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超強台風

2010年、中国映画、フォン・シャオニン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

カメラが、太陽から徐々に地球に接近し、その表面、中国の南に発生した巨大台風の雲の中に入ると、そこには、家の入り口の階段に、出目金が一匹入った金魚鉢の隣りに座った幼児がいた。

幼児は、海辺で行われていた写真撮影会を観ていた。

その近くで、熱心にシャッターを押していたのは、アメリカ人カメラマンだった。

彼は、中国の漁船が出港して行く様子などを興味深気に撮影していた。

やがて、アメリカ人カメラマンが、イハイルオ島に向かう定期便に乗っていると、天候不順のため、今後出航する船は全便欠航する。この船も港に引き返すとのアナウンスがある。

それを聞いた一人の男が、船長室に棒を持って怒鳴り込んで来る。

島にいる女房が産気づいて倒れたので、どうしても、島に帰らなければ行けないと言うのである。

しかし、船長が、あなたがやっている事は犯罪行為だと注意すると、男は棒を落とし、謝罪する。

その頃、島で唯一の診療所に残っていた女性看護士(リウ・シャオウェイ)は、終了時間なのにドアを叩く音がしたので、何事かと開けてみると、下半身血まみれの夫人が転がり込んで来る。

温州市

港に着いた船から降ろされた先ほどの男、人夫の夫は、船長の連絡で駆けつけて来たパトカーに乗せられている所だった。

アメリカ人カメラマンは、ノートパソコンを使い、ネット友達に「台湾から、藍鯨(ランジン)を追って中国に来た」と通信していた。

その頃、市内の市場で、おばさんの服から財布を抜き取ろうとしていたスリは、その手を見知らぬ男に押さえられる。

やがて、警官が駆けつけ、もみ合っている2人の男を制すると、被害者のおばさんに、どちらの男がすったのか?と聞くと、おばさんは少し考え、スリを捕まえた男の方を犯人だと指摘したので、2人とも警察に連行される事になる。

警察に着いた2人は、廊下の椅子で待たされる事になるが、スリが「俺のシマを荒らすな」と嘲ると、もう一人の男も、あそこは自分のシマだし、全市内がシマだと言うので、聞いていたスリは呆れてしまう。

そこに駆けつけて来たのが、一人の男の話を聞いてあわてて駆けつけて来た警官の上司たちで、男の手錠を外すと、平謝りに詫びる。

警官を連れて来たのは市長の秘書で、スリと間違われ、捕まっていた男は、本物の市長(ウー・ガン)だったのだ。

市長は、あの場合、2人とも連行するのは正しいと、連れて来た警官の行為を弁護してやる。

秘書から、台風が400kmの所まで接近していると知らされ、対策本部に向かう市長の姿を、スリは唖然とした様子で見送っていた。

台風は、藍鯨(ランジン)と名付けられた事が、対策本部で報告される。

その頃、イハイルオ島の診療所では、本土に帰った先生に電話をしていたが、天候不順で船が結構して戻れないと知り、愕然としていた。

妊婦の容態は悪く、とても、看護士の彼女の手に負える患者ではなかったからだ。

妊婦の夫に連絡出来ないのかと尋ねると、妊婦が携帯を差し出したので、それで呼び出してみるが、相手の携帯には電源が入っていないと言う声が返って来るだけだった。

対策本部では、市長たちを前に、藍鯨(ランジン)の状況が説明されていた。

秘書は市長に、120万の人口を持つ温州市に避難命令を出せば、38億元の損害が出る恐れがあるし、10回警告しても9回は空振りだと、慎重な対応をするように促す。

藍鯨(ランジン)は330kmの距離まで接近していた。

市長は、判断をするために、気象学者の到着を待ちわびていたが、到着したとの知らせを受け、表に迎えに行く。

車から降り立ったのは、中年女性チェン(ソン・シャオイン)だった。

チェンは、握手をするため手を差し出した市長より、目の前を飛んで行った赤いレジ袋の行方が気になるようで、その動きを追っていたが、やがてレジ袋は、アメリカ人カメラマンに拾われゴミ箱に捨てられる。

その後、チェンは、あわてて市長と握手すると、上昇気流の事が気にかかってと、非礼を詫びる。

市長が、小学校の時に習った事があると、基本的な知識を披露すると、チェンは、あなたは小学校の時から成績が良かったと褒める。

自分の事を知っているので、驚いた市長は、チェンの顔を改めて良く確認し、自分の小学校時代の教師だったチェン先生だと気づき感激する。

対策本部に到着したチェンは、パソコン通信の友達から、藍鯨を追ってグアムから来たと言う、ハンドルネーム「アホウドリ」からの通信を受け取っていた。

チェンは、過去5回、この地には台風が上陸した事があり、今回も余談は許さないと発表するが、今、堤防の水を放水すると、その下流に作りかけている経済特区地域が全滅してしまうと言い出した男が、上陸する確立はどのくらいなのかと聞いて来る。

チェンは、五分五分だと答える。

話を聞いていた市長は、例え9回空振りしても、1回ミスをするより良い。各関係者は管理業務を徹底するようにと、避難準備司令を出す。

その指示を聞いたチャン先生は「満点よ」と満足するのだった。

市長は、旧市街の視察に行くと言い出し、チェン先生も、久しぶりに父親の墓参りに行きたいと同行する事になる。

その頃、市中警備に出かけようとしていた警察の上司は、部屋から聞こえて来る男の泣き声を聞きとがめ、何事かと部下に聞くと、船で騒ぎを起こしたと言うので、釈放してやれと命ずる。

警察から放免された夫は、港に戻ると、そこにいた漁民に金を差し出し、島に渡ってくれないか?女房の携帯番号が変わってしまい、新しい番号を自分の携帯に入力しようとしたら故障してしまって連絡が取れなくなったのだと頼むが、漁民は、台風は来ないから、もうちょっと待っていれば良いとなだめるだけで相手にしてくらなかった。

市長の視察に同行していたチェン先生は、小学校時代、チョークの箱にカエルを入れたでしょう?あれ以来、チョークの箱を開けるのが怖くなったわと冗談を言う。

市長は、台風は毎年来るが、その度に逃げていたら被害が大きくなる。避難勧告を出す鍵は、進路予想ですとチャン先生に協力をあおぐ。

チェン先生も、予測が間違っていたら、その代償は血…と呟く。

50年ぶりの父親の墓参りをしたチェン先生は、50年前、台風で決壊寸前だった土手を塞ごうと、大勢の男たちが土嚢を担ぎ、自ら海に飛び込み、人柱のようになって4000人以上の人が亡くなった時の悲劇を思い出していた。

同行していた市長は、それでも、人名がかかる命令を出す時は慎重になると考えていた。

とあるレストランにやって来た市長は、そこで、町長が昼間からパーティに出席して酒を飲んでいる姿を目にする。

市長がやって来たのを見た町長は、一人娘の結婚を祝うために、パーティをやっているのだと恐縮しながら詫びる。

話を聞いた市長は、町長の娘の前に来て、ワインを自分もつぎ、出席者に乾杯の音頭を取って、自分も一杯飲んで祝った後、台風が接近しているので避難するよう全員に促す。

その後、店の外に町長を連れ出した市長は、その場で町長の職を解き、代わって、助役が市長代理をするように命ずる。

その頃、夫は、島で苦しんでいる女房ヤオメイに電話をしようと、公衆電話から電話をしていたが、見知らぬ女にかかるだけだった。

同じ公衆電話の横で電話をしていたのは、あのアメリカ人カメラマンだった。

町長の職を解かれた父親の事を知った娘は、自分のためにこんな事になってごめんなさいと謝っていたが、父親は公開していないと答える。

港にやって来た市長は、漁民に避難するよう指示するが、漁民は自分の船を岸に繋ぎながら、長年の経験で、空がゴロゴロ言っている内は、台風は来ないものだとのんきに言い聞かす。

その頃、藍鯨(ランジン)は、低気圧と合体、勢力を増大させていた。

市長秘書は、警察と軍隊が、市長の指揮下に入るよう命じていた。

対策本部に戻って来た市長とチェン先生は、他の出席者たちと共に、50年前の1956年、台風が同市を襲った時の記録フィルムを観る事にする。

大勢の男たちが、土嚢を担ぎ、崩れた土手を塞ごうと突進していた。

最後には、大勢の男たちが土嚢を担いだまま海に飛び込み、高潮の波に飲み込まれて行った。

それを見ていたチェン先生は、その時犠牲になった自分の父親の事を思い出し涙する。

フィルムは、急に途切れて終わる。

市長は、この災害の時、撮影者も含め、4005名もの犠牲者が出たと、出席者たちに解説をし、人命は何物にも代えられないので、人命救助を優先すべきだと力説する。

それを聞いていた出席者たちは、一斉に賛成の挙手が出る。

しかし、秘書は、避難命令を発するには、もっと上の指示を仰がねば…と市長に耳打ちする。

しかし、市長の指示で、市民たちは一斉に避難を始め、雨の中でその様子をレポートするニュースがテレビで流れ始める。

夫は、まだ、公衆電話から、島の妻に電話をかけようと試みていたが、何度やっても、同じ別の女の所にかかるだけだったので、がっかりしていた。

一方、職を解かれた町長は、避難をおっくうがる年輩者を助けに行くと家を出ようとしていたが、もうお父さんは町長じゃないのよと、娘から止められると、それでも、仲間だと言って飛び出して行く。

公衆電話の所で呆然と立ちすくんでいた夫の姿を見た通りすがりの女が、危険だから早く避難した方が良いと声をかける。

夫が事情を説明すると、女は、114の番号案内に問い合わせてみたら?と教えてくれる。

114に電話をすると、島で唯一の診療所の電話番号はすぐに判明し、電話に出た看護士は、なぜ今まで連絡してくれなかったのかと怒りながらも、ヤオメイの声を聞かせてくれる。

対策本部に付きっきりの状態の市長は、カップラーメンで空腹を満たしていた。

ニュースでは、港近辺から避難する人々や、赤い旗を掲げ、駆け足前進する武装警官の様子などが映し出されていた。

秘書は市長に、藍鯨(ランジン)は、コースを南に変えたと報告し、演習は中止にしても良いのではないか?今、中止すれば、損害は少なくてすむと助言する。

避難命令を「演習」と言う名目にすれば、後から責任追及をされる恐れもなくなるはずとの配慮からで、過去、台風が進路を変えて反転した例はあるといまだに力説しているチェン先生と2人で話された方が良いのではないかと、判断の転換を示唆する。

市長と一緒にテラスに出たチェン先生は、先生は今回の台風に関して、冷静ではないのではないかと指摘され、自分は、30年間気象を学んで来たが、今南に向かった藍鯨(ランジン)は、きっと海洋気流に乗って、又反転すると、床に図を描きながら説明する。

それを見た市長は、先生の小学校時代のあだ名を覚えていますか?と問いかける。

「意固地」だったわね。あなたが付けたのよと、チェン先生も苦笑する。

その頃、島の診療所では、出産間際の妊婦から、赤ん坊を取り上げようと看護婦が身構えていたが、赤ん坊が横位で危険な状態である事を発見し、その事を、又電話をして来た夫に告げる。

夫は、それを聞いてショックを受け、妻のために買っていた服の包みを落としてしまう。

その頃、無人になったレストランに侵入していたスリは、置き去りにされた酒や鶏の丸焼きを見つけ、嬉しそうに飲み食い始めていた。

藍鯨(ランジン)は、またもや進路を反転させ、温州市に進路を取る。

それを知った市長は、上からの避難命令の連絡に、すでに避難はすんでいると落ち着いて答えると、チェン先生に感謝するのだった。

市長は、ダム係に、放流の準備をするように命ずるが、ダム係は経済特区を犠牲にすることを残念がる。

アメリカ人カメラマンは、港付近に車をロックすると、接近して来る台風の目を撮ろうと待ち構え、それをパソコン仲間に通信していた。

パソコン仲間は危険だから逃げろと警告して来るが、カメラマンは拒否する。

そんなカメラマンの車に、あの一人逃げ遅れていた夫が乗り込んで来る。

会議室に詰めていた市長の元に、港にいた元町長から電話が入り、100人もの漁民たちが、船を捨ててはいけないと、避難命令を拒否しているとの連絡が入る。

市長は、すでに藍鯨(ランジン)の風力は13級に強まったので、避難させるよう命ずる。

チェン先生は、御前10時に上陸すると市長に教える。

島の診療所では、出血が止まらない妊婦を前に、看護士が途方に暮れていた。

町では、逃げ遅れた老人たちを避難させていた。

港では、漁民たちが、船に乗り込もうと集団で向かっていたが、その前に立ちふさがった元町長は、落ちていた棒を振りかざして、死ぬなら俺も死ぬ!と絶叫しながら阻止しようとしていた。

その時、車が到着し、コートを着た市長が降り立つと、漁民たちの先頭の所まで来ると、コートを脱ぎ捨て、片膝を地面に付けて漁民たちに跪く。

先頭にいた漁民が、自分たちはただの漁師に過ぎないのに…と、市長の態度に驚くと、市長は、あなた方は自分の家族でもある。船は失っても、その内、金を稼ぐ事は出来るが、命を失ったら二度と戻れないのだと説得する。

対策室にいたチェン先生は、藍鯨(ランジン)の風力が14級に増大したと報告する。

市長は、近くに避難場所はないかと元町長に聞き、元町長は近くの場所を教えるが、その時、荒れた海に一隻の船が出ている事に気づいた漁民が、それを追って船を出す。

船を操縦していたのは、あの妊婦の夫だったが、その船に横付けし、乗り込んで来た漁民は、包丁を振りかざして威嚇する夫を突き飛ばすと、操舵輪を操って、小舟を港に向かわせる。

漁民は、夫が最初に、金を渡して島へ行ってくれと頼んだ男だったので、互いに顔見知りだった。

避難所の所に連れて来られた夫は、市長から訳を聞かれ、島でお産をしている妻が危険な状態なのだと泣いて説明する。

すぐさま、携帯で、島の診療所に電話を入れた市長は、一人で苦闘している看護士を褒め、数万の命も、秘湯の命もおろそかにはしない。すぐに助けてやると連絡する。

事情を電話で聞いたチェン先生は、台風の目は直径20kmほどあり、その中に入った時、ヘリを飛ばせば救助が出来るのではないかと教えたので、それを聞いた市長は、これが終わったらごちそうしますと感謝する。

島にいた軍隊から、妊婦と同じO型の兵士が選ばれ、輸血の準備に供えるが、対策本部にいたダム係が、島の看護士には輸血の免状がなく、彼女が輸血をすると違法行為になると、電話を通して市長に進言する。

しかし、市長は、人の命を救う事が違法であるはずがなく、自分は看護士の輸血行為を許可すると命令を出したので、その通話を聞いていたチェン先生は「また、満点よ」と感心する。

かくして、看護士は、診療所に集まって来た兵士たちから提供された血を、妊婦に輸血する。

港で台風を待ち受けていたアメリカ人カメラマンだったが、さすがに接近して来た強風には逆らえず、車に乗り込む。

市長が漁民たちと逃げ込んだ避難所には、あの金魚鉢を持った幼児も退避していた。

酒に酔ってレストランで寝込んでいたスリも、台風の接近を羽田で感じ目をさますと、誰もいなくなった外に飛び出し呆然とする。

そのスリを壁板の隙間から見つけたのは、避難所にいた漁民だった。

強風と高波で、港に置いてあった車がひっくり返り、スリは、横転したタンクローリーの下敷きになる。

それを避難所で見ていた市長たちは、助からないと感じたが、スリは、前輪の間に身体を挟まれる格好で、何とか生き延びていた。

しかし、タンクの一部からガソリンが漏れ出していて危険な状況だった。

避難所でその様子を見ていた面々は、救助の手だてがないと悔しがっていたが、その時、扉を開け、市長が一人で飛び出して行く。

さらに、その市長を追いかける形で、元町長や漁民たちもタンクローリーに向かって走る。

それを見つけたスリは感動して涙する。

タンクローリーの近くの電線が切れ、垂れ下がって火花を散らし始めたので、危険度はさらに増す。

駆けつけた全員で、何とかスリの身体を外に出そうとするが、巧くいかない。

スリは、もう俺の事は良いから、みんな逃げてくれと頼むが、市長は、側に落ちていたバールを拾い上げると、それでタイヤを潰し、何とかスリの身体をみんなで引き上げた時、切れた電線から、ガソリンが混ざった地面に放電が起き、皆が避難所に逃げ始めた背後で大爆発が起きる。

間一髪避難所に戻って来た市長は、元町長にこの避難このタイプを聞く。

元町長は、ここはBタイプで、17級の台風まで持つはずだと答えるが、そこに、カメラマンが乗った車が突っ込んで来る。

水が避難所にも流れ込んで来たので、市長は、老人や子供を優先して階段の上にあげるように命ずる。

妊婦の夫は、車の運転席からカメラマンを助け出す。

対策本部にいたチェン先生は、藍鯨(ランジン)の風力が、17級から18級に増大した事を報告する。

会場に発生した巨大竜巻に巻き上げられた船が、港に落ちて来る。

その時、幼児が、避難所の机の上に置いていた金魚鉢を取りに戻ろうとしたので、市長が止める。

もう1階部分は水浸しだったからだ。

そこへ、竜巻から落ちて港を滑って来た船が扉を突き破って来る。

カメラマンは、1階部分の水の中に入り、取り残された人間を救おうとするが、そこへ外から鮫が入り込んで来る。

それを見た市長は、自分は昔特殊部隊にいた事があると言いながら、水の中に入ると、棒で鮫を叩き始める。

やがて雨は止み、台風の目に入った事が分かるが、市長たち避難所にいた面々は、避難所の屋上に立ちすくんでいた。

周囲の港は、水に浸かっていた。

カメラマンは嬉しそうに、台風の目の様子をカメラに収め始める。

市長は携帯で電話をしようと取り出すが、水に浸かっており使い物にならなかったので、誰か携帯を持てないかと呼びかけると、全員、水出ダメになった中、大量に盗品の携帯を持っていたスリが、防水携帯を差し出す。

市長は、その携帯で対策本部を呼び出すと、直ちにヘリを島に飛ばすよう命じる。

チェン先生は、台風の目が通り過ぎるまで、20分しか時間がないと教える。

ただちにヘリが飛び立つ。

ダムの水位を確認しようとした市長だったが、もう携帯の電池が切れていた。

別の避難所に逃げる方法はないかと聞く市長に、元町長は、別の避難所は3kmにしかないと告げる。

島にいた軍隊は、妊婦を車に積み、ヘリが来る海岸まで運ぼうとしていたが、倒れた大木が道路を塞いでいた。

車を降りた兵士たちは懸命に大木を動かそうとするが、残り時間がないと判断した看護士の指示により、担架を手で持って海岸まで運ぶ事にする。

一方、海岸上空で待機していたヘリは、妊婦が到着しないうちに、期間命令が届く。

しばし躊躇していた操縦士だったが、やがて諦め、帰路につく。

遠ざかって行くヘリの機影を見ながら、必死に担架に付き添い、浜辺を走っていた看護士は、途中で倒れてしまう。

その時、接近して来る兵士たちの姿に気づいたヘリの操縦士は、ヘリを海岸に戻させる。

妊婦と看護士を乗り込ませたヘリは、急発進をして陸に向かう。

避難所の屋上で、鉄の階段が崩壊したのでもう下には戻れなくなったと元町長から聞いた市長は、ロープかなにかないかと探させようとするが、その時、元町長が海の方を嬉しそうに指差す。

人民解放軍の救援ボートが、多数、接近しているのを見つけたのだった。

空港に向かっていたヘリだったが、吹き返しの風が強まって来たので、急遽、近くの空港に着陸地点を変更せよとの指令を受ける。

着陸したヘリは、格納庫の中に入るが、突風の中、妊婦を病院まで運べる車はなかった。

対策本部に戻って来た市長は、事態を知ると、軍関係者を呼び、軍の中で一番重量がある車は?と聞く。

軍が差し向けた装甲車で、妊婦と看護士を輸送する事になる。

チェン先生は、もうすぐ台風の目が、ダム湖に接近すると発表する。

ダムは、藍鯨(ランジン)の第一波は耐えており、関係者は、第二波も耐えうるのではないか?と楽観論を述べるが、超強台風である今回の藍鯨(ランジン)の事を考えると、100%安全と言い切れなければダメだと言う市長は、放水を決断する。

ダム係は、放水の犠牲となる経済特区として開発していた地区は、市長がこれまでの政治生命をかけていた所なのに…と悔しがり、市長も、昨年、台湾も交えた会談で、10億元の経済効果があると見込まれていた場所だけに悔しいと答えながらも、人命には変えられないと放水を命じる。

海岸添いの道を突き進んでいた装甲車は、遅い来る高波を何とか避けながらスピードを上げていた。

ソファで仮眠していた市長は秘書から電話だと携帯を渡される。

電話は病院に着いた妊婦の夫だった。

夫は、「市長…」と言いながら泣き出す。

その直後、元亀に生まれた赤ん坊の泣き声が聞こえて来る。

その泣き声が聞こえる携帯を持ち上げ、市長は誇らし気に対策本部全員に聞かせる。

その場にいた全員が拍手をし始める。

漁民たちは、水が引いた海辺に横転する自分たちの船を見て呆然としていたが、一人、妊婦の夫を救った漁民は、生き残っていた愛犬の姿を発見し、喜んでいた。

アメリカ人カメラマンは、嬉しそうに台風一過の様子を写真に収めていた。

自宅を失った元町長は、車でやって来た市長の秘書から、新居が完成したら、ワインやビールで乾杯しようと言う市長の伝言を伝える。

町に視察に橋の上に来ていた市長は、近くで写真を撮っているカメラマンを見つけて、あれが先生のパソコン友達ではないのですか?と問いかけるが、ネットの友人は実際に会うと幻滅するものだからと言い、あえて近づかないとチェン先生は言う。

市長は、今回の台風に藍鯨(ランジン)と名付けた理由を尋ねるが、チェン先生は、台風には10回まで決まった名前がつけられる事になっており、大きな災害を起こした台風の名前は削除される事になっていると教える。

つまり、藍鯨(ランジン)の名前も、今回限りでなくなると言う事だった。

人間が自然破壊を止めない限り、今後も、こうした自然災害は後を立たないだろうと言い残し、チェン先生は、近づいて来たカメラマンとすれ違う形で去って行く。

市長と挨拶をしたカメラマンは、今の人は誰?と聞くが、市長は、自分の小学校時代の先生だと答える。

カメラマンは、公園で遊ぶ幼児たちの姿に目を細めていた。

金魚鉢の幼児は、又、玄関前の会談に腰を降ろして海の方を眺めていた。

その幼児の姿からカメラはぐんぐん引いて行き、地球を離れると、太陽の方まで来る。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

珍しい中国製のディザスター(災害)映画である。

日本やハリウッドの映画などを見慣れている目からすると、おそらく、中国では有名な俳優なのだろうが、見知らぬおじさんとおばさんが活躍するだけで、若者らしき世代がほとんど登場しない展開がまず珍しく感じる。

おばさんの方は、おじさんの小学校時代の先生だったと言う設定らしいので、先生が50歳くらいで、市長の方が40歳くらいと言う事なのかも知れないが、見た目的には、ほぼ同世代のような印象。

この手の映画は、大体展開パターンが決まっているとは言え、登場する人間たちが全員良い人で、屈折した人物とか、悪者らしい人間がほとんど出て来ないので、お産以外には、人間ドラマの方でのサスペンス要素はほとんどない。

そのお産に絡む看護士は、何だか若い頃の宮本信子みたいだし、夫の方は、若い頃の小倉智昭みたいな風貌である。

この2人は、絶えず、泣いてわめくパニック演技に終始している。

一方、市長とチェン先生は、絶えず冷静で、互いの連係プレーで、迷う事なく人民を救って行くヒーローとして描かれている。

さらに、自己を捨て、互いに助け合う人民たちの姿とか、ピンチの時に駆けつける騎兵隊よろしくやって来る人民解放軍の勇姿とか、全体的にプロパガンダ色も濃い。

ただ、そう言う作り方は、中国映画と言う事で大体予測がつく範囲なので、取り立てて揚げ足を取る部分でもないだろう。

むしろ、日本映画やハリウッド映画にありがちな「ラブロマンス要素」などもきれいさっぱりないので、災害シーンだけを観たいと言うような「特撮ファン」にとっては、非常に好感の持てる作りになっている。

その災害シーンは、CG処理、記録フィルム、そして懐かしいミニチュア特撮で構成されているが、高波が押し寄せる港付近でのシーンは、ほとんどミニチュア使用である。

さすがに、車の類いは、ミニカーそのままと言った感じで、ちょっと興ざめしないでもないが、実写の人物がはめ込まれている所に気づくと、それなりに楽しめる絵になっている。

瓦の一枚一枚を作り込んだ建物の崩壊シーンなどはなかなかの出来である。

人間ドラマの陳腐さはさておき、非常にベーシックな「ディザスター映画」だと思って観ると、この作品は、それなりに良く出来ていると思う。

ちなみに、冒頭とラストで、カメラがワンショットで、地上から宇宙の果てまで移動するシーンは、有名な「パワー・オブ・テン」と言う作品からヒントを得ていると思われる。

CGのレベルは、日本より少し遅れているかな?と言った印象を受けた。