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新・三等重役 旅と女と酒の巻

1960年、東宝、源氏鶏太原作、井手俊郎脚本、筧正典監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「おめでとうございます!東宝の森繁久彌です。あ、失礼!世界電器の沢村でございます…」と、外遊中の坂口社長に代わり、沢村専務(森繁久彌)が、結婚スピーチを始める。

新郎は、大阪に本社がある世界電器の仕入部八代波吉(小林桂樹)、新婦は、鬼塚社長(加東大介)令嬢舞子(雪村いづみ)であった。

亡くなった先代社長未亡人宮口鶴子(浪花千栄子)をはじめ、専務秘書の箱田章子(新珠三千代)や仕入部伊勢泰治(有島一郎)も列席していたが、沢村専務が「英雄色を好むと申しますが…」と言うと、急に伊勢が、おかしな笑い声を上げる。

ともかく、沢村専務の「どうぞ、よろしくお願い致します」と云う挨拶が終了する。

タイトル

朝出勤する八代がネクタイをしていると、新妻の舞子が、かいがいしく結んでやる。

小遣い足りないんじゃない?と聞いた舞子は、財布の中から千円札を取り出し手渡そうとするので、それは何だと八代が聞くと、ママに送ってもらったと云うので、八代は不機嫌になり、そんなものはいらないと拒絶する。

アパートの隣りに住む伊勢も、妻ふみ子(藤間紫)に見送られ、一緒に出社しようと、八千の部屋のドアの前まで来るが、中から、八代の「どうして、東京にSOSなんて出したんだ!」「だって、連絡しなければやっていけないんですもの!」などと、夫婦喧嘩の声が聞こえて来たので呆れる。

世界電器に出社した八代は、自分が提出した辻倉製作への1000万円融資の話が、専務決裁で反対された事を知り、抗議のため、部屋に乗り込んで行く。

はじめて聞いた話なのでと云う沢村専務に対し、自分は、半年前から、仕入部長の江畑部長(田武謙三)を介して、話をしていたはずだがと熱く語る八代は、すぐさま江畑部長の所に事情を聞きに行く。

すると、江畑部長は、君は辻倉から買収されたな?と言うではないか。

辻倉と数回飲んだ事を言っているらしい。

さらに、いくら社長の令嬢と結婚したって、ここでは君はただの平社員だとまで言われた八代はかっと来て、机の上にあった算盤を振り上げてしまったので、伊勢も驚いて止めに入る。

そこに、沢村専務がやって来て様子を観ていたらしく、八代と江畑部長は、一緒に専務室に呼び出され、それぞれの意見を聞かれる。

その頃、仕入れの部屋では、伊勢を始め、社員通しで、あれこれ二人の事を噂しあっていた。

結局、融資の案は、沢村専務が預る事になるが、上司の前で算盤を振り上げるのは悪いと、八代は注意を受ける。

部屋に戻った八代は、今、専務から命じられた通りに、他の社員と江畑部長の前で、先ほどの無礼を詫びるのだった。

ところが、その時、当の辻倉社長から電話が入り、今夜は、部長も連れて一緒に飲もうと言い出したので、融資の話がダメになったとは言えない八代は、返事に窮してしまう。

その時、辻倉の部屋に、娘の百合子(紅美恵子)が入って来たので、辻倉はさっさと電話を切ってしまう。

百合子は、今度友達と旅行に行くので小遣いをくれとねだりに来たのだった。

困った八代は、江畑部長に今の辻倉からの申し出を伝えるが、酒も女も嫌いだと言う堅物の江畑部長から、そんな席に出るのは嫌だ。自分で撒いた種は自分で狩れときっぱり断られたので、自分の席に戻っても、イライラしているばかり。

そこに、沢村専務から電話が入り、もう一度来るようにと呼ばれたので、専務室に行ってみると、独身の専務から、今夜一緒に飲まないか?と云う誘いだったので、八代が辻村から誘われたと言うと、俺も一緒に行ってやると専務が云い出したので、箱田が出してくれた茶を飲みかけていた八代は、驚いて思わず吹き出してしまう。

その夜、沢村専務を連れて来た八代に、辻倉は上機嫌だった。

随分と八代の事を褒める辻倉の様子を観ていた沢村は、こいつは首にするので、辻村製作で雇ってくれないかと言い出す。

その話に乗って来た辻村が、一ヶ月以内に必要な融資の話を振ると、工場を見せてもらわないと…と、八代に目配せをしたので、八代も沢村の意をくんで調子を合わせる。

返済計画なども検討させてもらいたいし、自分は近々九州へ行かなければ行けないので、融資の話は来月15日までにして欲しいと沢村は話をまとめる。

八代を首にする話は?と辻倉が九人すると、あなたが興味を示したのを観て、急に惜しくなったので止めると沢村はとぼける。

その後、二次会で、キャバレーに繰り出した3人だったが、八代がいつまでもホステスと踊っているので、新妻が待っているんだから早く帰れと沢村は注意する。

しかし、八代が、うちの妻はそんな事を気にするような女ではないと反論したので、さすがは、鬼塚商会のお嬢さんやと辻倉は感心する。

辻倉から九州への旅行の事を確認された沢村は。北九州のお得意さんを別府に招待するのだと説明する。

しかし、ホステスでデレデレし通しの沢村に対し、あなたは、資本金5億の会社の重役ですよと釘を刺す八代。

その後、タクシーで一緒に帰っていたホステスの太田雅代子(原知佐子)は、自分は九州福岡の出身で、母親が一ヶ月前から病気になり心配なので帰りたいのだが、一緒に連れて行ってもらえないかと沢村に相談し、沢村が鼻の下を伸ばした所で、さっさとタクシーを降りていってしまう。

泥酔して帰宅した八代は、アパート「白鳥荘」の前で、同じように泥酔していた伊勢と合流する。

伊勢は八代に、今日は良く我慢した。俺は君のために飲んでいたんだなどと言い、一緒に帰宅する。

その時、ふみ子は舞子の部屋に来て、亭主への不満を話し合っていた。

そこに、何も知らずに帰って来た八代が部屋の前に来て声をかけると、ふみ子が顔を出したので、部屋を間違えたと思い、伊勢と交代する。

ところが、伊勢が声をかけると、今度は舞子が顔を出したので、ますます混乱し、酔った勢いで伊勢は、うちの女房はラッキョが逆立ちしたような顔なんだと言うし、八代も調子に乗って、うちの女房は、シュークリームがはみ出したような顔だと悪口を言ったので、ふみ子と舞子が鬼のような形相で一緒に出て来て、互いの部屋の中に二人の哀れな亭主は引きづり込まれてしまう。

悪い事に、伊勢のワイシャツにはキスマークが残っていたため、ふみ子は激怒し、棒で伊勢の頭を殴ろうと廊下まで追いかけて来たので、伊勢は台所のボウルをヘルメット代わりに頭に乗せ、逃げ回る騒ぎになる。

舞子の方も、東京に帰ると言い出していた。

その言葉通り、実家に帰った舞子は、母親麻子(坪内美詠子)が、夫である熊吉が、結婚後、10日目、25日目に、もう外泊したなどと、大昔の事を鮮明に覚えていてぐちりはじめ、父親が面白くなさそうに朝の準備をしていた姿を観て、笑ってしまうのだった。

一方、昼のカレーを食べていた沢村は、太田夫人と云う人物から電話が入ったと箱田から言われ、電話に出てみると、それは雅代子だった事が判る。

すでに、福岡に帰るために大阪駅に向かう所で、月曜日には、福岡支社の方に電話させてもらうと言う。

沢村は、側の箱田にすっかり聞かれてしまったので、もはや言い逃れはせず、泰然とした態度で席に戻ろうとするが、そこに、宮口鶴子未亡人がやって来て、最近、年のせいか、世の中が寂しくなった。気晴らしに旅行でもしようと思うので、私と箱田さんも、あんたの九州旅行へ連れて行ってくれと言いに来たのだった。

九州で羽を伸ばそうと目論んでいた沢村は内心鼻白むが、社長夫人と命令とあらば、不承不承、承知するしかなかった。

別府

地元のお得意さんを観光バスで地獄巡りへ向かわせたと言う後藤福岡支店長(宮田洋容)と、営業課の伊東が沢村たちの所へ挨拶に来る。

世界電器の宴会場では、沢村と八代、恒例の演芸大会が始まろうとしていた。

演目は「六段 事 尺八」と書かれていた。

やがて、女装した二人が舞台に登場し、テープレコーダーの音楽に合わせて演奏の当てぶりを始めるが、やがて、音が早くなったので、二人の動きはコミカルになる。

もちろん、沢村の指示通りに、箱田が舞台横でテープレコーダーを操作していたのだ。

その内、今度はテープが遅くなる。

これには、鶴子未亡人も吹き出してしまう。

演芸を終えた沢村に、辻倉から電話が入ったと言うので出てみると、何と辻倉も別府に来ており、別の旅館に泊っているので来ないかと云う誘いだった。

鶴子未亡人と箱田に、半ば強引に、夜の別府の散策を勧めた沢村は、八代に案内して来いと命ずるが、八代は全く動こうとしない。

仕方ないので、財布から札を出す振りをして、八代が腰を上げたのを見計らった沢村は、ちゃっかり、札をもとの財布に戻してしまう。

ようやく、厄介払いが出来た沢村だったが、旅館の女将の千枝(千石規子)が、ちょっと話があると云いに来る。

聞けば、何と、宮口社長には御落胤がおり、今は福岡で育てられていると言うではないか。

相手は、自分も昵懇な大阪の芸者だった女で、今は福岡の東中州でバー「ワールド」と云う店をやっているが、商売が巧くいかず困っているので、相談に乗ってあげてくれないかと云うのだった。

厄介な話を持ち込まれたと困惑した沢村だったが、鶴子夫人は知らない事だと云うので、自分が何とか解決するしかないと覚悟する。

その後、ようやく、辻倉の泊まっている旅館へ向かった沢村だったが、何と、辻倉は浮気相手の洋子(環三千世)を連れて部屋で飲んでいた。

呆れた沢村だったが、洋子は、きれいな博多人形のお土産があると云い出し、ふすまを開けてみせると、廊下で人形のまねをしていたのは雅代子だった。

キスをしてやると動き出すと洋子が言うので、照れながらも、雅代子の額にキスをしてやると、雅代子は喜んで沢村に抱きついて来る。

雅代子が言うには、汽車で辻倉と一緒になり、洋子は三宮から乗り込んで来たらしい。

辻倉の提案で、4人一緒に家族風呂へ入りにいくが、そこでばったり会ったのは、旅行一週間目になると言う辻倉の娘百合子だった。

その百合子が、同行していた綾子、薫、美智子の三人を紹介し、そちらは?と聞いて来たので、辻倉は思わず、こちらの女性たちは、沢村さんのお嬢さんだと紹介してしまう。

百合子は、そんな父親と沢村に、男風呂はあっちよと教えたので、二人は仕方なく、男同士で風呂に入りに行く。

沢村は湯船の中で、ひょっとしたら、お嬢さんは何もかも知っているのでは?と問いかけると、辻倉も、そう云えば、あいつ、女房と同じ目をしていたと怯える。

部屋に戻った辻倉は、布団を二組敷こうとしていた中居に、ここは一つで良い、沢村さんの部屋に三つ敷いてくれと言い出したので、洋子は側で唖然としてしまう。

一方、他人の浮気相手の洋子と雅代子と三人一緒に寝る事になった沢村も、どうしようもないので、ビールでも飲もうかと誘い、気の進まない雅代子に、電話で注文させようとするが、雅代子はわざと沢村の身体につまずき倒れ込むと、そのまま、抱きつこうとする。

それを傍らの布団の中で観ていた洋子も、白けてしまうだけ。

洋子は、こっそり辻倉の部屋の前に戻ってみるが、中から百合子の声が聞こえて来たので入るに入れない。

布団に入っていた辻倉は、「パパ…」と甘えた声が聞こえたので、洋子が戻って来たかと思い招き入れるが、娘の洋子だと判ると仏頂面になる。

洋子は、辻倉に災難除けの置物を渡すが、辻倉はそれを「女難除け」と聞き舞えそうになり焦るが、洋子の本当の目的は小遣いの追加を要求しに来たのだった。

仕方なく金を渡し、洋子が部屋を後にした後、又「パパ…」と女の声がしたので、娘が戻って来たのかと思っていると、それは洋子だった。

洋子は、外で立っていたので、風邪をひいたらしく、くしゃみをする。

辻倉は、今しがた洋子からもらったばかりの災難除けを裏返しにするのだった。

一方、雅代子からねだられ、その気になりかけた沢村だったが、その時、突然電話が鳴り、大滝荘へ戻れと言う箱田からの連絡だった。

ひょっとしたら、鶴子未亡人がひくり返ったのか?と、慌てて、玄関口に急いだ沢村だったが、そこに来ていた箱田が言うには、招待した客の一人が飲み過ぎて、胃けいれんを起こしたらしい。

一緒に車に乗り込むと、大滝荘へ戻る事にした沢村だったが、なぜ、あの旅館が判ったのかと聞くと、箱田は、後藤福岡支店長に聞いたと云う。

さらに、寝乱れた髪を直せと櫛まで渡されたので、沢村はすっかり白けてしまう。

翌日、沢村や箱田を伴い、福岡支社にやって来た鶴子未亡人は、終戦後、福岡にははじめて来たと喜ぶ。

同行して来た八代は、この近くの島で自分は生まれたのだと打ち明ける。

そこに、電話がかかって来る。

後藤支店長は、「沢村にかよこと云う方からだが」…と、未亡人の前で言いにくそうに伝える。

沢村は、「かよこ島かな?」などとごまかしながら電話に出ると、あくまでも、旧知のクラスメイト相手の電話のように繕いながら、東中州の「ワールド」で今夜は飲み明かそうと、雅代子に伝える。

鶴子未亡人と箱田と八代は、その後、博多人形を買いに出かける。

箱田は八代に、奥様にお土産を買うんでしょう?と冷やかすが、八代は買わないと言い張る。

その頃、東京から大阪に帰って来た舞子が、土産を持って、ふみ子の部屋を訪れていた。

その夜、東中州のバー「ワールド」へ向かった沢村は、ホステスにマダムを呼んでもらう。

やって来たマダム神田のぶ子(東郷晴子)は、ちょうど店に入って来た雅代子と鉢合わせになり、互いに奇遇を喜びあう。

二人は、大阪で知り合った仲らしい。

沢村は、別府の女将に聞いて来たのだが…と打ち明け、奥の部屋で、のぶ子と二人きりで話をする事にする。

沢村は、私生児の認知は、父親が死んで3年以内でないと出来ない…と法律論で解決しようと切り出すが、のぶ子は、雑誌に売り、相手を強請る事は出来ると言い出す。

条件は、明日までに考えておくと云うので、すっかり気持が落ち込んだ沢村は、雅代子と一緒に店を出ると、もう今日は戦意喪失したので、きれいに別れようと告げるが、雅代子は、実は自分には亭主がおり、2年前から療養所に入っていたのだと正直に打ち明け、大阪からの汽車賃はどうなると云うので、すっかり白けた沢村は、自分が払うと言って、雅代子を帰すと、自分は一人、宿泊予定だった「あづま家」に帰って来る。

ところが、旅館の玄関は鍵がかかっており、叩いて中を呼び出すと、出て来た番頭(左卜全)が、今夜はお戻りにならないと聞いていたもので、馴染みの客に全部部屋を提供しており、もう部屋が残っていないと言うではないか。

八代はどうしたと聞くと、実家に帰ったと言う。

沢村が当惑していると、そこの箱田がやって来たのでどうしたものかと相談をしていると、離れに一部屋あるので、お二人で一つの部屋で休まれてはいかがと番頭が勧める。

箱田がそれで良いと了承したので、その大胆さに驚いた沢村だったが、離れの部屋で寝床に入った沢田が、接吻してくれんかと頼むと、お断りしますと返事しながら、箱田が何やら薬を飲ませる。

睡眠薬だと悟った沢村は、隣りの部屋に床を敷いて眠ろうとしていた箱田に、今日の「ワールド」での出来事を話し、明日の朝までに何か良いアイデアを考えておいてくれと頼むと、そのまま寝入ってしまう。

翌朝目覚めた沢村は、すでに箱田の姿がないので、床を上げに来た仲居に聞くと、別の部屋が空いたので、もうそちらに移られたと言う。

そこに、当の箱田が朝の挨拶に来たので、夕べの睡眠薬は良く効いたと沢村がぐちると、私は消化剤を飲ませただけだととぼけながらも、箱田は、その店は、うちの会社と特約店にするのはどうかとアイデアを伝える。

その後、箱田を連れて、再び「ワールド」へ向かった沢村は、一平(依田宣)と云う、宮口社長の御落胤をのぶ子から見せられるが、箱田も、そっくりなので、本当の息子に間違いないと確信する。

その一平が、野球を誘いに来た友達と外に遊びに行ったので、条件を聞こうとした沢村だったが、午前中、雅代子が来て、あなたがとても良い人間で、この博多で浮気をせずに済んだので、本当に好きになってしまったと聞かされたので、もう条件は出さない事に決めたとのぶ子は言う。

それを聞いた沢村は、浮気未遂の事を箱田に知られた恥ずかしさはあったが、問題が複雑化せずに済んだので、出来る限りの事はすると約束する。

その後、大阪の鶴子未亡人の家にやって来た舞子とふみ子が、自分たちの亭主の毎日の帰りが遅い事をどうにかして欲しいと相談していた。

仕入部長の江畑の所に行ったら、ここへ行けと言われたのだと言う。

毎晩のように酔って帰りが遅い亭主たちの話を聞いた鶴子未亡人は、翌日早速、沢村の元にやって来ると、今後は、会社の金を浪費しているとしか考えられない宴会政策を止めろと言い出す。

接待は一次会だけ、9時になったら帰る事。それも週に一回だけにしなさいと言う。

それを聞いた沢村は、そんな事をしたら、営業成績が落ちますと反論すると、それを落ちないようにするのが、あんたら重役の仕事ではないかと言いくるめられてしまう。

仕方なく、部課長クラスを呼び出した沢村は、その鶴子未亡人からの命令を伝える。

それを聞かされた伊勢たち仕入部は、何とか自分たちの部署だけ例外扱い出来ないかと反発して来るが、元々、酒が嫌いな江畑部長だけは、社用族なんかにはならん方が良いと釘を刺す。

沢村の所に直談判しに来た伊勢と八代は、実は二人の女房が、鶴子未亡人に言いつけに行った結果がこれだと知らされると、もう会社を辞める、離縁すると息巻くが、沢村は許さんと叱りつける。

その日、八代も伊勢も、早く家に帰る。

突然、早く帰って来た亭主たちに驚いたのぶ子と舞子だったが、夕食の準備もしていない事を叱られると、焦り始める。

今日は給料日のはずだがとのぶ子に言われた伊勢は、1000円札一枚だけ渡すと、これで2、3日やりくりしろ。その間の家計簿はきっちり確認すると言い出す。

八代の方も、1000円札1枚を舞子に渡そうとしていたが、怒った舞子は八代の頬を叩く。

伊勢の方は、逆に殴られ、いつものように廊下に逃げ出していた。

すると、そこに、沢村と箱田が来ていたので、夫婦喧嘩していた伊勢夫婦はばつが悪くなる。

取りあえず、八代の部屋に全員集めた沢村は、今日、伊勢と八代は、会社を辞める、離縁すると言い出したと妻たちに告げる。

すると、のぶ子は、この人に自分から会社を辞めるような度胸などあるはずがないと鼻で笑う。

舞子の方は、この人と別れるのは絶対嫌と言い出し、八代に飛びついて泣き出す始末。

伊勢夫婦は自室に戻り、八代夫婦には、すっかり当てつけられた沢村は、呆れて部屋を後にすると、「白鳥荘」の伊勢と八代の部屋の電気が、早くも消されたのを目にする。

どっかに行こうか?と箱田に誘いかけると、喫茶店?喉が渇いたんでしょう、お茶もでなかったからとはぐらかして来る。

二人は、夜道をとぼとぼと帰るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「新・三等重役」の続編…らしい。

らしいと云うには、もちろん「新・三等重役」の方はまだ観ていないと云う事もあるが、ストーリーを調べてみると、この続編とはかなり展開が違っている。

沢村と秘書の箱田は前編で結婚していると云う事になっているらしい。

では、前編の最後で、何か、二人が別れる事態になったのか?とでも考えないと、この作品で沢村が独身状態である事の説明がつかない。

ひょっとすると、主要キャストだけは同じで、話は全くの別物になっているのかも知れない。

「三等重役」は、元々、河村黎吉が先代社長を演じて好評を博した作品なのだが、その河村黎吉が急逝したため、急遽、課長役として出演していた森繁久彌が専務となった本作「新・三等重役」が作られ、その後は、森繁が社長となった「社長シリーズ」へと発展して行く事になる。

いわば、この「新・三等重役」と「社長シリーズ」は、「三等重役」のスピンオフ(脇役だったキャストを新たに主役とした)作品と言えなくもないような気がする。

ストーリーは、もう、後年の「社長シリーズ」のパターンがこの時点で確立しており、森繁の演芸シーンなどがちゃんと登場している。

浮気心満載の森繁の艶笑譚あり、地方ロケを交えた観光映画風の展開あり、先代社長未亡人に頭が上がらない森繁など、社長シリーズそのままの展開と言って良い。

会社が大阪にある事が、ちょっと後年のシリーズとは雰囲気が違うくらいか?

まだ、三木のり平が出ていないが、有島一郎がその役割を十分果たしているようにも感じる。

女性陣のたくましさ、したたかさに翻弄されるばかりで、頭が上がらない男たちの哀しさとおかしさ。

後編部分だけとは言え、これはこれで十分に楽しめる作品になっている。