1958年、大映京都、武内つなよし原作、穂積純太郎潤色、岡本繁男+松村正温脚本、森一生監督作品。
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江戸の町に、三つ目の鳥人が出現、戌年生まれの子供をさらうと言う事件が頻発していた。
その親のの元には「御符ヶ原の一本杉の所に千両持って来い」と書かれた脅迫文と、小柄が刺さったこけしが送り届けられていた。
それを見た親たちは、天狗様の仕業と恐れていた。
これに対し、奉行所は、この鳥人を捕らえたものには、千両の賞金を与えると書いた高札を出す。
…ここまでは、着色マンガで表現。
火京物太夫(尾上栄五郎)と一緒に夕方の町を歩いていた岳林坊(光岡龍三郎)は、財布が落ちているのに気づき、拾い上げると喜んでいた。
すると、突如出現した鳥人が、母親と一緒に近づいて来た子供を誘拐する所を目撃したので、これで賞金がもらえると、二人で立ちふさがるが、鳥人の額にある目が光ると、二人は腰が抜けてしまうのだった。
奉行、土井安房守(志摩靖彦)の屋敷では、大勢の子供が塀の上に乗り、中庭で、子供相手に稽古をしている赤銅鈴之助(梅若正二)を見ていた。
稽古相手の千之助 (柏木純一)は、真空切りを教えて下さい。若様も戌年なので心配なのですとせがむが、若様は自分は御守りするし、真空切りは、もっと稽古をしなければ教えられないと鈴之助は笑う。
若様とは、安房守の一子で縁側から稽古を見学していた鶴千代(太田博之)の事だった。
その鶴千代に、友達の金二郎(小高邦彦)が、浅草にあるお化け屋敷は面白いし、肝試しにもなるから一度行ってみたら?と話し、鶴値ようは強い興味を持ったようだったが、横で聞いていた御付きの萩乃(近藤美恵子)は、そんなものに若様を誘っては行けませんと金次郎をたしなめる。
その時、中庭の隅に鳥人が出現し、中の様子をうかがっていたが、人の気配を感じた鈴之助が木の陰のその場に行ってみると、小柄の刺さったこけしが転がっていた。
さらに、「この屋敷の指南役から手を引け」と云う声がどこからともなく聞こえて来る。
長屋に帰った鈴之助は、母親お藤(朝雲照代)が用意した食事を取りながら、千葉周作先生の推挙に恥じぬよう、土井家でがんばろうと張り切っていた。
そこに、しのぶ(中村玉緒)が、子供が用があると来ていると言いに来たので外に出てみると、近所の子供たちが引いていた大八車に乗って、鶴千代が一人でやって来たではないか。
鈴之助の家に入って来た鶴千代は、夕べ、浅草に行った夢を観たので、辛抱が出来なくなった、連れて行ってくれと言うではないか。
鈴之助は、お屋敷のお許しを得なければと断るが、それなら一人で行くと鶴千代がわがままを言うので、母親に、お屋敷の萩乃にだけ知らせてくれと言い残して、鶴千代としのぶを伴い、浅草に向かう。
南蛮渡来の化け物屋敷と銘打たれた小屋にやって来た三人は、早速中に入ってみるが、鶴千代は初体験のお化け屋敷におっかなびっくり。
やがて、お堂のような場所に人だかりがしており、そこで不気味な顔をした老婆が、客を舞台にあげて催眠術をかけて見せていた。
その見物客の中に紛れ込んでいた火京物太夫と岳林坊は、そんなものはインチキに決まっているから、金を返せと騒ぎ出す。
やがて、舞台に上がって来た二人に、老婆は、術がかからなかったら金を10倍にして返すと言うので、二人は喜んで受けるが、あっという間に催眠術にかかってしまったので客はみんな笑い出してしまう。
ふらふらと歩き出した二人は、そのまま、渡り廊下伝いに扉の陰に消えるが、そこに鳥人がいたので腰を抜かしてしまう。
鳥人は、部屋に戻って来た老婆に、鶴千代が赤銅鈴之助と一緒に来ていると教えると、側で聞いていた火京物太夫と岳林坊が、赤銅鈴之助には色々恨みがあるので、自分たちも手伝わせてくれと頼む。
しかし、部屋を出た二人は、直後に、赤銅鈴之助に出会ってしまったので、まだ早すぎると言いながら逃げ出してしまう。
それを、鈴之助は追って行ったが、鶴千代と二人きりになったしのぶは、近くから老婆がかけた催眠術にかかってしまい、ふらふらと歩き出してしまう。
かくして一人になった鶴千代は、鳥人にさらわれてしまうのだが、戻って来て、しのぶの様子がおかしい事に気づいた鈴之助は、しのぶを正気付かせると、いなくなった鶴千代を探して小屋の外に飛び出す。
浅草寺の大提灯を潜り、表に飛び出した鳥人の前に立ちはだかったのは、たまたま通りかかった竜巻雷之助(林成年)であった。
鳥人は、抱えていた鶴千代をその場に置くと、雷之助と戦い始める。
そこに、鈴之助も駆けつけて来たので、雷之助は鶴千代を保護する。
鈴之助と対峙した鳥人は、驚いた事に「真空斬り」の構えを見せ、姿を消してしまう。
透明になった鳥人を気配で探しながら、鈴之助が斬りつけると、寺の縁側に、血の痕が点々と付いて行く。
どうやら、鳥人は鈴之助に斬られたようだった。
そこに近づいて来た雷之助は、今の敵の構えは「真空斬り」だったと、鈴之助に確認するのだった。
その頃、土井家の屋敷では、行方不明になった鶴千代の事を心配する御用人の阪東甚内(東良之助)が苛ついていたが、そこに、鶴千代が戻って来たので、どこに行っていたのですかと聞くが、鶴千代は答えない。
萩乃の方を鶴千代が気にしているのに気づいた陣内は、萩乃を責め始める。
見かねた鶴千代は、鈴之助と一緒に浅草のお化け屋敷に行っていたと白状したので、それを聞いた陣内は、鈴之助はお出入り差し止めだと激怒する。
千葉周作(黒川弥太郎)の道場に戻った鈴之助は、自分がした軽はずみな行動を反省するが、何者かが鶴千代様を狙っていますと千葉先生に、以前拾っておいた小柄とこけしを見せる。
そして、浅草の化け物小屋が怪しいと報告するのだった。
その化け物小屋が「女のお化け、一人雇いたし」と言う貼り紙を出していたが、そこに一人の娘が雇って欲しいとやって来る。
田舎から出て来たばかりというその娘は、実はしのぶであったが、物怖じしないその態度が気に入られ、すぐに採用が決まる。
小屋の中では、あの不気味な老婆が、抱いた鶏にえさを与えていたが、その鶏はすぐに死んでしまう。
えさに混ぜた毒の効果を調べていたのだ。
その後、土井家の屋敷に、萩乃を訪ねて来たのは、見世物小屋をやっている母のお力(村田知英子)だった。
小屋の方はどうかと尋ねる萩乃に、弟の松太郎ががんばってくれているので何とかやっていると答えたお力は、そこにやってきた鶴千代に、戌年生まれの厄よけとして持って来たと菓子箱を手渡す。
鶴千代は、その菓子箱を持って、犬のぬいぐるみなどが置いてある縁側の一角に来ると、中の饅頭を通り出し、その半分を金魚鉢に入れる。
そこに、萩乃が来たので、鶴千代は金魚に饅頭をやったんだがどうしたんだろう?と不思議がっていたが、金魚鉢の中の水は、不気味な紫色に変わり、沸騰していた。
その夜、土井家の屋敷は、厳重な警戒態勢が敷かれていた。
そんな中、塀の屋根瓦が、誰かが踏んでいるかのようにへこんでいた。
障子がひとりでに開き、どんどん、屋敷の奥へ進んで行く。
そこには、鶴千代が眠っており、その側に萩乃が付き添っていたが、突如出現した鳥人が、拳銃を萩乃に突きつけて来る。
その時、天井の一部が開き、中に潜んでいた鈴之助が降りて来る。
鳥人は、赤い玉から、紫色の煙を噴射するが、鈴之助の真空斬りで封じ込めてしまう。
鳥人は、天井に飛び上がり姿を消すが、その時、印籠を落とすが気づかない。
鶴千代が目覚め、鈴之助の姿を観て喜んだので、鈴之助はお側にいなくて、ずっとお守りしておりますと告げると、鳥人を追って外に飛び出す。
その時、印籠を拾い上げた萩乃は、それに見覚えがあった。
ところが、鳥人を追っていた鈴之助の姿を目にした阪東甚内が、くせ者は鈴之助だと土井安房守に告げたので、それを聞いた萩乃は、それは誤解で、今、若様を襲った鳥人から守ってくれたのだと説明するが、陣内は信用しない。
翌日、萩乃は、化け物屋敷の楽屋にいた母親お力を訪ね、この印籠は昔お母さんが持っていたはずだが?と問いつめる。
しかし、お力は、こんな印籠はどこにでもあるものだし、そんな事を人に軽々しく言うものではないと叱りつける。
お化け屋敷の中を通って帰りかけた萩乃を呼び止めたのは、井戸の中から出て来た幽霊に扮したしのぶだった。
自分がきっと何かを探し出してみせるので、今日の所は黙ってお帰りくださいと言う。
楽屋で、お力と鳥人が鈴之助を倒す作戦を練っていると、それを聞いていた火京物太夫が、名案があると近づいて来る。
その夜、江戸の町のあちこちで、鈴之助を名乗る何者かが、真空斬りで、長屋を破壊するという事件が連続する。
翌日、鈴之助の長屋の井戸端では、植松(横山エンタツ)が近所の連中相手に、真空斬りと言えば鈴之助しかいないので、今後は付き合いやめやと言いふらしていた。
そして、鈴之助の家の中を覗こうとした植松は、突然屋根から落ちて来た籠をかぶってしまう。
屋根の上に上っていた近所の子供たちが、鈴之助の悪口を言う植松に仕返しをしたのだった。
そこに、岡っ引きの万吉(玉置一恵)と手下がやって来て、鈴之助はどこだと家の中に入って来るが、そこにいたのは、母親と竜巻雷之助で、岡っ引きたちを追い返してしまう。
その頃、お力は、筆頭与力の市原主水(寺島貢)をお化け屋敷の楽屋に招くと、小判を握らせて、よろしく頼むと、鈴之助討伐を依頼していた。
その夜も、鳥人が盗んだ千両箱を抱えて逃げていたが、そこに立ちふさがったのが鈴の助だった。
しかし、その横の塀の上に出現した老婆が、水晶の珠を差し出し、呪文を唱えて催眠術をかけたので、鈴之助はその場に気絶してしまう。
鳥人は、その側に千両箱を置き姿を消すが、そこに役人たちが駆けつけて来て、鈴之助を強盗の下手人として逮捕しようとするが、鈴之助はそれを振り払って逃げる。
その話を市原主水が聞いた土井安房守は、鈴之助が強盗を働くなど信じられないし、疑わしいと言うだけでは、人を捕らえたりしないと言い切る。
それを側で聞いていた阪東甚内は、なぜそこまで、鈴之助をかばいなさる?と不思議がる。
そんな土井家に、二人の巫女(小林加奈枝)が祈祷のため呼ばれるが、入り口近くで謎の老婆に操られ、屋敷に入ったのは老婆の方だった。
鶴千代は、祈祷払いなど嫌がるが、陣内の勧めもあって、祈祷師に成り済ませた老婆の前に座る。
老婆はすぐに催眠術をかけ始め、鶴千代だけではなく、一緒に見物していた土井安房守や阪東甚内、萩乃ら家人までも、全員術にかけてしまう。
そこに鳥人が出現、眠っていた鶴千代をさらおうとするが、鈴之助が飛び込んで来て阻止しようとする。
しかし、その鈴之助に飛びついた老婆が、くせ者と大きな声を上げたので、それまで催眠状態だった家人も目が覚め、鶴千代を抱いて逃げ出した鳥人を追って部屋を飛び出た鈴之助を追いかける。
外を走っていた鈴之助の前に、紫色の煙と共に鳥人が出現、真空斬りをやると、そこ鶴千代の命がないぞと脅かす。
そこに、役人たちが駆けつけて来たので、鳥人は塀の上にジャンプし、鈴之助は包囲された役人たちと戦わなければならなくなる。
屋根の上にいた鳥人は、鈴之助に縄を投げつけ、ぐるぐる巻にしてしまう。
身動きが取れなくなった鈴之助は、抵抗空しく役人たちに捕らえられてしまう。
奉行所に、千葉周作、竜巻雷之進と共にやってきた鈴之助の母お藤は、一目鈴之助に会わせてくれと願い出るが、聞き入れられなかった。
千葉先生も、土井安房守に会わせてくれと頼むが、土井安房守は病気で臥せってしまったため、今は、市原主水が指揮を執っていると断られる。
牢に入れられた鈴之助は、岡っ引きの万吉に拷問を受けるが、鈴之助は「お母さん!」と叫んで耐えるしかなかった。
千葉先生も、今は無実を証明する方法がないと無念がっていたが、そこに市原主水がやって来たので、お藤は鈴之助に会わせて欲しいとすがりつく。
しかし、市原主水 は、鈴之助は明日、市中引き回しの上、鈴ヶ森で処刑すると冷たく言い渡すのだった。
翌日、鈴之助は縛られ、馬に乗せられ、市中引き回しが始まる。
子供たちは皆、屋根に登って、鈴之助を見つめている。
群衆に混じり、それを眺めていた岳林坊と火京物太夫は、鈴之助をあざ笑うが、次の瞬間、屋根の上の子供たちから、石や泥玉を投げつけられたので、あわててその場を逃げ出すが、子供が横に張っていた綱に引っかかって転んだりして、子供たちにこてんぱんに虐められる。
それを見た馬上の鈴之助は、愉快そうに笑い出す。
そんな鈴之助に駆け寄ったお藤は、本当の事を言ってくれと叫ぶが、鈴之助は信じて下さいと答える。
それを聞いたお藤は、万吉らに押し返されながらも、「信じています」ときっぱり頷くのだった。
その時、引き回しの列が向かっていた「日の丸橋」の反対側から、太鼓を叩く僧侶の一団が近づいて来る。
その僧侶は、千葉周作や竜巻雷之進ら、千葉一門の門下生たちが変装した姿だった。
引き回しの役人たちの前に立ちふさがった僧侶たちは、先頭を進んでいた市原主水を馬から引きづり落としたので、市原主水は石に頭をぶつけ失神してしまう。
その隙に、他の僧侶たちが、鈴之助の乗った馬を反対に向け、鈴之助の綱を解いて逃がす。
鶴千代は、お化け屋敷の楽屋で酒盛りをしていたお化けたちの中で捕まっていた。
その鶴千代に近づいた老婆は、もうすぐお父さんと会わせてやると呟く。
そんな化け物小屋にやって来た萩乃を捕まえたのは、傘お化けと一つ目小僧に扮していた火京物太夫と岳林坊だった。
二人に連れて来られた萩乃に、近づいて来た老婆は、仮面を脱いで正体を見せる。
老婆を演じていたのは、萩乃の母親、お力だったのだ。
それを知った萩乃は驚愕するが、土井安房守は、お前の父親を処刑した憎い仇なのだとお力は説明する。
父親はお侍ではなかったのか?と聞く萩乃に、実は、お前の父親は、侍を辞めた後、稲妻組の首領をしていたのだと明かすお力。
萩乃は、父親が泥棒だったのなら処刑されても当たり前ではないかと言うと、お力は何と言う事を言うのだと怒り、自分は長年、土井安房守を一番苦しめる復讐を考えてきたが、子供を苦しめるんが良いと思いついたのだと言う。
そこにやって来た鳥人もかぶり物を脱ぐと、中から現れたのは、萩乃の弟、松太郎(月田昌也)ではないか!
萩乃は又しても驚くが、母親のためにやっていると言う松太郎は、忍びの術を学んだのだと教える。
萩乃は思わず、懐剣で二人に抵抗しようとするが、すぐに押さえられ、松太郎に連れて行かれてしまう。
その頃、病床に伏していた土井安房守の寝所の柱に一本の矢が打ち込まれる。
それに結びつけられていた文を、付き添っていた陣内が安房守に手渡すと、「七つまでに、きん5千両をお化け小屋まで持って来い」と書かれてあった。
病身の安房守は、無理して起き上がると、陣内に千両箱を用意するよう命じる。
陣内は、そのような御身体では…と止めようとするが、安房守は、例え我が身は死ぬ事があろうとも、不届きものを捨て置く訳にはいかないと言う。
その頃、お化け小屋の中では、天井から吊るした鶴千代に、床下から何本もの棘が突き出て来る仕掛けを見せ、七つになれば、お前の紐が切れて、この棘の串刺しになるのだと脅していた。
そんな化け物小屋に、千両箱を抱えた土井安房守がやって来る。
お堂の所で、どこからともなく腰のものを捨てろと声をかけられた安房守は、刀を捨てると、祠の前の舞台中央に開いた入り口から中に入るように命じられたので、千両箱を抱えて従う。
地下に降りた安房守は、13年前、お前がした事を良く思い出すが良い。お前が処刑した稲妻組と呼ばれた怪盗を忘れておるまい。ここにいるのは、皆、その残党だと老婆に言われる。
見ると、鶴千代が天井から吊るされているではないか!
そしてその綱の一部に、大きな鎌が刻々降りて来て、時刻が七つになると切断する仕掛けが動いている。
安房守は、自分はどうなっても良いから、鶴千代だけは助けてくれと命乞いをする。
その頃、陣内たち、安房守の家人たちも化け物小屋の中になだれ込んでいたが、仕掛けの網に引っかかり、そのまま外に引きずられてしまう。
一方、赤銅鈴之助は、馬を急がせ、浅草に向かっていた。
吊るされていた鶴千代は、柱に縛られた父親に向かい、侍の子として立派に死にますと気丈なことを言ううので、安房守も覚悟は良いなと言い聞かせる。
その時、化け物小屋に入って来た鈴之助の前に、隠れて待ち構えていたしのぶが出て来て、お堂の前の舞台中央の地下への入り口を教える。
地下に降りた鈴之助は、紐が切れ、床から飛び出して来た棘の上に落下して来た鶴千代を間一髪抱きかかえ助ける。
鈴之助は、安房守も助け出すと、この者たちこそ、偽の真空斬り使いだと指摘すると、しのぶに二人の身柄を預け、敵と戦い始める。
しかし、鈴之助は、からくりで落ちて来た壁に閉じ込められてしまう。
そこに、紫色の煙が吹き出して来て、鈴之助はピンチに陥るが、その時、聞き覚えのある太鼓の音が近づいて来る。
千葉周作らが扮装した僧侶の一団がやって来たのだ。
千葉周作と竜巻雷之助は、小屋の中のお堂の周辺で敵と戦い始める。
しのぶは、鈴之助が閉じ込められていた部屋の上部を開き、そこから縄梯子を降ろす。
それをよじ上って上に上がった鈴之助は、そこで火京物太夫と岳林坊に出会うが、逃げ出した二人は、「舌切り雀」用のつづらの中に隠れる。
鈴之助は、お化けの格好をした敵と斬り結ぶが、飛んだ敵の刀がつづらに突き刺さったので、首を出して驚いた火京物太夫と岳林坊は、つづらから足を出し、そのまま逃げて行く。
竜巻雷之助が、鈴之助の援護に駆けつける。
一方、しのぶは、縛られていた萩乃を救出していた。
やがて、鈴之助は、老婆と鳥人を小屋の片隅に追いつめていた。
そこに近づいた千葉周作や竜巻雷之助、しのぶと萩乃たちは、かたずを飲んで、勝負の行方を見守る事にする。
三つ目の鳥人の額の目が光り出す。
老婆も、水晶の珠を差し出して、催眠術の呪文を唱え始めるが、それを見た千葉先生が、持っていたこけしを投げつけ、この水晶珠を払い落とす。
その隙を突き、鈴之助は渾身の力を込めて真空斬りを繰り出す。
鳥人と老婆は吹き飛ばされ、二人とも仮面が取れて正体を現す。
そこへ近づいた竜巻雷之助は、松太郎、潔く、縛に付けと説得し、萩乃も又、お前は間違っていたのだから、捕まっても、いつまでも姉さんは待っていますよと諭すのだった。
後日、病が癒えた土井安房守の屋敷では、再び指南役として復帰した赤銅鈴之助が、鶴千代や他の子供を相手に剣の稽古をしていた。
それを見守る陣内は、自分の人を見る目は間違っていたと、横で一緒に観ていた安房守に恥ずかしそうに謝る。
やがて、しのぶや子供たちと手を取り合った鈴之助は、笑顔で江戸の町中を練り歩くのだった。
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竹内つなよし原作マンガの実写化シリーズ第7弾。
カラーになり、それなりの大作として作られている。
鈴之助が市中引き回しとなり、それを大勢の見物人が眺めている所など、大人向けの時代劇と遜色がない作りになっている。
冒頭部分のマンガによるプロローグは、予算節約のためとも思えるが、そんなに金がかかりそうなシーンとも思えないので、原作イメージとの距離を縮めるための演出ではないかと思われる。
この作品の見所は、何と言っても、鈴之助の必殺技「真空斬り」と同じ技を会得した敵が出現する所だろう。
その「真空斬り」を悪用され、鈴之助に疑いがかかると言うのが最大のサスペンスになっているのだが、普通、こう云うパターンでは、最後に、同じ「真空斬り」を使う敵味方の一騎打ちが描かれる事を観客は予想しているものだが、なぜかこの作品では、そう言う展開にならない。
敵の必殺技が、クライマックスの見せ場に使われていないのだ。
むしろ、相方の老婆の催眠術の方が強調されており、その辺がちょっと物足りないのだが、子供が大好きなお化けやの類いやからくり仕掛けなどたくさん登場するし、当時としては、サービス満点の子供映画だったと思われる。
主役の鈴之助を演じている梅若正二は、確かにイケメン青年だが、どう観ても大人。
その大の大人が、赤銅を付けたまま町を歩いていたり、母親と愁嘆場を演じるなど、かなり原作の子供のイメージとはかけ離れており、滑稽と言えば滑稽なのだが、当時は、マンガの実写版と言うのはこう云うものと、子供も割り切って観ていたのだろう。
鶴千代を演じている太田博之は、当時、テレビドラマなどにも良く出演していた人気子役である。
しのぶ役の中村玉緒なども、まだ初々しく、可愛らしい。
透明化した鳥人を表現する特撮技術もなかなかで、妖怪が多数登場する所など、後年の大映妖怪シリーズを彷彿とされるものがある。