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赤いハンカチ

1964年、日活、小川英+山崎巌脚本、舛田利雄脚本+監督作品。

※この作品にはミステリ要素が含まれており、後半、意外な展開がありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

操車場の近くで、夜待機している二人の刑事、三上次郎(石原裕次郎)
石塚武志 (二谷英明)は、今回のヤマの長かった捜査を思い出し、これがすんだら3日間の休暇をもらおうなどと話し合っていた。

そこに、追っていたヤクの運び人(榎木兵衛)がやって来たので、二人は挟み撃ちにして捕らえようとするが、石塚が反撃され、ひるんだ隙に逃げられてしまう。

運び人は、おでんの屋台の店に鞄を隠すと、逃亡を続け、その直後、トラックに轢かれて死亡してしまう。

追いついた三上と石塚は、近くに持っていた鞄がない事を知ると、途中にあったおでん屋だと気づき、すぐにかけ戻るが、すでに鞄は消えていた。

神奈川県警の取調室に、おでん屋の主人平岡(森川信)を呼び、事情を聞こうとするが、平岡は頑として口を割ろうとしなかった。

三上と石塚は、夜通し、明日になれば、あのヤクが世の中に出てしまう。自分たちは何ヶ月もの間、このヤマを追って来たんだ。それが、あんたの一言で解決するんだと必死に説得するが、とうとう朝になっても、平岡の態度は変わらなかった。

その平岡が、娘が心配しているだろうな…と呟いたのを聞いた三上は、一人で、平岡の家に行ってみる事にする。

ちょうど豆腐屋を呼び止めていた明るい娘と出会うが、その娘こそ、平岡の一人娘、玲子(浅丘ルリ子)だった。

玲子は、三上が警察から来たと言うと、酔っぱらって捕まったくらいに勘違いし、着替え用のセーターを袋に入れて渡すと、自分は工場に行かなければ行けないので出迎えに行けない。せっかくオミオツケをこしらえたんだけど、飲んで行きます?と屈託なさげに三上に勧めて来たので、三上も遠慮なく頂く事にする。

その後、自転車を押しながら工場に向かう彼女に付いて行った三上は、すでに彼女の母親が亡くなっている事などを聞かされる内に、その明るい性格に魅力を感じ、それ以上、父親の事で追求出来なくなってしまう。

その頃、取調室では、石塚が、三上は警察学校での秀才だが、自分は平からの叩き上げなので、貧しいあんたの気持も判ると説得していた。

そこに、セーターを持って来た三上が戻って来て、娘さんは風邪をひかないようにって言ってた。その娘さんのためにも…と、自供を促すが、平岡は、あんたこそ、何も判っちゃいない!と吐き捨てる。

地検の要請で、平岡を送検する事に決まったと知らせが来る。

石塚は、奴らがあんたを信じられるかな?半年前に捕まった奴も、ここを出た途端に撃ち殺された。何もしゃべらなかったのにな…などと脅しを入れながら、護送車に、平岡を連れて向かっていたが、護送車に乗ろうとした瞬間、平岡は、突如、石塚を突き飛ばし、その胸から拳銃を奪うと、乱射し始める。

それを県警の入り口から見ていた三上は、拳銃を捨てろと叫びながら自分の銃を出して構えるが、その時、倒れていた石塚が、起き上がり様、平岡の腰にしがみついたので、思わず発砲した三上の銃弾は、平岡の心臓を射抜き、死亡させてしまう。

査問委員会が開かれ、オリンピックの射撃の選手に選ばれるほどの腕を持つ三上が、容疑者を撃ち殺すのは不自然ではないかとの意見も出たが、結局、三上と石塚は、地方へ飛ばされる事になる。

「忌中」の札が貼られた平岡の家は誰もいなかった。

工場にやって来た三上と石塚は、玲子を呼び出すと、地方勤務になったので、せめてご焼香でもさせて下さいと願い出、三上は、あれは全くの過失だったんですと謝るが、玲子は、そう云えば、あなたは自分を許せるんですか!私は許せないわ!あなたがやったんです!と言い捨てると、三上が渡したセーターの袋をぬかるんだ地面に捨て、その場を去って行く。

4年が過ぎる…

警察を辞めた三上は一人で、北海道の奥地のダム現場で働くようになっていた。

ある晩、労働者が集まる飯場小屋で、ギターを弾きながら唄を歌っていた三上だったが、そこに、一人の男が訪ねて来る。

神奈川県警の土屋警部補 (金子信雄)だった。

土屋は、三上が飲みかけていた茶碗酒を勝手に飲むと、あんたに会いに来た。4年間探しまわっていたんだ。明日は一緒に山を降りようと言い出す。

翌朝、三上と一緒に、トラックの荷台に乗って移動していた土屋は、石塚は今どうしていると思う?横浜でスーパーマーケットを始め、実業家として成功しているが、その資金はどこから出たんだ?石塚は目から鼻に抜ける男だ…などと話しかけて来るが、途中で嫌になった三上は、トラックを停め、土屋を地面に突き落として去る。

数日後、別の漁港で働いていた三上に、又、土屋が近づいて来て、あんたは、石塚にはめられているんだぜ。最初は、あんたと石塚が組んだと思っていたが…などと言うので、三上は、証拠はあるのか?と問いかけると、ないと言う。

しかし、あんたは、お人好しすぎて、バカだ。あいつは、あんたを犠牲にして、女を抱いているんだ。俺は待ってるぜ。あんたが、自分の人生を取り戻しに、横浜に帰って来るのを…と言い残し、新聞を三上に手渡して土屋は帰って行く。

その新聞には、石塚が玲子と結婚し、施設にプレゼントを寄付した事を報ずる記事が載っていた。

ある日、夫の石塚と共に、横浜タイガースクラブのビルに入ろうとした玲子は、遠藤に佇んでいる三上の姿を発見する。

レストランに上がって、他の上流階級の賓客たちと挨拶を交わした後も、窓から下を見下ろし、もう一度、三上の姿を確認していた。

どうしても気になった玲子は、一人で玄関口まで降りて来るが、その時にはもう、三上の姿は消えていた。

とあるバーで、ギターを弾きながら、三上が歌っていると、近くの客が気に入ったのか、もっとじゃんじゃんやってくれと勧める。

しかし、三上は興味がないように無視していたが、そこにやって来た、地元の地回り連中が、三上を外に連れ出して行く。

それを見かけたのが、近所で寿司屋をやっている春吉(桂小金治)だった。

春吉は、以前、三上から命を助けてもらっていた事がある男だった。

路地裏に連れ込まれた三上だったが、自分は好きで歌っているだけなんだと弁解するが、地回りたちは承知せず、三上を殴りつけると、落ちていたビール瓶のかけらで、三上の右手を刺そうとする。

その時、春吉が呼んだ警官たちが駆けつけて来たので、地回りたちは逃げるが、倒れた三上の顔を確認した土屋警部補は、三上だと知り驚くと、お前、今の石塚の暮らしぶりを見たんだな?と問いかける。

翌日、豪邸の庭の手入れをしていた玲子を訪ねた土屋警部補は、三上が横浜に戻って来て、夕べ地回りと喧嘩の末入院したと知らせる。

三上は、自暴自棄になり、すっかりダメになったと聞かされた玲子は、入院していた三上を見舞いに行く。

三上は、何しに来たんだ?こんな所にと、冷たく応ずるが、玲子は、もう父の事なんてみんな忘れて頂きたい。以前は自分が若かったせいで酷い事を言ってしまったが、あなたが立ち直って頂かないと、自分も落ち着かないのだと言う。

三上は、土屋は、なぜ、北海道から俺を連れ戻し、あなたと会わせたがったか話しましたか?あなたのご主人と私が共謀して、金を取ったってあいつは思い込んでいるんですと話すが、すぐに、冗談ですと謝罪する。

その時、近所の工場の男が聞こえて来たので、玲子は、あの時捨てたセーター、結局、戻って来て洗濯して編み直し、次ぎの冬一杯着ていましたと言うので、あなたは今、幸せなんですか?と三上は問いかける。

玲子は、同じ病室内で騒いでいた他の患者たちの様子を見ながら、なぜか表情を曇らせる。

そこに、春吉が寿司折りを土産にやって来たので、玲子は帰って行く。

その後、石塚の会社にやって来た玲子は、三上に会って来た。土屋と言う人が北海道から連れ戻して来たんですと報告する。

石塚は、君はもうこだわってないんだね?あの事は…。三上を罵倒した君を僕は美しいと思い、愛してしまった。そして、君を絶対に幸せにしようと思ったと言い、大阪に出張しなければならないから、帰って来たら、三上に会いに行くと約束する。

その頃、三上の元には、喧嘩をした地回りが詫びに来ており、親分があなたに会いたいと告げる。

林田と言う親分(芦田伸介)とキャバレーで会った三上は、エミと言うホステスや、金を渡され、石塚の何かを握っているそうだが、それを教えてもらえないか?教えてもらえたら、それ相応の事はすると言われるが、興味なさそうに金を返して帰る。

その後、寿司春にやって来た三上は、春吉の娘光子(笹森礼子)と、その娘が惚れていると言う板前の清次(川地民夫)を紹介する。

そんな三上の行動を、やくざ風の男(深江章喜)が付けて監視していた。

三上は、そんな春吉に、石原さん、あんた、あの仲間と親しかったな?と昔の事に触れて来る。

春吉は、三上が石塚の事で帰って来た事を察すると、昔の恩返しがしたいので、自分に役立たせてくれと頼む。

一方、玲子は、大阪出張中の石塚から電話を受け、互いに会いを確認しあっていた。

翌日、玲子は、三上が泊っていた山下橋ホテルにやって来ると、病院は、勝手に出て行ったあなたを怒っているわと報告しながら、持って来たコートをプレゼントしようとする。

しかし、三上は、あなたからもらいたくないと断ったので、玲子は、私や夫の事をどう思っているのか聞かせてくれと迫る。

部屋を出た三上に付いて、波止場にやって来た玲子は、困らす事でも良いのだと再度聞く。

三上は、俺が4年間、なぜ、ほっつき歩いていたか判りますか?一目、あなたが幸せな姿を見て消えたかった。憎まれているうちは、まだどこかで、あなたとつながりがあった。俺がどうするか。土屋が言う通り、あの事件に何かあるのなら…と言いかけるが、玲子は、止して下さい!石塚は私の夫ですと遮る。

三上は、翌日、かつて玲子が勤めていた田村工場にやって来る。

そして、かつての自宅にも…。

そこで玲子と出会ったときの、彼女の笑い声を思い出していた。

そんな三上に近づいて来た警官が、あちらへと誘導すると、そこには、パトカーの横に立った土屋が待っていた。

石神があんたに会いたがっており、俺に探してくれと頼んで来たのだと言う。

彼女の親父は、ヤクのルートだった事が後で判った。それを石塚は知っていたのだろうと、屋外パーティをやっていた石塚の所に、三上をパトカーで送る間、土屋は説明する。

三上を玲子と一緒に出迎えた石塚は、招待客たちに三上を紹介するが、場違いな自分を感じた三上はすぐにその場所を離れて、春吉の店が出店しているのに気づき、娘の光子に話しかけると、父親は何かを探しに出かけていると言う。

三上は、自分に付き添っていた玲子に、あなたのお父さんは、ヤクのルートだったんですか?あなたは知らなかったんでしょうね?と聞き、今に、あの事件を調べてみせる。そして、あなたと対等に付き合いたいと告げる。

そんな三上に近づいて来た石塚は、うちの会社で働いてみないか?と三上に勧める。

それを聞いていた玲子は、なぜか慌てたように、三上さんだって、ご都合があるでしょうから…と口を添えるが、三上が承諾をしたように、石塚と握手をすると、急に気分が悪くなったようだった。

翌日、横浜図書館に向かった三上は、そこで一人、過去の新聞を熱心に調べている玲子の姿を目撃する。

その後も、玲子を尾行していると、彼女は山下橋ホテルの自分を訪ねて来た事を知る。

遅れて、三上が部屋に入ると、玲子は、横浜を離れて!と頼んで来る。

この前も、あなたに不安だったのだが、恐ろしい事件が起こりそうな気がすると言うのだ。

三上が、あなたは何を恐れているのか?幸せが壊れそうだからか?一人の男の犠牲の上に成り立っている…と皮肉ると、玲子は、そうです!私はそんな醜い女なんです。お願いしますと卑屈になって帰って行く。

そこに、土屋警部補が入って来て、本当は、あなたが危険なんだと言いたかったんだろうと、玲子の気持を代弁する。

そんな土屋に詰め寄った三上は、何を知っていると締め上げると、あの事件の後、現場を散々さがしたが、弾は一発も発見出来なかった。石塚は、自分の拳銃に空砲を詰め、わざと平岡に逃げるように仕向けたんだ。あいつは、警察対抗の柔道選手権にも出るほどの腕の持ち主、簡単に素人に跳ね飛ばされるような事をするはずがない。君とは別に、ヤクのルートを掴み、金のためにやったんだろう。叩き上げの彼は、出世がしたかった。ところが、あの平岡が捕まってしまった。そこで、うだつの上がらない刑事でいる事から逃れたかった彼は、君を巧妙な罠に陥れたんだ…と、土屋は自分の推理を語る。

しかし、三上は、俺はあんたの操り人形になるのはごめんだ!俺があいつの面を暴く!と反論する。

それに対し、土屋は、例えば、あいつの奥さんを寝取るとかか?と挑発して来る。

そこに電話が入り、春吉の死体が見つかったとの連絡が土屋にもたらされる。

死体発見現場に来て、救急車に入れられる春吉の死体を見ていた清次は、夕べ親父から電話があり、これでやっと三上さんに恩返しがあると言っていた。せめて、この事件を解決して、親父を成仏させるようにしてやってくれと三上は頭を下げられる。

県警で、石塚から、今度、サイゴンで良い仕事がある、やってくれないかと頼まれた三上だったが、俺は横浜を離れたくないんだ。春吉も殺されたし…と言って断る。

石塚は、君のためには惜しいチャンスだったな、後で後悔するなよと、冷たく言い放つのだった。

その後、自宅に帰って来た石塚は、急に旅行に出たいと言い出した玲子に訳を聞いていた。

玲子は、箱根にでも行きたくなったと言うので、それでは自分も一緒に行こう、これまで働き通しだったからと石塚が言うと、しばらく一人になりたいのと玲子は答える。

石塚はそんな玲子に、おかしいよ、三上が帰って来てから…。世の中は勝つか負けるか、気の毒だが、三上は負けた、我々はやったんだ。勝つためには、どんな事でもする。勝つ事が全てなんだ!と、必死に説得する。

その時、電話があり、それを取った石塚は、なぜか受話器を保留中にすると、一階に降りて、こそこそ下の電話を使い話し始めたので、玲子はそっと聞き耳を立てていた。

やがて、石塚は急に旅行をするので準備をしてくれと女中に頼む。

その頃、三上は、ギターを弾きながら「赤いハンカチ」の唄を歌って町を流していた。

そんな三上の様子を、地回りたちがしっかり監視をしていた。

石塚と玲子は車に乗って、自宅を出発する。

三上は、地回りに取り囲まれると、近くの空き地に連れ込まれる。

以前から三上を付けていたやくざ風の男が、ハマから出て行ってくれないか?面倒な事になるんだと凄んで来る。

三上が誰に頼まれた?と聞くと、男は黙って銃を取り出したので、三上は素早くない符を投げつけ、相手の銃を落とすと、組み合いながら、石塚に頼まれたのだろう?と締め上げる。

そこに、パトカーがやって来たので、三上も地回りたちも逃げ出すが、倒れていた男を発見した土屋警部補は、三上次郎を緊急指名手配するように命ずる。

そのニュースを、カーラジオを聞いていた石塚は、困った事をしでかしたなと呟いていた。

やがて、石塚の車は検問で止められ、免許書証の提示を求められるが、日頃、運転手任せの事が多かった石塚は、その時、免許証を持っておらず、事情を説明するため車を降りる。

その間、ラジオニュースのボリュームを上げ、被害者側が報復に出るかもと言うのを聞いた玲子は、いきなり自分で車を運転し、Uターンすると、唖然とする石塚をその場に残し、横浜の自宅に向かってひた走る。

その頃、三上は、石塚に屋敷に忍び込んでいた。

二階の寝室を探っていた時、石塚が一人で戻って来るのに気づくと、様子をうかがう事にする。

石塚は、玲子がまだ戻ってない事を知ると、その場から電話をし始める。

その石塚に気づかれないように、そっと階段を降りて近づく三上。

石塚は夢中で電話をしており、背後の近づいて来る三上に気づかない。

「家内に気づかれてはいかん!三上なんか放っとけ!何?三上がやったんじゃない?気づかれるな、俺がやったんだと…」と話していた石塚に、「判ったよ」と言いながら殴り掛かる三上。

「石塚!やっぱり春吉も…!あんな無惨な…」と殴り続ける三上。

石塚は「お前、4年前と同じ過ちを繰り返すのか?」と反論する。

「俺と同じ思い味あわせてやる!」と、三上がさらに殴りつけていると、騒ぎに気づいた女中たちが起きて来たので、三上は屋敷から外に飛び出す。

坂道を逃げようとすると、上から近づいて来た車が三上に突進して来る。

敵だと感じた三上は、必死に逆方向に走り出すと、銃を取り出しいて車のエンジン部分を撃って破壊する。

その後、山下橋ホテルに戻って来た三上は、玲子が路上で刑事らしき男たちと別れた後、自分の部屋に向かうのを確認すると、ホテルの非常口の方から上がり、部屋で玲子と再会する。

二人は自然に抱き合う。

玲子は、良かった…と言いながら泣き出す。

その時、ノックがしたので、クローゼットに三上が隠れると、土屋が入って来て、まだ、待ちますか?不穏なので、家に帰られた方が良いと勧め、一旦出るが、三上がクローゼットから出ようとした時、又、急にドアを開け、わざとクローゼットの側に近づいた土屋は、中にいる三上に聞こえるように、もし奴が戻って来たら、自首するように言って下さいと話して帰る。

玲子は、ドアにしっかり鍵をかける。

三上と玲子はキスをすると、そのままベッドに倒れ込むが、ヒールを脱ぎ、目を閉じた玲子に、三上は首を振り、「今じゃない…、今だと…」と言いかけるが、その時突風で、部屋のガラス窓が開く。

それを閉めようと、窓際にやって来た三上は、表で待機している何台ものパトカーと刑事たちの姿を目撃する。

知っている、俺がいるのを…と、三上は察する。

玲子は、どうなるの?これから…。忘れて下さい、恐ろしい事も、石塚の事も…と頼むが、三上は、男には忘れられない事がある。これがすむまで、俺は君を抱く事も出来ないと呟く。

その時、下に、石塚がやって来たのを目撃した三上は、君は俺の言う通りにするんだと、玲子に作戦を打ち明ける。

ホテルのロビーで、石塚と土屋が話をしていると、二階から寄り添い合った玲子と三上が降りて来たので、その様子を見た石塚は愕然とする。

三上は土屋の前に立つと、黙って両手を差し出す。

土屋は、君じゃないと言う証言もあると言いながら手錠をかける。

石塚は、その場から玲子を自宅に連れ戻すと、風呂に入らないかと勧めるが、玲子が無表情のまま返事をしないので、思わずその身体に抱きついて来た石塚は、一度だけの過失は許す。もう一度、俺の所に帰って来てくれ。こんなに愛しているんが判らないのか?それを、三上なんかに…と愚痴るが、そんな石塚に、玲子は銃を向けて来る。

石塚は、やっと掴んだ幸せを、絶対離さないと叫ぶ。

その時、電話が鳴り、県警からの連絡だったので、護身用の拳銃を持って、石塚は県警に出かけて行く。

県警で待っていた土屋は、ちょっと便所に行くと言い、石塚と三上を先に玄関口に送り出すと、何かのコンセントを電源に繋ぐ。

その間、三上は、石塚が持っていた拳銃を奪い取ると、あの時もお前は、護送車に乗り込む時、そっと平岡に、俺の銃を奪って逃げろと吹き込んだ。その後、発砲し始めた平岡の腰に、お前は飛びついて行ったが、それは最初から空砲だと知っていたからだ。

俺は、反射的にお前を避け、銃口が上の方に向いてしまっため、平岡の心臓に当ってしまったんだ…と、推理を述べる。

するとあっさり、石塚はその通りだと自白する。

オリンピック候補だったお前の腕に賭けたのだ。俺はこの仕事に全てを賭けていたと言う。

そうした石塚の自白を、玄関先から土屋もじっと聞いていた。

一生うだつが上がらないなんて、耐えられなかったんだと言う石塚に、土屋は、偽善だ!と声をかける。

三上は、俺がやる!お前のために、4年間も無駄にして…、俺が裁く!と言いながら、石塚に銃を向ける。

それを見ていた土屋は、よせ!証拠はあるんだ!と止めるが、その時、一発の銃声が鳴り響く。

いつの間にか、土屋の背後に来ていた玲子が発砲したのだった。

腹を撃たれた石塚は、撃ったのが玲子だと判ると、そうか…、撃ってくれ!ここだと自分の心臓を指差しながら近づいて来ると、玲子の銃を奪い、その場で自分を撃って倒れる。

驚いて駆け寄って来た土屋に、瀕死の石塚は、玲子じゃない!最初から俺の自殺だと呟く。

それを聞いた土屋も静かに頷く。

次の瞬間、石塚は「玲子!」と手を伸ばしながら事切れる。

そんな石塚の遺体を抱き上げた三上は、静かに警察署の中に入って行く。

その間、土屋は、秘かに録音していた石塚の証言が入ったテープを、庭で燃やしていた。

その後、石塚の墓参りを、玲子と一緒に付き合った三上は、一人、黙って去って行くのだった。

裕次郎、浅丘ルリ子コンビに、二谷英明が絡み、複雑な三角関係の結末を描く犯罪ドラマ。

過去の事件をきっかけに、大きく変化した二人の刑事の人生。

自ら贖罪の意識で、孤独な生き方を選んだ裕次郎は、一人の刑事からの推理から、自分がはめられていたのではないかと言う事に気づき、又、かつての町に舞い戻って来る。

かつて好意を抱いていた娘は、今は、かつての友人の妻になっていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

まさに、「ロマンチック・サスペンス」とか「ムード・サスペンス」とでも呼びたくなるような内容である。

ミステリとして観ると、説明不足の部分が多く、特に、途中で登場した林田の役割や、春吉が何を掴んだのかなどが不鮮明なまま終わっているのが気にならなくもないが、二人の男性の間で揺れ動く玲子を演じる浅丘ルリ子の不安感や、一度は人生を捨てたかに思えた裕次郎が、過去を清算する事で、再び生きる道を見い出して行く過程は、通俗ながらも、それなりに見応えがある。

かつての三上の親友、石塚を演じている二谷英明の、成功した後の明るい態度も、途中まで観客を惑わす要因となっている。

推理ものと言うほどではないが、大衆向けのサスペンスストーリーとしては、成功している作品だと思う。

この頃、まだ髪がふさふさとある金子信雄の、ずる賢い存在も貴重。