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春だドリフだ 全員集合!!

1971年、渡辺プロ+松竹大船、田坂啓脚本、渡辺祐介脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

伊賀上野

とある場末の芝居小屋では、万年二つ目の落語家なまづ家源五郎(いかりや長介)が一席話しかけていたが、客の大半はストリップ目当てだったので、野次を飛ばすだけで誰も聞いてない。

そんな小屋に子分を連れやって来たのが、この辺り一帯を仕切っている社長の中本竜三(石山健二郎)。

それを迎えたのは支配人の上川(東八郎)だったが、ちょうど、口座から降りて来た源五郎が、小屋が汚い臭い。世が世なら、俺なんかこんな文化果てる場末の小屋でやるような人間じゃないなどと文句を言い始める。

しかし、社長が来ていると他の芸人から耳打ちされると急に態度を変え、上川と中本社長が、今人気の小柳ルミ子を何とか呼べないものかと話をしている間に勝手に割って入り、小柳ルミ子ならテレビ局で良く飯なんかを食っていると大嘘をかます。

それを聞いた中本社長は真に受け、だったら東京で話をつけて来てくれと前金を手渡そうと財布を取り出す。

源五郎が遠慮しようとその財布を押さえようとした時、財布と一緒に持っていた白い布が床に落ち、その中に、斬り落とされた人間の小指が入っているのを見て驚愕する。

中本社長は、俺をだまして50万円ねこばばした奴の指をたった今斬ってやった所だと笑いながら、源五郎に2、30万渡す。

源五郎は、思わぬ展開になった事に呆然とする。

タイトル(列車で東京に戻る源五郎の様子をバックに)

それより30日

MK-TVの「お昼のバラエティショー」では、小柳ルミ子が「私の城下町」と「お祭りの夜」を歌っている所だった。

その姿を舞台袖から眺める源五郎は、あの子にストリップやらすつもりなのかな?受けるかもね。とか、小便臭い小屋でストリップをやらせるのも可哀想だねなどと独り言を呟いていた。

歌い終わった小柳ルミ子は、そんな源五郎

の姿を見ると、マネージャーの豊塚(鳥塚茂樹)を呼んで、何とかしてと訴える。

源五郎に近づいて来た豊塚は、ここ一ヶ月あんたに付きまとわれて彼女はノイローゼになりかけている。警察に訴えるぞと文句を言う。

それでも、源五郎が仕事を頼みたいんだと言うので、冗談じゃない!彼女は向こう1年間スケジュールが決まっているんだと豊塚は呆れる。

その時、がっくりした源五郎に気づいて声をかけて来たのは、同期の落語家で、もう真打ちになって人気者となった円喜だった。

都落ちをしていたと思っていたが、テレビに出れる身分になったのか?と半分冷やかし口調だったので、源五郎はますます腐る。

久々に師匠(三遊亭円生)の家に挨拶に行った源五郎だったが、ここでも師匠から何か一席やってみろとせかされても、何一つまともな話を披露する事が出来なかった。

そのあまりの出来の悪さに呆れた師匠は、茶を運んで来た弟弟子の円八(左とん平)は、うちに来てから3年で二つ目になったのに、お前は20年以上やっていてもまだ二つ目だと嘆き、いっその事名前でも変えてみるかと言い出すと、碇亭長楽と云うのはどうかと勧める。

同期の円喜など、もう真打ちになり、弟子の5人も持っているのに、お前は寝小便の癖もまだ直らないのか?と小言を頂く。

その後、馴染みの飲み屋で飲み始めた源五郎改め長楽は、女将相手に、今日から名前を変えたので、直に真打ちになるんだなどと法螺話をし始める。

話に夢中になっていた長楽は、いつの間にか、自分のコップ酒や焼き鳥がなくなっている事に気づき、反対隣の青年から軟骨を一本奪い取ったりするが、気がつくと、自分の席の横に屈んでいた見知らぬ青年が盗み食いをしていた事を知り取っ捕まえる。

その青年は、福島から集団就職で来たが、ここ数日何も食べてないのでと言い訳をし始めるが、女将には青森から来たと言っていたらしく、全部でたらめだと分かる。

長楽が機動隊を呼ぶぞと脅すと、怯えたその加藤ヒデオと名乗った青年(加藤茶)は、貯金通帳を差し出し弁償すると言い出す。

中を見ると、1700円の預金が記載されていたので、長楽は一計を案じ、俺の弟子になって、名人芸を引き継げば、この金を5倍にも6倍にも増やす事が出来るがどうだ?名前も茶楽と付けてやると誘いかける。

そう聞いた茶楽は、良く分からず承知したので、長楽から、お前はただいまから終世俺の弟子。この通帳は俺が預っておくと言い渡される。

その頃、荒川忠次(荒井注)は自宅で少年マガジンを読みながら、これから芸者二三子として出かける妹の文子(長山藍子)に、3000円ばかり置いて行けとせがんでいた。

姉の着付けを手伝っていた妹のエリ子(新藤恵美)は、そんな自堕落な生活をしている兄を、近所では兄ちゃんの事を与太郎と呼んでいるのよと叱るが、忠次は、お前たちのおしめを替えてやってここまで育てたのはこの俺だと開き直るばかりで、聞く耳を持たなかった。

茶楽を連れ帰って来た長楽は、下宿をしている今川焼「高木屋」の女房テツ子(春川ますみ)と主人高木風太(高木ブー)の目を盗むように通り過ぎると、隣りの忠次の家に上がり込む。

風太も忠次も、小学生時分から長楽がガキ大将として仕切っていた幼なじみだった。

茶楽は、エリ子を見ると喜ぶが、エリ子の方はいつも邪魔をしに来る長楽を迷惑がり、二階に行ってと文句を言う。

茶楽を連れ二階に上がった長楽は、その部屋から隣りの自室にひも付きの梯子を倒し、その梯子を渡って、汚い自分の部屋に戻る。

茶楽はその部屋のあまりの汚さに唖然とするが、長楽は古来芸術家は貧しいものだと言い訳をする。

そこに亭主を連れ上がって来たテツ子が、一年間溜まっている部屋代を払ってくれと催促に来るが、忠次も隣りから遊びに来ており、長楽は言葉巧みに弁解をするばかり。

呆れたテツ子は、亭主の風太に、長楽から目を離すんじゃないよと釘を刺す。

その夜、茶楽は布団もなく震えながら、一つしかない長楽の布団の中に潜り込ませてくれと頼むが、屁をこかれただけだった。

翌朝早速、茶楽は長楽から落語の基本を教わるが、腹が空いている茶楽はなかなか覚えられず、長楽から扇子で殴りつけられる。

朝食も、長楽一人が喰うだけで、茶楽は、あまり食い過ぎると覚えが悪くなるからと、雀の涙程の飯しかもらえずにいた。

そんな「高木屋」に荷物と一緒にトラックに乗ってやって来た学生がいた。

テツ子が二階を貸す事に決めた中本工作(仲本工事)と云う東大生だった。

店の前に停まったトラックの荷台に上がり、引っ越しを手伝おうとした忠次は、荷物の中にあったアルバムを見つけ、中を見ると、そこには中本の父親竜三の写真があった。

二階に上がって来た工作は、部屋の汚さに驚くが、隣りの家の二階にいたエリ子を見つけると大喜びして挨拶を言う。

驚いたのは長楽と茶楽も同じで、テツ子から二階の二部屋の奥だけを使うように言われてしまう。

ゲン直しに朝風呂に行って来るから、その間に高座着をきれいにしておけと長楽が出かけた後、一人残された茶楽は、襖の隙間から隣りの部屋をのぞき、エリ子と窓越しに話している工作をうらやましがり、押し入れから取り出し持っていた長楽の高座着を、悔しさ紛れに破いてしまう。

さらに、調子に乗った茶楽は、朝食用に置いてあった味噌や醤油、ご飯なども高座着にかけ「ウンコチンチン」してしまう。

その後、寄席には文子が聞きに来ていた。

高座では、円八は話している最中だった。

そこにやって来た長楽は、先に来て待っていた茶楽から高座着を着せてもらいながら、文子が来ている事を教えられる。

長楽は喜び、茶楽に出囃子も頼んで、円八と交代する形で高座に上がる。

ところが、茶楽が打つ太鼓はめちゃめちゃで、ずっこけながら高座に登場した長楽の高座着の背中がびりびりに破れていたので、それを見た客席は大爆笑。

笑われている意味が分からない長楽は、何とか座布団に座るが、気がつくと、さっきまでいたはずの文子の姿はもうなかった。

その文子と円八は、近くの甘味屋で落ち合っていた。

二人は、隅田川小学校時代からの幼友達で、今でも互いに惹かれあっていた仲だった。

高座では、高座着の背中がない長楽がくしゃみを連発していた。

舞台袖では、茶楽が胡椒を高座に向かって撒いていたのだ。

さらに茶楽は、茶の代わりに、湯のみに醤油や酢、こしょうを入れたものを長楽の前に持って行く。

知らずにそれを飲んでしまった長楽は、思わずむせ、客席までくしゃみが広がってしまう。

気がすんだ茶楽は楽屋を逃げ出そうとするが、戻って来た長楽が掴み、さっきの湯のみの中身を無理矢理飲まされる。

そこに長楽の師匠がやって来て、今通りかかったら、随分客席が湧いている声が響いて来たが、長楽がやっていたのか?「時そば」であれだけ湧かせる事が出来るのなら、そろそろ真打ちになれるかもしれんなと褒める。

その師匠の言葉に有頂天になった長楽は、その夜、芸者仲間のぽん太(早瀬久美)と共に店に出かける所だった文子にその事を打ち明け、そろそろ自分も結婚したいと伝える。

すると、文子の方も、私も結婚するのなら噺家が良い。長楽さんみたいに内気で真面目で、古典落語に打ち込んでいる人…と言うので、長六はますます舞い上がってしまう。

その日の文子の客は、馴染みの長谷川先生と曽根(天本英世)と言う人物だった。

長谷川は、二人で商談があるので、ちょっと席を外してくれと、文子とぽん太を追い払うと、大日本憂国同志会の三隅先生に近づきたいので、2億ばかり献金がいると曽根に持ちかける。

すると曽根は、今年、自分の所に新年の挨拶状を寄越した人物の中から選んだのだが、こいつではどうかと、中本竜三の名前を見せる。

伊賀上野で、自分好みのヤクザ映画を撮らせていた竜三は、子分から長谷川先生から手紙が来たと知らせられると、すぐに中を確認し、いよいよ自分にも、大日本憂国同志会の新年会への招待状が届いたと喜ぶ。

さらに、あのなまづ家源五郎と云う落語家は、札付きだと子分から聞いた竜三は、東京では息子の部屋に泊まるので、何とかその間に、源五郎を見つけて目にもの見せてやると意気込むのだった。

そのなまづ家源五郎こと長楽は、高木屋の店先で、今川焼の手伝いでもしろとテツ子から迫られていたが、粉をこぼしてしまい、何してるのよ!と顔にこぼれた粉をなすり付けられていた。

その頃、二階の押し入れを開け、自分の預金通帳を取り戻して逃げ出そうとしていた茶楽は、通帳が「全額支払済」になっており、「秘密の日記」には、真打ちの襲名披露のため、茶楽の貯金だけではなく、例の金にも手をつけたと書かれてあった。

見ると、押し入れ一杯に、真新しい高座着や、名前を入れた手ぬぐいが多数積まれているではないか。

これらを買う為に、自分の預金を全部使われてしまったと知った茶楽は怒るが、そこに長楽が戻って来て、勝手にここを開けるとは何事だ。お前に俺が与えてやった苦労代として50万払えと、逆に脅して来る。

踊りの師匠花柳のり輔(佐山俊二)から手ほどきを受けていた文子の様子を工作と一緒に観に来ていた忠次が、稽古に来ていたハーフの娘たち(ゴールデンハーフ)の一人(エヴァ)に今練習している演目を聞くと、今やっているのは「花のかむろ」と言う曲で、「かむろ」と云うのは漢字で書くと「禿」だと言われてしまう。

そこに、茶楽と風太を連れ、踊りの稽古にやって来た長楽は、自分にも稽古をつけてくれとのり輔に声をかけるが、ぽん太に相手をしてやれと言われる始末。

その夜、忠次を飲み屋に誘った長楽は、文子と近々結婚する事になりそうだと打ち明けるが、それを聞いた忠次は、文子が良く承知したな?と首を傾げながらも、ところで、結婚したら俺を喰わしていけるか?と聞いて来る。

長楽は、分かったと承知する。

その頃、文子と長八は、夜店を見ながら歩いていた。

神社に二人で向かうが、文子はいつもここであなたが早く真打ちになれるよう願をかけているのよと打ち明ける。

そんな事を知らない長楽は、1月に真打ちになるはずなので、2月下旬の大安吉日を決めて欲しいと忠次に申し込んでいた。

そこに、工作と風太がやって来て合流するが、茶楽はいなかった。

その頃、茶楽は部屋で、全学同の「爆弾の作り方」と云う本を読みながら火薬を調合していた。

一方、文子は長谷川から、三隅先生のような実力のある人物に世話になるのが一番良いのだと説得されていた。

酔った工作と風太がそろって帰って来て、隣りの忠次の家から自分たちの家に戻ろうとするが、エリ子は家に入れる事を拒む。

爆弾を作った茶楽は、酔った寝入った長楽の布団の中に仕込むと、部屋の外から導火線に火をつけ、隣りの工作、下の階に寝ていたテツ子と風太を起こして、すぐに逃げるように伝える。

何が起こったか分からないまま、下の階では起こされた面々が右往左往しながら外に逃げ出す。

導火線の火は、長楽の布団の中に燃え広がるが、次の瞬間、長楽が目覚めてしまう。

飲んで寝た為、久々に寝小便をしてしまったからなのだが、幸運にも、その小便で導火線の火が消えた事には気づかないままだった。

長楽は、布団の中に入っていた爆弾を何か分からず窓から外に放り投げてしまう。

その爆弾は、外に逃げていた茶楽の頭を直撃する。

茶楽は拾ったものが爆弾だと気づくと、慌てて投げ捨てるのだった。

翌日、中本竜三が息子の工作と一緒に車に乗って、長楽と茶楽がでかけた後、高木屋にやって来る。

テツ子と風太に、土産の伊賀越漬を渡した竜三は、二階の工作の部屋に入ると、奥のさらに汚い部屋の住人に興味を持つ。

工作が売れない落語家が住んでいると言うと、名は何と言うと気色ばむが、碇亭長楽だと聞くと、違うなと納得する。

そこに隣りの忠次 が挨拶に来る。

竜三は、停まるのは今日一日だけだが、今晩はみんな一緒に飯でも喰いましょうと誘う。

その頃、寄席にいた長楽は、やって来た円喜に自分の名前の入った手ぬぐいを渡したので、真打ちにでもなるのかと驚かれる。

その長楽が高座に上がった後、楽屋の隅にいた茶楽に事情を聞いた円八や円喜だったが、一心不乱に新しい爆弾を作っていた茶楽は、もうすぐ死ぬんですよと呟いたので、「死ぬ?」と驚いた二人の噺家は高座の長楽を覗き込む。

寄席から帰って来た長楽と茶楽は、高木屋の二階からにぎやかな声が聞こえて来たので、何事かと、忠次の家から二階に上がると、様子をうかがう。

すると、そこで「私の城下町」を歌っていたのは、あの伊賀上野で金を渡された中本竜三社長ではないか!驚愕した長楽は、茶楽と共に、工作の部屋を通らないように奥の部屋に戻る。

その竜三は、なまづ家源五郎と云う噺家を知らないかとその場に集まった面々に聞く。

忠次 や風太、テツ子らはすぐに気づいたが、適当に返事をして様子をうかがっていると、竜三が見つけたらぶっ殺してやるとドスを抜いてみせたので、何かヤバい事になったに違いないと察しをつけ、心当たりがないでもないので見つけてみると言葉を濁す。

一方、襖一つ隔てた隣りの部屋に竜三がいるので、身動きが取れなくなった長楽は、茶楽に工作をこっそり呼んで来させると、お前が学校に行くと称して、親父から小使いをせびり遊んでいる事を知っているぞと脅し、隣りになまづ家源五郎が住んでいる事は絶対に親父に話すなよと釘を刺すが、その話を茶楽はしっかり聞いていた。

長楽の弱みを握った茶楽は、わざと隣りの宴会の席に入り込み、隣りの長楽も紹介しましょうと、しきりのふすまを開ける。

しかし、長楽の姿はなかった。

実は、開いたふすまの裏にへばりついていたのだ。

その夜、茶楽は、新しい爆弾を持って、偽のいびきをかき、寝た振りをしていた。

一方、長楽の方は、寝小便を恐れ、夜中にこっそり便所に行くが、そこに竜三が先に入っていたので驚いて逃げ戻る。

ところが、寝ぼけた竜三が、部屋を間違えて、長楽の部屋の方に入って来ると、息子と間違えたのか、長楽の布団に潜り込み、抱きついて来たではないか。

パニックになりそうな長楽は、隣りで寝た振りをしていた茶楽を「代われ!」と小声でささやきながら蹴って起こそうとする。

そして自分は、窓から隣りに逃げ出そうとするが、こちらからは梯子がないので、木の枝に足をかけるが、枝が折れて、下に落下してしまう。

仕方ないので、長楽は、側にあった犬小屋の中に逃げ込むしかなかった。

翌朝、竜三は箱根に向かった。

それを見送った仲間たちは、犬小屋から這い出て来た長楽を全員でぼこぼこにする。

長楽が、竜三が探していたなまづ家源五郎だと知っていたからだ。

茶楽も、その中に入り、井戸水を長楽にかけていたが、逆に掴まれ、井戸水を頭からかけられる。

その頃、文子は長谷川から電話を受け、今夜7時、箱根の鶴乃家に来るように指示を受けていたが、それを側で盗み聞いていたエリ子は、姉さんが二号になるなんて反対よ。私学校辞めるわと説得しようとするが、文子は、実はあんたの学費も、この家の家賃も、みんな長谷川先生に面倒見てもらっていたので、今更頼みを断る訳にはいかないのだと言う。

それを聞いたエリ子は、姉さんには好きな人いないの?そんな事をして哀しむ人はいないの?と問いかける。

その後、文子は、寄席に行くと、客席には座らず、後方に隠れるように、高座で「らくだ」を演じている円八に向かい「五郎ちゃん、ごめんなさい!」と小さな声で呟く。

ちょうど寄席にやって来た長楽は、寄席から出て行く文子を見つけ声をかけると、文子は、私、あなたみたいな人と暮らしたかった、さようならと言い残し去って行く。

事情が良く分からないながらも、告白されたと思い込んで喜んでいた長楽だったが、そこに、姉を捜しに来たエリ子と、兄の忠次、風太、茶楽、工作らがやって来て、箱根の鶴乃家で、これから文子は誰かの二号になりに行くのだと聞かされると驚く。

工作は、父親の竜三もその宿に行ったと言うではないか。

ここは、隅田川で産湯を浸かった俺たち仲間が助けなくちゃと全員結束する。

長楽も、一か八かの命がけだぜと気合いを入れる。

箱根の鶴乃家では、「大日本憂国同志大会」が開催されていた。

長谷川は、中央に座った三隅信之助(藤村有弘)に新年の音頭取りを願い出る。

「新年おめでとう!」の挨拶がすむと、長谷川は文子に、三隅に酌をするように促す。

その時、一人の芸者が登場し、これからアトラクションの時間ですと口上をノベルと、宴会席後方の幕を開く。

そこには、五人の芸者が頭を下げており、音楽と共に「ツーレロ節」を歌い始めるが、その五人とは、長楽、茶楽、工作、忠次、風太の変装した姿だった。

そんな中、客の一人だった竜三は、長楽の顔を見ながら、どこかで見た顔だと頭をひねっていたが、ぽん太の酌でごまかされていた。

その頃、別の部屋では、長楽の師匠、真打ちのベテランたち(柳家小さん、桂文治、中村是好)らが、今年の真打ちに昇進させる噺家を決めていた。

その頃、宴会席の方では、三隅が文子に、席を替えるかと耳打ちしていた。

真打ち決定会では、3人の名前が決定しかかるが、長楽の師匠は、うちの碇亭長楽も…と、申し訳なさそうに言い添える。

一方、歌い終わった芸者五人に近づいた竜三は、その中に息子の工作が混じっていたのに気づき愕然とする。

茶楽は持ち歩いていた爆弾をうっかり座敷に落としてしまうが、気がつかなかった。

ぽん太とエリ子は、廊下で竜三に事情を打ち明ける。

自分も利用されていたとは、にわかに信じられなかった竜三だったが、みんなと一緒に廊下の隅に身を隠していると、そこに曽根が通りかかったので、全員で襲いかかって掴まえる。

竜三は、みんなと一緒に、文子を連れていた三隅の部屋に乗り込むと、姉さん、あんたも賄賂の内やでと教えると、その証拠として今締め上げて何もかも吐かした曽根を部屋に押し倒す。

そして、竜三が三隅を掴まえている間に、長楽たちみんなで、文子を部屋から連れ出すが、そこに待ち受けていたのは長谷川と子分だった。

長谷川は、君にもバレたようだな、私の正体が…と凄む。

全員、無礼講状態になった宴会席になだれ込む。

そこではもう客が入り乱れていて、先ほど茶楽が落とした爆弾が、その足に当たってあちこちに転がり始める。

やがて、灰皿の横に転がった爆弾の導火線に火がつき爆発する。

真打ち披露会の部屋も、爆発のショックでかなり壊れるが、全員地震か何かが起こったのかと思い込む。

座敷では、皆倒れている中、よれよれ状態になって立ち上がった長楽の顔をまじまじと近くで観た竜三は、探していたなまづ家源五郎だと気づいたので、あわてて逃げ出した長楽は、真打ち決定会の部屋の壁をぶち抜いて、中に倒れ込んでしまう。

その汚い芸者姿の乱入者が、弟子の長楽だと気づいた師匠は、もう長楽の真打ち昇進の話はご破算です。私は落語連盟を辞めますと、他の師匠たちに詫びる。

それより一年

寄席の高座では、真打ちになった茶楽が「道具家」を披露していた。

客席には、工作がエリ子と並んで観ていた。

楽屋では、相変わらず二つ目の長楽が、仏頂面をしながら、今や師匠と弟子の立場が逆転した茶楽の食事用に、めざしを七輪で焼いていた。

そこに赤ん坊を背負った文子がやって来て、亭主になった宴八の為の弁当を持って来る。

客席では、工作からのちょっかいに迷惑顔をしていたエリ子の元に、若い青年(萩原健一)が近づいて来て声をかける。

エリ子は健ちゃんよと紹介し、青年も「健ちゃんです」と工作にあいさつすると、そのまま二人で寄席を後にする。

その様子を観ていた茶楽は高座から飛び降りて、工作と一緒に二人の後ろ姿を見とれ、狼狽し始めたので、客たちは「話の続きをやれ!」と騒ぎ出す。

憧れのエリ子に去られ、傷心のまま楽屋に戻って来た茶楽は、先輩たちから呆れられるが、長楽が差し出しためざしを見ると、焼き過ぎだ、焼き直せと文句を言う。

長楽が困惑すると、若いうちの苦労は…、おめえはもう若くはねえが、買ってでもしておけと言うじゃないかと、かつて自分が言われたのと同じように言い返すのだった。

その後、浅草にお詣りに来た長楽は、画面に向き直ると、お客さん、半年後を見ていてくれ。必ず奴らに煮え湯を飲ましてやりまさぁと負け惜しみを言うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

松竹全員集合シリーズ第8弾。

アイデアが色々つまっており、シリーズの中では、かなり面白く仕上がっている作品ではないかと思う。

冒頭で、長さん演ずる噺家が、師匠の思いつきで名前を変える事、寝小便の癖がある事などの伏線が、ちゃんと後半のハラハラドキドキに繋がっているし、加藤茶演ずる茶楽が宴会の席で爆弾を落とし、それが、入り乱れる客たちの足で転がる辺りのサスペンスは、後年のハリウッド大作「インディ•ジョーンズ 魔宮の伝説」の、毒消しが入った瓶が、キャバレーの客たちの足であちこちに転がるアイデアを彷彿とさせる。

本物の名人落語家たちの登場もうれしいし、小柳ルミ子やゴールデン・ハーフと云った、当時の人気者の登場もナベプロらしい趣向だが、何と言っても、最後のショーケンの登場は、今観てもびっくり!

冴えない落語家を演じている長さんも面白いが、遊び人で妹たちを困らせている荒井注の役も、なかなかはまっている。

後半の真打ち昇進会議の席で、円生が小さんに対し「落語連盟」を辞めますと云うのは、後年、円生が本当に落語協会を辞める実話を連想させて興味深い。

東宝の天本英世が、珍しく松竹作品に登場しているのも貴重。

ちょうど「仮面ライダー」の死神博士を演じていたのとほぼ同時期なので、髪型や全体のイメージは、まさしく「死神博士」そのもの。

色んな意味で、見所が多い作品だと思う。