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猛吹雪の死闘

1959年、新東宝、牧源太郎原案、石井輝男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ヤッホー!

粕谷五郎(宇津井健)と、許嫁大塚千代子(三原葉子)は、二人でスキーを楽しんでいたが、突然の雪崩に襲われ、千代子の方が亡くなってしまう。

その後、粕谷五郎は、千代子の思い出を抱き、山形にあるその山の山小屋で暮らし始める。

月に一度、麓に日用品を買いに行くだけの単調な生活だが、彼は満足していた。

その日、登山口にあるスキーハウス「麓」には、燕(つばくろ)小屋から、稜越えをしたいと言うグループがやって来てガイドを頼むが、小屋の老人は、そんななりでは無理だから止めといた方が良いと忠告する。

その忠告に不機嫌になったグループだったが、老人の孫娘桂千春(星輝美)が、燕小屋のガイドだったらいるが、今は出かけていると教えてやる。

そこに、そのガイド粕谷五郎が戻って来たので、ヤッホー!と呼びかけた千春は、駆け寄って、事情を話す。

ハウスに入って来た五郎は、稜越えは危険なので止めた方が良いと、老人と同じ事を言って奥に消えたので、グループのメンバーは、あいつも大した奴じゃないんじゃないかとバカにする。

すると、そこにやって来た老人が、あの人は、高等学校の頃からスキーをやっているベテランだと教えたので、メンバーたちは、今の男こそ、白鳥女学園の女学生だった許嫁を亡くした京北大学の元オリンピック選手粕谷五郎だと気づく。

そんな話をハウスの隅で聞いていた4人組がいた。

一級の免状を貰ったら冬山の指導員になるのが夢の千春と五郎は、「雪の降る町を」を唄いながら、燕小屋に向かっていたが、粕谷さん待って!と呼びかける声で気がつくと、ハウスから4人組が付いて来ており、その中の紅一点双見昭子(三原葉子-二役)が呼びかけたのだった。

五郎は、屏風越えのツアーガイドをやって欲しいと昭子から頼まれるが、君たちの装備では無理だと断る。

しかし、4人組はその後も勝手に、二人の後を追って来て、途中でへたばってしまったので、さすがの五郎も、君たちのやってる事は乱暴過ぎると呆れ、とにかく、燕小屋まで連れて行く事にする。

小屋に落ち着いた五郎は、4人組の一人菅野欣也(菅原文太)から酒を勧められるが断る。

次いで、菅野は、昭子にも勧めるが、昭子も相手にせず、アルバムの女性の写真を眺めていた五郎の側に近づく。

昭子に気づいた五郎は、慌てたようにアルバムを閉じ、山の写真でも見せましょうかと別のアルバムを披露し始める。

そんな二人に近づいて来た菅野が「ひがみますよ」とからかったので、五郎は席を立つ。

昭子は、自分のバッグに付いた靴のアクセサリーを触っていた千春に気づくと、欲しいの?と聞き、そのアクセサリーをプレゼントする。

五郎は、まとめた新聞を読んでいたが、13日の新聞がないので、千春が送り忘れたんじゃないかと注意し、千春はそんな事はないとちょっとむくれる。

男たちは、荒神岳を越えれば、宮城県に抜けられると話し合っていた。

やがて、菅野がトランジスタラジオのスイッチを入れ、音楽を聴き始めたので、昭子は五郎に踊ってくれと頼む。

五郎は下手だからと断るが、歩いていれば良いのよと言う昭子に従う事にする。

その間、外に出た千春は、13日の新聞を送れと書いた通信文を足に付けた伝書鳩を、ハウスに向けて放つ。

菅野は、目の前で踊る昭子と五郎をうらやむように、ラジオのスイッチを入れたり付けたりするが、昭子から、曲を変えてくれません?と言われたので素直にチャンネルを変えてやる。

翌朝、小屋の近くの百葉箱で、天候の調査をしていた五郎の元にやって来た千春は、あの女の人がいなくなったと男の人たちが言っている教える。

小屋に戻って来た五郎は、一人で下ったそうですねと3人の男たちに聞き、危険なので、僕が行きますと出かけし、千春には、下のハウスに伝書鳩を飛ばすよう頼むが、気がつくと、菅野が拳銃を突きつけていた。

伝書鳩は何匹いるんだ?と聞くので、3羽だと五郎が答えると、3人組の1人峰山浩三(宗方祐二)は、連絡させないように殺してしまった方が良いと言い出す。

しかし、3人組の一人で一番年輩の大平剛(大友純)が、下から伝書鳩で連絡が来た場合、返事の伝書鳩を飛ばさないと怪しまれると正論を言ったので、峰山も感心する。

菅野は、千春を人質として預っておくので、女を1時までに連れて来いと五郎に命じる。

その頃、山をスキーで下っていた昭子は、途中で転倒してしまう。

ガスが出た山の斜面を下った五郎は、何とか、倒れて気絶していた昭子を見つけると、近くの避難小屋まで連れて行く。

燕小屋の方では、峰山が菅野に、女連れの方が疑われにくいなどと言って、あんな女を連れて来たばかりに面倒な事になった。ここで石を分け合おうと文句を言っていた。

すると、菅野が、石はあの女に預けてあると言い出したので、二人は取っ組み合いの喧嘩になる。

そんな二人に、大平は、網走の事を思い出せ。あの窓からも雪山が見えたが、あの刑務所で出会った時から、俺たちは、シャバに出たら仲良くやろうと誓い合った仲じゃないかとなだめる。

その頃、避難小屋では、昭子の冷えきった身体を、五郎が懸命に擦って暖めていたが、気がついた昭子は、自分が裸にされている事に気づくと、何をなさるんです!と五郎に対し気色ばむ。

五郎は誤解するなと弁解し、君はあの男たちの仲間なんだね?と確認する。

すると昭子は、私はあなたが想像しているような女じゃないわと反論する。

13日、菅野が大平と峰山をお得意様だと言って店に連れて来たのが最初の出会いで、接待のため、北海道に向かうと言われると断る事が出来なかったと言う。

機関車で北に向かっていた時、13日の新聞紙をかぶって寝ていた昭子から、その新聞紙を奪い取った菅野が、それを読みもせずに丸めて捨てたのを観て疑念を持ち、もう一度、13日の新聞を買い直して、記事を確認すると、3人組の宝石泥棒の記事が出ていたので、菅野たちがその3人組だと悟る。

山形県のとある駅でこっそり降り、逃げようとした昭子だったが、先に改札の所で待っていた3人組に拉致され、銃を突きつけられたまま町を彷徨い歩く事になる。

やがて、3人組は、スキー客に化ければ女川港に逃げられるのではないかと思いつき、スキーハウス「麓」でガイドを捜していた時、五郎を知ったのだと言う。

何とか警察に知らせなければと焦る昭子だったが、五郎は、燕小屋に戻らなければ、千春が人質として捕まっていると教える。

昭子は、戻ると、あの男たちに殺されると怯えるが、五郎は、君は僕が全力で守るからと約束し、戻るように必死に頼む。

五郎は、自分のスキー板に、山小屋に強盗の3人がいると書き、板だけ雪の斜面を滑らせてみる。

燕小屋では、菅野が俺は発つぜ。あの男に行けて、俺に行けねえはずないだろうと言い出していたが、それを聞いた大平が、だったら、置いて行ってもらいたいものがあると言うが、その時、五郎と昭子が帰って来る。

峰山が昭子に近づこうとすると、それを制するように、菅野が昭子に話があると外に連れ出そうとする。

それを止めさせようとした五郎は、始末しようと銃を突きつけた菅野と峰山に外に連れ出される。

それを見ていた昭子は、壁にかかっていた猟銃を手に取ると、それで3人の後を追い、菅野に銃を捨てるように迫る。

菅野は笑いながら、銃を上着の中にしまうと、撃ってみろと言いながら、猟銃を構えた昭子に近づいて来る。

昭子は止めて!近づかないで!と怯えるが、とうとう引き金を引く。

しかし、弾は出なかった。

山小屋から、大平が笑いながら、弾はもらっといたと、抜き取った弾を見せながら出て来る。

菅野もそれを知っていたのだ。

その菅野が、向こうで話があると、昭子を連れて行こうとすると、大平は、ここで話したらどうかと菅野に言う。

そして、峰山に菅野の身体を調べさせると、服の中に隠した袋を見つける。

その袋の中には、奪った宝石が詰まっていた。

峰山は、菅野が裏切ったと悟るが、大平は、前から気づいていたようだった。

峰山から銃を向けられた菅野は怯えながら、雪の中を後ずさると、命乞いを始め、宝石は全部二人にやると云う。

その無様な様子を観ていた大平は、今回は見逃してやろうと峰山に告げる。

大平は、その場で、宝石を二等分し始める。

その夜、山小屋で見張り役だった峰山が居眠りをしているのに気づいた五郎は、こっそり外に出ると、3人組のギャングが小屋にいる。手配頼むと書いた通信文を鳩の足に付け、空に放つ。

しかし、その直後、小屋から出て来た大平が猟銃で伝書鳩を撃ち落としてしまう。

音に気づいて出て来た峰山は、居眠りしていた事を大平から皮肉られるが、鳩が1羽しかいないのに気づくと、3羽いたはずじゃないのか!と言いながら、五郎を殴りつける。

五郎は今の1羽しか放していないと主張するが、小屋の中に連れ込まれ縛られると、峰山と菅野から、口を割れと拷問を受ける。

見かねた千春が、もう1羽を放ったのは自分で、ただ、13日の新聞を送れと書いただけだと教える。

すると、菅野が、この小屋に到着した直後、俺たちの記事が載っている13日の新聞は、俺が抜いておいたんだと告白する。

しかし、それを聞いた大平は、と言う事は、誰かが新聞を持って来るに違いなく、そいつを始末して逃げようと言い出す。

その頃、スキーハウス「麓」では、宝石強盗がこの辺りに来ているかも知れないと報告に来た警官と老人が話し合っていた。

そこへ、猟師の友吉が、これから山に登ると挨拶に来たので、老人は、13日の新聞を山小屋に持っていてくれと頼む。

その友吉が近づいて来た事に気づいた強盗らは、昭子を連れ中二階に登ると、テントに隠れて、五郎と千春に銃を向け、漁師を待ち構えていた。

そこに、友吉がやって来て、新聞と、途中で拾ったと言う五郎のスキー板を渡す。

あわてて五郎はその板を受け取るが、幸いな事に表面は雪で凍り付いており、書き込んだメッセージは見えなかった。

千春は、上から銃を構えている犯人たちから身を隠すように、友吉と入り口の前に立つと、新聞の「3人組の宝石強盗」の記事を指しながら、二階をそれとなく指差すが、友吉は、その意味に気づかず、その事なら、警官がハウスでしゃべっていたと口に出してしまう。

結局、何も気づかないまま、友吉は山小屋を後にし、降りて来た峰山は、五郎が持っていたスキー板を取り上げると、これを履いて逃げるかと冗談を言う。

スキー板は、ストーブの側に置かれたので、表面の雪が溶け出して来る。

さらに、それを受け取った大平が、荷物を運ぶそりとして使えるかも知れないと言いながら、表面にこびりついていた雪を叩いたので、板に書かれたメッセージを見つかってしまう。

その時、千春が、壁にかかっていた発煙銃を取り、それで犯人たちを脅しながら表に飛び出して行ったので、菅野と峰山が後を追う。

五郎は、猟銃を向けようとする大平と組み合う。

千春は、雪の斜面を腰で滑り降り始めたので、菅野と峰山は追跡を諦める。

大平は、すぐに発とうと言い出す。

スキーハウス「麓」にたどり着いた千春から、強盗が山小屋にいる事を知った警官は、地元の救援隊を呼び集める。

その頃、五郎は、強盗団と昭子を連れ、雪山を出発していた。

途中、休憩した時、大平に近づいた菅野は、おめえにはこの山は無理だ。石を寄越せと、つかみ合いになる。

クレバスの淵に掴まった大平の背中のリュックのヒモを持ち上げながら、石を奪い取った菅野は、そのまま大平を蹴り、クレバスの中に落とす。

それを近くで目撃し、あんた、大平に助けてもらったくせにと睨みつける昭子も捕まえ、崖っぷちに連れて来た菅野は、つまらねえ告げ口すると、おめえも大平みてえになるぜと脅しつける。

その頃、捜査をする先発隊が本山に到着していた。

捜索隊は、時間経過から考え、五郎たち一行は、渋沢の屏風岩辺りにいるはずだと見当をつける。

岩場を単独でよじ上った五郎は、ザイルで、峰山、昭子、そして菅野を引き上げてやっていたが、先に上に登った昭子は、必死に菅野を持ち上げようとしていた五郎に、菅野は大平をクレバスに落としたのだと教える。

それを聞いた峰山は激高し、思わず、ナイフでザイルを切ろうとするが、五郎はそれを阻止し、何とか菅野も頂上まで持ち上げてやる。

その後、先に歩き始めた昭子は、あんな奴、助けなければ良いのにと悔しがるが、一緒に歩いていた五郎は、ザイルは切れない。山の男の約束だからと教える。

それを聞いた昭子は、私って、恐ろしい事考えていたのね。鬼のような女ねと反省するが、五郎は、そんな事はない。ただ君は、恐ろしい事に遭いすぎただけだと慰める。

やがて、ガスが出て来た事に気づいた五郎は、ここでビバークするので、一緒に穴を掘れと、峰山と菅野に命ずる。

何とか、穴を掘り終えた4人はその中で身を寄せあって夜を明かす事にするが、五郎は唄おうと言い出し、昭子と一緒に唄を歌い始める。

それを忌々しそうに睨みつけていた菅野は、急に「ドンドンパンパン、ドンパンパン♪」と大声で怒鳴り始める。

しかし、夜も更けると、昭子や菅野たちは全員眠ったようになったので、五郎は必死に目を覚まさせようとする。

もうろうとした昭子は、私って、あなたの恋人に似ている?と五郎に聞く。

山小屋で、あなた、大塚千代子さんの写真を観ていたでしょう。千代子さんって、優しい人だったんでしょうね。私あなたに、美しい雪山の事を教えてもらったわ。避難小屋で、あなたを疑ったりしてごめんなさいと語りかける。

こんな雪山で死ねば、あなたのようにきれいになれるんでしょうねと言いながら眠ろうとするので、五郎はもうすぐで登山口だからがんばれと励ます。

それを聞いた峰山と菅野は、もうすぐで逃げられる。山を下りるまでは共同戦線で行こうと話し合い、五郎を穴の外に連れ出すと、始末しようとする。

外はもう夜が空けていた。

五郎は、必死に二人の男と戦い始める。

それを見つめる昭子。

菅野と峰山が逃亡を始めたので、必死に五郎も後を追い、その後を昭子が追いかけて行く。

やがて、菅野と峰山が雪庇に差し掛かったので、下から五郎が危険だと声をかけるが、二人は足を滑らせ、斜面を墜落して行く。

そこに捜索隊と千春が近づいて来て、気絶した二人の犯人をスノーボートに収容する。

菅野が落とした宝石の入った袋を拾い上げた警官が、下から五郎に、無事を確認すると、上から、二人とも無事だとの返事が返って来る。

五郎の側で、周囲の雪山を見渡した昭子は、私、こんな美しいもんがあるのを忘れていましたわと感動する。

んな五郎と昭子の元に、「ヤッホー!」と呼びかけながら、千春が駆け寄って来たので、五郎も「ヤッホー!」と返事をし、昭子にも返事をするように勧める。

昭子も、「ヤッホー!」と大きな声で呼びかける。

二人の所にやって来た千春は、五郎と手を繋いで喜びあうと、昭子には、以前もらった靴のアクセサリーを取り出して笑う。

五郎は、みんなで唄いながら帰ろうと提案し、3人は「雪の降る町を」を合唱しながら山を下りるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

三船敏郎のデビュー作「銀嶺の果て」(1947)や、シルヴェスター・スタローンの「クリフハンガー」(1993)などを連想してしまう、本格的山岳アクション映画。

スキーのシーンはさすがにスタントだとは分かるが、室内セット以外は、全て、本当の雪山で撮影されており、その苦労が偲ばれる出来上がりになっている。

相変わらず、真面目一本やりで、清々しいスポーツマンを演じている宇津井健の姿には、滑稽さを越えたりりしささえ感じる。

なぜ、滑稽に見えるかと言うと、いつでも歌を明るく口ずさむと言う、山男のキャラクター設定が、いかにも古めかしいからだと思う。

しかも、歌っている歌が「雪の降る町を」などと言う、ちょっともの悲しいマイナー調のメロディだから、元気一杯のシーン画面と、何となくそぐわないと言う点もある。

ただ、この時期の宇津井健が演じていた、かなり嘘くさく、不自然に見えるヒーロー像の中では、比較的「マシな方」のような気がする。

作品としては、石井監督のアイデアが冴え渡り、伝書鳩の数を巡るサスペンスや、スキー板に書かれたメッセージが見えかけて来るサスペンスなど、随所に秀逸なシーンが用意されている。

しかしながら、一方で、当時新人だった菅原文太の芝居が下手なので、かなり損をしている部分もある。

はっきり言えば、悪人としての迫力が何もないので、観ていて、あまり怖く感じないのだ。

他の2人は、それなりに悪人に見えるのに、中心人物たる菅原文太がまるで弱そうなので、緊迫感を殺いでしまっている部分があるのは確か。

また、三原葉子が、珍しく、清純派みたいな役所を演じているのも珍しいような気がする。

可憐な少女役を演じている星輝美は、今観ても本当に可愛らしく、一服の清涼剤的存在になっている。

新東宝作品なので、いわゆる大物俳優は誰も出ていないが、サスペンスアクションとしては、良くまとまった秀作だと思う。