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007/消されたライセンス

冒頭部分の魚類研究所(?)でのアクション部分などは、イアン・フレミングの短編をそっくり再現している所から考えても、監督やティモシー・ダルトンが、荒唐無稽さを避け、あえて、サスペンス色の強い路線を狙っていた事は明らかであろう。
しかし、「女王陛下の007」ですでに、そうした「原作返り」が、マニア以外の観客には喜ばれない事実は今作でも証明される形となり、作品は当たらず、ダルトンもこれが最後の作品となった。
このシリーズは、一作ごとの出来不出来とは別に、観終わった後、どこかしら「印象に残るシーン」がある物なのだが、この作品に関しては、そうした物がほとんどないのが珍しい…と言えよう。
南米の麻薬王が敵役となり、ボンドが、上司の命令に背いて、残虐な仕打ちをされた友人の敵討ちをする…という話も異色だが、アクションやスペクタクルも、どこかマンネリ気味のアイデアが多い事もあってか、普通のアクション映画になってしまった感がある。
派手なアクション映画が、007以外にも増えてきた時期でもあり、もはや、ルーティーンな内容だけでは拒否される厳しい時代になったのだろう。
女性の描き方も、従来の「お色気」だけでは許されなくなり、強いボンドガールが登場するようになるのだが、この辺にも、ボンドのアイデンティティーがぐらついてくる原因があるように思える。
この作品の後、このシリーズは、しばしインターバル期間に入り、思い切った出直しを迫られる事になる。