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血斗水滸伝 怒涛の対決

1959年、東映京都、峰岸義一原作、高岩肇脚本、佐々木康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天保年間、大利根川日立上総周辺では、二つのやくざ勢力が覇権を競い合っていた。

一つは、房総南部地域を仕切っていた古参の飯岡一家。

もう一つは、房総北部を仕切るようになった新興の笹川一家。

両者の境界線は、干潟であった。

今日は、その干潟八幡のアヤメ祭りの日であり、水上にこしらえた舞台の上で演芸が披露されており、飯岡一家の親分助五郎(進藤英太郎)も、笹川一家の舎弟清滝の佐吉(東千代之介)や勢力の富五郎(若山富三郎)も、別々の方向から見物していた。

助五郎は、間もなく人気芸者の八千草(美空ひばり)が、登場するというので、招待しておいた関八州取締役中山誠一郎(月形龍之介)の到着を今や遅しと待ちかねていた。

そこにちょうど中山が到着し、舞台では八千草が踊り始める。

中山は、八千草の姿に惚れたらしく、接待の礼として、十手を助五郎に手渡す。

その後、笹川一家の親分繁蔵寄贈の打ち上げ花火と、アヤメをかたどった大きな仕掛け花火が披露され、喝采を受けたので、それを観た助五郎は不機嫌になる。

干潟の町では、助五郎が地元の干潟一家の場所を借り、賭場が開かれていたが、突然、その賭場に二人の面をかぶった暴漢がなだれ込み、賭場を荒らして逃げるという事件が起こる。

助五郎は、足が悪い干潟の庄吉(薄田研二)がやっている料亭に押し掛けると、この始末をどうしてくれると因縁を付ける。

やったのは、笹川一家のものに違いないと言われた庄吉は、不本意ながらも謝罪し、娘のお滝(千原しのぶ)に、繁蔵のところへ連れて行ってくれと頼むが、お滝が、明確な証拠がある訳でもないのでと止めたので、助五郎は怒って部屋を後にする。

その後、お滝は、助五郎はここを乗っ取ろうとしていると父親に耳打ちし、庄吉も、それは分かっていると答える。

その後、助五郎は、庄吉の料亭の奥の座敷で八千草の踊りを観ながら酒を飲んでいた中山と合流する。

中山はすっかり上機嫌で、八千草に酒を勧めるが、八千草は飲めないのでと断り、受け取った杯を助五郎に渡す。

中山は、その八千草の態度に機嫌を悪くし、言うことを聞けと無理強いをし始めるが、八千草の方も、自分は芸は売るが体は売らないと啖呵を切り、部屋を飛び出してゆく。

助五郎一家のものに追われ、八千草が逃げ込んだ部屋では、元相撲取りの勢力の富五郎が一人飲んでいた。

そこに、子分とともに乗り込んで来た助五郎が、表に出ろと因縁を付けて来たので、富五郎は八千草をかばうため、受けて立つことにする。

表の人だかりの中に出た助五郎たちと富五郎が対峙し、今にも喧嘩が始まりそうになったので、庄吉が、祭りの日にそんな騒ぎを起こすのはやめてくれと止めにくる。

そこにやって来たのが、笹川一家の親分繁蔵(市川右太衛門)と清滝の佐吉だった。

佐吉は、連れていた二人の仮面の男を、助五郎の前に突き出す。

仮面が取れた二人は、助五郎一家の鉄と雄助だった。

賭場荒らしは、自作自演だったことがバレた助五郎は、何も言うことができず、繁蔵は、富五郎と八千草を連れてその場から黙って立ち去ってゆく。

ある日、笹川一家の縄張り内の境内で、独りの浪人ものが、繁蔵の子分の独り、勝んべこと勝蔵(堺駿二)や青馬の権太(星十郎)相手に賭け事をしていた。

自分に石を投げつけ、少しでも体に触れたら、金を出すが、当たらなかったら掛け金をいただくという簡単なものだった。

しかし、勝んべは、もう何個を投げてどれも刀の柄ではねとばされていたらしく、体力も金もすっからかんになっていた。

近くの石灯籠に酒瓶が置いてある所から、浪人は相当の酒のみらしかった。

そこにやって来た繁蔵は、一目で浪人の力量を見抜き、1両小判を渡して勘弁してもらう。

しかし、笹川繁蔵が名乗っても、その浪人は、この辺でやくざと言えば、飯岡助五郎しか知らんので、今から知り合いになりに行くつもりだと言い捨てて去ってゆく。

ところがその後、その平手造酒(大友柳太朗)と名乗る浪人は、ふらりと、繁蔵の家の玄関口に現れる。

何でも、助五郎の一家よりこちらの組の方が人数が少ないと聞いたので、用心棒としては、こちらの方につきたくなったという。

しかし、応対した繁蔵は、先生のような方がやくざの用心棒をなさってはいけません、うちでは雇えませんと、いったんは断るが、そうかと帰りかけた平手に、しかし、剣術の先生としてなら雇いたいと止めたので、平手は上機嫌になる。

早速上がり込もうとした平手だったが。こんな所に先生に上がってもらう訳にはいけないという繁蔵は、富五郎に案内させ、又左衛門(武田正憲)という老人の元に平手を連れてゆき、これからここに泊めてくれと頼む。

又左衛門の孫娘お咲(丘さとみ)は、時々咳き込む平手の様子を心配げに見つめていた。

ある雨の日、勝んべら子分相手に、剣術の練習を終えた平手を繁蔵の所まで迎えに来たお咲は、いつも又左衛門が、助五郎一家にいじめられていると打ち明け、それを聞いた平手は、あちらにつかずに良かったと安堵しながらも、またしても咳き込んで、心配させるのだった。

ある日、町の様子を見て歩いていた清滝の佐吉は、見世物小屋の前で女義太夫を披露しているお静(長谷川裕見子)の顔を見て驚愕する。

彼女こそ、佐助と名乗っていた板前の手代時代の佐吉と惚れ合いながらも、身分違いのため一緒になれなかった店のお嬢さんお静だったからだ。

二人は楽屋で久々の再会に感激しながら抱き合う。

お静が説明するには、姿を消した佐吉を探すため、自ら女義太夫になって、旅を続けていたのだという。

そんな二人の様子を、陰から勝んべがじっと見つめていた。

しかし、そんな楽屋に、助五郎の子分が乗り込んで来て、ここは助五郎一家の島なのに、笹川一家がいるとはどういうことだと因縁をつけてくる。

ここは渡世人同士、丁半で決めようじゃないか、負けたら、俺の片腕持ってゆけと啖呵を切った佐吉は、近くのあった湯のみにさいころを入れて、「半!」と勝負に出る。

結果は「1.4」の半だったので、なんとか、佐吉とお静は難を免れるのだった。

その頃、中山誠一郎は、助五郎から、銚子から干潟までは自分の支配下にあるとの説明を受けていた。

その後、佐吉とお静の元に、雪崩の岩松(大川橋蔵)と名乗る流れ者が訪ねて来て、一宿一飯の恩義として助五郎一家からの使いとして来たが、先ほどの礼をしたいので出向いてほしいと仁義を切ってくる。

佐吉は承知し、お静には江戸に帰るように説得し、金を手渡そうとするが、お静は、自分がどれだけこれまで苦労して自分の体を守りながら、佐吉を探し求めて旅を続けて来たのか分からないの?と嘆く。

その頃、使いから戻って来た岩松に、伝言を依頼した助五郎は、佐吉がやって来たら、お前も手伝ってくれと頼んでいた。

一対一の話し合いと聞いて伝言して来た岩松は、待ち伏せするらしい助五郎の策略を知り、話が違うと躊躇すると、急に態度を変えた助五郎は、自分は十手を預かっている身だが、お前の正体は、お尋ね者の天笠の寛治と見破っていた。言うことを聞かないとひっくくるぞと脅して来たので、仕方なく岩松は従う振りをする。

そこへ、何も知らない佐吉がやって来て助五郎と対峙するが、物陰から子分たちが出て来たので、罠にはまったと気づくが、仕方なく、その場で斬り合いを始める。

介添人としてその場に立ち会っていた岩松は。卑怯者は勘弁ならねえと言い放つと、助五郎の配下をその場で斬り殺して、わざと、自分の印籠をその場に落としておく。

その岩松の行動に驚いた佐吉だったが、岩松は、お前さんの気っ風に惚れたんだと笑って去ってゆく。

その頃、富五郎は繁蔵親分に、自分らが主催する花会に国定忠次が来ないと報告していた。

今回の花会は、笹川一家と飯岡一家の軋轢を緩和しようと、忠治自らがお膳立てをしてくれたものだけに、その肝心要の忠治が来ないと言うことが、繁蔵には解せなかった。

そんな中、とある茶店では、助五郎一家の子分二人が、いつものようにただ食いしたまま立ち去ろうとしたので、困った主人が金を要求するが無視されていた。

そんな様子を見ていたのが、表の椅子に腰掛けていた見慣れぬ頬被りの男と、そのお供らしき若い二人の青年。

頬かぶりの男が、立ち去りかけた助五郎の子分二人に嫌みの言葉を投げかけたので、子分は気色ばむが、そこにやって来たのが助五郎一家の洲の崎の政吉(中村錦之助)だった。

政吉は事情を知ると恐縮し、店に金を払った後、子分二人をしかりつけ、頬被りの男にも謝罪して帰ってゆく。

その様子を観た頬被りの男は、助五郎一家にも、あんなにできた奴もいたのだと感心する。

助五郎の元にやって来た政吉は、招待されている花会に行かないのか?と問いただしていた。

しかし、助五郎は、笹川主催の花会などに行くつもりはない。お前は、笹川一家の夏目の新助(大河内傳次郎)の娘を嫁にもらったので、あちらに義理立てしたいのか?と逆に食って掛かる始末。

それでも、それでは近隣から集まる他の親分集への義理が立たないので自分が行くと政吉が頭を下げると、助五郎は手みやげとして15両だけ渡してやる。

しかし、この種の集まりでは100両が相場であり、この金額ではとても花会に顔を出せないと感じた政吉は、あちこち工面してなんとか30両集めた後、自宅に帰ると、女房のお光(大川恵子)にも事情を話、へそくりもすべて出させる。

夏目の新助の娘ながら、今では飯岡助五郎一家の身内になったと覚悟を決めていたお光はすぐさま20両を差し出すが、それでも合計50両にしかならなかった。

政吉は、生後間もない赤ん坊朝太郎の寝顔を観ながら、坊主にだけは、こんな思いはさせたくないとつぶやくのだった。

暗い気持ちで、笹川一家に出向いた政吉は、おどおどと持って着た金包みを差し出すが、受け取った勝んべが中身を確認しようとした所を、事情を察した繁蔵が止める。

政吉は、助五郎親分は数日前から病気のため来られないので、自分が名代としてやって来たと、繁蔵に頭を下げるが、繁蔵はすっかり事情を察している様子だった。

座敷にはすでに、大前田の英五郎(山形勲)や信夫の常吉(吉田義夫)、大町和助(徳大寺伸)、神楽獅子の大八(加賀邦男)など、蒼々たる大親分のお歴々が集まっており、鴨居には、それぞれの組が持って来た土産金の金額が張り出されてあった。

やはり、どの組も百両単位であり、半分しか用意できなかった政吉は冷や汗をかく。

しかし、その時、貼られた飯岡組の金額を観ると「飯岡一家五十両 政吉五十両」と書かれてあるではないか。

政吉は、繁蔵が気を利かせてくれたのだと知り、心の中で感謝するのだった。

その繁蔵から他の親分集に紹介された政吉だったが、正面に陣取った大前田の英五郎に挨拶をすると、英五郎はすべての事情に気づいてか、もう一生世間に顔出しするなと助五郎に伝えたかった。今回集めた金はすべて干潟の水路建設に使おうと思っていたのに…と怒りをあらわにする。

その時、人間、病気には勝てねえと言いながら部屋に入って来たのは、以前、茶屋で出会った頬被りの男ではないか。

その男こそ、この花会を設定した国定忠次(片岡千恵蔵)本人だった。

その後、忠治は、おまさと酒を飲んでいた助五郎の家を突然訪れる。

驚いた助五郎はすぐに布団を敷かせ、その中に伏せて忠治を招き入れるが、酒の匂いに気づいた忠治は、卵酒とは良い所に目をつけたと仮病の皮肉を言い、この忠治の顔を立て、今後繁蔵と手を打ってくれるなと強引に迫ると、手打ち式の日取りは追ってこちらから知らせると言い聞かせ帰ってゆく。

その後、無事に手打ち式は終わるが、板割の浅太郎(里見浩太朗)、小天狗の美代太(伏見扇太郎)を従え、国元に帰ることになった忠治は、見送る繁蔵たちに向かい、このままではすまないかもしれないと心配な胸の内を明かす。

そんなある日、笹川一家の境内で奉納相撲大会を開いていたが、元力士で三段目までつとめたことがある飯岡一家の子分が一人勝ちをしてしまう。

子分は、目の前にいた富五郎をあざけりながら、積み上げていた酒樽を独り占めして帰ろうとするので、堪忍袋の緒が切れた富五郎は、自らも回しを締め、その子分と対戦する。

結果は、富五郎が勝ち面目を保つ。

この勝負を観ていて喜んだ勝んべ、権太は、その夜、料亭で浮かれ騒ぐ。

富五郎は、別室で八千草とともにしっぽり飲んでいたのだが、急に今までにぎやかだった勝んべたちの部屋が静かになる。

そこに、勝んべと権太が突然現れた神楽獅子にさらわれたとの知らせがある。

富五郎はすぐに、飯岡一家の仕返しに違いないと、油断していた自分を責める。

二人が助五郎一家に誘拐されたと知った笹川組の子分たちはいきり立ち、すぐさま殴り込みに行こうと、武器がある倉に集結するが、長持ちの上に座って待っていたのは繁蔵だった。

繁蔵は、自重するよう、子分たちを叱りつける。

一方、誘拐された勝んべと権太は、政吉が預かると聞いた助五郎は、又よけいなことを…と苦虫をかみつぶしていた。

その夜、けがをして奥の部屋に寝かせられていた勝んべと権太がいる政吉の家に独りやって来たのは、富五郎だった。

家に上がり政吉と対峙した富五郎は、自分が軽率な行動をとったばかりに、お前さんに迷惑をかけてしまったと頭を下げ、今夜中に二人の子分を返してくれないかと頼む。

政吉は承知しながらも、このことを俺の親分が知らなければ良いが…と心配する。

後日、無事、笹川組に戻って来た勝んべは、佐吉を呼び出すと、なぜかいきなり羽織を着せる。

そこに現れたのは岩松だった。

訳が分からないまま、佐吉が招かれた部屋に向かうと、そこには白無垢の花嫁衣装を着たお静が待ち受けていた。

繁蔵らが仕組んだ佐吉とお静の祝言だった。

黙っていると、決して佐吉は、お静と一緒になろうとしなかったからだ。

仲人は、繁蔵夫婦がつとめ、繁蔵自らが「高砂や」を歌い始める。

祝言の席には、岩松も平手造酒も出席していたが、その時、突然乱入して来た助五郎が、十手を振りかざし、岩松はお尋ね者なので、この場から引っ括ってゆくと言い出す。

祝言の最中に乗り込んでくるとはと、平手が助五郎が抗議するが、助五郎は耳を傾ける様子はない。

岩松は覚悟を決め、静かにその場でお縄を受けて部屋を後にしながら、最後のお願いとして、繁蔵親分の「高砂や」を続けてくれと頼む。

うなずいた繁蔵は、助五郎に引かれてゆく岩松の背中に向けて、再び「高砂や」と歌い始めるのだった。

翌日、遠丸駕篭に乗せられ、運ばれてゆく岩松の姿があった。

もちろん、笹川一家を挑発して、先に手を出させようとする助五郎の策略だった。

勝んべと共に、その行列を待ち伏せていた政吉の所に密かに近づいて来た繁蔵は、やめろと無言で制止する。

そこへちょうど遠丸駕篭やって来たので、笹川繁蔵と佐吉は、その前に進み出て最後の別れをする。

繁蔵は、今後の路銀として金を岩松に渡すが、それを観た助五郎は、咎人に慈悲をかけることはならねぇと金を取り上げてしまう。

その態度に切れた佐吉は再び刀に手をかけようとするが、繁蔵が止める。

岩松は駕篭の中から、親分の恩は、障害胸に刻んでめえりやすと頭を下げる。

遠ざかってゆく岩松の駕篭を見送った繁蔵、佐吉、勝んべの三人は、その後、帰路につくが、人気のない林の前にきた時、急に草むらから雀が飛び立ったので、繁蔵は子分たちに注意を喚起する。

その直後、草むらの中から数人の暴漢が襲いかかってくる。

助五郎一家の待ち伏せだった。

なんとかその場は切り抜けたものの、度重なる助五郎一家からの嫌がらせを肝に据えかねた佐吉は、家に帰り着くなり、繁蔵に、もういい加減、助五郎一家との決着をつけましょうと詰め寄る。

他の子分の意見も聞いた繁蔵だったが、富五郎も夏目の新助もやるべきだと意見する。

しかし、繁蔵は、今こちらから動けば、助五郎の思うつぼで、奴は持っている十手に頼って、こっちを潰す算段をしているのだと言い聞かすのだった。

その後、助五郎は、川を勝手に止めて干潟の方へ水を導き、干潟を水浸しにしようと企んでいることが分かる。

その工事の様子を発見した勝んべは、急いで組に知らせに走ろうとするが、すぐに助五郎一家に見つかり、組に戻って来た時には、全身斬られて虫の息だった。

息を引き取った勝んべを前に、決意を固めた繁蔵は、女房のお鶴に、密かに十人分だけの準備の支度をするよう命じ、子分たちを集めると、自ら指名した十人だけで殴り込みに行くと言い出す。

しかし、その指名の中に自分の名がなかった佐吉は怒りだす。

繁蔵は、今夜は十五夜だったな?江戸で育ったお静さんに見せてやれと佐吉を諭す。

十人で出かけた繁蔵は、中山誠一郎の名を使って木戸を開けさせると、にわかになだれ込み、斬り合いを始める。

しかし、殴り込みに気づいた助五郎は、二階の窓から一足先に逃げ去っていた。

肝心の相手に逃げられてしまっては作戦は失敗だった。

このまま地元に居座れば、自分たちが勝手に助五郎一家を奇襲したことになり、笹川一家そのものが潰れされかねない。

最初からこうした可能性を考えていた繁蔵は、殴り込みに加わった富五郎らを従えて、しばらく国を離れることにする。

それを見送る佐吉に、繁蔵は、何があっても耐え忍び、勝手なまねをするんじゃないと釘を刺すのだった。

一方、度重なる反抗的な態度にいら立っていた政吉から、またもや意見された助五郎は、もう二度と、この家の敷居をまたぐな!と政吉を追い出してしまう。

政吉をお払い箱にした助五郎は、いよいよ本格的に干潟に手を付け始め、飯岡組の縄張りである川の西方向にだけ水を流すようにする。

これには、笹川の方の農民はたまったものではなく、中山のいる代官所に訴えに行くが、逆に追い返されるだけだった。

助五郎は、自分に盾を突く干潟の町民たちを捕縛し始める。

それに抗議した干潟の庄吉の杖も奪って川に放り込む始末。

その後、庄吉の姿が見えなくなったと、娘のお滝が、笹川組に相談しにくる。

話を聞いていた夏目の新助は、助五郎の所を探る方が早いかもしれないと当たりを付ける。

その助五郎の屋敷では、八千草が、中山誠一郎に、またしても襲われそうになっていた。

そこに一人乗り込んで来た新助は、刀で中山を脅し付け、八千草の危機を救うが、その直後、背後から迫った助五郎によって刺し殺されてしまう。

新助の死骸は、翌日、助五郎に抵抗した町人の遺体と共に、道ばたに捨てられていた。

義父を殺された政吉は、助五郎に話を聞こうと出かけるが、自分を疑っているらしいと気づいた助五郎は、もう、こっちから杯を返してやらあと、政吉に引導を渡すのだった。

父新助の死後、しばらく笹川一家に身を寄せてた政吉の妻お光だったが、自分はやはり飯岡の人間になったので飯岡一家に帰ると、お鶴に挨拶をする。

そこへやって来た八千草も、自分のために、新助が犠牲になったこと悔やみ、お鶴とお光に謝罪する。

その後、忠治のいる土地を目指して旅を続けていた繁蔵の元に駆けつけて来た板割の浅太郎が、佐吉から忠治親分の所に送った手紙を持ってくる。

手紙の方が先に忠治の所へ着いたのだという。

手紙を読んだ繁蔵は、新助が殺されたことを知り、急ぎその葬式に帰ってくる。

繁蔵は佐吉に、身内を全部集めるよう命ずる。

その場にいた八千草も、自らの責任を感じていたので、何か手伝わせてくれと頼むが、これは男と男の果たし合い、女の出る幕じゃねえと繁蔵はきっぱり断る。

富五郎が政吉の家に乗り込み、果たし状を渡す。

寅の刻、場所は香取河原でと言う内容だった。

受け取った政吉は、明日は互いに敵味方、遠慮できねえぜと悲しそうに伝える。

政吉から果たし状を受け取った助五郎は、向こうは香取川を下ってくるつもりに違いないから、こちらは岸で待ち受けて鉄砲を撃ち込んでやろうと言い出す。

あまりに卑怯な作戦に驚いた政吉は、それだけは止めてくれと頼むが、助五郎が聞かないので、逆縁ではございますが、盃、こちらから返させていただきますと頭を下げ、出てゆこうとする。

すると、にやりと笑った助五郎がふすまを開けさせる。

隣の部屋を観た政吉は、そこに、お光と赤ん坊の朝太郎が捕まっているのを観て仰天する。

お光は、気丈にも、早く行って!笹川の親分さんに知らせて!と叫ぶが、政吉は動けなくなってしまう。

その頃、笹川組では、佐吉が、平手先生に知らせないと後々恨まれると進言していたが、繁蔵は、決して先生には知らせるなと釘を刺す。

その平手造酒は、又左衛門の家で、江戸から届いた手紙を読んでいた。

それは、千葉周作からのもので、そろそろ江戸に帰ってこないかと誘う内容だった。

平手は、薄々事情を知り寂しげにしているお咲に、一緒に江戸に来てくれるか?又左衛門には自分から話しておくからと伝え喜ばせる。

江戸に帰ることにした報告をしに、その足で笹川組に向かった平手だったが、中はもぬけの殻、樽酒などが置いてあることから、すぐに殴り込みに全員でかけたと知った平手は、奥の部屋で独り仏壇に向かっていたお鶴に、なぜ俺を呼んでくれなかった?と詰め寄る。

そして、お先坊には、よろしくいってくれと言いおくと、玄関口の酒樽から酒を柄杓で飲み、河原へ向かってひた走りだす。

一方、助五郎の屋敷の倉に閉じ込められていた政吉、お光、朝太郎を救いに来たのは八千草だった。

見張りの目を盗み、扉の鍵を開けた八千草に女房子供を八千草を託した政吉は、急いで川に走る。

平手は、馬に乗って駆けつけていた。

川岸に潜んでいた助五郎は、鉄砲を撃ち込んだ後生き残った奴は、中山様が捕まえてくださるとほくそ笑んでいた。

そんな香取川を一艘の小舟が上っていた。

必死で櫂をこいでいたのは政吉だった。

政吉は、「岸につけるんだ!岸につけろ!」と叫びだす。

その声を聞いた繁蔵は、異変を察する。

川岸に潜んでいた助五郎もその声を聞き、すぐに鉄砲を発射させる。

その銃弾が、政吉の肩口を貫く。

繁蔵は、後方に連なっていた船に方向を変えるように命ずる。

小舟の中に倒れた政吉は、うちの親分を許してやってくんねえとつぶやきながら息を引き取る。

一方、出立しようとしていた中山誠一郎の代官屋敷の前には、国定忠次の一味が集結していた。

河原では、助五郎一家と笹川一機の壮絶な喧嘩が始まっていた。

そこに駆けつけて来た平手造酒は、斬り合っていた繁蔵に、なぜ俺を呼ばなかったと声をかけながら、剣を抜く。

そんな平手に繁蔵は、こんなやくざ同士のけんかに、先生のような方が関わっちゃいけねえと止める。

それでも、平手は、助五郎一家の連中に斬り掛かってゆくが、徐々に咳き込みだし、体力を急速に失ってゆく。

やがて、窮地に立っていた繁蔵を救おうと飛び出した平手だったが、敵の銃弾に倒れてしまう。

その平手を抱き起こした繁蔵は、親分、俺は死なんよと笑う平手に、お咲坊に心配をかけちゃいけねえと笑い返す。

平手は、親分が関東一の親分になるまでは死なねえんだと言いながら息を引き取る。

そこに、助五郎が斬り掛かって来たので、繁蔵は積年の恨みを込めて叩き斬る。

そこへ、国定忠次が駆けつけてくる。

河原にはむしろが敷いてあり、その上に横たわっていたのは、政吉と平手造酒の二人の犠牲者だった。

繁蔵は、平手の手を握りながら、俺が一人前の男になるまで、生きていてほしかったと悔やむ。

そんな繁蔵に向かい、これで干潟八幡も明るくなったんだと励ます忠治だった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

全盛期の東映のオールスター時代劇。

市川右太衛門、片岡千恵蔵両御大に、中村錦之助、東千代之介、若山富三郎、大川橋蔵と言った人気若手、それに、美空ひばり、大河内傳次郎、月形龍之介という豪華な顔ぶれ。

悪役の常連、進藤英太郎、山形勲、薄田研二、吉田義夫なども顔を揃え、里見浩太朗などは、まだ駆け出しの時代である。

そこに、大友柳太朗の豪快な平手造酒が加わるという贅沢さ。

話は、房総を舞台に、勢力を競い合っている二つのやくざの抗争劇なのだが、人情派の笹川繁蔵に対し、悪辣非道な飯岡助五郎と、まさに劇画的に分かりやすい善悪のキャラクター付けとなっているため、シンプルな勧善懲悪劇として、今観ても退屈せずに楽しむことができる。

まずなんと言っても、いくら善人とは言え、市川右太衛門御大がやくざを演じているという設定が興味深い。

いかなる敵方からの嫌がらせにも、耐えに耐え…と言う辺りが、後年の任侠映画のパターンを連想させる。

御大二人が中心の作品なので、美空ひばりは、話に花を添えると言った程度の印象なのだが、中村錦之助の方は、準主役と言っても良いような、なかなか重要な役所として登場している。

大川橋蔵も、出番こそ少ないながら印象に残る役柄で、東千代之介よりも役得だったかもしれない。

大友柳太朗の平手造酒も、出番はさほど多くないのに印象に残る得な役柄で、当時の人気者たちに対する気の使いようが分かる。

ひばりが出ていると言えば、堺正章のお父さん堺駿二も当然登場しており、こちらも最後は見せ場が用意してある。

シンプルな設定、展開、豪華なキャスティング、胸の空くクライマックス…、まさに娯楽時代劇の典型のような作品である。