TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

ゴジラ('84)

80年代初頭は、出版物を中心にブームが再燃した「懐かしヒーロー物」の復活が相次いでいた時期であった。
当然、一部のゴジラマニアたちも映画復活を後押しし、めでたく怪獣王ゴジラも長い眠りから目をさます事になったのだが…。
原点帰りを目指し、「恐いゴジラ」や「夜景襲撃」を再現してはみたものの、それを受け入れる時代背景が大きく様変わりしていた事に誰も気付かなかったのが、悲しい結果を生む事になる。
かつてのゴジラは、立ち並ぶ新宿の高層ビル群の中で小さなゴム人形にしか見えず、元々、違う世界観の中の存在であった東宝自衛隊の「メ−サ−兵器」の登場なども、リアリティに混乱をきたす結果しか生み出さない結果に終わり、喜んだのは一部のマニアたちだけ(?)…の無惨な作品となってしまった。
ネームバリューか、懐かしさも手伝ってか、国内作品としては、公開当時はまずまずの興行成績を残したが、今、この作品をほめる人は少ないだろう。
取って付けたような「放射能」や「核兵器」の恐怖など、様々なアイデアを盛り込んであるものの、どれもドラマ全体を盛り上げる役には立っていないように思えるのが寂しい限り。
こうした脚本の不味さは、多かれ少なかれ、その後の平成ゴジラシリーズ全体にも影を落とす事になる。
もはや、気楽に「荒唐無稽」を楽しむ時代ではなくなっていたからである。
マニアが復活させた新生ゴジラは、同じマニアによって、こてんぱんに批判されるようになっていく。
東宝シンデレラガール1号の沢口靖子は、すでに、自分のキャリアから、この作品を抹消したそうである。