QLOOKアクセス解析

TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

夕陽の丘

1964年、日活、菊村到「男の歌」原作、山崎巌+國弘威雄脚本、松尾昭典監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

寂し気な風景が描かれた油絵のかかった部屋の中、ベッドの中で、篠原健次(石原裕次郎)は、長島聖子(浅丘ルリ子)から逃げ出そうと迫られるが、兄貴の陰に怯えて暮らせって言うのかと、煮え切らない態度を取っていた。

聖子は、二人で死んじゃった方が幸せなのかも…と呟き、二人はきつく抱きしめあうのだった。

キャストロール

健次は車で、聖子を住いの目黒マンションまで送る。

部屋に入ろうと鍵を取り出した聖子だったが、ドアに鍵がかかってない事に気づき、驚いてドアを開けると、森川の舎弟串田(名古屋章)が、勝手に椅子に座って、酒を飲んでいた。

明日、兄貴が出所して来るので前祝いしていたなどと言いながら、髪が乱れた聖子の顔を見て、たった今、浮気して来たって顔してるじゃないかとからかいながら迫って来る。

聖子が拒否すると、ますます増長した串田は、聖子を隣りのベッドルームに押し倒そうとするが、そこに現れた健次が殴りつける。

串田は銃を取り出し、「健次、人の女に手を出したら、どうなるか判っているだろな?」と引き金に手をかけたので、聖子が串田の右手に噛み付くと、落とした銃を、すばやく健次が拾い上げ、逆に突きつける。

串田はナイフを取り出して、お前に撃てるものかと嘲りながら襲いかかって来たので、健次は思わず発砲してしまう。

弾は、串田の右肩に当り、命に別状はないと見て取った聖子は、逃げて!ここで待っててと言いながら、一枚の葉書を健次に手渡す。

列車に乗り込んだ健次は、葉書の差出人である長島易子が住む函館を目指す。

スタッフロール

函館に着いた健次は、住所の場所に行くが、そこには「長島」と言う家はなく、「小芝」と言う表札が出ている家しかなかったので、近くのタバコ屋で、長島易子と言う人の居場所を尋ねると、あそこの家に下宿しているのだと言う。

仕方がないので、健次はその家への三叉路が見通せる「北洋ホテル」と言うホテルに一部屋借りる事にする。

そのホテルの女主人(細川ちか子)は、物わかりの良い人物らしく、宿帳も、適当に書いてくれれば良いと言う。

部屋で、上着を脱いだ健次は、そこに入っていた拳銃に気づくと、3年前、自分と森川につながりが出来るきっかけも拳銃だった事を思い出す。

その頃、キャバレーのバンマスをやっていた健次は、柏木組と言うグループから脅かされていたが、動じなかったので、店で演奏中、見せしめのために撃たれたのだった。

ヤクザなんか人間の屑だと言い張っていた健次の度胸に惚れ込み、自分の血を輸血し、助けてくれたのが森川(中谷一郎)だった。

北洋ホテルに落ち着いた健次は、翌日、易子が勤めていると言うデパートに向かう。

案内係で聞くと、エスカレーター係だと言う。

エスカレーターを上りながら、女店員たちの名札を確認していた健次だったが、やがて、聖子と瓜二つの易子(浅丘ルリ子-二役)を発見し驚く。

易子の帰りを、通用口で待ち受けていた健次だったが、出て来た易子は、友達(槇杏子)と一緒だったので、その日は声をかけるのを止める事にする。

ホテルに戻った健次は、いつ来るか判らぬ聖子を待ちわびていた。

ある日、受付に行くと、女主人が一人でトランプ占いをしていたので覗き込むと、ママは、3年前北航路で沈んだ船に乗っていた夫の帰りを今でも待ちわびているのだと言う。

トランプをいじっていた女主人は、あの人はあの世でも2人の女が張り合っているらしいと言うが、その内、その女の一人は死んでいると言い出したので、自分と聖子の事に重ねた健次は、不安な気持になる。

森川が愛人である聖子を殺すはずがない。しかし、森川は、その愛人を奪った俺との決着をつけに来るだろう。柏木組の組長を、顔色一つ変えずに刺殺したときのように…

ある日、部屋のシーツを買えに来た女主人は、ベッドに置かれていた健次のスーツのポケットに拳銃が入っている事に気づくと、このポケットにあるようなものは使わない方が良いと諭す。

健次は、ある人と約束した、ここに来るだろうと言うが、もう函館に来て6日が過ぎていた。

その時、ホテルの玄関先で喧嘩が起きているのに気づいた二人は表に出てみる。

流しの青年新二(和田浩治)が、地元の地回りに囲まれ喧嘩をしていたのだ。

しかし、健次は、ぼこぼこにやられている新二を助けようとはしなかった。

地回りが去った後、近所に散歩に出た健次は、後ろから付いて来た新二に殴り掛かられる。

健次の事を、黒田組の客分だろうと言うのだ。

知らないと答えた健次は、なおも付きまとって来る新二を一発殴り倒す。

倒れた新二に駆け寄って来たのが、あの易子だった。

翌日、デパートの屋上に易子を呼び出した健次は、夕べの恋人の件を謝る。

しかし、易子は、新二は恋人ではなくて、小学校の同級生で、一時期、笹谷組と言う所にいたが、今は真面目にやっていると言う。

仕事中だからと帰ろうとした易子に、あなたにはお姉さんがいないか?神戸に…と聞くと、知らない。自分の姉は東京で商事会社に勤める人と結婚して、近々外国へ行くかも知れないと言っているので…と易子は言う。

その易子が、ひょっとして、タバコ屋で私の事を聞いたのはあなたか?と聞いて来たので、今度は健次が知らないとごまかす。

易子と別れた健次は、あの子は、姉の本当の生活を知らないのだと察知する。

又、聖子の事を思い出していた健次は、あいつは今でも、心のどこかで森川の事を愛しているのか?と不安を覚えるが、いや、初めて会った瞬間から、俺たちは愛し合った…とその想像を自ら否定する。

健次は、森川に連れて行かれたキャバレーで、そこのホステスとして働いていた聖子に初めて出会ったのだった。

その後、聖子は、森川がいない賭場にいた健次に、個人的に会いに来るようになる。

ムショ暮らしをしていた森川と聖子の面会にも付いて行った健次だったが、森川から聖子の事を頼むと言われると、自分が聖子を愛するようになったとはとても言い出せなかった。

ホテルの部屋で、思い出に浸っていた健次を訪ねて、易子がやって来る。

この場所は、新二に聞いたのだと言う。

用などないだろうと冷たく対応した健次に、姉さんが来ているとしたら?と易子が言うので、健次は思わず反応してしまう。

それを見た易子は、やはり姉さんを知っているのね。なぜあなたはこの町にいるの?姉さん、バカだわてん、ここに来るなんて…と云いながら、持っていた電報を見せる。

そこには「明日朝来る 聖子」と書かれてあった。

翌日、駅で最終列車まで待った健次だったが、聖子は現れなかった。

その後、空港にも行ってみたが、やはり聖子の姿はなかった。

むしろ、サングラス姿の客を、森川に見間違えて驚いたくらい。

健次は、最初から来る気はなかったのか?電報を打ったのは森川なのか?しかし、聖子は俺を売ったりするような女じゃない…などと疑心暗鬼になりながら、ホテルに戻って来る。

雨の中、傘をさした聖子がそこに待っていた!と一瞬思い込んだ健次だったが、待っていたのは易子の方だった。

易子は、聖子が来なかった事を知ると、今頃、森川さんと楽しく夕食を取っているわなどと嘲るので、健次は、俺の何を知ってるんだ!と怒鳴る。

すると、易子は、あなたがヤクザだって事を…と易子が自慢げに言うので、森川は俺の兄貴分、君の嫌いなヤクザだと健次は教える。

事情を知った易子は、健次とバーで打ち解けて話をするようになる。

聖子は、歌手になると言って、2、3年前に、東京にいる友達を頼って上京したのだと易子は説明する。

健次は、聖子が来なかったら、その代わりに追っ手が来ると打ち明ける。

易子は、あなたを愛しているのなら、きっと姉は来るはず。来れない事情が判れば…と案じてくれる。

その頃、神戸では、出所して来た森川と聖子が、以前のように同棲していたが、森川は薄々、健次と聖子との事に気づいていた。

1年半、ムショ暮らしをして来た今の森川は、絶対聖子を離さないと誓っており、執拗に聖子を求めて来る。

その時、函館の易子から電話がかかって来る。

聖子が出てみると、電話は健次に代わる。

森川が側にいる聖子が、はっきりとした事が言えないと気づいた易子は、又電話を代わると、どうして来れないの?と聞くが、電話は切れてしまう。

その直後、森川は串田から連絡を受け、健次が函館にいる事を知る。

その姉の反応を知った易子は、姉は、あなたほど愛していなかったのね…と、気の毒がるのだった。

バーを出てホテルの部屋に戻った健次は、聖子は来たいんだ。俺には判る。来る、彼女は明日来なければ、明後日…と、一人悶々としていたが、それを打ち消すように、来ないわ、姉さんは来ないはと言う易子の言葉も、頭の中を駆け巡るのだった。

翌日、健次は新二と、新二のかつての組仲間だった善公(野呂圭介)を連れて競馬場に出かける。

何度買っても馬券は外れ続け、新二はもう止めろと注意するが、聖子が来る事と、買った馬券が当たる事をシンクロさせたい健次は、意地になって買い続ける。

そんな中、善公は、特定の馬を何度も健次に勧め、本当にその馬で当てる。

善公は上機嫌になり、健次と新二をおでん屋に誘うが、新二は、そんな善公に、今日の穴をあらかじめ知っていたんじゃないか?と疑い出す。

不機嫌だった健次も、善公を締め上げると、黒田組の組長が店にやって来て「オホーツク」と行っていたのを聞いたので…と打ち明ける。

それを聞いた健次は、黒田組のたまり場を教えろと言い出す。

新二が、そこは博打場なのでヤバいと注意すると、健次は、自分も博打なら専門だと言い、二人を引き連れて、黒田組が経営するキャバレーに向かい、マネージャー佐野(深江章喜)に話しを持ちかけ、地下の賭博場に案内してもらう。

そこでは、花札賭博をやっていたが、こんな素人相手では勝負は出来ないので、あんたと差しで勝負がしたいと、健次は佐野に言い放つ。

佐野は、奥に座っていた黒田組長(天草四郎)に目で承認を得ると、受けて立つ事にする。

健次は持っていた拳銃を差し出し、これで5万貸してくれと言うと、それを元手に勝負を始める。

ツキもあってか、健次は次々に勝負に勝ち、とうとう160万までに元手を増やす。

すると、黒田組長が乗り出して来て、次ぎの勝負は自分としてくれと言い出す。

承知した健次は、利子分も含め、10万出して、最初に渡した拳銃を買い戻す。

花札が新しいものと交換され、札を配っていた中盆(柳瀬志郎)は、札改めを健次にさせる。

その後、シャッフルをし、札を配り始めた中盆だったが、その時、健次は銃を中盆に向ける。

黒田組は、競馬だけいかさまをやるのかと思っていたら、花札でもやるのか?上手い切り方だったが、さっき札改めをした時、一番最後になってた6枚の札を、シャッフルする時、巧妙に最初に持って来たはず。その証拠に、最初は「梅松桜」の三枚のはずだと言いながらめくると、はたしてその通りの三枚だった。

もう三枚も開けてみようか?と言いながら、健次はいきなり黒田組長を殴り始める。

その時、見知らぬ男が階段を降りて来たので、健次は新二に、黒田組長も詫びていなさるので、10万円だけもらっておけと言い、帰る事にする。

ホテルに着いた健次は、発つ事にしたので、切符の手配を頼むと伝える。

女主人は、ポケットの中のものを使ったね?女一人待ちきれなくて…。船はないよ。釧路行きの列車で良いんだねと確認する。

部屋に戻ると、やがて、新二と易子がやって来て、どこへ行くのかと尋ねる。

健次は、俺はただ、黒田組をどうこうするつもりなどなく、怒る相手が欲しかっただけなんだと言い訳するが、逃げるあんたは良いだろうが、残された俺たちはどうなるんだと、新二は詰め寄る。

そこに、女主人から電話が入り、最終列車まで、後5分しかないと言うので、出発は明日に延ばす事にする。

翌朝、新二が健次を呼びに来る。

港で、善公の死体が上がったのだ。

刑事は、酔って海に落ちたのだろうと言っていたが、新二は、善公は、そんなに泥酔するなどあり得ない。夕べは、黒田組の騎手を締め上げてやるなどと言っていたからと聞かされた健次は、善公が最後に立ち寄ったバーに向かい、善公の様子を聞こうとする。

その時、昨日、黒田組の賭場で出会った見知らぬ男が入って来て、君たちに見てもらいたいものがあると言いながら、胸ポケットに手を入れたので、健次は思わず、その手を押さえる。

しかし、その男は、何か勘違いしているんじゃないかと苦笑しながら、一枚の写真を取り出すと健次に見せる。

それは、森川の写真だった。

何で追っているのかと聞くと、信用組合の金を横領したので探しているのだが、見つけたら電話してくれ、おれは渚旅館に泊っている吉良(井上昭文)と言う調査員だと、男は名乗る。

しかし、健次は、その吉良と言う男は、柏木組が雇った殺し屋だと直感する。

函館を見下ろす展望台に登った健次は、とにかくこの町で待とう、これが俺の最後の賭けだと決意する。

とある洋酒喫茶でバーテンをやる事にした健次の元にやって来た新二は、警察も黒田組の騎手を引っ張ったと報告するが、健次は無関心そうに、新二が持っていたギターを受け取ると、自らつま弾きながら、「俺は待ってるぜ」を歌い始める。

北洋ホテルに戻ると、女主人が、鍵は客に渡しておいた。女を泣かすんじゃないよと言うので、てっきり、聖子がやって来たと思い込んだ健次は、部屋に駈け戻るが、部屋の中で待っていたのは、易子だった。

易子は、黒田組での喧嘩の事を新二から聞いたらしく、あの電話の後、うっぷんを晴らしたのね?それなのに、まだこの町にいる…と泣き出す。

なぜ泣く?と不思議がる健次に、易子は、そんなにしか生きられないあなたが不満だったのよ、姉は…、私だって…と言う。

それほどまで自分の事を思っていてくれたのかと、健次は易子に近づくが、その時ノックがあり、入って来たのは、あれほど待ちこがれていた聖子だった。

聖子は易子を見ると、あなたも来ていたのと呟くが、待っていたの、私達…と『答えた易子は、静かに部屋を後にする。

その後、健次は聖子を抱きしめる。

聖子は、今度こそ二人っきりになれるのよ、二人っきりに…と感激する。

しかし、ホテルを出た易子の方は、健次のいる部屋をどこか恨めし気に振り返るのだった。

森川はどうした?と健次が聞くと、聖子は逃げて来たのだ。森川は、あなたが函館にいるのを感づいているので、この町を出てどこかに逃げましょうと不安がる。

健次は、もう森川はこちらに来ているかも知れない。渚旅館に泊まっている吉良と言う、探している男が来ているんだと教える。

それを聞いた聖子は、逃げましょう。私がした事を無駄にしないで!とすがりついて来るが、その時ノックがして、健次が出てみると、新二が来ていた。

吉良が見せた写真の男を見かけたと言うのだった。

健次が、廊下でその話を聞いている間、部屋に一人残った聖子は、渚旅館に電話をかけていた。

吉良が出ると、森川は、海神荘と言う旅館に、松井と言う名前で泊っていると教える。

その時、部屋に入って来て、電話の内容を聞いた健次は、聖子が、森川と一緒に函館に来た事に気づく。

健次はその場から、海神荘に電話を入れ、松井を呼んでくれと頼むので、聖子は、驚いて、なぜ、それほどまでして森川を助けるの?と聞いて来る。

健次は、森川が殺されたら、俺たちは助かるのか?と逆に問いかける。

聖子は、二人が愛し合っていたら、あの人の事は忘れられる。これが二人きりになれる最後のチャンスかも知れないのよ。あなたにもしもの事があったら…と、健次を必死に説得しようとする。

しかし、健次は、海神荘から、町に出かけたと聞いた森川を探すため、ホテルを飛び出して行く。

旭通りで、出会った新二から、吉良とあいつが競馬場の方へ向かったと聞かされた健次は、それをホテルにいた女に話したか?と聞く。

新二が、兄貴が戻って来るかも知れなかったので話したと言うと、ホテルから聖子を出すんじゃないぞと頼んだ健次は競馬場に向かって走り出す。

競馬場の中に向かう通路に入った健次は、向こうから近づいて来る、銃を持った吉良の姿を認める。

思わず、健次も銃を取り出し緊張するが、吉良は途中で倒れる。

近づいてみると、もう撃たれて死んでいた。

競馬場の中に入ると、その座席の中に一人、ぽつんと座っていた森川を発見する。

健次は、話があると語りかけるが、森川は、俺にはねえ、お前と話す事なんか何もねえと無表情に言う。

だが、俺はお前を許さない…と、座ったまま続けた森川は、互いに5段ずつ歩く、良いな?と決闘を申し出ると立ち上がり、有無を言わさず、階段をゆっくり降り始める。

健次は、否応なく、階段を一歩ずつ上りながらも、「愛しているのよ」と言う聖子の言葉が頭に響き、俺は生きなければならないと感じていた。

階段の手すりが切れた所に降りて来た森川は、腹から出血をしていた。

さっきの吉良に撃たれたに違いなかった。

「後、一歩だな…」そう云って、最後の段を降りた森川と健次は、両者同時に発砲する。

健次は、わざと外し、森川の弾丸は、健次の背後にやって来た聖子を貫く。

力つき倒れた森川は、健次、わざと外したな…、健次、俺の勝ちだ。あの女、貴様には渡さないと言うなり、聖子の身体に最後の銃弾を全部浴びせかける。

森川は死に、聖子も即死だった。

明くる日、易子と海岸に来た健次は、許してくれ、俺のために姉さんを…と謝るが、易子は、違うわ!姉さんは、自分でああなる事を願ったのよと慰める。

そして易子は、この町を出ようと思う、この町には辛い事が多すぎると打ち明ける。

じゃあ、どこへ?と問いかけた健次だったが、易子が自分の方にすがりついて来ようとするのを察すると、素早く首を振り、俺に付きまとったら、君は不幸になるだけだ。俺は結局、誰も愛していなかったのかも知れない。もし愛していたら、この町には来なかったはずだ…と言い残し、一人浜辺を歩いて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「ムード・アクション」と言う言葉が、宣伝文句として初めて使われた事で有名な作品。

大人同士の出会い、過去への郷愁、裕次郎の甘い歌声、裕次郎と浅丘ルリ子のコンビなど、後の「ムード・アクション」に観られる特長が全てそろっている。

ただこの作品、今の感覚で観て面白いかと言うと、微妙な所がある。

まず、浅丘ルリ子は、もう化粧の濃さが目立つ年頃になっており、劇中、二役をこなすと言う珍しさはあっても、聖子も易子も、そんなに魅力的な女性と言う感じではない。

どことなく陰がある聖子は、観ようによっては嫌な女だし、易子の方も、最初は清純なイメージであるものの、徐々に、凡庸で詰まらない女に変化しているように見える。

裕次郎の方も又、やんちゃさや元気の良さはもうなく、一人思い出に浸る内省的で陰気なキャラクターになっており、こちらもすごく魅力的とは言いがたい存在になっている。

結局、主人公たる男女が、双方とも、何となく魅力不足なので、物語全体に、ぐいぐい引き込まれるようなパワーが不足しているようにも感じられるのだ。

唯一の見所は、黒田組の賭場でのギャンブルシーンくらいか?

ここでの裕次郎は、かなり悪(ワル)な雰囲気が横溢しており、画面に緊張感もある。

しかし、このシーンの後は、恋に迷う未練だけの男に又戻ってしまい、何となく、話から緊張感も失われてしまう。

そのために、聖子が本当にやって来たときの高まりもないのだ。

その辺は、女への高まった幻想が、現実を前にすると、どこかしら冷めてしまっていたと言う事を表すための意図的な演出なのかも知れないが、観ている側も冷めてしまい、何だか、盛り上がらないクライマックスへと続く。

最後の森川との対決も、吉良が倒れた辺りから、何となく想像出来る展開であり、それなりに格好は良いが、衝撃感は弱い。

まあ、こう云うアンニュイな雰囲気の逃避行ドラマと云ってしまえばそれまでだが、「ムードだけしかない」とも取れなくもなく、何とも、釈然としない印象だけが残った。

好きな人には溜まらない世界なのかも知れないが…