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独立機関銃隊未だ射撃中

1963年、東宝、井手雅人脚本、谷口千吉監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

満州、ソ連ビロビジャン周辺の地図

昭和20年8月 ソ満国境守備隊

タイトル

8月11日

今は夏だからまだ良いけど、冬は辛いぞと言いながら、中隊指揮所から、まだ少年兵の白井春男二等兵(寺田誠)をトーチカの場所に連れて来たのは、関西弁の峯岸兵長(福山博寿)だった。

白井二等兵は、何もない地面に向かってタバコをねだる峯岸兵長の言葉から、今自分が立っている周辺に、トーチカがたくさんあるのだと云う事を聞きびっくりする。

トーチカとはロシア語で「点」と云う意味で、周辺にいくつも集まっており、最後には一つになるんだ。攻撃は前も後ろも横もないと峯岸兵長が説明する。

やがて、「指の1」とか「ネの4」「ホの8」「キの3」と書かれた方向指示版が建っており、それぞれが「司令中隊」とか各トーチカの名称だと峯岸兵長は説明した後、お前が入るトーチカは「キの3」やと教える。

扉を開けると、中では、班長の山根銀次郎軍曹(三橋達也)が、軍用電話で酒の一杯くらい寄越せと通信中だった。

峯岸兵長が連れて来た白井の姿を見た三年兵の金子源吉一等兵(堺左千夫)は、こんな子供を送って寄越すようじゃ、関東軍も酷いもんだと呆れる。

そんな古参兵を前に、白井二等兵は、所々、峯岸兵長の助けを借りながら、第二中隊に配属された挨拶をする。

同じトーチカ内にいた原昌志一等兵(太刀川寛)、渡辺子之次上等兵(佐藤允)、金子一等兵を山根班長が紹介する。

峯岸兵長山根班長に、敵は国境に侵入している。広島と長崎に爆弾が落とされ、一発で広島が消えたそうだと情報を教えるが、山根は全く信用しなかった。

原一等兵は、こんな所に攻撃して来るでしょうか?何の得もないでしょうと懐疑的な意見を述べる。

渡辺一等兵は、峯岸兵長に、まだ内地に小包を送ってもらえるか?と尋ねていたが、肝心の小包はまだ出来てないらしい。

山根班長は、新入りの白井二等兵に、取りあえず邪魔にならないようにしろと言い聞かせると、原一等兵に色々聞くように指示する。

原は白井に親し気に色々聞いて来た。

白井は、ジャムスで入隊した事。21になる姉がいる事などを話すが、それを聞いた金子がスケベそうな目つきで、姉の事を根掘り葉掘り聞き始めたので、原と白井は白けてしまう。

その時、電話のブザーが鳴り、敵が来たとの連絡があり、渡辺一等兵が機銃を構えたので、白井は緊張するが、それは演習だった事が分かりほっとする。

再び電話のブザーが鳴り、今度は側面から敵と云う事だったので、原一等兵が機銃を構え、目標確認と返事をするが、その位置を自分で確認した山根班長はいきなり原を殴りつけると、大学出か何か知らんが、分かってもいないのに返事をするなと叱りつけ、何度もビンタをする。

その後、もう一度機銃の目標を覗いた原一等兵は、野に咲く百合の花に目を奪われ、今日の教訓を日記に記すのだった。

白井二等兵は、渡辺一等兵から、機銃の弾丸の確認の仕方を叩き込まれる。

原は、落ちていた紙片を拾うと、それを読みうれしそうにしていたが、何か面白いものかと横取りした金子一等兵は、それが単なる「英和辞典」の一部だった事を知り、がっかりして捨てるが、原は又それを拾い上げるのだった。

その直後、飛行機が上空を飛ぶ音がし、機銃掃射の男が聞こえて来る。

金子が指揮所に電話を入れ、西勝山が狙われているとの状況を聞く。

その電話を受け取った山根班長は、そろそろ昼飯を頼むと連絡しながら、なぜ、味方機が応戦しないと聞く。

電話を終えた山根班長は、応戦せんはずだ。十河の飛行隊は撤退したそうだと諦めたような表情で全員に伝える。

緊急電話が鳴り、大型戦車を主力とする部隊が、ホルモジン、カタヤン街道に沿って接近、西勝山では、戦死11、負傷41が出た。戦闘準備を始めるので、郵便物の締め切りは13時との報告が入る。

山根班長は、トーチカ内の部下たちに一枚ずつ紙を渡すと、国に最後の手紙を書け、髪と爪を入れ忘れるなと命ずる。

白井二等兵は、自分が既に覚悟を決めて来ているので書く事は何もありませんと言い、だったら絵でも何でも書けと班長から言われたので、悩んだあげく、自分の手のひらの輪郭を紙になぞり始め、「靖国」の「やす」の字はどう書くのかと原一等兵に聞く。

渡辺一等兵は、カタカナで、息子のケンボウに宛てて手紙を書き、貯めた来た郵便貯金の通帳と共に小包に入れる。

金子一等兵は、爪を切ろうとして、思わず指を怪我してしまう。

そうした郵便物をトーチカに受け取りに来た郵便兵(尾小山安治)は、ソンガイが戦車隊に突破されたと山根班長に教える。

山根班長は、白井に靴を脱がせると、銃口を口にくわえさせ、足の指で引き金を引く自決の方法を教える。

ただし、これは最後の手段だからな。それも出来んようだったら、捕虜の辱めを受けるしかないと補足する。

原と渡辺は銃剣の手入れを始めるが、そこに、峯岸兵長が並木班長からだと言って、酒の一升瓶を持って来る。

峯岸兵長は、ウラジオストックの放送で聞いたが、どうやら日本とソ連は和平交渉をしているらしいとの報告をする。

それを聞いた兵隊たちの間に、このまま戦争をせずに内地に帰れるかもしれないと言う楽観論が口に出る。

山根班長が飯ごうのふたに酒をついでいると、峯岸兵長がスルメを忘れたと言い出し、取りに帰ると云うので、山根は酒の交換条件だった真新しいふんどしを持たせる。

峯岸兵長がトーチカを出た直後、爆発音が響いたので、思わず電話で本部を呼び出した山根班長だったが、応答がないので、和平交渉しようとした奴がへまをやったらしいと腐る。

その時、異臭に気づいた山根班長は、白井が糞を漏らした事を知り、その辺で処理して来いと命ずるが、トーチカの扉を開けようとした白井は、倒れ込んで来た血まみれの峯岸兵長に驚く。

山根班長は、救護班を呼ぶよう金子に命じるが、峯岸兵長の身体を調べて、電話を受け取ると、もう救護班は必要なく、死体の受け取りに来て欲しいと頼む。

その後、山根班長は、峯岸兵長が持って来たスルメを、せっかく持って来てくれたんだとやり切れなさそうにかじる。

その時、電話が入り、勝山の東北正面に敵展開と言って来たので、山根は全員に集合をかけると、車座に座らせ、腹を据えろ。このトーチカが壊れるときは最後の時だ、みんな俺に続いて唄を歌えと命じる。

近くに爆発音が響き始める中、四人は大きな声で歌い始める。

渡辺は歌いながら、そっと、峯岸兵長の顔に布をかけてやるのだった。

攻撃が一段落した後、山根班長は原に、中隊に伝令に走るよう命じるが、金子一等兵が自分が行くと言い出し、扉を開けようとするが、突然「俺は内地に帰るんだ!」と言い出す。

しかし、その直後に機銃の音が炸裂し、山根は、慌てるな!射撃用意!と命じ、渡辺が日頃の訓練通り、機関銃を撃ち始める。

やがて、指揮所から電話が入り、松本中尉から戦況報告がある。

爆撃銃撃は激しさを増し、トーチカの中にも銃弾が飛び込みあちこちが破壊される。

攻撃が止み、兵隊たちの安否確認をした山根だったが、一人、金子だけが返事がないので、その身体を確認するが、死んだかのように倒れていた金子は気絶していただけだった。

それを知った渡辺は、金子の身体を踏みつけ始めたので、原が同じ戦友じゃないかと止める。

渡辺は、誰だって怖いんだ。怖かったら戦え!死にたくなかったら戦え!と声を荒げる。

その夜、山根班長は電話で、トーチカ内はかなり創傷を受けたが、陣容に異常なしと報告していた。

やって来た二人の炊事兵たちが汁を飯ごうに注いで行く。

握り飯を頬張りながら、お前も喰えと進めた山根だったが、誰も手を出そうとするものはいなかったし、金子一等兵はすっかりすねてしまい、返事すらしなかった。

山根は、まだその場に残っていた峯岸兵長の遺体に、握り飯を一個供えてやる。

本部から誰も死体の引き取り手が来ない事を知った山根隊長は、原と渡辺に峯岸兵長の遺体を外に埋めて来るよう頼む。

残った白井二等兵は、自分が死んだら、骨を家に持って行ってくれますか?こんな所に埋められるのは嫌ですからと聞き、山根はお易い御用だ。峯岸兵長の遺体も、その内掘り出して火葬にしてやるのだと教え、自分もバタン戦線以来、何度も同じ事を頼んで来たが、いまだに生きている。俺は運が強いので、俺の側にいると大丈夫だと安心させていたが、その時、金子一等兵が、銃で自分の手のひらを撃とうとしているのに気づき、あわてて止めると殴りつけ、白井に紐を渡せと命じると、それで金子の身体を縛り付けてしまう。

その時、遺体を埋め終わった渡辺と原が帰って来て、その様子を目撃、何があったのかと聞く。

山根は、こいつ、死なない程度に怪我をし、内地に戻ろうとしやがったが、慌てていたので、安全装置を外し忘れていやがったと教え、酒を飲むと、そのままベッドに横になり、長い一日だったなとつぶやく。

渡辺もベッドに入るが、原は、縛られて地面に転がっていた金子に、そっと毛布をかけてやる。

翌朝、戦車の接近音が聞こえて来る。

指揮所に電話を入れた山根は、あの戦車を放っておくのか?と進言し、間もなく、ロケット砲攻撃が始まる。

電話を替わった白井が、敵の位置を刻々復唱して行く。

○キ8の方向に敵!と白井が叫ぶ中、相変わらず床に転がされていた金子は解いてくれ!と叫んでいた。

原が機銃を撃とうとするが、銃弾が飛んで来てひるんでしまう。

その機銃を代わった山根班長が撃ち返し、さらに、渡辺が代わって応戦する。

攻撃を受けたトーチカはかなり損傷する。

渡辺は、二丁ある機関銃の一方を確認、銃身をやられていてダメだと言う。

それを聞いた山根班長は、銃身を取り替えるよう命令。

さらに、ガス弾が飛来し、縦線者が二台接近して来る。

その時、いつの間にか自分で縄を解いた金子一等兵が銃口を仲間に向けながら入り口の所に来ると、そのまま外に飛び出すが、その直後、凄まじい射撃音が聞こえ、金子の叫び声が聞こえる。

戦車が接近し、○キ8を電話で呼び出そうとするが、応答はなかった。

やがて、戦車が発砲して来る。

山根は、ようやく繋がった○キ8トーチカに、電話で戦車の位置を教え、応戦させる。

渡辺も機関銃で応戦していたが、戦車には通用しなかった。

それを聞いた山根は、銃口を撃てと命じ、ようやく戦車の動きを止める事に成功した渡部は、戦車の背後にいて逃げようとするソ連兵を次々に射殺して行く。

山根は指揮所に電話を入れると、こちらで戦車を二台潰した。○キの8の並木には文句を言ってやると報告するが、電話を切るとタバコをくわえ、全員戦死だと○キの8が全滅した事を教える。

雨が降り始めたその夜、トーチカの外からは、「マリア、マリア…」とロシア語で呼びかける声が聞こえて来る。

全員ベッドに横になっていたトーチカ内だったが、全員その、瀕死のソ連兵の声が気になって寝付けない。

とうとう、渡辺が鉄兜をかぶり、銃を持って外に出て行こうとするので、原は止めようとするが、渡辺は「一晩中、あの声を聞いていられっか?」と言うと、そのまま出て行く。

やがて、銃声が響き、ソ連兵の声はしなくなる。

やっぱり、ソ連の戦車兵じゃったと言いながら渡辺が戻って来た直後、小隊長の小栗中尉(夏木陽介)がトーチカにやって来る。

山根に土産の羊羹を渡した小栗中尉は、金子一等兵がやられたと聞かされると、立派な最後だったか?と聞くが、山根は答える事が出来ない。

そこで、原一等兵が、立派な最後でしたと代わって答える。

小栗中尉は、水筒に詰めていた酒を山根班長に渡すと、恩賜のタバコを各人に配布すると、御紋を残さないように吸えよと命じた後、戦況を説明し始める。

日本側の戦死200、負傷者300、トーチカの3分の1がやられたが、ここは「死守」と決まった。最後までがんばるんだ。最後の一人まで戦うのだと井伊の腰、トーチカを後にする。

その後、指揮所との電話連絡が出来なくなったので、白井を伝令に走らせるが、なかなか戻って来ないので、山根班長は心配していた。

電話連絡を試みていた原は断線ではないと思うと山根に伝える。

山根は、銃口窓から、鏡を突き出すと、太陽光を反射させ、近くのトーチカに合図を送ろうと試みるが返事はない。

渡辺は、全滅したのではないか?と呟く。

そこに白井が帰って来て、○キの5も13も、どこも戦死です。このトーチカは孤立しています。小栗中尉も中島伍長も戦死ですと、呆然としながら報告する。

それで、指揮所への連絡は取れたのか?と問いながらビンタした山根班長は、出来なかったと云う返事を聞くと、分かったと言い、水と乾パンを白井に渡す。

白井は、それをむさぼるように口にする。

山根班長は、しゃあねえ。俺たちだけでやるしかないと決意するが、その時、女性の声で「国境守備隊の皆さん!」と云う呼びかけの日本語プロパガンダアナウンスが聞こえて来る。

新疆から南満州まで陥落しました。あなた方に逃げ道はありません。

あなた方を危険な目に遭わせている上官たちは、帝国主義の傀儡であり、もう逃げてしまいました。

兵隊さん。皆さんの国ではそろそろ盆踊りの季節ですねと言いながら、東京音頭のメロディまで流れて来るので、聞いていた渡辺たちは堪らなくなる。

これ以上戦って何の意味あるんですか?武器を捨てて、トーチカから出て来なさいと言うアナウンスを聞いていた山根班長は、でたらめだと吐き捨てるが、原一等兵は冷静に、本当にデマなのでしょうかと疑問を口にする。

降参するように手を上げ、こうする気か?と聞いた山根は、俺も、天皇陛下の為に戦争しているような気がしないと吐露する。

しかし、俺たちが負ければ、女子供たちはどうなるのか?

帝国主義も共産主義もないと山根は呟く。

やがて、説得が不可能と分かったソ連側は一斉攻撃を仕掛けて来る。

戦車も二台接近して来る。

それを見た渡辺は、機関銃の弾が通らない事を知っているんだと悔しがる。

山根は、原と白井に援護射撃を頼むと、渡辺と一緒に地雷を持って外に出て行く事にする。

白井が思わず「班長殿!」と呼びかけると、山根は「やっぱりガキだな、お前は」と笑って出て行く。

白井と原が援護謝儀を始めると、近づいて来る二台の戦車にそれぞれ近づいた山根と渡辺は火もを付けた地雷を戦車の前に放擲し、何とかキャタピラの下に移動しようと火もを操るが思うように地雷は動かない。

決意を固めた渡辺は、飛び出して地雷を掴むと、戦車に飛び乗り、搭乗口のふたを開け、地雷を中に放り込む。

次の瞬間、戦車の内部で地雷は爆発し、一台はストップする。

山根の方は、上手く地雷をキャタピラの下に移動出来たので、もう一台は地雷を踏みつけ、爆発でキャタピラをやられてしまい動けなくなる。

援護射撃をしていた原も左腕を撃ち抜かれて倒れる。

白井が機関銃を代わって撃っていると、ソ連兵が扉から中に入って来たので、夢中で撃ち殺す。

その死体をじっくり観ていた白井は、突然絶叫する。

そこに、渡辺一等兵が戻って来たので、班長は?と白井が聞くと、直撃弾じゃった。恐ろしい一瞬じゃったと呟くだけだった。

その渡辺一等兵は、トーチカ内に落ちていた班長のお守りを見つける。

夜になり、トーチか周辺に敵の照明弾が落ち始める。

半壊したトーチカの中で寝そべっていた原は、どうしてあんなに怠けていたのかなぁ…と、学生時代を思い出してしゃべっていた。

試験はカンニングばかりで、進級を教授の家に頼みに行き、奥さんを困らせたりもしていた。

それが学徒動員が決まってからの半年間は、驚く程本を読めたし頭にも入ったと言うのを聞いていた白井は、自分は映画を観まくりました。親も何も言いませんでしたと答える。

同じく横たわっていた渡辺は、俺は軍隊に入って何度も殴られた。小学校しか出ておらず学がなかったからだと言い出す。

貧乏百姓で、今でも一銭玉を観るたびに、これを稼ぐ為にどれだけ働くかを考えてしまう程だ。

白井が、渡辺の服に縫い付けてある五銭玉と十銭玉の意味を尋ねると、これは女房が作ってくれたもので「死(し)線を超える意味で五銭、苦(く)戦を超える意味で十銭」を付けてくれたんじゃと言う。

百姓に比べたら、軍隊に入れて良かった。字も多少覚えたし、革靴だって、軍隊ではじめて履いた。少しはまともな人間になったつもりだ。戦争が終わったら、満州で会社に入ろうと思う。給料は今の二倍くらいもらえるらしいので、女房子供を呼んで…。

いっぺんは国に帰りたい。そろそろ盆踊りじゃ。自分の村の盆踊りは近隣では評判じゃった。

今度帰ったら、女房を幸せにしてやりたいと思う。

あれは可哀想な女で、楽しい事など一つも知らないで、百姓家の手を増やす為だけに嫁に来たようなもの。年子を二人抱えて今でも畑仕事をしている。

戦争のこんな苦しみに比べたら…と云いながら、渡辺は泣き出すのだった。

その時、又、女の日本語アナウンスが聞こえて来る。

戦友は500人以上死に、トーチカは30以上やられました。

後はもう時間の問題です。

玉砕なんてバカなマネは止めなさい。皆さんは立派に任務を果たしたのです。

これ以上戦うのは自殺と同じです。

そして、「夕焼け小焼け」のメロディが流れて来る。

立ち上がった原一等兵は、銃の先に白い布を巻きながら。「これ以上戦って、何のプラスになるんだ?」と口にする。

「降伏するんですか?」と白井二等兵が聞いた時、大砲の音が響き、それは味方からの攻撃だと知る。

「人間、無意味に死ぬ事はないんじゃないかと思ったのだ」と云う原に、白井は「降伏なんて嫌だ!」と反論する。

さらに、女のアナウンスが聞こえて来る。

「降伏せよ!さもないと、総攻撃を始める」

原は問いかける。「命って、もっと大切なものなんだ。どうして大切にしようとしないんだ?」

その会話を聞いていた渡辺は、原に荷物を渡してやりながら、「みんな、好きなようにするんじゃ」と言う。

そんな渡辺に対し「なぜ、3人そろって生きようとしないんだ?」と原は問いかけるが、「俺も行きたいんじゃが、行けん。なぜだか分からんが…」と答えるのみ。

原が、入り口の扉を押さえていたつっかい棒を外して外に出ようとした時、敵の一斉攻撃が始まる。

白井は、爆薬の入った箱を持って来て、渡辺は手榴弾を3人に手渡す。

機関銃の所に来た渡辺は、外からの火炎放射を受け倒れる。

白井が手榴弾を投げて、外の敵を粉砕すると、顔や手に重度の火傷を負った渡辺が機関銃にすがりつき発砲し始める。

その弾丸を詰め込む白井。

渡辺が力つきた折れると、機関銃を代わった白井が撃とうとするが、玉を入れ人間がいない事に気づく。

敵は又火炎放射攻撃を仕掛けて来ると、手榴弾を投げ込んで来る。

爆発が起こり、トーチカの中は静かになる。

やがて、土の中から起き上がった原は、白井と渡辺の名前を呼びかけるが返事はない。

やがて、土の中に、五銭玉と十銭玉を縫い付けた服を見つけたので起こしているが、そこには首が付いていなかった。

さらに、壁にへばりついた肉片を発見した原は、「白井…」と語りかける。

やがて、ロシア語で何か叫ぶ声がしたので、原は起き上がると、一人でトーチカの外に出てみる。

首位には爆発音が聞こえ、やがて躓いて倒れた原は、目の前に折れた百合の花を見つけ、うれしそうにそれに手を伸ばすと触る。

その時、大爆発が起き、原がいた場所は、単なる穴になってしまう。

側には、傷ついた靴の片方と、ちぎれた百合の花弁がひとひら落ちていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「独立」と云う名前がタイトルについており、佐藤允や三橋達矢と云った役者が出ているので、「独立愚連隊」風の痛快アクションかと思っていると、豈図らんや、大半が一つのトーチカの中と云う密室極限ドラマになっている。

今で言う単館レベルの低予算映画だと思う。

劇中で登場する敵の戦車などが、安っぽいミニチュアなので興を殺ぐ部分もあるが、ドラマとしてはしっかりしている。

学があるため、戦争に根本的な疑問を持っている原一等兵が、準主役のような役割を担っているため、それを演じている太刀川寛の存在感が後半になるにつれ大きくなる。

他の「独立シリーズ」では、明るいキャラクターが多い佐藤允は、今作品では珍しく、貧しい農民上がりの兵隊をシリアスに演じており、あまり目立った見せ場がない。

普段涙など見せるキャラクターではない佐藤允だが、本作では最後に泣くシーンがあるのが珍しい。

堺左千夫も、腰抜けと言うなかなか面白い役所で、登場場面が少ない割りに印象に残る。

同じく、登場場面はそう多くないのに、強烈な印象に残るのは福山博寿演ずる峯岸兵長である。

前半、人なつこい関西弁の善良そうな人物と言う描写があるので、途中のあっけない最後がショックを受ける。

さばけた班長を演じている三橋達矢も魅力的である。

そして、前半頼りな気に見えた白井役の寺田誠、今の麦人も、後半必死に戦う姿が清々しくも哀しい。

一種の反戦映画であるが、地味ながらもなかなか上手くまとまっており、良い映画を観たと云う印象が残る。