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黒い傷あとのブルース

1961年、日活、山野良夫原作、山崎巌脚本、吉田憲二脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜、欧風レストラン「VIOLET(ヴィオレ)」の前に佇むヤクザの渡三郎(小林旭)は、店に入るべきか帰るべきか迷っていた。

どうしてこんな事になってしまったんだろう…渡は5年前に思いを馳せてた。

渡は、横浜の堤組に所属していたが、ある夏の日に、弟分の丈二(郷鍈治)から親分(松本染升)が呼んでいると教えられる。

親分の話は、古い友人である神戸の小牧と云う男と拳銃の取引の話があるので、神戸に向かって欲しいと云うものだった。

ゲルニカ銃が、一丁一万で手に入るので、百丁で300万の儲けになると云うのだ。

渡は、密輸に果てを出さないはずではなかったんで?と、これまでの親分の方針とは違う仕事に疑問を感じ口を挟むが、新興のヤクザに縄張りを取られたくないんだ、分かってくれと言われると従うしかなかった。

神戸に向かった渡は小牧龍造(大坂志郎)に会うが、なぜか取引の場所神戸埠頭では何ものかに襲撃され、小牧は「罠だ!」と一人逃げるが、銃弾を受け気絶していた渡が、駆けつけた刑事たちに起こされると、その周囲には取引相手が全員射殺されており、渡の手には、その襲撃に使用されたと思しき銃が握らされていた。

拳銃密売と殺人傷害の罪で逮捕された渡は、自分の手で小牧への復讐を決意、決して警察では小牧の名前は出さずに、無実の罪で服役する事にした。

そして5年の歳月が過ぎ、小牧は一ヶ月前、刑務所を出所してからすぐに、小牧探しの旅を始めたのだった。

なかなか小牧は見つからず、20日ほど経ったある日、小牧が横浜に行ったとの噂を聞いた渡は、列車で横浜に向かうが、その車中、後ろの席に座っていた若い娘からバッグを頭にぶつけられると云う出来事がある。

かつての兄貴分だった木村(稲葉義男)が開いた、横浜の港が見える場所にある喫茶店「リンデン」にやって来た渡は、先月の末に出所して来たと報告する。

木村は、二階にお前用の部屋を用意していると歓迎する。

木村は、渡を慰めるつもりか、昔の事は忘れてまともな生き方を考えた方が良い。お前が乗る船を用意したと言ってくれる。

二階の部屋に向かった渡は、そこにあったトランペットを吹いてみるのだった。

翌日、堤の妻たか(東恵美子)の住いに行ってみた渡は、家から飛び出して来た堤の息子のアキオが足を引きずっている事に気づく。

そこにやって来た丈二は、お前があんな事件を起こしたため組は潰れ、組長の命も縮めたと怒気もあらわに迫って来る。

アキオは、アルバイトで足を怪我したし、自分は今、白タクの運転手をやっているのだと丈二は言う。

堤の墓参りをした渡は、神戸で罠にかかった事情を話し、個人的に恨みを買うような覚えはないと説明すると、はじめて事情を理解した丈二は、誤解を詫び、改めて兄弟固めの盃じゃないが、良い所に案内しようと言い出す。

そこは、丈二に似合わず、欧風レストランの「VIOLET(ヴィオレ)」と言う店だった。

そこでステーキを食べる丈二と同じテーブルでワインを飲んでいた渡は、先日列車の中でバッグをぶつけられた娘に出会う。

二人に気を利かせたのか、丈二が先に帰ったので、一緒のテーブルに座って来たその娘は、この間は、バレエの公演で大阪から帰る所だったのだと説明する。

渡にバレエのチケットを買ってもらおうとした娘は、渡の事を、女を探しに来たのね?恋人になってみようかしら?などと生意気なことを言う。

名前を名乗ろうとしない娘のバッグに「YK」と云うイニシャルだけが見えたので、渡の方も「SW」とだけ名乗って別れる事にする。

雨の中、傘に入らず一人帰る渡に、娘は「放射能の雨に濡れてらっしゃい」と冗談を投げかける。

ある日、渡は、堤組に代わり、新たに縄張りを手にした男が経営するクラブ「ブルー・ムーン」にやって来る。

そこで、かつて三流キャバレーの社員だった月田(近藤宏)から、社長の茂原(神山繁)を紹介される。

茂原は渡を社長室に迎えると、家で働きませんかと低調に勧めて来るが、渡は辞退する。

そんな渡は、「リンデン」から、電話帳に載っている「小牧」姓の家に電話をかけまくるが、なかなかあの小牧には巡り会えなかった。

そんなある日、バスに乗って外出していた渡は、通りを走るトラックの運転手があの小牧である事に気づき、あわててバスを降りる。

走り去ったトラックの横に「太陽スーパーマーケット」の文字があったので、近くの公衆電話の電話帳を使い、その店の住所を突き止める。

そんな渡は、自分を監視している靴磨きがいた事など気づくはずもなかった。

目的の「太陽スーパーマーケット」に出向いた渡はようやく、探しあぐねていた小牧に出会うが、そんな渡を監視しているサングラスの男がいた。

マーケットの店主になっていた小牧は、突然の渡の出現に驚いたようだったが、悪びれた風もなく、二階の応接室に案内する。

小牧は、金庫を開ける振りをして銃を取り出すと隠し持った上で、渡に対峙すると、女房が死んだので、神戸の土地を売って横浜に来た。私の事を良く黙っていてくれたと礼を言う。

そんな小牧に渡は、堤組長の家族の面倒を見るため、500万出してやってくれと頼むが、小牧はそんな義理はないと拒絶する。

しかし、渡の気迫に押される形で、それだけの金を作るには時間がかかると弁解するが、その時、部屋に入って来たのは、いつしか欧風レストランで別れたあの娘だった。

彼女こそ、小牧の娘、小牧洋子(吉永小百合)=YKだったのだ。

渡の方も名乗り、三人でレストランに食事に出かける事にする。

洋子が化粧直しに席を立った間、小牧は渡に、娘は過去の事を知らないと教える。

その洋子が席に戻って来た時、もう、渡の姿はなかった。

帰って来た渡から小牧にあった話を聞いた丈二は、まさか、500万で小牧を見逃そうと云うのでは?まさか、あの娘の事で、兄貴が迷っているにでは?と疑問を口にするがマーケットを作る金があるはずがないと諭す。

丈二はトランペットを吹き、渡が歌い出す。

洋子が練習をしていた広村バレエ研究所にやって来た茂原は、クレー射撃にいかないかと洋子に誘いかけるが、忙しいと断わられる。

帰宅しかけていた洋子は、電話があったと聞かされると、又、茂原かとうんざりするが、渡からだと知ると急に喜ぶ。

クラブ「ブルームーン」で渡に会った洋子は、自分は5つの時に秋田に預けられていたが、高校を出た時に父親に呼ばれたと踊りながら過去を語る。

そんな洋子の元に茂原がやって来て挨拶をする。

洋子は、今の人は、父の知り合いでプロポーズされたのだと渡に教える。

クラブから出た渡は、サングラス姿の男が付けているのに気づき、いつまで付けたら気がすむんだと、自ら近づき、飛びかかって来た子分たちを叩きのめしてしまう。

タクシーを呼び、洋子を元町まで送らせるが、帰宅して来た洋子にバレエの衣装が出来たと持って来た小牧は、今まで、渡とどこに行っていたのだと聞き、あの男とは付き合うな!あいつはヤクザだ。昔少し世話になったと打ち明ける。

洋子は、渡さんを襲わせたのは、父さんじゃない?何か私に隠していない?何かないと、私の事を詳しく聞きたがるはずがないと問いかける。

しかし、小牧は、渡は人殺しだとしか答えなかった。

その頃、「ブルームーン」の社長室では、茂原と月田が、渡にやられた子分たちを叱りつけていた。

そこに、小牧から電話が入り、渡は、神戸の一件を嗅ぎ付けたらしい。娘が警戒していると告げる。

茂原は、私とあなたはもう関係ない。今後は親戚付き合いをさせてもらえれば…と切り出すが、小牧は手出しは頼まんと拒絶する。

渡は、マーケットの前の店主が、茂原によって、金融会社の息がかかった会社の名義に書き換えられてしまった過去を聞き出していた。

「リンデン」で、渡の話を聞いた丈二は、その登記替えが行われたのは、5年前の事件の2週間後の事だと気づく。

そんな二人の部屋にコーヒーを運んで来た木村は、海へ出たらどうかと再度勧める。

海は広い。せせこましい気持がなくなるんだと言う木村は、昔、自分は大酒飲みで、船を座礁させてしまい、部下を5人も亡くしたと過去を語ると、2人とも、明日の事を考えるんだと助言する。

そんな「リンデン」に白いスカーフをかぶった洋子が訪ねて来る。

港を渡と歩きながら、洋子が、父さんとはどんな関係?と聞いて来たので、僕にはもう会わないでくれと渡は言い聞かせる。

しかし洋子は、父の事を探るだけが目的だったの?あなたは卑怯よ!女の気持を利用するなんて!見損なったわ!と言い捨てて帰る。

取り残された渡の元に近づいて来た丈二が、小牧から金を取りに来いと連絡があったと知らせる。

後日、指定された動物園に行ってみると、呼び出しがあったので電話を取ると、それは小牧からで、手形が割れないので100万円くらい足りないので、保土ヶ谷まで一緒に行ってくれないかと頼んで来る。

小牧が先に指定された場所に到着し待っていると、車に乗った小牧がやって来て渡を乗せると出発する。

その車を、丈二が運転する車が尾行していた。

さらに、その後を、茂原の子分たちが乗った車が追っていた。

大型トラックが進路を妨害して来たので、渡が、小牧が握っていたハンドルを回し逃れる。

やがて、造成地のような場所に来た時、小牧が故障らしいと車を停める。

用心しながら車から降り立った渡に、小牧が銃を突きつけて来る。

渡は、てめえみたいな裏切り者にだまされるか。お前が俺に銃を握らせたんだ。茂原と手を組み、てめえだけ、甘い汁を吸おうと言う、その魂胆が気に喰わねえんだと言い放つ。

その時、背後に待機していた茂原の子分たちが発砲し、撃たれた渡は崖を転がり落ちて行く。

「ブルームーン」の社長室に戻って来た小牧に、茂原は洋子さんを頂きたいと申し出る。

10日後に、バレエの公演があるので、その時に婚約発表願いたいですねと、一方的に計画を告げる。

その頃、傷だらけになった渡が「リンドン」に戻って来る。

10日後、バレエの講演会が始まり、洋子は「白鳥の湖」を踊っていた。

その楽屋に、父親の小牧と一緒に現れた茂原は、洋子との婚約を発表すると言い出したので、はじめて聞いた洋子は驚愕する。

「リンデン」の店にやって来た洋子を見つけた丈二は、父さんの事でちょっと話があると近づく。

その後、帰宅した洋子は小牧に向かい、どうして渡さんを傷つけたの?自分の身を守るためなら何でもやるのね。警察に行って頂戴!と責める。

小牧は、あの男のために生活を破滅させるなんて…。あいつは俺を殺すためにハマにやって来たのだ。何もかもお前を思ってやった事なんだと弁解するが、そんな父さんの愛情なんて欲しくないと、洋子は拒絶する。

その後、茂原と外で出会った小牧は、金を渡され、洋子さんを見張るんだと命じられる。

しかし、その金を仕舞っていたはずの金庫からいつの間にか金が消えていた。

洋子がこっそり取り出していたのだ。

再び「リンドン」にやって来た洋子に、木村は、もうあの男の事は忘れろと忠告する。

海辺の船の中でトランペットを吹いていた渡を見つけた洋子は、持って来た500万円を堤さんにと手渡すと、父を許してと懇願する。

しかし、渡は、君からもらう理由は何もないと断る。

そんな渡に洋子は、父はあなたにとっては憎い相手でも、私にとっては大切な父だ。どこか遠い所へ行って!私、あなたを死なせたくないんですとすがりついて来るが、渡は、ボクらは所詮結ばれない。キミとボクは最初から会わなきゃ良かったんだと呟く。

洋子はなおも、あのレストランで待っています。あなたがいらっしゃるまでいつまでも…と告げて、船を降りるが、外で待ち受けていた月田たちに拉致されてしまう。

船に帰って来た丈二は、札束を見ると、もらっておこうよ。そんな事で気持がぐらつくなんてと言い出す。

翌日、渡と丈二はその金を持って、たかの家を訪れるが、たかは受け取れない。どうして、こんな大金が出来るの?と金の出所を疑う。

アキオも又、姉さんと母親を呼ぶ二人に、そんな呼び方は止めてくれと言う。

たかの家を後にした渡は、俺は肩の荷が降りたよ。なぜだか判らないが、それで良いんだと思う。やった所で、誰のためになるんだ。俺を卑怯と思うなら殴ってくれても良い。後は俺に任せて、船で待っていてくれと丈二に告げる。

丈二は、お嬢さんを連れて来ると言い残して立ち去る。

しかし、その直後、渡は拉致される。

小牧に茂原から電話が入り、渡が、チャペルセンターの前に向かっていると連絡して来る。

「ブルームーン」の社長室では、茂原が月田に、小牧に渡を撃たせて相打ちに見せるんだと指示を出していた。

小牧の車と月田の車が倉庫にやって来る。

その倉庫の中には、渡が待ち受けていた。

月田は、渡に銃を手渡し、同じく銃を構えた小牧と向き合う。

先に発砲したのは小牧だったが、弾は外れた。

渡は小牧に、俺たちは囲まれている。お前は奴らに利用されているんだと教え、残されたお嬢さんはどうなるんだ?神戸の二の舞踏もうとしているんだぞと告げると、さすがに罠にかかった事を悟った小牧は悔しがる。

その直後、小牧は、隠れていた子分が放った銃で肩を射抜かれる。

渡は、応戦しながら、入り口のシャッターを開けると、小牧を連れて逃げ出す。

渡は、倉庫の二階から下の子分たちを撃ちまくるが、相手の弾がかすり落下する。

しかし、その後も立ち上がると、子分たちと殴り合いを始める。

そこに茂原が洋子を連れてやって来る。

小牧は、最後の力を振り絞って茂原を撃つと、駆け寄って来た洋子に向かい、私は今まで、いつも崖っぷちを歩いている気持だった。娘には、私の歩んで来たような道を歩かせたくない。洋子!父さんを許してくれるか?と問いかけ、息を引き取るのだった。

渡は、警察署から釈放されて出て来る。

それを表で待ち受けていた丈二は、兄貴、もう前科者じゃないぜとうれしそうに言う、

神戸での事件はえん罪である事が証明されたからだ。

渡はそんな丈二に、組長の家に来てくれ、姉さんに別れの挨拶をしたいんだと告げる。

「リンデン」には「本日休業」の札が下がっていた。

木村は、お嬢さんの店で姉さんが働けるようになったと告げながら、洋子が置いて行った手紙を渡に渡す。

そこには、あの日、約束の場所に来るつもりだったって、丈二さんから聞きました。父の事は忘れる事にします。会ってくれますか?あのレストランで待っていますと書かれていた。

木村は、出航は今夜だ。どっちを選ぶかはお前の自由だと渡に言う。

その夜、欧風レストラン「VIOLET(ヴィオレ)」の前に佇む渡…

俺は自分を許す事が出来ないんだ。忌まわしい復讐の気持が父さんを不幸のどん底に落として…。君に会わなければ良かった…

そう心の中で呟いた渡は、コートの襟を立てて、切りの中に消えて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

小林旭と吉永小百合が共演したヤクザものだが、どこか外国映画でも見ているような雰囲気がある。

それも当然で、脚本家の山崎巌が日活宣伝部に誘われて観た、マーロン・ブランドの初監督作品「片目のジャック」(1961)を、当時流行っていた洋楽「黒い傷痕のブルース」を主題歌に書けと命ぜられたのが本作らしい。

「片目のジャック」では、かつて銀行強盗を繰り返していた相棒が、妻や娘がいる保安官となっていたが、そこに、主人公の脱獄囚が復讐のため現れると言う西部劇らしい。

本作では、復讐のため現れた脱獄囚に当たる役を小林旭が演じ、元銀行強盗仲間の保安官に当たる役を、大坂志郎が演じている。

大坂志郎は、どう見ても、小林旭と対等に戦えるような悪役キャラではないので、神山繁演ずる黒幕を登場させている。

小林旭演ずるヤクザと云うのも優男過ぎて、どうもそれらしくは見えないのだが、その辺はご愛嬌と云う所だろう。

初々しい吉永小百合と、若々しい小林旭とのロマンチックな悲恋物語風展開になっている。

元ヤクザであるはずの丈二が、シャレた欧風レストランを知っていたり、同じく元ヤクザの木村が、港に小じゃれた喫茶店を開いていたり、やたらと、船で海に出ろなどとロマンチックなセリフを言うのも、何となく面映い所もあるのだが、その辺も、どこかしら外国映画風に見せようとする演出意図があったのかもしれない。

後年のいわゆるヤクザ映画とは明らかに別の世界だが、日活独特のピカレスクロマンものとして、それなりに楽しめる作品になっている。