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ジェネラル・ルージュの凱旋

2008年、「ジェネラル・ルージュの凱旋」製作委員会、斉藤ひろし脚本、中村義洋脚本+監督作品。

※この作品は比較的最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

10年前の東城大学医学部付属病院に、次々と救急車が到着し、ストレッチャーが運び込まれて来る。

城東デパートで火災発生、大量の重軽傷者が救急救命センターになだれ込んで来たのだった。

若き救命医師だった速水晃一(堺雅人)は、患者を全部受けてやると言い出す。

タイトル

現在の東城大学医学部付属病院では、「チーム・バチスタ事件」以来、倫理問題審査委員会が開かれるようになり、その委員長として、院長直々に委員長に推薦されたのが、不定愁訴外来医の田口公子(竹内結子)だった。

今日の会議でも、MRIで死体の解析をするべきかどうか議論していた。

三船啓二事務長(尾美としのり)と精神神経科准教授で倫理委員会副委員長の沼田利博(高嶋政伸)は、賛成しかねている様子で、委員長として意見を求められた田口は、「良く分からない…」と頼りない返事をするだけだった。

田口は「愚痴外来」と揶揄されている「不定愁訴外来」の仕事に戻っていた。

息子との不仲を愚痴る江波おばさん(山田スミ子)や、交通事故の後、それまで大好物だったバナナが急に食べられなくなったと話す青年庄司(市野世龍)や、腹の手術跡が開くのではないかと思い、力を入れられなくなったと云うおじさん市川(河原さぶ)などが不満を口にしては帰って行く。

診察が終わった田口の肩をもんでやるのは、ベテラン看護婦の藤原真琴(野際陽子)

そんな休憩時間、田口は机の上にあった倫理問題審査委員会委員長宛の一通の封筒を開けてみる。

中には「救急救命の速水センター長は、医療メーカーのメディカルアーツと癒着している。心臓カテーテルの使用頻度を調べてみろ。花房看護婦長は共犯である。」と書かれた一枚の告発状が入っていた。

さっそく、その告発状を、院長の高階権太(國村隼)の所に田口は持って行く。

高階院長は、確かに速水センター長は独断専行の所があり、色々敵を多いようなので、念のため、調べて頂けますか?と田口に願い出る。

田口は、又?と困惑するが、事件が解決したら、委員長を辞めさせてもらう事を条件として引き受ける事にする。

その夜、ソフトボールの投手としてマウンドに立った田口は、相手チームの胸元に「MEDICAL ARTS」とチーム名が入っている事に気づく。

あの告発状に書かれていた医療メーカーのチームだった。

そんなチームの一人がコンパクトカメラを構え、マウンド上の田口にポーズをせがんだんで、仕方なく田口は写真用のポーズをとってやる。

試合後、チーム仲間に速水の事を尋ねた田口は、彼が「ジェネラル・ルージュ」と云うニックネームを持っている事を知らされるが、「ルージュ」の由来については誰も知らなかった。

マスクをせずに手術をした為に、顔中血まみれになったのが由来だと云うものもいたが、それだと「血まみれ将軍」のはずである。

翌日、こっそり、救命救急センターの部屋に様子を見に出かけた田口は、吐血をする患者の処置を佐藤拓馬(山本太郎)が行っている所に出会う。

そこに、新たに、トラックとミニバンの衝突事故の電話が入ったと助手の川村明(中林大樹)云うので、思わず、佐藤は断れと怒鳴るが、そこに「受けろ!」と声が響く。

ジェネラル事速水センター長の声だった。

佐藤はベッドがない。黒崎さんが乗り込んできますよと反抗するが、速水は、患者の一人を外科病棟に移せとマイクを通じて命じる。

部屋でモニターを監視していた速水は、チュッパチャップスを嘗めていた

その速水の部屋には、三船事務長が来ており、今の病院経営の状況では、かねてより速水が念願していたドクターヘリの導入は難しいと話していた。

その部屋からは、屋上にあるヘリポートが映し出されていたが、今や無用の長物と化しているその場所は、隠れ喫煙所に成り果てていた。

やがて速水は、別のモニターに映し出された救命センター前の扉付近の映像に目を止める。

急性アルコール中毒で入院していた患者(中村有志)が、一晩しかいなかったのに、治療費の59000円は法外だと、そこにいるはずがない田口に詰め寄っていたからだ。

速水は部屋を出て、患者の方に近づくと、看護婦長の花房美和(羽田美智子)もやって来て、あなたは深夜11時55分に運び込まれているので、二晩入院した事になると説明すると、たった五分で二晩と勘定するのかと患者はますます怒り出すが、田口は隙を見てその場を逃げ出してしまう。

佐藤は、心肺停止した患者の心臓マッサージを行っていたが、心臓が動かないのでCPAと報告しかけるが、速水が心臓マッサージを変わり、看護婦も如月翔子(貫地谷しほり)から花房看護婦長に変わる。

脇で見ていた田口に対し、速水は、この心臓マッサージ、一時間やっても2900円、あんた外来の愚痴を聞いて1時間いくらもらっている?同じ医者とは思えんなと愚痴る。

それでも心臓が動かないので、速水は開胸すると言い出し、胸を切り開いて、直接、手で心臓マッサージを始める。

その甲斐あって、ようやく患者の心臓は動き出したので、外で見ていた三船事務長に、患者が死んだら金取れないからなと皮肉を言いながら速水は出て行く。

そんな速水に、メガネをかけた業者らしき男が近づいて話しかけたのを見かけた田口は、そのメガネの男が、先日のソフトの試合で、カメラを持って自分を映していた男である事に気づく。

こっそり、二人の近くに潜み、話を聞いていると、何やら男が紙包みを速水に手渡している。

速水が「三つばかりバックしなければいけないな」と、その中を覗き込みながら言うと、メガネの男は「いや、私は一つで良いです」と返事している。

その後、そのメガネの業者らしき男は、沼田准教授にも近づき話しかけていた。

庭に出て、「向いてない…、本当に向いてない、この仕事…」とあくびをしていた田口は、あのメガネ男が近づき、自分にも紙袋を渡そうとするので、慌てて断るが、メガネ男は、先日の試合の時の写真をCDに焼いたので…と中身を取り出してみせる。

てっきり賄賂が入っているものと思い込んでいた田口は赤面してしまう。

その日も愚痴外来に来ていた市川が、病院から帰りがけ、思い切り胸を広げて深呼吸した途端、ガバッと大きな音がしたので、傷口が開いたかと怯えるが、その音は、彼の上階に、男が墜落した音だった。

墜落死していたのは、あのメガネ男、メディカルアーツの磯部信也(正名僕蔵)と云う男だった。

藤原看護婦から、事件の情報を聞いていた田口は、突然訪ねて来た刑事たちから、磯部さんがなくなる前、言い争いをしていたらしいですねと任意同行を求められる。

田口が警察に連行されたと云う噂はたちまち病院中に広がり、看護婦たちは、痴情のもつれと疑うし、高階院長まで、委員長になったのでストレスが溜っていたのかなどと、藤原看護士と噂しあっていた。

が…、もちろん、田口はすぐさま釈放されて来る。

田口は、磯辺からもらったCDに写った自分の写真を眺めていたが、急に、身体に悪寒が走るのを感じる。

一緒にいた藤原看護婦は、牢に入っていたので風邪をひいたのでは?と心配するが、田口は入ってないし…と否定する。

その後、速水にもう一度会いに行った田口は、そこの部屋のモニターにヘリポートが映し出されていた事に気づき、犯行時の映像が残されていたのではないかと喜ぶが、録画はしていないとあっさり速水にすかされてしまう。

田口は思い切って、速水に対する告発文が届いた事を打ち明けるが、速水は特に慌てたような素振りを見せなかった。

しかし、その時、又しても、田口は強度の悪寒を感じて震え始めたので、異変に気づいた速水が心配して近づいて来る。

部屋のモニターの一代に映し出されていたのは、ストレチャーに乗って運ばれて来た厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長と言う長い肩書きを持つ白鳥圭輔(阿部寛)の姿だった。

バイク事故で、右足を骨折したらしいが、治療を受ける白鳥は、この病院、Aクラスと云う割りに医者が足りない、今時分の手当をしているのは研修医だと見抜く。

様子を見に来た速水は、骨にひびが入っているだけだと言い、ろくに診察もしないで、直後の運び込まれて来た薬物中毒の少女の方に向かう。

花房看護婦長が、研修医に指示しているのを見た白鳥は切れ、何とかしろ!と速水に怒鳴る。

白鳥は、唯一空いていた小児病棟に移され、入院中の子供たちから「ガリバー」とからかわれるようになる。

田口だけではなく、高階院長も見舞いに訪れたので、自分は殺されかけたのだ。実は自分の所にここの速水センター長と医療メーカーとの癒着を暴く告発状が届いていたと明かす。

それを聞いた田口と高階院長は、白鳥が見せた告発状を確認してみた所、それはパソコンでプリントされており、さらに、花房看護婦長の事が書かれていない事に気づく。

田口が受け取った告発状は手書きだったのだ。

それをちょっと自慢げに説明した田口に対し、白鳥は、仕方ない。今回もあなたを助ける事にしましょうと、勝手な申し出をしたので、田口はビックリする。

速水センター長に恨みを持っている人物と云うと…?と白鳥が考え始めた時、佐藤がやって来たので、あなたが恨んでいる?と聞くと、あっさりそうですと佐藤は答える。

そして、治療をしても救命センターには一銭も入らないシステムの説明をする。

それを聞いていた白鳥が、それで良くAクラスと云えますねと呆れると、佐藤はあわてて、医者は足りていると言い捨て帰って行く。

その後、白鳥のベッドは、田口と如月看護婦によって、別の部屋に移動させられる事になる。

途中、白鳥は、あの人じゃ、センターを支えきれないと花房看護婦長の悪口を言う如月に、自分は右手がしびれるので、変わりにクロスワードパズルの枠を埋めて欲しいと頼む。

その意図に気づかない田口が、自分がやってやろうかと申し出ると、白鳥は怒鳴りつける。

もちろん、如月の筆跡と田口の所に届いた手書きの告発状の筆跡を比べる為だったのだが、二つは一致しなかった。

白鳥は、明日情報屋を使うかと云い出したので、驚いただったが、その情報屋とはベテラン看護婦の藤原の事だった。

彼女は、すらすらと、速水を嫌っていそうな医者や看護婦の名前を数名挙げてみせる。

先週からウィーンに出張中の第一外科の黒崎外科教授ですら、救命センターにベッドを取られないように、たえず外科を満床の状態にさせていると云う噂さえあるらしい。

沼田准教授の所に話を聞きに出かけた白鳥と田口だったが、助手の小峰小太郎(林泰文)が曳くコーヒーミルの音がうるさい。

沼田は、速水には敵が多いが、高階院長のお気に入りであるなどと話す。

黒崎と手を組んで、告発状をばらまいているんじゃないですかと突然秘密を明かした白鳥に、沼田は自分ではないと否定しながらも、それが事実なら由々しき自体なので、特別倫理問題審査委員会を非常召集しなければならないと、助手の小峰に準備をするよう命ずる。

磯辺があなたの所にも来ていたのでは?と云う白鳥の問いかけにも、業者が出入りするのは普通の事ですと軽くいなす沼田だった。

沼田への質問を終え、部屋に帰る途中だった白鳥は、誰かを見て驚いたらしく、「何で彼奴がここに!?」と声を上げ、エレベーターに乗り込もうとしていた三船事務局長に声をかける。

三船の方は、すでに白鳥が入院していたのを知っていたらしかった。

白鳥が意外そうな顔をしている田口に説明した所によると、三船は、厚生労働省の後輩で、国費留学でアメリカに行った後逃げた男なのだそうだった。

頑張れ!応援していると口先だけの応援をして三船と別れた白鳥は、三船もつるんでいる。沼田は、薬を延々と患者に出し続ける三船が大好きなタイプの医者だと呟く。

その後、田口は、救命センターに運び込まれていた薬中毒の少女の病室に一人やって来る。

一方、車いすに乗ったまま田口と別れた白鳥は、リハビリテーション室の前で、患者の足を動かしながら、不気味な笑みを浮かべている部屋の中の理学療法士山本(長江英和)の顔を見て凍り付いていた。

田口が何も言わずに立ち去ろうとすると、自殺願望の少女亜希子(黒瀬真奈美)は、何も言わないでいてくれるの初めてだったから、又来てとねだる。

田口は、自分はいつでも愚痴外来にいるからと言い残して部屋を出る。

そんな田口が一人でパンを食べている休憩室に、花房看護婦長が近づいて来て、何か調べています?と聞いて来る。

速水の印象を田口が尋ねると、あの人は子供ですから。わがまま将軍…と花房は答える。

ルージュの意味を聞くと、10年前、城東デパートの大火災の時、100人近い寓継承者が運ばれて来た。時間は夜の7時過ぎで医者は半分帰りかけていた。その時、速水は、館内放送で非常事態発生を一斉に流し、今後は私の指揮下に入るようにと命じたが、あまりの人数を処理しきれず、結局、受け入れを拒否するしかなかった。

あの日から、彼は何かに憑かれたようになった。ヘリが飛んでいればもっとたくさんの患者を助けられたのにと悔やんでいたと云う。

それで「血まみれ将軍」なんですねと、田口は独り合点してしまう。

その頃、沼田と三船事務長は、告発者は複数いると言う事か?と話し合っていた。

田口は速水に会いに行き、倫理問題審査委員会に出席して欲しい旨伝える。

同席した白鳥は、模型のヘリを勝手に部屋の中で飛ばして遊んでいた。

速水は、メディカルアーツのカテーテルは優秀だから使っているだけだと云う。

白鳥が、壁面を指差し、ここには何が入っているんです?と聞くと、メディカルアーツからの賄賂だと平然と答える速水。

磯部さんの死に責任感じませんか?と続ける白鳥に、癒着していると云うなら証拠を見せろよと速水から切り返されると、大人しく部屋を去るしかなかった。

同じように部屋を出ようとした田口だったが、彼女だけ速水に呼び止められる。

自殺マニアの亜希子が退院する時挨拶に来て、田口先生に会えて良かったと云ったと云う。

今後もあの子は薬を飲むかも知れないし、飲まないかも知れない。自殺未遂者なんてたくさん来るが、ボクらは身体を元に戻すだけだが、メンタルケアが必要だ。それをあなたにお願いしたいと速水は願い出る。

田口は、私に出来る事でしたら…と恐縮して引き受ける。

速水は別れ際に、明日の委員会は盛り上がるよとほくそ笑むのだった。

自分の部屋に戻って来た田口は白鳥に、告発者は磯辺だった可能性もあると云ってみるが、白鳥は即座に、手書きの方は磯辺ではないと反論し、その告発状をレントゲン照明版に貼付けて透かせて見せる。

ボールペンで書かれた手書きの告発状にはインクの溜まりが見え、それjっは花房の房の文字の最後の所と、看護婦長の長の字の最後の所だと指摘した白鳥は、書き手にそこでためらいがあったのだと推理する。

どう言うときにためらいが生まれるかと云うと…と白鳥が続けると、自分の名前に肩書きを付けるべきかどうか迷う時…と答えたのは、側で一緒に聞いていた藤村看護婦だった。

白鳥は、あなたは最初からご存知だったんですねと藤村看護婦に問いかける。

藤原看護婦は花房看護婦長を呼んで、どうしてあんな事をしたの?と直接問いただしてみる。

すると、花房看護婦長は、お見通しなんですねと返し、救命救急センターのゴミ箱に、ミスプリントした告発状が捨ててあったのを見つけたので、これは誰か、内部のものの仕業に違いないと察しをつけ、自分を共犯と書き足して院内ポストに入れたのだと打ち明ける。

それを隣の部屋で聞いていた白鳥は溜らなくなり、花房看護婦長の前に姿を表すが、その時、田口のCDを入れていたパソコンからヘッドフォンが取れてしまう。

田口は慌てるが、その時、自分が写っている磯辺からもらったCDに何か音が録音されている事に気づく。

臨時倫理問題審査委員会が始まる。

アドバイザーとして、野村弁護士(伊藤正之)が紹介されるが、その時、成田から直行して来たと、黒崎誠一郎教授(平泉成)がコート姿で荷物を引きながら入って来る。

黒崎は、「バチスタ事件」の時に知り合った白鳥が出席しているのを見て驚く。

そして、速水センター長が他の救命スタッフと共に入室し、中央の椅子に座る。

まずは、委員長の田口が、全員に配った告発状のコピーを、一週間前に院内ポストに入っていたと説明する。

そして、速水に無実だと証明出来ますか?と問いかけると、速水は、俺は無実だなんて言ってない。告発文の内容は事実ですと発言する。

さらに速水は、君たちは救命センターがどうやって廻っていたか誰も疑ってなかったのか?と問いかける。

救命センターを作る時、みんなで協力してバックアップする。ドクターへリも考案中であると言ってましたよね、高階院長!ところが、実際にふたを開けてみると、ベッドは足りない、人は寄越さない…と速水は、非協力な五十嵐教授や村上教授、そして黒崎教授らの名を挙げて糾弾し始める。

こうした状況下、極力無駄を省き、使えない人間はどんどん切って行った。残された連中は、もう一ヶ月帰ってないと続ける速水に、業者との癒着はなかったのかと聞くと、全部、機材と消耗品に使ったと速水は答える。

話を聞いていた沼田と三船事務長は、速水先生の行いには色々問題があると指摘し、黒崎教授も、その意見を指示する。

意見を求められた野村弁護士は、背任罪が適用されると助言する。

でも…と、田口が口を出す。

病院を助けていたのなら、背任罪になりますか?と云うのだ。

証拠はあります!と花房看護婦長が立ち上がり、持っていた分厚いファイルを提出する。

これまで、業者との間に出入りした金の領収書は全て取ってあるので、それを調べれば、速水センター長が、個人的に利益誘導をしていない事は証明出来るはずだと。

高階院長と速水は、花房が領収書を取っていた事に驚くが、三船事務長は、告発状が出回ったと云う事は、救命救急のスタッフの中に不正と思っていたものがいると云う事ではないのかと突っ込む。

すると、それを書いたのは私です…と花房看護婦長は答える。

聞いていた白鳥は、「共に堕ちるため…」と呟く。

黒崎教授が、委員長に処分を願い出ると、速水は長年持っていたよれよれの退職届を提出する。

しかし、部屋を出ようとしたは闇に「かっこ良すぎるでしょう」と意見を述べる。

告発状の事を聞いた時、自分が書いたのかも知れないと思った。速水が何の処分もされないまま退職ではおかしい。懲戒されるべきですと訴える。

それを聞いた速水は、救命医はいかなる時にも激してはならないと注意するが、それを聞いた沼田は、バカにしたように拍手する。

そして沼田は、速水と花房看護婦の懲戒解雇を要求すると言い出す。

すると、白鳥が今度は拍手をして、「あなたにその資格はない」と立ち上がる。

私宛のもう一通の告発状、これを送って来たのはあなただ。自分に届いた告発状を私に所に転送した…と云い、証拠は?と言い足そうな沼田に、証拠はありますよ、ここに…と速水センター長を指差す。

告発状を送ったのは俺なんだよ。あんた以外の誰が転送出来るんだ?と速水が証言する。

なぜそんな事を?と言う高階院長の問いに、白紙から再建出来ると思ったから…と速水は答える。

その時、会議室前方の壁面が開き、スクリーンが出て来る。

そこに映し出されたのは、死んだ磯辺が田口に渡したソフトの試合の時の写真だった。

「2008年11月18日…、精神神経科沼田准教授のメンタルケアセンターで…」聞こえて来たのは、磯辺本人の声だった。

沼田が、近くメンタルケアセンターを新たに作り計画に付いて話していた。

助手の小峰が曳くコーヒーミルのガリガリ言う音も入っていた。

神経内科の需要は増えて来ている。小児科と産科は縮小しようと思うと話す三船事務長の声も入っていた。

速水を追いつめる為に、磯部君に身辺調査をして欲しいと沼田准教授が依頼している。

磯部さんからこのCDを渡されたと田口が出席者たちに説明する。

その録音を聞いた高階院長は、経営原理を優先させたら、日本の医療は崩壊しますと嘆く。

その時、会場に携帯の音が響く。

さらに、携帯の音が重なり始める。

参加していた医師たちの緊急呼び出しが一斉にかかり始めたのだ。

ロビーのテレビには、桜宮でタンクローラーが横転し爆発炎上、近くのショッピングモールに延焼する大災害が発生したと報道していた。

事故現場は比較的大学の近く。患者は全部ここに来る可能性があった。

倫理委員会会場を出た速水は全員に指示を出す。患者を全部受けると云うのだ。

高階院長は速水センター長に指揮権を任せる。

広いロビーにビニールが敷かれ、臨時の外来受付にする事にし、一般外来は二階に向かわせる。

そんな混乱の中、沼田と助手の小峰は、屋上のヘリポート脇でタバコを吸っていた。

小峰が、磯辺はボクには誰にも言ってないと言っていたんだがな〜…と呟く。

あの日、磯辺が計算機にしこんだマイクを使って録音しているのに気づいたので取り上げたが、録音機器の方が見つからなかったと小峰は続ける。

小峰が差し出した計算機を見た沼田は、一体、いつどこでそれを手に入れたんだと驚く。

あの日、メンタルケアの部屋を出た磯辺は小峰に連れられ、このヘリポートで録音していた事を追求され、計算機を小峰に渡した後、録音は誰にも聞かせていないと否定していた。

そんな磯辺をヘリポートの端に追いつめ、突き落としたのは小峰だったのだ。

それを聞いた沼田は震撼する。「なんて事を…」

しかし、逃げ出そうとする沼田の様子を見た小峰は、やんないとダメになっちゃうじゃないですか、メンタルケアセンター!と沼田に追いすがる。

沼田は怯えて、警備室に電話をかけようとするが、ボクらチームでしょう?酷いぞ、沼田センター長と小峰は沼田の首を絞めて来る。

その時。ヘリポート専用のエレベーターが上がって来て、そこから降り立ったのは、白鳥と理学療法士の山本だった。

山本が小峰を取り押さえ、白鳥は、磯辺の遺品を調べてみて、通販で同じものを買ってみましたと、小型録音機を差し出してみせる。

そして、沼田先生、告発状を私の所に転送したのが、唯一のお手柄ですと沼田を皮肉る。

その頃、患者受け入れが整ったのを見た速水センター長は、トリアージュを佐藤にゆだねる。

君の判断は私の判断だ。自信を持て!と気合いを入れる。

その言葉を聞き、意を決した佐藤は、一階ロビーに降りると、手のあいているものを全員搬送の手伝いに当たらせる。

そこに、最初の救急車が到着する。

花房看護婦長は、速水センター長の顔色が真っ青だと指摘し、自分が持っていた口紅を差し出す。

10年前の城東デパート火災の時も、同じように、指揮官たる速水の顔が青ざめていたのを見た花房が口紅を渡したのだった。

その時と同じように、速水は口紅を自分の唇に塗り付ける。「俺も成長していないな…」と自嘲しながら。

その様子を側で見ていた田口と如月看護婦は、初めて「ジェネラル・ルージュ」の意味を悟るのだった。

ロビーには次々と患者が運び込まれて来る。

その一人一人の容態を見極めながら、佐藤は赤、黄、緑…と優先順位を決めて行き、その色の札を貼らせて行く。

黒は死人の事だった。

窓ガラスの外にマスコミが群がっているのに気づいた佐藤は、近くにいた三船事務長にロールカーテンを降ろさせるよう命ずる。

コートを着た黒崎教授の姿を見つけた佐藤は、赤の患者を診るように指示を出す。

黒崎教授は憮然としながらも、その場で白衣に着替えて患者たちの方へ向かう。

一人の女性患者が、勝手にカードの色を変えようとしたのを見た看護婦が厳しく叱咤する。

黒のカードを付けられ、部屋の隅に置かれた男性の妻が抗議をしながら田口に迫るが、佐藤は、その人は黒!と断定する。

酒井利樹(玉山鉄二)や垣谷雄次(佐野史郎)も、治療現場に参加して来る。

やがてストレチャーが足りなくなる。

それを知った花房が、速水の部屋に向かい、壁の扉を開いて、その中に備蓄しておいた大量のマット型ストレッチャーを運び出す。

それを見た三船事務長は、それは何です?と問いかけるが、メディカルアーツだと速水が説明する。

桜宮市では玉突き事故まで発生し、それをレポーター(吉井歌奈子)が緊迫した様子で伝えている。

その報道を大型モニターで見ていた三船事務長が、画面に映し出された被害者の中に自分の妻(古川りか)と娘(朝田帆香)を発見、もうダメだ…と肩を落としていたので、それに気づいた花房看護婦長が叱りつける。

田口は、この騒然とした様子を前に、どうしてヘリが飛ばないの?と思わず呟くが、その時、ヘリは飛びますよと声をかけて来たものがあった。

白鳥だった。

上に電話をして他店のヘリを回してもらったのだと得々と説明する。

速水は屋上のヘリポートへと駆け上がる。

最初のヘリが到着し、やがて、他のヘリが接近して来るのも見えたので、速水は感激する。

事態は落ち着きを取り戻し、三船事務長は、病院で再会した妻と娘に目で合図をしながら、「自分で帰れる方は帰って下さい。支払いは後で結構です」とロビー内の患者たちに声をかけて廻っていた。

後日、速水は、磯辺は俺に関わってしまった為に死んでしまった。彼奴は瀬戸内海の小島の出身で、母親をくも膜下出血で亡くしていたので、救命ヘリがあったら…といつも言っていたと打ち明ける。

そんな速水を前に、高階院長は退職届を考え直しませんかと聞き、相手にその気がない事を見て取ると受理出来ないと突っぱねる。

驚く速水に、田口は、処罰を受けて頂く必要があるからですと言い出す。

速水は意外そうに、自分用の経費は付けてないと断言するが、証拠があるなら処罰を受けますか?と田口は迫る。

そして、田口は、領収書のストックの中から「チュッパチャップス 720円也」の文字を指し示す。

他にも「チュッパチャップス」は毎回のように領収書の項目に含まれていた。

田口が目撃した、速水に磯辺が渡した紙袋の中身は、速水の好物のチュッパチャップスだったのだ。

その総額は2万560円…

田口は愉快そうに、三年間利益強要した証拠ですと速水に微笑む。

高階院長は、3年間病院に勤めて借りを返せ。今極北の地でちょうど空きがあると告げる。

それを聞いた速水センター長は苦笑するしかなかった。

高階院長は田口に向かい、「お見事でした、田口委員長!」と話しかける。

白鳥も無事退院し、田口が小さな花束を持って見送りに出る。

白鳥が乗り込んだ車が走り去ると、田口は「せいせいした!」と喜ぶ。

佐藤は、三年間転勤する事になった速水に、寒いですよ、北海道はと…と言いながら、三年後必ず戻って来て下さいと別れを惜しむ。

そんな佐藤に速水は、指揮官になるには、人でなしになる事だと助言を与える。

病院を後にする速水は、花房も又、花束を持って前を歩いているのに気づくと、一緒に辞める事はなかったのに…と声をかける。

長い間お世話になりました…と挨拶する花房に、速水は、俺は寒い所は苦手なんだと愚痴ってみせる。

それを聞いた花房が、しばらく躊躇った後、私は平気ですと答えたので、速水は彼女が持っていた花束をたたき落とし、その手を握りしめる。

二人は近づいて来るドクターヘリの音に気づき空を眺めると、やっと願いが叶いましたねと花房が呟く。

高階院長と三船事務長は、最初のドクターヘリの到着をヘリポートで待ち受けていた。

着陸したヘリの扉が開き、中から運び出されて来た最初の患者は、リハビリ登山中落ちて、今度は左足を骨折した白鳥だった。

そんな事を知らない田口だったが、診療室内で又悪寒を感じ、上を見上げていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「チーム・バチスタの栄光」に次ぐ、医療ミステリの映画化第二弾。

ミステリとしても、サスペンスとしても小粒な印象で、映像的にも「二時間サスペンス」を見ていたような印象だった一作目よりさらに「二時間サスペンス化」が進行して見える。

いかにも頼りないヒロインも、頭もあくも強い白鳥コンビは、今回両名ともあまり活躍している印象を受けない。

と言うのも、殺人事件そのものは突発的なもので、特に二人が追求する対象ではないからである。

実際、殺人者を論理的に追いつめるシーンなど皆無で、犯人が自ら吐露しているだけ。

もっぱら白鳥、田口コンビが追うのは「告発状を誰が出したのか?」と云う地味な部分であって、そちらの方は、現在の病院経営が置かれている厳しい現実が最後に暴かれるので、告発ものとしてはそれなりに意義があると思えるが、元々殺人者を捜すようなサスペンスにはなりようがない。

映画としてはあまりにも地味なのと、速水の言い分を補強する意味で、後半、患者が大量に搬送して来る大事故が、いかにも「ご都合主義」で付け加えられている。

阿部寛、野際陽子と言った「トリック」関係者が出ている事から、何やらこの映画も、「トリック」めいたユーモアと云うかギャグを意図的に取り入れているように見えるが、そうした演出はこの作品を、いかにも女性向けの「コージー・ミステリ」みたいに変貌させているように感じる。

良く言えば、重いテーマ性を、テレビ風に分かりやすく噛み砕いて見せているとも解釈出来るが、分かりやすすぎて食い足りなさが残るような気もする。

 


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