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七つの顔の女

1969年、松竹大船、宮川一郎脚本、前田陽一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

刑務所の中で体操をする受刑者たちが、所内の煙突の上に登っている一人の受刑者を見て驚く。

煙突には「囚人にも恋愛の自由を」と書かれていた垂れ幕がかけられていた。

それを部屋の窓から見ていた刑務所長(三井弘次)は、将棋をしながら、相手にするなと鼻で笑っていた。

すると、その煙突に一機のヘリコプターが接近して来て、その煙突男を縄梯子で救出すると、そのままどこへともなく飛び立ってしまったので、刑務所長ははじめて慌てる。

ヘリコプターを操縦したのは学者(緒形拳)、救い出された受刑者69号は錠前屋(有島一郎)だった。

ストリップ小屋にやって来た学者は、もぎりをやっていた印刷屋(西村晃)に、入場料700円の所に1万円札を出してみせ、自分に気づかせる。

印刷屋は「大丈夫だろうな?」と新しい仕事への不安を打ち明けながらも、久しぶりに帝国海軍の軍服を出して来る。

それに気づいた印刷屋の情婦らしき踊子が、行かないでとせがみながらも舞台に出て行く。

錠前屋と印刷屋を集めた学者は、お嬢さん(岩下志麻)は今、城所雪子と名乗る水着デザイナーとして、日東繊維の実権を握っている小沢専務(山田禅二)に取り入っていると教える。

そのお嬢さんの秘書と云う形で同行している坊や(左とん平)が、杉山エミ(杉山エマ)と云うモデルに熱を上げているのがちょいと心配だが、小沢専務も又、エミにも気があると云う。

それを聞いていた印刷屋は、女に深入りは行かんぞと呟く。

経理課長(田中賤男)に靴を磨いていた少年(岩下志麻)は、世間話をするように、星田造園は日東繊維のトンネル会社なんだって?と無邪気に聞く。

料亭で骨董を買おうとしていた経理部長(今井健太郎)には、お座敷に呼ばれた芸者に化けて近づくと、自分の仲間のギター芸者は1億円くらい稼いだらしいけど、税金逃れに骨董などを買わずに、金の延べ棒にしたんですってと話しかける。

病院に入院していた常務には、看護婦に化けて近づいたお嬢さん、現金のまま持っておこうと経理部長と話していた内容を、ベッドの下に仕掛けておいたテープレコーダーを回収して知るのだった。

お嬢さんは、日東繊維は、星田造園を使って5億の裏金を作ったのだと、合流した学者、印刷屋、錠前屋に報告する。

錠前屋は、自分の勘が衰えてないかどうか試すと言い出し、自ら目隠しすると、お嬢さんにその場で適当に電話をかけさせる。

そのダイヤルの戻る時間で、錠前屋はぴたりと回した数字を全部当ててみせ、勘が衰えていない事を証明するが、電話を切ろうとしたお嬢さんは、「はい、淀橋警察署です!」と電話の応答があったのでびっくりし、全員あまりの偶然に笑い出す。

翌日、学者に案内され、日東繊維に出かけたマッサージ師に化けた錠前屋は、経理部長の身体をわざと乱暴にもみ、部屋から追い出すと、こっそり、隣りの部屋の金庫を覗き見て、あれなら大丈夫だと確信する。

その頃、小沢専務に寄り添っていた杉本エミは、デザイナーとして一本立ちしたいので、2000万あれば、日東繊維のチェーンと云う名目で店を開ける。応援してくれないかと甘えていた。

そこに、地下ボウリング場にいた城所雪子ことお嬢さんから電話が入り、会いたいと小沢専務を呼び出す。

帰りかけた錠前屋は、エレベーターで上がって来た本物のマッサージ師と出くわしたので、そのままエレベーターの中に本物を押し込みながら、今日は部長さんはいないと嘘を教えて帰らせる。

小沢専務とボウリング場で会ったお嬢さんは、良い店を見つけたので、2000万は払ったのだが、後1000万足りない。援助して頂ければ、オタクの会社のチェーン店と云う形にしたいと持ちかける。

小沢専務は、13日に2000万円出すのでどうだと快諾する。

学者と印刷屋は、奪った金の隠し場所として考えていた、東京湾の無人島である海堡(かいほう)に渡ってみる事にする。

ところが、二人が、島に穴を掘る工具などを持ち込んでいた時、突如大音響が聞こえて来る。

見ると、グループサウンズ(ザ★リガニーズ )のような連中が演奏しているではないか。

マネージャーらしき人物に何をしているのかと聞くと、合宿だと言う。

学者は、10日間だけこの島を貸してくれないか?金と仕事を世話するぞと持ちかけ、手付金を渡すと、自分たちは全員孤児なのだ、自分は5歳の時、空襲で親を亡くしたと打ち明け、印刷屋と共に「海ゆかば」を歌い始める。

ある日、防火装置に点検と言いながら消防署員の服で日東繊維の3階経理部にやって来た学者と印刷屋は、13日の午前中に消防訓練を行いたいと社員たちに申し出る。

経理課長が、その日は重役会議があるので…と断るとすると、学者は、消防訓練は抜き打ち的にやらないと意味がないので、通常業務で構わないと答える。

その時、同じく消防署員の制服を着た坊やが遅れて合流するが、彼ら三人の様子を見ていた女秘書(有川由紀)は、どうもあの人たちは怪しい、産業スパイなのではないか?と課長に耳打ちする。

そんな中、お嬢さんは小沢専務に電話をかけ、実は今度、一日消防署長に選ばれたので、消防訓練の場所としてお宅の会社を推薦しておきましたと伝えていた。

専務は直ちに、その事を経理課長に知らせたので、課長は学者らに13日で結構ですと返答し、女秘書には誤解するなと注意する。

しかし、納得いかない女秘書は、坊やをタクシーで尾行してみる事にする。

すると、坊やは、地下道で普段着に戻ると、そのまま杉本エミのマンションに向かう。

シャワーを浴びていたエマに言い寄ろうとする坊やは、金は何とかすると良い所を見せようとしていた。

しかし、エミは、そんな坊やを頼りないと感じていた。

印刷屋は、本物の紙幣と交換する偽造紙幣を印刷しながら、本当に12日には金が入るんでしょうね?と学者に確認していた。

その12日、学者は、小沢専務立ち会いのもと、日東繊維の金庫に運び込まれる2個のジュラルミンケースを、近くのビルから双眼鏡で観察していた。

一方、印刷屋は、18〜33歳までの若者に、2時間に2千円になるアルバイトをやらないかと集めていた。

内容は、防火訓練をするので、発煙筒を持って走ってくれれば良いと説明する。

いよいよ13日当日、消防署員の制服姿で日東繊維に乗り込んだ学者は、その日の手順などを説明し始める。

錠前屋と坊やは、発煙筒を会社内に隠していた。

その頃、お嬢さんは、消防車を一台貸して欲しいと消防署に掛け合いに行っていた。

消防署は、お嬢さんの美貌にだまされ、オンボロの給水車なら一台あると、あっさり貸してくれる。

なかなか消防車が到着しないので、学者の演説は長引いていたが、三階の人事課で発火したので、全員、三階より下に逃げて下さいと説明していた。

坊やは金庫が置いてある階に発煙筒を撒き始め、その間、錠前屋は金庫を開け始める。

そこに、金庫の中の金を心配した経理部長や課長がやって来たので、坊やが下に降りてくれと追い返す。

その時、錠前屋は金庫を開け、中に入っていたジュラルミンケースを取り出すと、偽札を入れた別のジュラルミンケースを金庫の中に入れていたが、ケースを運ぶように命じられた坊やは、まだ、その入れ替えをしていないと勘違いし、又、本物のジュラルミンケースを金庫の中の偽物のケースと入れ替え、偽物のケースの方を持って逃げ出してしまう。

非難袋を通って下に降りた坊やと錠前屋は、ジュラルミンケースから札束が少しはみ出していたり、付け髭が落ちていたりとひやりとさせるような目にあうが、何とかごまかして消防車に乗り込むと、その場を退却する。

ビルの上の窓からは、何も知らない小沢専務が、消防法被を来たお嬢さんに礼を言いながら手を振っていた。

お嬢さんのマンションに戻って来た一行は、早速ジュラルミンケースを開けるが、中に入っていた札束を見た印刷屋は、一目でそれが、自分が印刷した偽物だと見抜く。

坊やがへまをした事を知った印刷屋は、坊やを殴りつける。

お嬢さんは、もう一度やるしかないと嘆息する。

そこへ、小沢専務から電話がかかって来る。

消防訓練への礼を言う内容だったが、その時、誰から小沢の元にやって来たらしく、電話が机の上に置かれる。

実は、杉本エミを抱いていた小沢の元に、経理部長がやって来たので、エミを遠ざけたのだったが、部長の用事は、例のジュラルミンケースを横浜に変えた方が良いのではないかと云う進言だった。

お嬢さんは、電話口から聞こえて来るかすかな小沢たちの会話をテープレコーダーに録音し、それを錠前屋に聞かせるが、さすがに声が小さすぎてはっきり判らない。

蓄音機用のラッパをテープに取り付け音を拡大してみると、何とか内容を知る事が出来た。

お嬢さんは、「横浜」とは、元社長の屋敷で、今は幹部たちの寮として使われている家の事だと教え、もう手は考えてあると言い出す。

横浜のとある交番では、婦警に、痴漢容疑で掴まった男がしきりに謝っていた。

婦警に化けているのはお嬢さん、痴漢役を演じているのは坊やだった。

そんな交番の中では、武佐村から飛び出して来た奴に頭を殴られ、その後、エーテルをかがされて気絶していた屋敷のガードマン(財津一郎)が、警官に自分が襲われた時の事情を説明していた。

警官に化けた印刷屋は、そのガードマンから、屋敷の見取り図を書いてもらっていた。

ガードマンが言うには、ガードマン室とホールの間にはハーフミラーがあり、ホールの方からは鏡にしか見えないが、ガードマン室の方からは透けて見えるのだと説明する。

交番を出たガードマンは、途中で、電車賃を持っていない事に気づき、交番で借りようと引き返すが、不思議な事に、交番そのものが消え失せていた。

交番もそっくり、作り物だったのだ。

ガードマンから入手した屋敷の見取り図を検討した学者は、金の隠し場所は地下室だと見抜く。

横浜の屋敷にいた小沢専務に城所雪子として再接近したお嬢さんは、来月、ヨーロッパ旅行に行くのだと嘘を教えると、自分もヨーロッパに行く事になっており、その壮行会をかねて、港祭りの夜、屋敷で仮装舞踏会をやるので参加してくれと誘われる。

その申し出を受けたお嬢さんは、屋敷の中を案内してくれとねだる。

廊下には赤外線センサーが仕掛けられおり、それに身体が触れると直ちに警報ベルが鳴る。金庫前の床には圧力センサーが仕掛けられており、何かが立ち入ると警報が鳴る。金庫を開けるには、連動した時計を5時に合わせるしかないなどと小沢専務は説明してくれるが、それをお嬢さんは小型トランシーバーで、錠前屋に送信していた。

その夜、お嬢さんのマンションに集合した仲間たちは、錠前屋が来ない事に気づき、ひょっとしたら、抜け駆けしたのではないかと怪しむ。

遅れてやって来た坊やが、ソファーに置かれていた手紙を発見、中には、一足お先に頂くぜと錠前屋からの書き置きがしてあった。

学者は、今、10時45分である事を指摘し、錠前屋は抜けていると嘲笑する。

金庫は、11時を過ぎると、電子装置が働き、朝まで開かなくなるのだ。

そんな短時間に、錠前屋が一人で金を盗み出せるとはとても思えなかった。

その想像通り、屋根から細い排気口を抜け、金庫の中に入った錠前屋は、札束のつまった袋を三つ発見して喜んでいたが、11時になったので金庫の扉が閉まってしまい閉じ込められた事に気づく。

その頃、ガードマンと親しい女秘書は、消防訓練以降、独自に調べた怪しい事柄を記したメモを見せ相談していたが、単なる、ミステリ好きの妄想だと相手にされなかった。

お嬢さんは、トランシーバーで、合い言葉の「生麦生米生卵…」と錠前屋を呼び出そうとするが通じない。

諦めかけていると、トランシーバーから、錠前屋が歌う「海ゆかば」の歌声が微かに聞こえて来る。

トランシーバーが通じないので、床に放り投げていた錠前屋がやけになって歌っていたのだ。

学者が呼びかけると、ようやく錠前屋が答える。

お嬢さんは、港祭りの日までの四日間、金庫の中で待ってなさいと嘲り、印刷屋は反省しろよと声をかけ、自分たちは新たな侵入計画を話し合う。

狭い通風口は、痩せた錠前屋しか通れないので、同じ侵入方法は無理な事が判る。

お嬢さんは、仮装パーティは3時頃あるので、ガードマンのいる隠し部屋に入って、2時間時計を進めてみると言う。

そこに、坊やが、ヒガシマルうどんスープで作った夜食のうどんを持って来て全員に振る舞う。

その声をトランシーバー越しに聞いていた錠前屋は、腹の虫が泣くがどうしようもなかった。

四日後、港祭りで国際仮装行列が行われる日、お嬢さんは学者、印刷屋を伴い、小沢専務のフランス行き歓送会に仮装用の仮面を付けて参加するが、その姿を見かけた女秘書は、どこかで見た事がある男たちだと気づき怪しむ。

その頃、坊やは、屋敷の屋根の上に上っていた。

女秘書は、ガードマンの隠し部屋に入ると、油断をしないようにと指示を出す。

仮面を付けたお嬢さんは小沢専務と、学者と印刷屋もそれぞれ、パートナーを見つけて踊っていたが、やがて3時になろうとしていた。

お嬢さんは、隠し部屋との間のマジックミラーに立つと、わざと色っぽいポーズを取り、こちらを見ているはずのガードマンの気を惹こうとする。

その頃、学者と印刷屋はホールを抜け出すと、地下に向かい、赤外線を慎重に通り抜けて金庫に近づいていた。

ロケット花火に付けたロープ付き吸盤を発射し、天井に吸着させると、そのロープで圧力センサー付きの廊下を飛び越え、無事金庫の前に到着する。

その時、坊やが、電気線を切断し、屋敷は停電状態になる。

お嬢さんはその隙に、隠し部屋の中に侵入しようとするが、中で女秘書が、ガードマンから言い寄られ、「許せないわ!」とビンタをしている最中だった。

中に入れない事に気づいたお嬢さんは仕方なく、元のホールに帰って来ると、椅子に座るしかなかった。

停電はすぐに復旧し、杉本エミも部長と酒を飲みはじめる。

そんな中、ガードマンは退屈なあまり、自分で勝手に時計を2時間進めてしまう。

柱時計の針が動いて5時になったのに気づいたお嬢さんは、驚くと共に喜ぶ。

学者と印刷屋は、金庫の扉が開いたので中に入り、よれよれ状態になっていた錠前屋と金の入った袋を三つ持ち出す事に成功する。

排気口の所に来た学者の印刷屋は、音で屋根の上にいる坊やに知らせ、坊やは排気口の中に偽札をばらまく。

それを下で拾い集めた学者と印刷屋は、袋の中の本物の紙幣とすり替えるが、圧力センサーの事を忘れ、一枚床に落ちた紙幣を拾おうとする錠前屋を必死に止める。

その一枚は掃除機で吸取る。

坊やは、本物の紙幣がつまった袋を紐で引き上げ、最後には、錠前屋の身体も紐で引き上げる。

その頃、ホールでは、女性歌手(伊東きよ子)が唄を披露していた。

その後、学者と印刷屋は、又仮装用の仮面を付けてホールに戻ると、待っていたお嬢さんと成功を祝す乾杯をする。

その後、お嬢さんは、明日のテレビの「朝の訪問」に出なければいけないのでと小沢専務に嘘を言い、会場を抜け出すと、坊や運転の車に乗り込み屋敷を後にする。

その時、女秘書は、柱時計が2時間も進んでいる事に気づき小沢専務に知らせる。

それを聞いた小沢専務は、まさかと思いながらも心配になり、経理部長、課長の二人を伴い、地下室の金庫の所に行くが、札束の入った袋はちゃんと置いてあったので安心する。

その頃、隠し部屋で寝ていたガードマンを起こした女秘書は、時計を元に戻すよう叱りつける。

その結果、金庫の扉は閉まり、中で喜んでいた小沢専務や経理部長と課長は、閉じ込められてしまう。

港祭りの仮装行列。

石川五右衛門やシルバー船長に扮し坊やや印刷屋が乗る自動車を、見物客に混じっていた女秘書は不審そうに見送っていた。

マンションに戻って来たお嬢さんたちは、手にした大金を5人平等に山分けしながら、互いに隠し場所には気をつけ、まだ気を緩めないようにと念を押す。

その後、全員、ゴーゴークラブに繰り出し踊り出した5人だったが、学者と印刷屋は、演奏しているのが、いつか海堡で出会ったグループサウンズである事に気づき、手を振って挨拶するのだった。

その後、海堡にやって来た学者と印刷屋、坊や、錠前屋は、海上保安庁の人間に、あそこはもうすぐ爆破されるので近づいてはいけないと止められる。

驚いた学者と印刷屋たちは、他の場所から、海堡に近づく方法を探しまわるが、どこも海上保安庁の人間でがっちり固められており、もはや海堡に近づく事は不可能と察する。

錠前屋と坊やの分も含めた大金を、全部、海堡に隠していたのだ。

その頃、過去80年間、東京湾を守って来た海堡が間もなく爆破されると云う実況中継を、お嬢さんはテレビで観ていた。

やがて、海堡は、学者や印刷屋が対岸から見守る中、爆発して沈没してしまう。

その海面には、大量の札束が浮かんでいた。

がっかりした4人はお嬢さんの元に帰って来て事情を話すが、お嬢さんはすまなそうに、自分の分は孤児院へ寄付してしまったのだと打ち明ける。

私達、全員孤児でしょう?ゼロから出発舌から、まあ、ゼロに戻ったのね…と、お嬢さんは嘆息する。

新聞には、1億円が孤児院に寄付されたと大きく報じられていた。

その後、5人は外国行きの船に乗っていた。

学者は、結果はともかくとして楽しかったなと笑い、次は何をしようかとお嬢さんに語りかける。

お嬢さんは、ゆっくり考えるわ…と、笑顔で答えるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

イタリア映画「黄金の七人」(1965)を連想させるような犯罪映画。

タイトルから連想すると、片岡千恵蔵の多羅尾伴内のように、岩下志麻が次々と変装して大活躍しそうな感じなのだが、変装を楽しめるのは冒頭部分だけ、後は、ほとんど同じ人物として登場しているのがちょっと残念。

松竹映画だけに、金をかけた豪華な感じはしないが、それでも、当時としてはかなりがんばっている方ではないだろうか。

何しろテンポが良い。

日東繊維に取り入り、消防訓練に隠れて大金を奪おうとする計画が見事に失敗すると言う前半部分から、舞台を横浜に変え、最新防御システムに守られた金庫から大金を奪うと云う二段構えの趣向になる訳だが、大仕掛けな前半に比べ、後半の仕掛けがややちんまりしてしまっているのがちょっと気にならないでもないが、そこそこ気楽に見ていられるサスペンス展開になっている。

途中から登場し、ずっと学者らの動きを怪しんでいる女秘書が、何か、後半のどんでん返しの伏線になるのではないかと期待していたが、特に、大きく筋に絡む事もなかった点や、お嬢さんが計画した時計進め作戦が巧くいかず、失敗するかと思い気や、あっさり、ガードマンが、深い理由もなしに時計を進めてしまったりと、安易な部分も感じられるが、全体としては上手くまとめた話になっていると思う。

特質すべきは、松竹映画らしくなく、ベタベタした人情ドラマが一切なく、最後までからっとしている事だ。

この手のサスペンスコメディのネタ元である洋画の影響なのだろうが、今観ても好ましい。

さすがに岩下志麻だけに、お色気描写こそ全くないが、サバサバした姉御肌のお嬢さんを楽しそうに演じている。

その足りないお色気部分を補う為にキャスティングされているのが杉本エマなのだろうが、こちらも、途中からすっかり存在感が薄れてしまっているのが惜しい。

緒形拳、有島一郎、西村晃、左とん平らは芸達者だけに、安心して観ていられる。

ゲスト出演的な歌手の伊東きよ子、グループサウンズのザ★リガニーズ、タイアップと思われる「シマダヤのうどんスープ」の登場など、いかにもB級感溢れる松竹作品ではある。