1961年、東映京都作品。
加藤泰監督。
▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
身持ちが悪く、女房のお岩も実家に帰ってしまっている浪人、民谷伊右衛門(若山富三郎)、その友人で、お岩の妹、お袖(桜町弘子)を横恋慕している直助(近衛十四郎)の両名は、結託して、お袖の許嫁を襲って殺害し、互いの思いを遂げようと計画、実行するが、殺害相手が人違いであった事に気付かない。
しかし、言葉巧みに姉妹を騙した、伊右衛門はお岩と、直助はお袖と一応、同居し始める。
だが伊右衛門の放蕩な性分は直らず、赤ん坊が生まれた後は、すっかりお岩との生活に嫌気がさし、立身出世のため、以前、町で出会った富裕な町娘お梅との新しい生活を考えるようになっていく。
お岩に執拗に辛く当たる伊右衛門。
そんな中、お梅(三原有美子)が近所に引っ越してきて、その父親が伊右衛門にこっそり毒薬を渡す。
娘可愛さのあまり、何とか伊右衛門との婚礼を実現させたい一心に、お岩を厄介払いさせようと企んだのだった。
その毒薬を、血の道の良薬だと思い込み飲むお岩。
さらに、その薬を、病気がちの母親のために盗み出そうとした所を、伊右衛門に見つかり、床下に監禁される町人、小平(伏見扇太郎)。
いよいよ、お岩の存在が疎ましくなってきた伊右衛門は、出入りの按摩、宅悦(渡辺篤)に、お岩を襲うように無理強いするのだった…。
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お馴染み鶴屋南北の「東海道四谷怪談」の映画化だが、伊右衛門の悪漢振りがこれでもか…という、冷徹な描写で描かれていく。
後半は、お梅との婚礼の夜、やましい気持ちのある伊右衛門が、お岩の幻影に襲われ、一挙に狂っていく様が描かれる。
さらに、川さらいで生計を立てている直助が、川に流されたお岩の串と着物を知らずに拾って、家に持って帰った事から、彼もまた、お岩の亡霊に襲われ、偶然再開したお袖とその許嫁に、事情を説明、すっかり改心して、共に、伊右衛門を仇討ちに行く…という筋立てになっていく。
クライマックスは、悪霊払いも効果がなく、半分狂ったような伊右衛門対お袖、許嫁、直助の大立ち回り。
恐怖譚としての演出は、全体的に押さえ気味だが、それなりに効果は出ている。
超自然的な怪談…というより、底知れぬ業に突き動かされる、伊右衛門の凄まじいまでの生きざまが、強く印象に残る、奥深い人間ドラマといえよう。
