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腰抜け二刀流

1950年、佐藤プロ、三村伸太郎脚本、並木鏡太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある居酒屋に、二人の頭巾をかぶった侍が入って行く。

店の中は大にぎわいで、そんな中、「礫のおろく」(轟夕起子)が歌っていた。

女給に手を出す酔客を見つけると、とっくりを投げつけやっつけてしまう。

歌い終わったおろくがジョッキを飲み干すと、女給の一人が座敷で客が待っていると伝えに来る。

座敷に向かうと、頭巾をかぶったままの侍が一人で座っており、おろくが前に座ると、いきなり短筒を突きつけて来る。

しかし、おろくは煙管を取り出すと、落ち着いて何のまねです?と問いただす。

そうした様子を、隣の部屋で聞いていたもう一人の頭巾の侍、ふすまを開けて出て来ると、さすがに噂に違わぬ度胸の良さ、その度胸を見込んでたのみがあると云い出す。

用件は、三味線を持って、今夜にも甲州街道を西に向かって欲しいというのだ。

理由は、旅立てばすぐに分かると云いながら、頭巾の侍は財布を取り出す。

きままなおろくは、言われるままに旅立つが、途中、道ばたの地蔵の脇から流れていた清水を飲もうと立ち止まっていると、後からやって来た子供連れの男が、すまないと言うので、先に子供に飲ませてやる。

可愛い子だね。母親は?とおろくが問いかけると、もう死んだと言い、そそくさと男は立ち去って行く。

そのすぐ後に、今度は怪し気な侍が二人、おろくに近づいて来ると、5歳くらいの子供連れの男を見かけなかったかと云う。

その侍の風体を怪しんだおろくは、わざと、反対の方の茶店に入って行ったと嘘を教える。

二人の侍が反対方向に向かったのを見届けたおろくは、夕べ、座敷で頭巾をかぶった侍から言われた「5、6歳の子供を頼む」という言葉を思い出していた。

しばらく進むと、先ほどの男が子供に握り飯を食べさせていたので、又話しかけようとするが、男はそんなおろくを怪しんで、食事を止め、そそくさと歩き始めてしまう。

そんな男に近づいたおろくは、誰かに追われているんだね?さっき、二人組の侍が探していたから、反対方向を教えといたよと言うと、男はあわてて「この子の命が…」と言いかけて走り出してしまう。

そうした様子を、深編み笠をかぶった夕べの依頼人(江川宇礼雄)がじっと木の陰からうかがっていた。

逃げる子供連れの男を追って、おろくが走っていると、そこに、子供たちを前に、居合い抜きを見せてやると口上を述べている怪し気な侍姿の男(森繁久弥)が立っていた。

その男が持つ旗指物には「宮本武蔵直伝二刀流」と書かれていた。

通り過ぎて行った子供連れの男やおろくを呼び止めようとした男だったが、みんな行き過ぎてしまうと、子供だけでは商売にならないと、村の茶店の前に場所を変えて同じ口上を述べ始めるが、茶店の客も売り子も「インチキ歯痛薬売りだ」と見破り相手にしない。

結局、さっきもいた少し頭が足りないような子供しか寄って来ない。

子供じゃ商売にならん、大人をたくさん連れて来いと、その男が言うと、何度も男の口上を聞いていたその子は「宮本武蔵さんか?」と男に聞く。

男が口を濁していると、急に嬉しそうになったその子は、村中に「宮本武蔵が来た!」と言いふらしに行き、たちまちその噂を聞きつけた村人たちが集まって来る。

寄って来た連中が口々に「宮本武蔵だ!」と言っているのを聞いた男は、やにわに、旗指物の文字の「直伝」の部分を紙で隠してしまう。

その夜、祭りの宿場町に向かったその宮本武蔵の偽物男は、大勢の見物客の前で、「♪ズンタカタッタ〜」と歌っていた。

そんな群衆の片隅に、あの子供連れの男の姿もあった。

子供が店に飾ってある風車を欲しがってぐずっていると、さっと風車を差し出したのがおろく。

男は、気安げに話しかけて来るおろくを避けるように逃げ出し、それをおろくが追う。

そんな三人の姿を見つけた二人の侍も後を追い、その一行が、偽物武蔵の前を通り過ぎて行く。

偽武蔵は、やおら「歯痛薬」の宣伝を始める。

すると、近くで聞いていた老親分(左卜全)が、歯が痛いので治療してくれと申し出る。

それじゃあ注射しましょうと偽武蔵が言うと、もう予防注射はたくさんしたと親分は答えるので、その注射とは違うと云いながら、親分の左手をまくり上げると、そこには龍の彫り物があったので、怯えて反対側の腕を巻くと、そこにはハート形の入れ墨があった。

その右手に、空気入れ風の注射器をあてがって麻酔注射をした偽武蔵だったが、親分に変化はない。

苛立った偽武蔵は、空気入れで親分の頭を殴って気絶させる。

そして偽武蔵が取り出したのが、巨大なやっとこ。

それで、親分の口から虫歯を抜こうとするが、出て来たのは小さな蛸だった。

すると、急に正気付いた親分が、それは夕べ食べたものだと云いながら、又食おうとすると歯が痛み出す。

もう一度抜こうとやっとこを口に入れたが、今度はやっとこの柄の部分が曲がってしまい使い物にならなくなる。

仕方がないので、今度はフックが付いた紐を取り出した偽武蔵だったが、それを見た子分二人が、親分に何をすると文句を言い出す。

仕方ないので、偽武蔵は、大きなハンマーで一人の頭を殴り気絶させると、もう一人の子分は、まだ何もしていないのに気絶してしまう。

フックを老親分お口の中に引っ掻け、紐を引いてみると、又蛸が引っかかって出て来たので、もったいないと偽武蔵自身が食べてしまう。

翌日、子供を連れた男は、神社の境内で二人の侍に追いつかれ、子供を奪われそうになっていた。

二人の侍は、子供とお守り出せと男に迫る。

それを見つけたおろくは、こづかを投げて、二人の侍を追い払う。

男は、子供を縁の下に入れると、一人で逃げ始め、それを追って二人の侍も神社から出て行く。

その後、おろくは、縁の下に隠れていた、手に何かを持った子供を見つけると助け出す。

そこに通りかかったのが、あの偽武蔵。

おろくは、その偽武蔵に子供を抱かせると、自分は神社を立ち去って行く。

間もなく男が戻って来て、子供をあやしていた偽武蔵から子供を奪い返すが、子供が持っていたお守りがない事に気づくと、偽武蔵を怪しみ出す。

しかし、偽武蔵は、そんなものは知らない。泥棒扱いするなと言い返すのだった。

その夜「かつらぎ屋」という宿に泊まった偽武蔵は、今日は客が込んでいるので相部屋で願いますと云われ、「へちまの間」に通される。

そこに先に入っていたのは、あの子供連れの男だった。

男の方も、偽武蔵の顔を見ると驚き、お守りをどうしたと又問いただして来る。

その頃、同じ宿の別の部屋に泊っていたおろくは、子供が持っていた書状を読んでいた。

お守りとは、とあるお殿様越前(花菱アチャコ)が、身分違いの娘おとせ(清川虹子)を孕ませてしまったが、一緒になれないので、子供が5つになったら、余の跡継ぎとして城に引き取ると約束して渡したお墨付きだった。

そんな書状を読み終えたおろくの部屋の様子を、外からうかがっていたのが追っ手の侍二人だった。

その二人が、おろくの部屋に入り込むのを見とがめたのが、風呂上がりで近くを通りかかった偽武蔵。

二人の侍は、おろくにお守りの事を聞くが、とっさの気配を感じ、とっくに隠していたおろくは知らん振り。

そんなおろくに詰め寄った侍は、おろくの帯を引き抜くと、おろくは駒のように廻りながら障子の方へとよろけて行く。

そこに何をしていると入って来たのが偽武蔵。

何ものだと聞く二人に、男は「宮本武蔵だ!」と言い切るが、即座に二人は「知らん!」と答える。

これでは、偽者を名乗る意味はない。

それでも乗りかかった船、偽武蔵は表に出ろと言い出し、愉快そうに、二人の侍も後に続く。

庭先で、自慢の竿のような刀を取り出した偽武蔵が、刀を抜くと、思いのほか短い刀身が現れる。

小刀の方も同じで、偽武蔵は、異常に短い二刀流を構えてみせる。

バカにしながらその様子を見ていた二人の侍たちだったが、偽武蔵の動きがあまりに素早いので、それを目で追ううちに、二人とも目が回って行く。

その時、座敷から様子を見ていたおろくが、とっくりを二人の侍の頭に投げつけて気絶させる。

一人、太刀捌きを見せていた偽武蔵は、いつの間にか相手の二人が倒れているので面食らってしまう。

その頃、宿の帳場で宿帳を確認していたこの屋の主人は、「宮本六三四」と書かれた客の名前に戸惑っていた。

色々読み方を考えた末、「むさし…か?」と言うと、側で聞いていた女中の一人が、宮本武蔵と云えば、佐々木巌流を打ち破った天下の二刀流の使い手ではないかと教える。

それを聞いた主人は驚き、どこに泊めているのだと聞くと、「へちまの間」で相部屋だというので、ますます腰を抜かしてしまう。

かくして、偽武蔵は、特上の部屋で特上のサービスを受ける事になる。

上下姿に着替えた主人がまかり出て、どうか一筆、染筆をお願いしたいと紙と硯を差し出したので、偽武蔵はあわてて、そう云う事が面倒だから偽名を使っているのだと断る。
そこへ、どこで聞きつけたのか、大勢の娘たちが押し寄せて来て「サインをくれ!」とせがみ出す。

慌てた主人が、部屋になだれ込もうとする娘たちを止めようとするが、女中たちも急に、偽武蔵にサインをねだり始めたので、偽武蔵はにやけながらも渋々承知する。

翌朝、偽武蔵と子供連れの男は一緒に旅を続ける事にする。

偽武蔵が「♪俺が武蔵とはおかしいね」などと歌いながら歩いているので、横で聞いていた男は首を傾げる。

そんな三人を木の下で煙管をくゆらしながら待っていたのはおろく。

彼女の姿を見た男が、お守りを持っていないかと聞くが、おろくも知らないと答える。

すると、男は、このこの母親、妹に申し訳ないとがっくり肩を落とす。

それじゃあ、あんたの妹さんが、この子の母親かい?とおろくが聞くと、そうだと答えた男は、妹と子供を預かっていた自分の農家に、件の二人連れの侍が押し寄せて来たので、妹のおとせは、自分と子供を先に逃がし、自分が二人の侍に斬り殺されてしまったのだと悔しそうに教え、泣き始める。

見かねたおろくは、そのお守りとやらは、良い人の手に渡っているかも知れないじゃないかと慰める。

そんな一行に近づいて来たのが、その二人組の侍だったが、偽武蔵が旗指物を掲げてみせると、夕べ戦って負けた男と知り、二人の侍は這々の体で逃げ帰って行く。

そんな偽武蔵の姿を面白そうに眺めていたおろくは、この子供連れの二人を、お城まで連れて行ってあげてくれと頼む。

断ろうとした偽武蔵だったが、おろくの口車に乗せられてしまい、二人を送る事になる。

四人はその後、牛の引く荷馬車に乗せてもらい、唄を歌いながら旅を続ける。

やがて、車輪が溝にはまり、荷車が傾いたので、偽武蔵は畦の斜面を転げ落ちてしまう。

その日の宿には、でかでかと「二刀流開祖宮本武蔵様御一行」と立て札が掲げられる。

五人は一つ部屋で並んで寝ていたが、いびきをかいている振りをしていた偽武蔵は隣で寝ているおろくの方に手を伸ばし、ちょっかいを出そうとする。

それをおろくが交しながら、にこやかな笑顔。

やがて、しつこい偽武蔵の毛ずねをつねったおろくは、ムクリと起き上がると、部屋を出て、廊下からにっこり偽武蔵に笑いかける。

てっきり誘われたと思い込んだ偽武蔵が後を追って廊下に出てみると、おろくが巨大な木槌で偽武蔵の頭を殴り、偽武蔵はその場に昏倒してしまう。

おろくは嬉しそうに、廊下に倒れた偽武蔵の上から、掛け布団をかけてやるのだった。

翌日、宿の立て札を見て、一人のひげ面の大男が宿を訪ねて来る。

主人が偽武蔵に取り次いだ所によると、金棒使いの名人が試合を申し込みに来たのだと言う。

慌てた偽武蔵は、自分が勝つのは分かっているから。相手に恥をかかすのは可哀想なので断ってくれと主人に頼むが、その話の途中で、相手が勝手に部屋に入って来てしまう。

巨大な金棒を手にした相手を前にした偽武蔵は狼狽するが、「あっ!」とあらぬ方を指差して相手の気をそらした瞬間、何とか、自慢の竿竹が長い刀を手にする。

すると、相手はにわかに跪き、門弟の手前、どうかうちの道場には来ないで頂きたいと頭を下げながら、次々と持参した小判の包みを差し出して来るではないか。

これには、偽武蔵も、唖然として見守るしかなかった。

その日、宿を出発した一行は、船で川を下っていた。

船の中で、子供連れの男は、他の客たちに、偽武蔵の事を教える。

そんなにお強いのなら、もうこの世に怖いものなどないのでしょうね?と客から問われた偽武蔵は調子に乗り、自分は女が怖い。あれは化けるからな。しかし、妖怪化けものの類いなら平気だと自慢話を始める。

昔、伊豆で巨大なイノシシと出会った事があったが、そのイノシシというのが女で、どうせ殺されるのなら、伊豆の葛城山の御繊維一緒に入りたかったわとウインクをしたなどと法螺を吹くので、横で聞いていたおろくは苦笑しながら歌うしかなかった。

やがて船を降りた一行に話しかけて来た老人がいた。

今の船で聞いていたが、実は今、自分の一家に災難が降りかかっているのでどうか助けて欲しいと偽武蔵に言うのだ。

訳を聞くと、白羽の矢が刺さった家は、山の上にある氏神様に差し出す為、生け贄として若い娘を差し出さねばならない掟があり、最近、その氏神様というのが、老いたヒヒである事が分かったのだと云う。

掟を破れば、村を洪水が襲うのだとも。

今年はその白羽の矢が、老人の家に刺さったので、自分の娘を差し出さねばならなくなったと嘆く老人の屋敷に、いつの間にか一行はやって来ていた。

美しいその家の娘おこと(香川京子)は、もう私は生まれて来なかったものと諦めてくれと泣き出す。

偽武蔵は、何とか話を断ろうとするが、横で聞いていたおろくは、先生なら大丈夫よ。また、葛城山の温泉に入りたいと云われるかもよとからかう。

その後、おことはこっそり、恋仲の与吾作(千葉信男)とこっそり逢引をしていた。

しかし、二人の逢瀬は長く続かず、二人の親が連れ戻しに駆けつける。

その夜、偽武蔵は、老人の屋敷から逃げ出そうとしていたが、それを見越して外で待っていたのはおろくだった。

逃げるなんて卑怯だわ。先生なら何でも出来るわ。お守りを上げると、三味線の天神部に刺さっている糸巻きを一本渡す。

やがて、村人たちは、人質を入れた木箱を掲げ、山の上の氏神の所まで登って来るが、到着した途端、雷鳴が鳴り響いたので、全員怯えて逃げ帰ってしまう。

残された木箱に、ジャングルブギを歌いながら一匹の白いヒヒが蔦のブランコに乗って降りて来る。

歌い終わったヒヒは、木箱に近づくとノックしながら「おことちゃん」と呼びかける。

しかし、中に入っていたのは、白い衣をかぶった偽武蔵だったので、戸惑いながらも震えている。

ヒヒはさらに「もう出ても良いよ」とノックを続けるので、勇をふるって飛び出した偽武蔵は、おろくからもらった糸巻きのお守りを見つめ、ヒヒに立ち向かうと、逃げようとするヒヒの頭を後ろから掴んで引っ張る。

すると、すっぽり頭の部分が取れ、中から予吾作の顔が現れる。

ヒヒは与吾作が化けていたのだった。

与吾作は偽武蔵に謝るが、やがていきなりゴリラのジェスチャーを始めたので、見ていた偽武蔵は気味悪がる。

それでも偽武蔵の方もゴリラのまねをし始め、二人は一緒に踊り出す。

そこに近づいていたおことは、偽武蔵の頭を背後から棒で殴りつけ、与吾作と手を取り合って去って行く。

人の恋路を邪魔するなんて!今回の事は二人で作った狂言よと言うではないか。

いらぬ所に出て来て!引っ込んでいらっしゃい!と怒鳴りつけるおことを見た偽武蔵は、オンアハ怖いと改めて呟くのだった。

そこに、おろくも駆けつけて来たので、偽武蔵はおろくと二人で山を下りるが、途中まで登って来た老人が、娘はどうなったと聞く。

偽武蔵がしどろもどろの説明をしかけると、おろくがすまして、無事に娘さんはヒヒに食べられてしまったと報告する。

老人は、実は子供の小太郎さんが連れて行かれたと云うではないか。

おろくは驚いて、朝太郎さんは?と尋ねる。

子供連れの男の名前だった。

その頃、小太郎を二人の侍に奪われそうになり追いすがっていた朝太郎(田中春男?)は、返り討ちにあっていた。

偽武蔵は、超スピードでその場に駆けつけるが、一瞬遅く、昕太郎は地面に倒れ、小太郎の姿はなかった。

近くの水車小屋で二人の侍に追いつくが、気がつくと、懐に入れていたはずのお守り(糸巻き)がない。

すると、今まで勇気りんりんだった偽武蔵は急に元気を失い、お守りを落としたので、見つかるまで中止と、二人の侍に手をあげる。

しかし、偽武蔵の態度の急変を見ていた二人は、偽者臭いなと怪しみ出す。

震える偽武蔵は、二人の侍に殴られる。

一方、遅れて昕太郎の元に駆けつけたおろくは、朝太郎を介抱する。

二人の侍のうち、弥次と呼ばれた侍が、そろそろあの世に送ってやろうと刀を抜き、側に垂れていた蔦を使って、床屋のように刀を磨き始める。

怯えて水車小屋の方に後ずさった偽武蔵は、停まっていた水車につい身をもたれかける。

その拍子に、水車が廻り始め、堰が開いて水が流れ始める。

その水の勢いで本格的に廻り始めた水車に偽武蔵は巻き込まれ、ぐるぐる回り始める。

それを追って水車に近づいた弥次も、一緒に水車に巻き込まれ、ぐるぐる回りながら最後には降り飛ばされて、地面に叩き付けられ気絶してしまう。

偽武蔵は、水車を伝って屋根に登ろうと焦っていた。

その様子を見ていたもう一人の侍も目を回してしまい、そこに近づいたおろくがかんざしを投げつけ、さらに近づいて当て身を食らわして侍を片付けてしまう。

水車小屋の中から、おろくの今回の仕事の依頼人であった家老が、小太郎を抱いて出て来ると、この二人の侍を証人に黒幕を暴く事が出来るとおろくに感謝する。

おろくは、家老に、持っていたお墨付きを手渡す。

それを受け取った家老は、これでそちに頼んだ仕事は終わったと告げるが、おろくはまだ終わっちゃいませんと言いながら、気絶していた偽武蔵を揺り起こす。

二人の侍は縛られて、駕篭に乗せられ、国元に連行されていた。

それに付き添っていた朝太郎が、家老に山道の下の方を歩いている偽武蔵の事を教える。

二人が山道を見下ろしていると、旗指物を持ったあの偽武蔵が一人登って来る。

その姿を見た農民が、武蔵様!と会釈して来たので、偽武蔵は自分は武蔵じゃないというなり、その場で、付け髭をむしり取ってしまう。

そこに近づいて来たのがおろくで、二人は抱き合おうとするが、武蔵の長い旗指物や刀が邪魔なので、偽武蔵は次々とそうした小道具類を捨て去り、身軽になって改めて抱き合うのだった。

そんな二人に、上の方から、家老と朝太郎が手を振る。

偽武蔵とおろくは、いつしか馬車の後ろに乗って、「恋愛街道」という道を歌いながら揺られて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

森繁久彌のデビュー作であり、「腰抜け2丁拳銃」のパロディでもある。

冒頭の酒場のシーンでは、客がビールのジョッキ型瀬戸物で酒を飲んでいたり、偽武蔵とおろくが歌う歌が「腰抜け二丁銃」の「ボタンとリボン」のメロディそっくりだったりするのもご愛嬌。

いかにもスマートで若々しい森繁の姿が初々しい。

歌ってしゃべって、猿真似まで披露するサービス振り。

さすがに、新人だった森繁だけでは興行的に不安だったのか、轟夕起子とのダブル主演のような作りになっている。

鉄火肌の姉御と気の弱い男のコンビネーションが見所だが、この頃から、森繁はすでに情けない男を演じているのが面白い。

気に強い娘を演じる香川京子と森繁のやり取りは、後年の「猫と庄造と二人のをんな」(1956)を連想させ、こちらも興味深い。

楽屋落ち的なおふざけと、全編歌で綴るオペレッタ映画。

回想シーンでちょっと登場するアチャコと清川虹子との掛け合いもおかしい。

おとせ「今は封建時代ですから。昭和25年頃に生まれたかった。アプレガールがうらやましい」

越前「ズンドコのあんちゃんに生まれなかったのが残念」

又、長い柄から異常に短い刀身が現れるギャグや、おろくの帯を侍が引っぱり、コマのようにくるくる回るおろくのギャグなども、ひょっとしたら、映画ではこの作品が最初なのではないかと思える程。

盛り上がりそうなヒヒ退治のシーンは、ちょっと拍子抜け。

子供連れの男は、おそらく田中春男だと思うが、自信はない。