ちあふれているようで、その稚気には、今観ると苦笑させられる部分もあるが、当時の監督の若さと才気の現れと解釈すべきかも知れない。

アイドルが主演の作品なので、主役のリアルな汚れ演技とかリアルな抗争劇など描けるはずもなく、いかにも漫画的な展開に終始しているのだが、派手なアクションが描けない分、奇抜な絵柄で勝負するしかなかったのかも知れない。

ラスト近く、ほとんど、薬師丸ひろ子のアップがなくなるのは、浜口物産の社長室で機関銃を撃った時、頬に本当に怪我をしてしまった事が関係しているのだろうか?と気になったりもした。

昔の映画なので、今現役で活躍中の俳優たちが、当時若いのは当然としても、黒木刑事をやっている柄本明と、赤いアロハを着て帽子をかぶっている目高組の明が、酒井敏也であった事には、今さらながら驚かされる。

三國連太郎が演じている太っちょは、怖いと言うより、まるでマンガのキャラクターである。

佐藤允が演じている関根なども現実感には乏しく、ちょっと強面のおじさんレベルにしか描かれていない所なども、この映画が子供向けである事の証しだろう。