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完全な遊戯

1958年、日活、石原慎太郎原作、白坂依志夫脚本、舛田利雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

これが遊戯だろうか…

最初、私達は遊戯のつもりで出発したのだが、知らなかった…。その中に住む罪悪の待っていたのを。私達は何を為(す)ればいいのだ。何がこの罪を償いうるというのだ…

東京学院大学の四年生、大木壮二(小林旭)、戸田(梅野泰靖)、秋谷(柳瀬志郎)、沖津(武藤章生)は、アメリカに行っている従兄弟の画家から居候させてもらっている沖津の屋敷に集まっていつも麻雀を楽しんでいたが、興味があるのは金の事ばかり。

色々巧い金儲けの方法がないかと話し合う四人だったが、まだ学生だから、犯罪だけは止めておこうと言う結論になる。

それから3日後、大学のグラウンドに集まった四人だったが、戸田が吉祥寺にモグリのノミ屋があるが、競輪が行われる川崎とは電車で移動しても2時間の時差があると言い出す。

ところが、両者の間には直通電話がないので、川崎からレースの結果がノミ屋に電話で知らされるまでの約5分くらいの時間差があり、その間、吉祥寺のノミ屋ではまだ券を売っている。

これを利用し、川崎で勝負の結果を見て、それを定時通話を申し込んで吉祥寺に知らせて券を買えば、絶対間違いなく当てる事が出来ると云うのだ。

吉祥寺のノミ屋の斜め前んはデパートがあるので、そこの電話を利用すれば良いとも。

話の続きは、戸田の彼女ミエ子(白木マリ)が経営するバー「モンシェリ」で行われた。

上手くいけば30万は儲かるので、ノミ屋に3人、買い占める人間が1人、競輪場で観る人間が1人と言う割り振りにし、電話での連絡は暗号で知らせようと云う事になる。

電話が込んでいた場合の事を考え、競輪場には2人必要と云う事になり、もう一人仲間を入れなければならなくなったので、少し頭は弱いが、カズを入れてはどうかと云う話になる。

レース結果をいち早く判定する為に、競輪で身代を潰したような玄人を5000円程度で1人雇えば良いだろうとも。

レースは後4日あったので、最後の日にやろうと戸田は結論づける。

暗号は女の名前を使う事にし、1位はミエ子、2位は洋子…と云う風に決めて行く。

川崎の競輪場に下見に出かけた4人は、近い電話はノミ屋が使うので、どこか手近な場所に定時連絡できる電話がないかと探す。

大木が、手頃な店を見つけ、そこの娘に、今度ジャズ喫茶「ミシシッピー」でベースを弾いている、ハーフみたいなイカす男を紹介するとの条件付きで電話を借りる事に成功する。

戸田は、赤は1、白は2と云う事にし、手旗信号でレース場から、電話の場所まで通信する事にし、競輪場を担当する沖津は、さっそく、当日の動きの練習をしてみる。

さらに、レース場を探し、目星をつけたベテラン風の親父源造(大森義夫)に、レース結果を素早く判定する仕事を依頼する。

戸田は、当日までに、全員1万5000円ずつ資金を作るよう命じる。

その後、カズこと富田和(岡田真澄)には、ビリヤード場で話を持ちかける。

大木は、オカマ風の学生金貸し(杉幸彦)から金を借りる。

同じ金貸しを当てにしていた沖津は、一足違いで断られてしまい渋い顔。

秋谷一郎は、部長をやっている父親の会社に乗り込み、秘書も丸め込んで、父親から2万円せしめる。

富田は、2年前に切れていた腋臭の強い洋裁店のマダムと再び寝て、1万5000円せしめる事に成功する。

沖津は、その後、競輪場で当てようとしたが上手くいかず、結局、居候をしている屋敷の留守番をしている婆さん(山本かほる)から盗んだと言う。

オープンカーで吉祥寺に向かった5人は、自転車屋の二階にあるノミ屋を確認すると、その向かいにあるデパートの一階の内線電話を定時通話にするため、その担当となる秋谷が交渉する事にする。

秋谷は、東洋新聞の記者を名乗り、化粧品売場の売り子に交渉し成功する。

かくして準備は万端揃い、全員沖津が居候をしている屋敷に向かうと、それぞれの役目の練習に没頭し始める。

いよいよレース最終日、川崎競輪場の近くにある店に出向いた富田は、店の娘からポール・アンカそっくりと感心されると、マネージャーに電話をしてみると言いながら、受話器を取ると、2時半からの定時通話を申し込む。

吉祥寺のノミ屋の方には、大木、戸田、秋谷が待ち受けていた。

沖津は競輪場で源造と出会うと、一緒に第5レースから観戦し始めていたが、ゴール直後、源造は5-2と到着順を素早く言い当ててみせる。

いよいよ最終レースの第6レースが2時半から始まる。

ノミ屋にいた戸田と大木は、ノミ屋の松居鉄太郎(葉山良二)からせかされても、迷っている風を装い、券を買うのを引き延ばし始める。

吉祥寺のデパートの内線電話前で待機していた秋谷は、新聞社に電話する振りをして受話器を取り、川崎の方では富田が受話器を取って待機していた。

そのノミ屋に、鉄太郎の妹で、デパートに勤めている京子(芦川いづみ)が、きょうは定休日と云うので、ちょっと顔を見せに来る。

デパートの電話口には、宣伝課長の小沢と云う人物が挨拶しに来て、なかなか立ち去らないので、秋谷は記者として芝居を続けなければいけなくなる。

レースの結果は「1-6」だった。

源造から着順を聞いた沖津が客席を横断し、レース場の隅から、遠くの店で待っていた富田に合図を送る。

それを見た富田が、電話で秋谷に教える。

秋谷は、デパートを抜け出すと向いのノミ屋に向かい、そこで待っていた大木に、女の名前で着順を教える。

それを脇で聞いていた戸田が、他のダミーと一緒に「1-6」を大量買いする。

その直後、川崎からの電話を受けた鉄太郎は、戸惑ったような表情で結果を店に来ていた客たちに伝える。

鉄太郎が戸惑っていたのは、「1-6」を当てた戸田に支払うべき配当の34万円が今手元にないと言う事だった。

それを知った戸田と他の客たちは色めき立つ。

配当金が支払えないのに、金を賭けさせていたのかと云うのだ。

他の客たちは、払ってやれ、親分を出せと云うので、登場して来た虎松親分(松本染升)が間に入り、鉄太郎は、今手元にある20万円だけ支払い、残りも必ず支払うと言う証文を書く事で話をまとめる。

その後、モンシェリに集まった5人は、取りあえず手に入った20万を山分けにし、残金を何としてでも取り立てようと誓い合うと、ホステスたちと踊り始める。

翌日、残金をもらおうとノミ屋に向かった戸田たちだったが、鉄太郎はいないと、ヤクザの子分たちから追い返される。

一旦引き下がった戸田だったが、証文を取ったって、ノミ屋行為自体が違法なので訴える事も出来ないと悔しがる。

その時、大木が、鉄太郎には妹がいたぜ…と言い出す。

それを聞いた戸田は、大木がその妹を誘い出し、俺たちがさらう。そうすれば、大木が自分たちの仲間じゃないと見せかける事が出来ると計画する。

大木は早速、デパートでエスカレーターガールをしていた京子に会いに行き、手紙を渡そうとするが、その場で破り捨てられる。

さらに、彼女の帰宅時を狙って、デパートの裏口に待っていた大木は声をかけるが、京子は、一日に手紙を私にくれる人は10人、声をかけて来る人15人、身体に触って来る人が20人もいるので、何とも思わないと答える。

それでも何とか口説き倒し、喫茶店に連れ込んだ大木は、ノミ屋にいた事を京子に見破られていた。

それでも、不良っぽい所を気に入られたのか、京子は遊園地になら行っても良いと承知し、その後二人は遊園地の回転椅子に一緒に乗る事になる。

その後、喫茶部で休んでいる間、大木は戸田たちに電話を入れ、吉祥寺に戻る時間を8時半だと教える。

その間、一人テーブルに腰掛けて待っていた京子は、近くのテーブルでケーキを食べている男の子二人の兄弟の姿を観ながら微笑んでいた。

電話から戻って来た大木に、大学を出たらどうするのかと京子が聞くと、大木はすぐに、大和物産に勤めると答える。

京子の方は、兄の仕事は嫌いだけど、兄は好きだと言う。

二人は時間通りに吉祥寺に戻って来たが、その姿を、オープンカーに乗った仲間たちがしっかり確認していた。

大木は、後ろから付いて来るはずの車に気を取られて上の空状態だったが、京子の方は、大木の事をすっかり信用したようで、自分は子供が好きなので、10人くらい欲しいなどと将来の夢を語りながら帰路についていた。

やがて人気のない場所に来た時、二人は自然に口づけを交すが、オープンカーに乗った連中が二人に接近して来ると、沖津が降りて大木を殴り倒すまねをし、そのまま京子を車に乗せ連れ去ってしまう。

気絶している振りをしているはずだった大木だが、やはり京子の事が気になるらしく身体を起こそうとしたので、沖津が又殴りつけるまねをし、車に飛び乗るチャンスを危うく逃しかけてしまうと云うハプニングもある。

その後、大木は、ノミ屋に走り、京子が誘拐されたと鉄太郎に知らせに行くが、鉄太郎の母親(高野由美)は心臓が弱いので発作を起こしてしまい、大木は医者を呼びに走らされるはめになる。

沖津が居候している屋敷に連れて来られた京子だったが、毅然として、こんな事をすると後が怖いわよと逆に学生たちを脅しつけ、こんな屋敷に住み、車まで持っているのに、こんな事をして金を取る必要なんかないじゃないと言うと、富田が、あの車はドライブクラブの白ナンバーだと自嘲する。

やがて、ノミ屋に行っていた大木から電話があり、互いの首尾が上手くいった事を確認しあうが、気がつくと、京子の姿が見えない。

慌てて屋敷中を探す学生たちだったが、京子はトイレに行っていただけと分かる。

戸田は、鉄太郎に電話を入れると、後14万早く作るんだな。金は杉並郵便局の私書箱宛に送れ。さもないと、自分が知っている高塚組の友達に頼む事になるぞと脅しつける。

翌朝目覚めた京子は、何とか屋敷から抜け出そうと逃げ道を探すが、屋敷内はがっちり施錠されていた。

ガラス戸から、庭の掃除をしている婆さんの姿が見えたので、何度も呼びかける京子だったが、その声で目覚めた富田が、あの婆さんは耳が遠いと言いながら、京子に迫ろうとする。

京子が思わず、壮二さん!と大木の名前を呼んだので、富田は気が抜け笑い出す。

一方、鉄太郎の方は、必死に金の工面に歩いていたが、一向に金を借りれそうな当てはなかった。

その時、ノミ屋の常連で、今は工場の小使いとして職に就いたと言っていた男(青木富夫)と出会う。

今、給料を預かって帰る所だと言って自転車で通り過ぎた小使いをやり過ごした鉄太郎だったが、急に決心すると、今の自転車を追いかけ、後ろから小使いが持っていた手提げバッグに飛びつくと、奪い取って逃げ出す。

その頃、車で食料調達に行っていた戸田、沖津、秋谷らが屋敷に戻ってみると、京子の様子がおかしい。

ベッドに臥せったままぴくりとも動こうとしない。

それを見た戸田は、留守番を任せていた富田が、勝手に京子を襲った事を察し、富田を殴りつける。

一方、大木の方は、果物かご持参で鉄太郎の母を見舞っており、すっかり信用した母親から感謝されていた。

父親が生きていてくれたら…と、母親が見上げる遺影に映っているのは軍人だった父親の姿だった。

そこに戻って来た鉄太郎は大木の顔を見ると、お前、あの時ノミ屋に来ていたなと気付き、俺はお前みたいに親の臑をかじっているくせに遊んでいる奴が一番嫌いなんだと、もらった果物かごを窓から捨てようとするが、その時アパートに近づいて来る人影に気付き、部屋を飛び出して逃げ出す。

その直後、部屋に乗り込んで来た刑事は、鉄太郎が工場の給料15万円を盗んだと伝える。

それを聞いた母親が胸を押さえたので、大木は慌てる。

その後、大木は戸田に電話を入れ、娘を返してやってくれ。鉄太郎が金を強奪したらしく、刑事に追われている。金はもう送ったそうだと伝える。

それを聞いた戸田の方も、鉄太郎がパクられたら、俺たちもヤバいなと焦りだし、他の三人と相談を始める。

京子に暴行を働いてしまった大木は、大木から繋がっていた電話を一方的に切ってしまう。

結局、京子は返す事にし、車で連れて行く。

そこに大木が待っていたので、京子は喜んで大木に駆け寄ろうとするが、その時、車から「荘ちゃん!」とうっかり誰かが親しげに呼びかけてしまったものだから、それを耳にした京子は立ち止まり、自分が大木にだまされていた事を悟る。

大木の側に来た京子は「だましたのね、私、だまされていたのね…」と言うなり、アパートに入ってしまう。

車に近づいた大木は、京子の様子がおかしい事で何かあったのか?と聞くが誰も答えない。

逆に、あの子、おたくに惚れてたぜと教えられる。

一方、自宅アパートに戻った京子は、布団に寝ていた母親に近づき声をかけるが、応答はなかった。

翌朝、アパート周辺には刑事たちが張り込んでいた。

そこにやって来た大木は、近所のものたちが、京子が母親と枕を並べて、睡眠薬自殺を遂げた。二人とも警察で解剖されるんだと云う事を噂しあっているのを聞き愕然とする。

二人の遺体を乗せ走り去る警察車を、近くの路地からそっと見送っていたのは鉄太郎だった。

モンシャリに集まった戸田たちは、鉄太郎が私書箱に送っていた金を前にして、めいめいに分けようとしていた。

鉄太郎が警察に掴まっても、自分たちに関して口を割るかどうか分からないと云うのだった。

そこに遅れてやって来た大木が、京子が自殺した事を知らせ、あの子が母親の死を知っただけで死ぬとは考えられない。何かあったに違いないと疑いの目を仲間たちに注ぎ出す。

戸田は、あの子が好きだったのか?とちょっとからかうように聞くが、大木は否定する。

何となく気まずくなった仲間たちだったが、そもそも今回の誘拐のきっかけを言い出したのは大木であり、俺たちは皆共犯だと云う声があがる。

大木は、仲間たちの様子を見ていて、薄々、京子が乱暴をされた事に気づくが、戸田になぜ止めなかったと問いつめるが、戸田は自分はやってないと云うばかり。

大木は、そんな逃げ口上ばかりいつも言っている戸田を卑怯者だとののしると、自分は金はいらない。仲間から外させてもらうよと言い捨て立ち去りかけるが、最後に言っとくぜ。鉄太郎の奴には気をつけた方が良いぜと付け加える。

その会話を聞いていたモンシェリのママミエ子が、壮ちゃんの気持、分かるわ…と呟いたので、戸田は「分かってたまるか!」と怒鳴りつけると、無理矢理ミエコの手を取り踊り始める。

他の仲間たちもレコードをかけ、何かを忘れ去るように踊り狂うのだった。

それから数日後…

授業が終わり、大学の校門から出て帰りかけていた戸田は、突然走り寄って来た鉄太郎から、ドスで腹を一突きされ、その場に倒れる。

戸田を刺殺した鉄太郎は、その後、自首したと新聞に載る。

さらに数日後…

大木は、大和物産の入社試験を受けていた。

面接の席に座った大木に、普通に対応しかけていた面接官は、隣りの男から、冨士貿易の息子さんだと耳打ちされると急に態度を変え、おざなりの世間話をし始める。

青春のエネルギーを何にぶつけて来たのかね?と聞かれた大木は口ごもるが、恋人かね?と面接官からからかわれると、ありました!とはっきり答え、場内に笑いが起きる。

入社する事は間違いないから、今後は会社の為にエネルギーを使ってくれと言われ会社を出た大木に近づいて来たのは、沖津、秋谷、富田の三人だった。

彼らは、まだ京子の事で怒っているのか?と大木の様子をうかがうと、富田の知り合いの日本新報の早しと云うデスクに調べてもらったら、鉄太郎は警察で戸田以外の名前を言わなかったし、俺たちの事を知るはずもないのでもう大丈夫だ。ついては、富田が当てにしていた砂糖会社のコネがぽっくり死んでしまったので、困っている。大木の父親の力でどこかの会社を紹介してもらえないかと頼んで来る。

大木は、そんな能天気な仲間たちに付いて行けない様子だったが、「良かった…」と無表情に同調すると、黙って富山から日本新報の名刺を受け取ると、そのまま近くの公衆電話に入って電話をし始める。

その様子を見ていた富田たちは、大木が父親に仕事を紹介してくれると思い込み、喜びあうが、大木が電話をしていたのは名刺の日本新報のデスク林で、東京学院大学門前での刺殺事件には4人の共犯者がいるにでお知らせすると、仲間たちの名前を告げると、最後の自分の名前もはっきり伝え、大木壮二を忘れないようにと念を押すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

石原慎太郎原作の映画化。

裕福な身分の学生たちが、遊ぶ金欲しさに考えた詐欺行為が発端となり、恋も友情も何もかも失ってしまう転落の様子を描いている。

前半は、当時の電話事情を背景にしたトリッキーな詐欺行為がサスペンスフルに描かれ、後半は、女が一人入り込んだ為に起こる、男たちグループの崩壊と言う良くある展開になる。

主演の小林旭が、あまり「裕福な家のお坊ちゃん」に見えない恨みは若干感じないでもないが、全体としては良くまとまった秀作になっていると思う。

小林旭は、能天気なヒーロー像もはまっているが、案外、こうしたシリアスな演技も悪くない。

白黒に画面構成した上に反転した黒白のキャスト文字が重なるスタイリッシュなタイトル部分もシャレている。

舞台となる吉祥寺の当時の様子や、京子がやっているエスカレーターガールなどと言う職種が珍しい。

後半、話の中核となって来る松居兄弟を演じている葉山良二と芦川いづみ。

特に、芦川いづみが演じる京子の役は、その薄幸な境遇の中でも夢を失わない健気な佇まいと、その線の細い美貌が相まって、ラストの悲劇性を嫌が応にも強調しており、強烈に胸に焼き付く存在になっている。