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金語楼の三等兵

1959年、新東宝、川内康範脚本、曲谷守平監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

新兵検査の会場。

入れ墨男など、色んな男たちが検査を受けている。

そんな中、噺家三遊亭金三こと山下敬太郎(柳家金語楼)は、内臓の異常はないかと医者に聞かれ、全部そろっておりますなどととぼけた答えをしていた。

中には、兵役逃れをしようと、わざと、視力が著しく悪いように偽装する男なども板が、ちょっとした事でバレてしまう。

山下も、視力検査を受けるが、「片目をつぶって、片手で塞げ」との指示に、開いた方の目を片手で隠してしまうので全く見えない。

山下のやり方に気づいた医者は「反対だ!」と叱りつける。

木田実(小高まさる)は、吃音のようだったので、丙種合格になるが、喜んだ途端、すらすら言葉が出て来たので、甲種合格に変更される。

山下も、甲種合格になったので、がっくりして泣き出すが、なぜ泣く!と審査官から問いつめられたので、慌てて「うれし泣きです!」と答えるのだった。

ある日、山下は、兵隊になるので落語会から一時遠ざかる壮行界を料亭でにぎやかに執り行っていた。

陽気に踊る山下に寄り添っていたのが、芸者の菊弥(池内淳子)

そこに、菊弥を探していた若旦那が乱入して来て、山下に寄り添う菊弥に、そいつは誰だと問いただして来たので、しつこい若旦那を嫌っていた菊弥は、とっさに「許嫁です」と答えてしまう。

若旦那は、俺のものになると云ったではないかと言いながら菊弥に迫ろうとするが、山下が殴ろうとすると、身を引いた勢いで廊下に倒れてしまう。

そこに通りかかったのが陸軍の白川大将(九重京司)で、噺家として贔屓をしていた山下と知り、気安げに声をかけてくれる。

そんな山下に、三遊亭金太郎師匠(鈴木義十郎)が、大切な儀式をさせてやると言い、とある旅館を紹介してくれたので、てっきり、神主か何かが来て、お祓いでもしてもらえるのかと思って出かけた山下は、女中たちがくすくす笑いをしているのを怪訝に思いながらも用意されていた「契りの間」と云う部屋に入る。

すると、そこで待っていたのは芸者の菊弥で、大切な儀式とは「童貞を卒業する事」だと悟った山下だったが、いたって奥手の彼は迫って来る菊弥を抱く事すら出来ずもじもじとしているので、ますます菊弥は、そんな山下の純情さを気に入ってしまう。

山下の方も菊弥に惚れ込み「理想の人に出会った」と言うので、感極まった菊弥は、あなたが除隊するまで、何年でも待っているわと約束し、二人はキスをするんだった。

いよいよ、入隊の日が来た山下は、連隊の門の前で、身体検査の時会った木田たちと再会する。

そして、菊弥も、山下を見送りに駆けつけて来る。

見送りの人々に別れを告げ、山下は門をくぐる。

まずは、小隊長の山田少尉、次いで、班長の丹羽軍曹(坊屋三郎)らの挨拶が挨拶がある。

その後、山下たち新兵は、丹波伍長(丹波哲郎)による敬礼の仕方を習う。

すると、山下の敬礼の仕方に感心した丹波伍長は、お前はどこの学校の出身かと聞くので、山下は、早稲田、慶應、陸橋…などと並べ立て、全部余興で行きましたと答えたので、噺家である事に気づいた丹波伍長は気に入り、自分がは厠に行っている間、お前が敬礼の訓練の指揮を執れと指示してその場を去って行く。

残った山下は、最初こそ、丹波伍長のまねをして真面目に敬礼の指導をしていたかに見えたが、すぐに調子に乗り、変わった敬礼をやってみろとけしかけ始めたので、そこに戻って来た丹波伍長からお目玉を食らう。

翌日から本格的な軍隊生活が始まる。

まずは起床ラッパで起き、食事とトイレを素早くすませた後、銃剣の訓練。

自分の服の洗濯を終えると、丹羽軍曹から、ビンタを頂戴し、小便をして寝ると云う毎日。

翌日は、軍列行進の練習をやらされるが、山下一人だけ別方向に歩き、またまた、丹羽軍曹から叱られる。

そこにやって来た小隊長がやって来て、息抜きとして、山下に一席うかがうように命じる。

仕方がないので、みんなの前に進み出た山下が、単純な小話を披露するが、誰も笑わないので、メンツを潰された小隊長は、丹羽軍曹に、笑うタイミングを指示するよう命ずる。

丹羽軍曹は、仕方なく、「笑え」と号令をかける事になる。

ある夜、銃の手入れをしている山下たちの班に,持ち物検査がこれからあるらしいとの情報がもたらされ、急に慌てた山下は、持っていた大量のあんぱんを食べ始める。

そこに、丹羽軍曹がやって来て持ち物検査を始めるが、山下の口の端に付いているあんこにすぐに気づくと、これは何だと詰問して来る。

最初はごまかそうとした山下だったが、ベッドの布団のしたに隠していた大量のあんぱんを見つけられるとすぐに観念して、実は落語をして、上官殿からあんぱんをもらったのだが食べきれなかったのだと説明する。

丹羽は、自分もそのあんぱんを喰い始め、やはり山下のベッドに隠していた手紙を見つけると、それを読んでみろと命じる。

それは、菊弥からの手紙だったのだが、中には、嫌な下士官がいると聞いていますが…と書かれており、山下の身を気遣う為か、明らかに丹羽軍曹の悪口が並べ立てられていた。

それを聞いた丹羽軍曹は激怒し、山下に、三日間の馬屋番を命じる。

馬屋番になった山下は、一人でいる事を良い事に、自分が大将になって白馬にまたがり、菊弥の元に帰る夢を妄想し始める。

座敷で、菊弥を相手に飲み始めた山下大将は、連れて来た大村少尉を、本日より大尉にしてやると言うが、料理を食べろと勧められた東山隊長が口に入れたものはアカガエルやシマヘビの蒲焼きだった。

「東山、喰え!」と白昼夢を見ながら命じてた山下の前に現れたのは、その東山隊長で、山下に一晩中の不寝番を命じる。

班の部屋の前で不寝番をやっていた山下は、やがて、飽きたので、髪を畳んだものを鼻の上に立てるお座敷芸を一人で始めるが、またまた上官がやって来て「職務怠慢だ!重兵巣送りだ!と怒鳴りつけて来たが、寝ている兵隊たちの方を指差しながら、「お静かに!」と山下が何度も注意をしたので、上官は最後には大声を出せなくなり、許してくれる。

山下たちが入隊して三ヶ月後、実戦訓練の検閲の日がやって来る。

機銃掃射の操作にもたついていた山下と馬場は、上官から、戦場だったら貴様たちはとっくに戦死だと叱られたので、その場に寝るポーズを取る。

暇を持て余した山下は、近く後ている薬莢拾いを始める。

やがて、検閲をしていた上官たちの列の所までやって来ていた事にすら気づいていない山下は、白川大将の片足をあげさせて、その下に落ちていた薬莢を拾う有様。

白川大将から「何をしているのか?」と声をかけられた山下は、以前の噺家と客だった時分のままで、「豆千代さんとは、その後どうです?」などと気安気に話しかけたものだから、大目玉を食ってしまう。

どこの所属だと言われたので、第一中隊、第一部隊、第一班でありますと答えたので、後で上官からこっぴどく叱られた丹羽軍曹は、山下をしごきまくる。

あげくの果てに、班の部屋の中で銃を並べている所を遊郭の窓になぞらえ、客寄せをやってみろと云うのだ。

山下は銃の下にかがみ込み、「ちょっと兄さん、寄ってらっしゃいよ」と女の声色で客寄せのまねをするしかなかった。

ところが、数人後にやって来た東山大尉にまで、気がつかないで、同じまねをやってしまったため、軍法会議だ!と叱責されてしまう。

いよいよ山下たちの東山中隊に出動命令が下り、志願者を募る事になる。

その時、一番最初に前に進み出たのが山下で、木田や馬場もその後に続き、やがて、部隊の大半が出撃部隊に参加を希望したので、山下の名誉は一挙に回復する。

出撃が決まった彼らは家族との面会が許され、山下は、弁当持参で会いに来た菊弥と再会を喜びあっていたが、そこに家族がいないと言う丹羽軍曹も来たので、仕方なく、弁当を食べさせるが、あまりに山下と菊弥がいちゃいちゃしているので、丹羽軍曹は呆れて立ち去ってしまう。

満州

山下は食料番になっていたが、そこにやって来た丹羽軍曹が、慰問袋が本部に届いているはずだから、それを取って来てくれと指示する。

馬場と一緒に出かけ、荷車に慰問袋を積んで帰る途中、山下は、道ばたで腹痛で苦しんでいる老婆とその孫娘と思しき若い娘に遭遇する。

山下は、片言の日本語を解する白蘭(川田孝子)と云う娘に、慰問袋の中に薬はないかと探したあげく、ようやく見つけた薬を渡し、自分は山下三等兵(二等兵にも劣ると上官から付けられた蔑称)を名乗って別れる。

ところが、部隊に戻って来た山下は、慰問袋の口が開いているのはなぜだと丹羽軍曹から詰問されるが黙っていた。

馬場が事情を話したので、山下は仕方なく、その娘は班長殿に宜しくと言っておられましたと嘘をつくと、丹羽軍曹は上機嫌になる。

慰問袋の中に入っていた手紙を読み始めた仲間たちは、それぞれの手紙を披露しあわないかと云う事になり、山下が朗読係を任される。

まず、木田二等兵宛てに来た目黒聡子さんの手紙を読む。

続いて、小森二等兵(三宅実)宛てに来た荒木持左衛門なるいかめしい名前の手紙を読み始めるが、小森は、その名前は周囲をごまかす為のもので、実は映画女優の宇治美佐子からのものであると云うではないか。

期待して読み始めた山下だったが、自分は剣道五段などと書いてあったので、女優などと云う説明は嘘だった事が分かる。

次いで、品川正子さんからの手紙を読み始めるが、それは子供からのものだった。

そうした中、突然爆発音が響き、敵が攻めて来たので、一同は部隊の玄関口に集合し応戦を始める。

すると、木田が敵弾にやられたので、怒った山下は、無我夢中で機銃を乱射しながら一人敵に向かい、敵のゲリラを追い払ってしまう。

駆けつけて来た仲間たちは、山下の勇気を褒め讃えるが、当の山下は恐怖のあまり震えが止まらず、丹羽軍曹や仲間たちが、その震えを止めようと山下の身体に触ると、全員感電したかのように震えが伝染するのだった。

夜、一人見張りをやっていた山下は、菊弥の事を思い出していたが、そこに突然、白蘭がやって来て、昼間のお礼にと、ラーメンを手渡そうとする。

しかし、山下が仕事中なのでと断ると、白蘭は、自分が食べさせてあげると、ラーメンを山下に勧める。

その白蘭が、近くで拾ったと見せた写真は菊弥のものだったので、山下はつい、その写真を何でもないとくしゃくしゃに丸めて捨ててしまう。

白蘭は、山下の頬にキスをして立ち去るが、そこに東山隊長が通りかかり、その頬の赤みは何だと聞くので、怪我をしたのでヨウチンを付けたのですと山下はごまかす。

そして、誰もいなくなると、捨てた菊弥の写真を拾い、広げながら謝るのだった。

ある日、部隊の演芸会が行われ、山下たちは「鈴ケ森」の出会いの場の素人芝居を披露する事になるが、丹羽軍曹が白井権八を舞台で演じている時、白蘭が楽屋にやって来て、悪い奴が家に来て兼ね返さなければ私を連れて行くと言っていると山下に救いを求めて来る。

舞台上では、雲助を斬った白井権八役の丹羽軍曹が、幡随院長兵衛役の山下の出番を今や遅しと待ち受けていたが、山下はいつまで経っても登場しないので、客たちも騒ぎ始めていた。

それもそのはず、山下は白蘭に連れられ、彼女の家に来ていたのだった。

そこには、いかにも怖そうな借金取りに責められているいつかの老婆が一人いた。

このままでは適わないと判断した山下は、一計を案じ、中国人の格好をして家に入ると、持っていた小道具の中華包丁を噛み切るまねをしてみせる。

さすがに、それを見た借金取りは驚いてしまい、家を立ち去ったので、山下は、白蘭と老婆から又しても感謝される。

そこに、馬場が、舞台が大変な事になっていると呼びに来る。

白蘭は、お礼にと言って、作り立ての大きな饅頭を二つ、山下と馬場に渡す。

その頃、演芸会は急遽中止になっていた。

白川大将がこちらに来る為、鉄道沿線を警戒せよとの司令が下ったからであった。

その頃、ゲリラたちは、白川大将が乗った列車が間もなく通過する鉄橋に爆弾を仕掛けていた。

そこに、何も知らずに近づいて来たのが、山下と馬場だった。

ゲリラたちは、爆弾から導火線を伸ばすと着火して隠れる。

山下は持っていた饅頭をここら辺で食っちまおうと言い出し、近くの草むらから上る煙を見つけると、誰かが焚き火をした跡だとそこに近づく。

馬場は、松子(江畑絢子)の事など思い出しながら饅頭を食べ始めるが、気がつくと、焚き火の位置が移動している。

不思議に思って、よくその煙の正体を見た馬場は、それが爆弾の導火線で、爆弾の本体は橋に仕掛けられている事に気づく。

その様子を観ていたゲリラは、邪魔が入ったと姿を表すと、山下たちが踏み消した導火線にもう一度点火すると、山下と馬場に襲いかかって来る。

馬場と山下は、橋から取り外した爆弾を、ラグビーのボールよろしく互いに投げあいながら、ゲリラたちから逃げ回る。

やがて、山下が投げた爆弾を受け取ったゲリラたちは喜ぶが、火のついた導火線が短くなっている事に気づくと又投げ返す。

それを拾った山下は、ゲリラたちのいる場所に爆弾を投げつけ、爆発でゲリラ一味は全滅する。

そこに通りかかった列車が停車し、降りて来た白川大将は、お前たちの活躍、列車の中から観ていた。二人とも一階級特進させると褒めてくれる。

再び、白川大将が乗り込み発車した列車を見送りながら、山下は菊弥の写真を取り出すと、喜んでくれと報告するのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

柳家金語楼が、自らの軍隊生活を元にして発表した新作落語「兵隊落語」をそのまま映画化した作品。

新東宝作品らしく、若き丹波哲郎や池内淳子などが登場して来る。

金語楼は、若い頃の設定と云う事なので、ヅラをかぶって出演しており、夢の中で、大将になって菊弥の元に戻って来る夢の中でだけ、本来のはげ頭になっている。

失敗ばかりしているダメ二等兵と云う事で「三等兵」と呼ばれるようになるのだが、噺家と云う事で、結構、軍隊に入っても、大目に見られていた面もあったようで、全体的にユーモラスに描かれている事もあり、新兵いじめの悲惨さはあまり感じない。

純情な山下が芸者に惚れられると言う辺りは結構嘘くさいが、男が憧れる作り話と言う事なのだろう。

夢のシーンで、池内淳子と金語楼がミュージカル風に唄を歌いあうなどと云う演出はちょっと珍しい。