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アッシイたちの街

1981年、大映映像、山内久脚本、山本薩夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

下町の仲間で、ロックバンド「アッシイ」を作っている、町工場「早坂製作所」の次男坊早坂浩(江藤潤)、ラーメン屋の千葉(水島涼太)、学生の原田(新井康弘)、バフ屋の李(三木ヒロシ)、ターレット屋の小川努(奥田瑛二)たちは、少年院帰りのバーテンダー青木(森川正太)が、競馬で当て、飛行機代の半分を出すと言うので、全員、新島に遊びに来ていた。

昼は海で遊び、夜はバンド演奏をして休暇を満喫していた彼らだったが、アベック台風が接近していたため、東京への帰還が遅れることになる。

タイトル

組み立て部品を「アッシイ」と言う。

個人でやっている零細企業、早坂製作所の長男早坂茂(古谷一行)は、車で工場に戻って来るが、入り口付近の角で車の前に人が立っていたので、気をつけろと怒鳴りつけるが、停まった車の脇に倒れ込んでいたのが、お得意さんの横井(花澤徳衛)と分かると恐縮し、謝罪しながら、建物の中に案内する。

横井は、そこで作業中の品物を見ながら、自分の発注した物ではないと分かると、うちのはどうなっている?間に合わないじゃないかと文句を言い始める。

茂の母親、春(乙羽信子)が申し訳なさそうに、台風で、新島に行っている浩らが、4日間も足止めされてしまったもので…と言い訳をする。

横井は、仕事より遊びが大切と言うような相手には、もう仕事は頼めんなと呆れるが、ちょうどそこに、浩たちが帰って来る。

茂は、横井がいるのも無視して二階に上がろうとする浩を呼び止めるが、仕事の遅れのことを注意するが、浩は、ちゃんと働いていると言い返して来たので、それを聞いた横井は怒って帰ってしまう。

茂は、そんな浩の態度に切れ、つかみ合いの喧嘩になるが、そんな中、三男の隆(日比野新吉)は、気に求めない様子で中学に出かけて行く。

茂は、父親を早く失ったため、12の時から働き始め、母と弟、妹らを育てて来た男だっただけに、バンドなどを作って仕事に身を入れない茂にはかねてより苛ついており、もっと身を粉にして働け!と言い聞かすが、そんなのは人間じゃない。兎小屋のネズミだと浩はバカにする。

しかし、二人とも、今は喧嘩などしている場合じゃないと、春に諭される。

その後、自動車メーカーの大手「HOSSAN」に、部品を納入しに行った茂だったが、担当の林(橋本功)から、時間に遅れた。こっちは世界相手の大商いをやっているんだと文句を言われ、何度茂が謝罪しても品物を受け取らないとしなかったので、切れた茂は、「受け取れ!」と言いながら、品物をその場にまき散らし始め、「二度と来ないからな!」と捨て台詞を吐く。

大手の下請けには未来がないと悟った茂は、知り合いの佐川信次(三國連太郎)の会社に向かう。

工場の前では、佐川の娘の真理子(浅茅陽子)が、何やら、オブジェを溶接していた。

茂を迎えた佐川は、自分で食おうと思ったらノイローゼになるぞと忠告する。

茂が、1パンチ70銭みたいな下請け仕事では人間扱いされないとこぼすので、嫌だったら、工場畳んでしまえ!日本の下請けは世界一だと、どこかの新聞に出ていたぞと佐川は説教する。

茂は、うちのプレスの技術は良い所行っていると思うので、親父さんの所と組めば、良い仕事が出来そうなのだが、自分が描いて来た図面を見せるが、佐川は、息子が生きているのならともかく、今うちは、30人の給料を払うのがやっとだ。お前の力にはなれないと断る。

しかし、図面だけは置いて行けと言う。

茂が帰った後、父親に近づいた真理子は、言うこととやることが違うのね。いつもは、我が道を生きろとか言っているくせにとからかうと、佐川は、気があるのか?茂に…と佐川は驚く。

茂は、子供連れの和美(高橋惠子)とばったり出会う。

和美は、行きつけのバー「エデン」のホステスだったが、茂は以前から気があったのだ。

茂は、今の自分が進むべきか退くべきか迷っていることを打ち明け、それとなく和美の思いを聞くが、和美は、自分は今のままが良いわと答える。

その後、息子の和男を歯医者に連れて行った後、和美が「エデン」に行くと、バーテンの青木とママが給料の金額に付いてやり取りしていた。

客でごった返していたラーメン屋で、赤ん坊を背負いながら調理に励んでいた千葉は、原田が誘いに来たので、かきいれ時と言うのに、こっそり店を抜け出し自転車で逃亡してしまう。

それを知った千葉の妻は激怒する。

その頃、「早坂製作所」にいた春は、町内の婦人会の仲間、おろく(野村昭子)や美智子(中原早苗)たちと、昔この辺りで行われていた「ふいご祭り」を復活させようと言う話し合いをしていた。

「早坂製作所」では、少し知的ハンデがある正雄(斉藤建夫)と、ひろみ(佐藤万理)と言う姉弟にも働いてもらっていた。

そこに、茂が戻って来たので、おろくたちも帰るが、春は茂に、自動車工場の方へは、ひろみにウィスキーを持って行ってもらって詫びを入れたり大変だったのだと教える。

茂は、もう自動車の下請けは辞める。自分で考案した減速機で勝負すると言い出す。

ギターをつま弾いていた浩は、そんな兄の言葉を聞くと、そんなことを始めたって、試作機作った段階で、欠陥見つかったらアウトだと嘲笑する。

そこに、「アッシー」の仲間たちが浩を誘いに来たので、茂は、二度と寄り付くなと怒鳴りつける。

そんな所にやって来たのが佐川で、力になると言い出す。

そして、浩に対しては、お前が茂の片腕になるんだ。とにかく、5年間、がむしゃらに働くんだと指示する。

それを聞いていたアッシーたちは、佐川の考えに呆れた様子。

浩も、俺は逃げるよと答える。

佐川は、お前たちの父親が死んだ時、まだ12歳だった茂は、母親と一緒にリヤカーを曳いて機械を運び、その後何度も家出したけど、又帰って来ては働いて、お前たちを育てたんだと言い聞かし、浩の頭を叩く。

しかし、その後、アッシーたちは、河原で演奏を始める。

兄の浩を呼びに来た妹の美恵(友里千賀子)は、仕事が間に合うか心配していた。

演奏をしながら、やって来た美恵を見つけた努は、微笑む。

二人は付き合っていたのだ。

その後、発注した部品を持って工場にやって来た努に、茂は、自分が考えた図面を見せながら、お前は、俺が三度頼んだ仕事の内、二度送らせたなと、苦言を呈する。

しかし、気のない返事をして帰って行く努の様子を見た茂は、美恵に、あんな男と付き合うなと忠告する。

しかし、美恵は、夜道を帰る努の後を追って行く。

努は、君の兄さんを好きになれないと言うので、もう終わり?私達…、否!私は接待に嫌よと、美恵は努にすがりつく。

後日、茂は、バー「エデン」で横井を接待していた。

酔った横井は、バーテンの青木は、ここ6年の間に72回も仕事を換わったダメな奴だとからかうと、青木はむっとしながらも、自分は世界中の人に好かれたいし、そうなると言い張る。

浩は、二階の部屋でかねてより作曲していた新しい歌を完成していた。

浩は、ギターを抱えて、美恵のアパートに向かう。

浩も又、美恵のことを好きだったのだ。

そこに、保育所から息子を連れて美恵が帰って来る。

浩は、歌が出来たので、君に聞いてもらいたいと話しかけるが、美恵は子供が起きると迷惑がって、部屋の中に入ると鍵を閉めてしまう。

仕方がないので、浩は、美恵の部屋の横の階段に腰を降ろし、勝手に唄を歌い始める。

息子を布団に寝かせ、一緒に布団に入っていた美恵は、外から聞こえて来る浩の歌をじっと聴いていた。

その後、ドアを開けた美恵は、外にいる浩に、あなたと真面目に付き合う気持はないわと言い聞かし、お兄さんがどんだけ苦労しているか知っているの?今日も、無理して接待していたわと教えるが、浩は、あいつは焦って焦っておっ死ぬだけよと嘲笑する。

ドアを閉めようとすると、浩が部屋の中に入り込もうとするので、外に出た美恵だったが、強引に浩に抱きつかれキスをされたので、ビンタをして、柵を閉じ、突堤の部分に浩を置いて部屋に戻ってしまう。

ある日、春は、日頃世話になっている人たちを自宅に招き、ちょっとした飲み会を開いていた。

春自身は、おろく、美智子たちは、花笠音頭を披露してみせた後、自社製品の宣伝をちゃっかり話す。

いつしか、青木が「花」を口ずさみ始め、アッシーたちもそれに唱和して行く。

美恵も浩と一緒に唄っていた。

そうした中、程よく酩酊した佐川が立ち上がり、ちょっとしゃべらせろと言う。

自分は昔、城南地区一の仕上げ師で、戦後、ものがない時、豆電球のアンカーマシンを発明したのだと言う。

それは、クリスマスなどで点滅する飾り用の豆電球のことだった。

それは売れ、品川の地場産業にまでなった。

自分の息子は、工業高校を一番で卒業し、将来を嘱望されていたが、去年ぽっくり死んでしまった。良いこと尽くめなんてねえんだ。お前たちは手前の人生を生きるんだ。みんな、立派な図面描けよ!と励ますが、それを聞いていた青木や努が、今頃、青図なんて、誰も観ないと反論する。

他のアッシー仲間連中も、じいさんは古いと馬鹿にする。

しかし、佐川は、粗末にするな自分を…と、さらに言い聞かすのだった。

真理子は、持って来たオブジェを茂にプレゼントすると、テーマは「無」だと説明する。

無とは無限と言うことにも通ずると言う。

それを聞いていた浩たちは、即興で「ム〜、ム〜♪」と唄い始める。

飲み会がお開きになり、工場の外に出た青木は「俺は固く生きるぜ。ヤクザは年取るにつれ辛くなると、死んだ親父が言っていた。お袋は今、別の男と取手に住んでいる」と、美恵に話し、「俺は、中学の時から、女もアンパンもやって来たけど、女は不幸にしねえぜ」といきなり口説いて来る。

しかし、美恵が努と付き合っていることを知った青木は、自分がピエロだったことを悟り、がっくりし、その後、一人泣き崩れる。

翌日の、アッシーの練習では、青木が荒れていたが、やがて、こんなことやって、音が合う訳ないとわめき出す。

メンバーがきちんと揃わないからだ。

青木は、その場にいた努をいきなり殴りつけると、お前たち、俺のこと嫌いなんだろうと叫ぶ。

クリスマス

バー「エデン」では、パーティ客が帰って行き、ママも客からせがまれ、店の外まで見送りに行くが、その間、無人になった店内では、一人残っていた青木が、手提げ金庫の中から金を抜き取ると、洋酒も一瓶かっぱらい、こっそり店を後にして、電車の中で、酒をがぶ飲みしていた。

「早坂製作所」に電話がかかって来て、出た春は、佐川さんの会社が、親会社の資金繰りが上手くいかなくなった影響を受け、400万の手形が落ちなくなったと茂に教える。

佐川は、ショックから脳溢血で倒れ寝込んでいた。

債権者たちが集まり、何とか、佐川家の中にある金目のものを持ち去ろうと浅ましいまねをしていたが、そこに乗り込んで来た三隅(高橋悦史)と言う男が、取りあえず、債権者会議をするまで待ちなさいと言い聞かせ、債権者たちを一旦帰した後、寝込んでいた佐川の部屋の中でまで、差押えの札を貼っていた連中も追い出してしまう。

外は雪が降りしきっていた。

真理子は、茂に対し、再建は無理。兄が死んでから無理なのだと断言し、あの三隅と言う人物はどうも信用出来ないと警戒する。

その三隅、茂の「早坂製作所」に、佐川の会社の板金工を雇ったら良い。自分は商社を紹介する。これからは、なんぼでも力になるぜと、妙に美味い話を持ちかけて来る。

この話を飲まされた結果、大型機械を何台か新たに導入したりするが、逆に、ひろみと正雄に辞めてもらうしかなくなる。

そこに帰って来た浩は、宏美たちが辞めさせられたことを知り、茂に抗議して来るが、茂の方も、俺がお前を専務にしようとした時、断った奴が人事に口を挟むな。三隅精機と組んだ以上、仕方ないと反論し、またもや兄弟喧嘩が始まる。

その後、帰宅して来た隆は、家を飛び出して行った浩が李の所に行ったと茂に教える。

茂は、浩のことを、月給20万円払う価値がある働き手だと惜しがる。

春は、そんな考え方になってしまった茂のことを荒んだねと嘆く。

そして、母さんが言ったように、個々は自分の好きなようにやると聞かない茂の態度に諦めた春は、自分がここを出ると言い出し、昔は、人の情けで年を過ごしたことだってあるじゃないかと訴えるが、茂は、部屋を見つけて出て行ってくれ。俺は俺流でやる。美恵も隆も好きにやれと突き放してしまう。

それを聞いた春は、お前がそんな考え方になってしまったのも、学校より仕事を優先させてしまった自分が悪かったと謝り、荷造りを始める。

それを美恵が必死に止めようとする。

春は、後20年も生きなくちゃいけないのか、この頃は…と嘆息するのだった。

ある日、雨の中、ずぶぬれになった青木は、おろくの雑貨屋で働く春の姿を見つけていた。

近づいて来た青木の姿を見た春とおろくは、驚いて二階に上げると着替えさせる。

春からの連絡を受けたアッシーたちや仲間たちは、皆、青木に会うために、おろくの店の二階に集合して来る。

皆は、バーの金を盗み逃亡していた青木に恥ずかしいとは思わないのかと責める。

すると青木は、KDDで5億もらった奴も威張っていただろう!と反論する。

世間の5割9分はまともに生きていると浩が説教すると、エデンのママがまともか?あの人だってよ…と、青木は和美を指差す。

和美は、名古屋の織物工場を辞めさせられた時、就職指導の先生に子供を産まされてしまったけれど…と自分の過去を辛そうに打ち明ける。

今まで何をやってたんだと聞くと、青木は取手でパチンコやったと言うので、母親に会ったのかと聞くと、あんな女が俺のことを心配する訳ないだろ?金がなくなったら、すぐに迷惑がりやがって…、あいつは男さえいれば良いんだと悔しがる。

なぜ、ここに戻って来たのかと聞くと、チャリを盗みに来たんだと青木は開き直り、その場を逃げ出す。

雨の中、浩がその後を追って行くと、青木はいつも、アッシーが練習をしている場所に置いていたギターケースを持ち出し、その中からナイフを取り出して構える。

浩は、俺たちはアッシーだぞ!と止めるが、青木はそのまま逃げ去ってしまう。

後日、浩は、バー「エデン」のママに会いに行くと、自分が、青木が盗んだ金を弁償するため、月4万ずつ返済して行くと言うが、ママは、一度本人が顔を見せれば良いんだけどねと哀しそうに答える。

浩を店の前まで送って来た和美は、青木の母親に払わせれば良いのにと浩に言葉をかけるが、母親には、今の男との間に二人子供がいると聞いた。青木は壊れていないぞ。良いことも悪いことも感じすぎちゃうだけなんだと言って帰る。

三隅精機から紹介され、「早坂製作所」の経理を手伝うことになった坂田と言う初老の男は、昔、中学の教頭をやっていた男だと茂は紹介するが、どうにも信用していない隆は、春の所に行くと言い出したので、茂は怒り出す。

そんな茂だったが、こっそり、別の場所で仕事を頼んでいたひろみと正雄に、給料を私に行く。

その後、スーツに着替え粧し込んだ茂は「エデン」の和美に会いに行くが、子供が熱を出したとかで帰ったと言うので、ママに電話で呼び出してくれないかと頼み、望みないかな?と、相談する。

するとママは、事情を全て飲み込んでいるように、ないと思う、浩とかち合っているから…と正直に教える。

その頃、和美のアパートでは、浩が強引に読んで来た医者(鈴木瑞穂)が、和美の子供和男を往診して、危なかった。肺炎になりかかっていたと安堵していた。

「エデン」では、ママが、以前から浩は、和男を鷹取山に連れて行ったり、唄を歌って聞かせたり、サービスに努めていたのだと打ち明けながら、和美に電話を仕掛けるが、事情を知った茂は、それを止めさせ、今の話は全然なかったことにしてくれと頼んで帰る。

和美の部屋では、浩が、何でも相談しろよ。信用しろよと言うが、和美は耳を塞いでいた。

しかし、浩が帰りかけると、急に抱きつき、キスをするのだった。

工場に戻って来た茂は、そこで抱き合っていた努と美恵の姿を目撃する。

二人はばつが悪そうに身を離すが、茂は、努が持って来た部品をチェックすると、腕を上げたなと褒めてやると、図面を見せながら、この一部をやってみないかと持ちかける。

努は、自分は向いていないと尻込みするが、茂は、ここはその内、協同組合的なものになると思うが、ちゃんとした会社を作るつもりだと夢を語ると、やってみろ、生活の土台を作るつもりで…と勧める。

その頃、青木は、輸送用の自動車を船に積み込むドライバーの仕事に励んでいた。

ある日、アッシーたちが練習している場所に来た青木は、塀の穴から中の様子をそっと覗いてみる。

メンバーたちは、青木の噂をしていたが、今でもチャリでも盗んでいるんだろうとバカにしながらも、その内、青木が好きだった曲をやろうと言い出し、演奏を始める。

それを壁の裏からのぞいていた青木は泣き始める。

努は、茂から頼まれた仕事に没頭していた。

そこに、美恵が、手作りのサンドウィッチを持ってやって来る。

努は一人で頑張り、徹夜で部品を間に合わせる。

朝、お茶を持って近づいて来た努の母親ふみ (杉山とく子)は、良かったねと声をかける。

仕事を完成させ、清々しい気持になった努は、トランペットを持って河原に出向く。

その河原に近づいて来た美恵は、トランペットの音に気づくと、努に近づいて、一緒に喜ぶ。

しかし、努が納品した部品は、全て、100分の1穴が大きいことが判明し、全品返品されて来る。

穴が大きいのでは、直しようがなく、全部使えなかった。

茂は、何とか発注元の大和商事に、納期をのばしてもらえないか行ってみると出かけて行く。

美恵は努に会いに行くが、思い詰めた努は、近づいて来たトラックの前に飛び込むと自殺を図る。

茂は、今回の失敗で、「早坂製作所」が倒産したとこを悟る。

話を聞いてやって来た青木が、自分で出来る金額だったら回してやるが…と聞くが、明日の10時までに600万と言われれば、黙るしかなかった。

その時、さっきから鳴り続け、茂が取ろうとしなかった電話が又鳴り始めたので青木が代わって取ると、それは、たった今、努が死んだと言う知らせだった。

努の葬式の場に、青木が姿を見せる。

しかし、その青木が、アッシーの練習の場で、努を殺したのは茂だと言うような言い方をしたのを聞きとがめた浩は青木につかみ掛かる。

すると、またもやすねた青木は、千葉のことを、19の時に子供を作ってしまいやがったとバカにし、李にことは朝鮮人!と罵倒する。

原田は、美恵が可哀想だと同情する。本当に努は自殺をしようと思ったんだろうか?との疑問も口にする。

すると、生きている方が良いに決まっているんだろう!と言いながら、青木が原田に組み付いて行く。

そして、アッシーたちは皆泣き始める。

寝たきりになった佐川は、背中を起こし、茂に応対すると、もう一辺みんなでやるんや。俺は56年生きて来たが、今さら、昔は1000分の2でラッピングをやったなんて自慢したってしようがない。勉強しろよ。ものの良く見える、優しい人間によと言い聞かす。

茂は、俺はやるよ。人のせいには出来ない。逃げ出すことは出来ない。誰にも負けないようにやってみると決意を述べる。

すっかり、機械を持ち去られ、がらんとなった工場の中で、集まった仲間たちと工場ないを掃除していた春は、一番最初に使い始めた旧式の機械を見つける。

そこに戻って来た茂は、春を始め、みんなが工場に集まっていたのを見て、誰がここの掃除を頼んだ?出て行け!と怒鳴りつける。

名義が代わっても、ここにいても良いことになったのだと春から聞いた茂は、浩にここをやれと言い出す。

こんな仕事を続けても、ザルで水を汲むようなものだからな…と、自暴自棄な言葉を吐く茂に、春は叱り付け、ビンタをする。

美恵は、努が亡くなる直前に、兄ちゃんと仲良くやってくれと、母と私に言い残したと伝える。

ふて腐れた茂が工場から出て行こうとするのを、浩が止めようと前に立つ。

アッシーの仲間たちも茂の前に立つ。

対峙した茂と浩は、二人とも涙を流していた。

外に出た茂を追って来た真理子は、いつまで付いて来るんだ?と茂に言われると、一生よ。あなたの所で働く。死ぬまで…と笑顔で答える。

茂は、何度倒れてても、弱者が生きるようにしてみせる。それまで、死んでたまるか!と意気込みを語る。

真理子は、みんな、あなたを愛しているのよ。意地を張るのはお止しなさいと告げ、自分から茂の腕に捕まると、一緒に工場へ戻って行く。

工場内では、アッシーが演奏をしていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「若者たち」のバリエーション作品のような印象の作品。

幼い頃父親を亡くし、12の時から働き、幼い弟や妹を育てて来た茂は、「若者たち」の長男、太郎と同じ設定であり、その兄の仕事重視の考え方に反発する浩は、「若者たち」の中の末っ子、ボンこと末吉のキャラクターに近いような気がする。

二人は考え方の違いから、いがみ合い、絶えず喧嘩をしている所も同じである。

新しいと感じる要素は、音楽が加わったことだろう。

しかも、ロックである。

アッシーたちの面々は、皆、貧しい若者たち。

若くして母子家庭の母親となっている和美も又、くじけず懸命に生きている女性として描かれている。

そうした下町の貧しい人間たちの生き様を暖かい目線で描くと言うのは、従来の社会派作品でもあったのだろうが、暗くなりがちのテーマにロックを重ねて、全体的に明るいタッチに仕上げている所が興味深い。

社会派、硬派のイメージが強い山本薩夫監督が、こんな演出にも挑戦していたのか…と云う意外性を感じる。

テレビの青春ドラマなどでも、味のある脇役ぶりを発揮していた森川正太が、なかなか重要な役割を演じている。

若き関根恵子は美しいし、奥田瑛二も初々しい。

浅茅陽子と友里千賀子の、明るく健康そうなキャラクターも、この作品を救っているように感じる。

地味な内容ではあるが、色々見所はある作品だと思う。