TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

奥様は大学生

1956年、東京映画、長瀬喜伴脚本、杉江敏男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大学…

そこには色んな人がいる。(…と、大学の風景に中村メイコのナレーションが重なる)

偉い人もいますが、そうじゃない人もいます。

麻雀している学生(山本簾)、ビリヤードしている学生、バイトでドラムを叩いている学生、デモをする学生…

ラグビーする学生(宝田明)…、あ、馬場君!私のノート、いつ返してくれるの?

最近の傾向としては、女子学生が増えて来た事です。私もその一人ですけどね。

昔の大和撫子…とはいきませんけれど、流行ファッションに身を固め、ナイトを誘ったりする女学生。銀ブラかな?映画かな?

法学部の女史こと、村田トシ子(藤井洋子)から明子!と呼ばれて振り向いたのは、女子大生の神田明子(中村メイコ)

ボクに、女性開放史に出ているって言っといてと頼む女史は、既に学生結婚しており、ボクとは、彼女の亭主の事だった。

そこにやって来たけい子(香川京子)も、既に彼氏がいる契約済の女子大生だった。

明子は、やって来たボクこと、村田武夫(太刀川洋一)が、牛肉が安かったから買って来たと言うので、女史がもう夕食のおかずは買ってあるそうよと教えたので、困惑した様子。

それを見かねたけい子が、その牛肉を買ってやると助け舟を出す。

ボクが50匁で70円だったと原価で売ろうとするので、明子は50円で良いわよと値切ってやる。

その後、明子と二人で校内の掲示板を観に行くと「Kへ、合格」の文字があった。

けい子の恋人、日吉登(木村功)が、就職試験に合格したと言う意味だった。

けい子は、牛肉持参で、登のアパート「紫雲荘」へ出かける。

二人で夕食を食べながら、けい子が、就職祝いしようか?と、明子も言ってたと言うと、えびで鯛を釣られては適わないからなと登は照れ笑いする。

アルバイトの翻訳を明日までに仕上げなければならないからと帰りかけたけい子に、登が、どうして僕たち、いつまでもさよならしなければいけないんだろう?と問いかける。

特待生であるけい子は、バイト代が月3000円、2000円の奨学金を足しても、生活は苦しかったのだ。

そこに、登宛の電報が届く。故郷の父から、縁談があるので帰れと催促する内容だったが、就職祝いだと明子にはごまかす。

卒業して1年経つ登は、結婚しよう。会社の手取りは1万だけど何とかなると切り出すが、今の私には奥さんらしい事が何一つ出来ない。一晩考えさせてと言い、帰って行くけい子。

その後、登の部屋の居候している馬場忠(宝田明)が帰って来る。

登が、すき焼きを取っておいたと言うと、ラグビーで腹を空かせた馬場は、大喜びで食らいつく。

登から、先ほどまでのけい子の話を聞いた馬場は、一晩待てと云うのは脈がある証拠だ。女はじらす習性があるからなどと、判ったようにと解説する。

登は、そんな馬場に、結婚すると、お前に出て行ってもらわなくては行けないんだが…と恐縮するが、明るい馬場は、何とかなる。けい子ちゃんならナンバーワンだ。就職決まって良かったなと、心から登を祝福するのだった。

馴染みの茶店に来た明子と馬場は、マダム(黒田隆子)相手に、結婚式を開きたいので二階を貸してと頼む。

たまたま店に来ていたメガネの学生は、日吉とけい子が結婚すると聞いてがっくりする。

どうやら、彼もけい子を狙っていたらしい。

明子は、コーヒーと果物とケーキで一人百円二ならないかとマダムに頼む。

その場にいて話を聞いていた山下辰夫(石原忠=佐原健二)と岡本好子(河内桃子)も、参加させてくれと申し込んできたので、山下には写真担当になってくれと馬場が頼む。

参加人数が15〜6人になると判ったマダムは、一人80円で良いと承知する。

結婚式に出る為、散髪をして来た登がアパートに戻って来ると、又しても父親からの電報が届いており「勝手にしろ」と書いてあった。

馬場が手伝い、スーツに着替える登は、父親からの祝電だとごまかす。

喫茶店の二階で始まった結婚式では、まず、堀教授(坂内英二郎)の挨拶から始まる。

愛弟子たるけい子君は、学生女房としても、その典型足らん事を祈ると云うものだった。

続いて友人代表で馬場が立ち上がり、そもそも、登るとけい子のなれそめを語り出す。

学年末の英文学の試験の時、難問題だったため、答えをかけなかった登の隣りに座っていたけい子が、カンニングをさせてくれたのがきっかけだと言う。

自分もその時、隣りの女子学生にカンニングを願い出たが、あっさり断られたので、何も書かずにさっさと試験会場を後にしたとも付け加えると、同情はいつしか愛情になって、この日に至ったのであります。けい子ちゃんファンだった、島田、細川、須山、諦めろよと同席した男子学生たちに釘を刺して語り終えると、全員で二人にエールを送って会を終える。

かくして無事結婚式を終えた二人は、互いにしっかりやって行こうと誓い合って、翌日から、二人一緒にデパートを出かける。

そんな二人の姿を見送るアパートの奥さん連中は、さっぱりしてるし、家事も交代制でやっているらしく、男女平等ねとうらやましがるのだった。

通勤途中、バスが故障して、会社の遅刻した登は、課長(瀬良明)に叱られ、庶務の封筒の宛名書きの手伝いを命じられる。

大学では、明子がけい子にあれこれ新婚生活の事を聞きたがる。

けい子は、登は毎日、株券の数を数えたりしているらしいと答え、経済学も役に立たずか…と嘆息する。

そんなけい子に明子は、当番制など止めて、うんと慰めて、うんとサービスするのよ。今度、お料理教えてあげるから、その代わり、英文学史を教えてねと頼む。

次の日曜日、明子がけい子のアパートにやって来て、ビーフシチューを作ると言い出す。

馬場君も来ると言う。

その頃、大学のグラウンドで、馬場と一緒にラグビーをしていた登るの元に、私立探偵社のバイトをしていると云う後輩杉山正(加藤春哉)が近づいて来て、郷里は長崎で、お父さんは漁業をやってますね?と聞いて来る。

そうだと登が答えると、実はお父さんから調査依頼があったのだと言う。

金を欲しがっているのだと気づいた登が、自分も調査費を出すと答えると、実は、同棲している女性の素行調査なんですが、先輩の都合の良いように報告しておきますと杉本は約束する。

アパートに帰って来た登と馬場は、明子が作ったビーフシチューを仲良く食べる。

明子は、自分はお嫁の口がないから大学へ行っているようなもので、本当は学問なんて興味がないと言う。

その夜、家計簿をつけていた登は、家からの仕送りを当てにしていたのがまずかったと反省する。

仕送りが途絶えた原因が自分にあると分かっているけい子は、やっぱり、私の事、家では許して下さらないのねとため息をつくと、その夜も、寝ないで翻訳のバイトをやり始めたので、登も手伝う事にする。

しかし、翌日はその徹夜が祟って、会社ではあくびを連発するはめに。

そうした登の様子を常日頃観察していた同僚の河上美智子(北川町子)は、あくび7回目よ、顔を洗ってらっしゃいと優しく声をかける。

けい子の方も、女性開放史の授業中、明子の隣りで居眠りをしているので、それを見た堀教授は苦りきった顔になる。

次の日曜日、アパートで一人、翻訳を続けていた明子は、見知らぬ中年男が玄関口に立ったので、ガス屋と思い込み、明日にしてくれと追い返そうとする。

しかし、その中年男は帰ろうとせず、登はおらんのか?わしは登の父親だが…と言うので、驚いたけい子は失礼を詫びて中に招き入れると挨拶をするが、気まずい空気が流れるだけ。

父、松之助(藤原釜足)は、D-ラインの事で、水産界の陳情で上京したのだと言うが、後は会話が続かない。

いたたまれなくなったけい子は、登さんを呼んで来ますと部屋を出ると、明子に電話をかけ、この窮状をどう打開するか相談する。

明子は、好印象を与える事。まずはお酒を飲ませなさいと勧めるが、けい子がゲルピンだと知ると、おじさんから1000円借りて、大学のグラウンドへ向かう。

そこにいた登を呼ぶと、お父さんの好きなものは?と聞く明子。

訳も判らず、登が、「千枚漬けに下関のウニ、焼き鳥…」などと答えると、あなたのお父さんが来ているわよと明子は教える。

夕方になり、暗くなったので、自分で部屋の電灯のスイッチを入れた松之助は、明子とけい子が酒の燗を付けているのを知り、構わんでくれと声をかける。

そこに、馬場と一緒に登が帰って来たので、玄関口で明子が、封建的に振る舞うようにとアドバイスする。

その言葉に従い、登は、父親の前では亭主関白な態度を取って見せる。

そこに、山下と岡本好子がやって来て、先日の結婚式の写真が出来たと、アルバムを披露する。

それを見た松之助が、仲人は誰だと聞くと、登は出席者全員が仲人だと云う。

松之助は、けい子に金を渡して酒を買いに行かせようとするが、明子が買って来ると出かけて行く。

その夜、松之助と並んで床に付いた登だったが、けい子が徹夜で翻訳をやっているのを見ると、そっと起きて来て、けい子の肩にコートをかけてやるのだった。

登は、今日は大変だったね。予定を狂わしちゃって…と詫びると、けい子は、あなた、風邪をひくから、先にお休みになってと答える。

そんな仲睦まじい二人の会話を、布団の中から、松之助はじっと聞いていた。

翌日、大学にやって来たけい子は、お父さんは登が駅まで送って行ったと明子に報告する。

東京駅にやって来た松之助と登は、電車の時間まで、駅構内の喫茶店で時間を潰す事にする。

松之助は登に、あの娘と別れてもらえんか?母さんが、本家の八重ちゃんとお前を添わせると云う頭があるから…。けい子さんの身元を調べさせてもらったが、あの人は両親もいないし、兄さんが都庁に勤めているだけ。本家の八重ちゃんも、お前と一緒になれるとばかり思い込んでいるので可哀想で…と語りかけるが、いわでもがなの事だったと諦める。

そして、土産を持って行かんかったが、これでセーターでも買えと、金を手渡す。

アパートに帰って来た登は、机に突っ伏して寝ているけい子の姿を発見する。

コートをかけてやり、電灯をつけると、けい子が目覚めたので、たまには外で飯でも食べないかと誘う。

お父さん、何か言ってた?と聞くけい子に、良い娘だって言ってたよとごまかした登は、セーターでも買えと5千円もらったよと見せると、けい子は、このお金、他のものに使ってはいけない?と聞く。

何に使うのかと聞くと、ガス代、電気代、それから…とけい子が考え出したので、それは悪かったと、登は謝る。

私って、奥様業ダメねとけい子がため息をつくので、疲れているんじゃないか?学業と主婦業じゃ大変だからなと、登は同情する。

けい子は、このお金の半分は家賃にして、残りで映画を観に行かない?馬場ちゃんから学生証を借りれば、あなたも50円割引になるからと言い出す。

しかし、翌日、大学の授業で、当てられたけい子は答える事が出来なかった。

休み時間、学生結婚している女性たちが溜まって、結婚話をしていた。

村田トシ子女史は、愛情の美名の元に我慢をするのは予想と力説する。

夫婦が共に耐え忍ぶなんて一心同体説は古いとも言い、先ほどから一言も発言しないけい子に話に加わるよう勧めるが、けい子は乗って来ない。

そこにやって来た明子が、両者の意見のジャッジをしてやると提案するが、恋人すらいない明子は相手にすらされなかった。

そこに、近々試験があると発表されたと、女学生が報告に来る。

その日帰宅して来た登は、会社で女の子から、ボクのシャツのカフスが二日間も取れたままだと指摘されたと苦笑いする。

しかし、けい子の試験が間近である事を知っているので、試験の間は当番制は廃止すると提案し、お茶を入れてやったり、試験のアドバイスなどをし始めるが、すぐに、かえって邪魔な事に気づいて止める。

翌日、登るは会社で、慣れない算盤に悩まされていた。

おまけに、伝票の数字を一けた間違えていたと、又しても課長にどやされてしまう。

大学出ても、伝票一つ書けないんだから…とまで嫌みを言われ、唇を噛み締める登。

休み時間、屋上にいた登に近寄って来た河上美智子は、あの課長は、学校を出ていないので嫌みを言いたがるのよと慰め、その場で、登のシャツのカフスを繕ってやる。

その夜、登は珍しく泥酔してアパートに帰って来る。

驚いて介抱しようとするけい子に、酔った登は、ボクの奥さんは最高です。

ボクには封筒の宛名書きが一番合っているんですと言いながら、けい子や訳していたシェークスピアの原書を読み始めるが、一体こんなもの、何の役に立つんです。伝票一つ書けないんですからと愚痴りながら、その場に寝てしまう。

その袖口のカフスが繕ってある事を目に停めたけい子は、じっと考え込むのだった。

翌朝、目覚めた登は、台所で朝食を作っているけい子の姿を見て、試験は9時からだろう?と心配して声をかける。

けい子は、あなたの言う通りよ。奥さんには、女性開放史なんて必要ないの。私は、学生女房の手本になろうとしていたけれど、所詮、炊事も裁縫も出来ない。何もかも中途半端。勉強もバイトも主婦業も…。私はあなたを大切にしたいのと答える。

「なら…」と登は反論する。

ボクは、むきになって勉強しているけい子が好きなんだ。いつも学んでいるから新鮮なんであって、ボクはそんなけいちゃんが好きなんだと言う。

それを聞いていたけい子は、胸が一杯でごはんはいらない。行って参りますと学校へ行く。

そんなけい子を二階から見下ろしながら、登はエールを送る。

大勢の中ですもの、こんな学生女房がいたって良いでしょう?(…と、中村メイコのナレーション)

あら!焼いているからだっておっしゃりたいの?そんな事はないわ!

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルから、「奥様は18歳」のようなラブコメを想像していたが、内容は意外にも、真摯に学生結婚の大変さを描く真面目なものであった。

真面目と言っても、決して退屈なものではなく、明朗な若者映画と言った所だろうか?

登場人物たちは、皆、当時の東宝新人たちで、はち切れんばかりに若々しいが、ベレー帽をちょこんとかぶった中村メイコの愛らしさには驚かされる。

決して美人と云うタイプではないが、憎めないキャラクターで、当時はアイドル的な人気だったと云うのも頷ける。

木村功も 香川京子も、決して、派手なイメージの人ではないので、慎ましやかな二人の生活を、大人の目線で温かく見守りながら撮りあげたと云った印象の作品になっている。

それにしても、親に頼らず、学生同士で結婚式を挙げてしまうと云う描写は、実際に当時、流行っていたのかどうかは知らないが、今観るとかなり新鮮である。

いつも、登の事を注視している会社の女子社員(北川町子)の存在は、何か起こるのではないかと期待させるが、特に、奇妙な色恋沙汰などにはならず、きわめて好ましい関係のまま終わっているのは時代性なのかもしれない。

特に、大きな事件や意外な展開はなく、全体的に地味な印象なのだが、ほのぼのとした気分にさせてくれる作品である。