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ボクは五才

1970年、大映京都、高橋二三脚本、湯浅憲明監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

1970年、大阪で東洋初の万国博覧会が行われていた頃、その大阪から山陽本線、宇高連絡船、土讚本線と乗り継いだ所にあるのが高知市だった。

これは、土佐ん子の血を引く五歳児の、高知の郊外で実際にあった話を元にした映画である。

太郎(岡本健)が通う幼稚園に、スイカの差し入れを持って来た祖母きく(北林谷栄)は、壁に貼られた孫の太郎の絵を見て何が書いてあるのか分からず首を傾げる。

水沢すみ子先生(八代順子)が言うには、大阪の絵らしい。太郎ちゃんは、クラスの中で大阪に行った事があるのは自分だけなのが自慢のようだと言う。

それを聞いたきくは、確かに、太郎は、父親に連れられて大阪に行った事があると答えるが、この絵のどこが大阪なのか、さっぱり理解出来なかった。

きくは、母親に先立たれた太郎を不憫な子なので、よろしく頼むと、先生に頭を下げて帰って行く。

この絵の意味は太郎しか知らない。

やがて太郎は、400km離れた大阪に向かう事になる、無謀にも、ただ一人で…

タイトル

「こんにちは〜♪こんにちは〜♪」と万博のテーマソングを歌っている幼稚園児たち。

太郎は、「EXPO'70」と書かれたセーラー帽をかぶった一人の園児に気付き、それは何?と聞くと、大阪万博に行った土産だと云うので、急に不機嫌になり、それまで自分が熱心に砂場で作っていた塔のようなものを踏んづけて壊してしまう。

幼稚園と太郎の家の途中に交通量の多い道路があり、いつも幼稚園児がそこの横断歩道を渡る時には、近くにあるタバコ屋のおばさんお民(ミヤコ蝶々)が、みどりのおばさん代わりとなり、手旗を持って渡してやっていた。

その日、一人で帰って来た太郎を見たお民は、誰かと喧嘩でもしたんか?と聞くが、太郎は答えず家に帰ってしまう。

家に帰った太郎は、自分が二年前、父親に背負われて大阪に行ったときの事を、自分で書いたスケッチ帳を眺めながら思い出していた。

太郎の家、奥村家は総勢14人、否正確に言うと、妊娠中の伯母がいるので14人半と云う大家族。

全て、奥村安衛門 (左卜全)ときくの子供と孫たちだった。

毎朝、この家族の間では、トイレの争奪合戦から始まる。

太郎は、小屋に飼っているウサギに餌を毎日やるのが役目だった。

家族がみんなでかけた後、安衛門は太郎は、一言も父親の事を口にしないので偉いと褒めるが、それを聞いていたきくは、太郎が不憫だと泣き始める。

同じ幼稚園児の従兄弟たちと幼稚園に向かっていた太郎は、あの「EXPO'70」と書かれたセーラー帽をかぶった子が運転手役になり電車ごっこをしているのに遭遇、従兄弟たちはすぐに乗客になるが、太郎は、なぜか仲間になろうとせず、いきなり運転手役の子が胸にさげていた電車の絵を破ってしまう。

煙草屋のお民は、今幼稚園に行ったはずの太郎が戻って来たので、あわてて太郎の家の電話番号を聞く。

すると、太郎はちゃんと、自分の家の電話番号を言えたので、お民はすぐにきくに電話を入れ、事情を伝える。

家に帰った太郎は、なぜ幼稚園に行かなかったのか安衛門やきく、伯父の安太郎(夏木章)らに問いつめられるが、頑として理由を教えなかった。

ある日、幼稚園では「因幡の白ウサギ」の紙芝居を先生が読んでくれていた。

一回目の旅立ちを失敗した太郎は、大人に怪しまれない為にはどうしたら良いかを考えていた。

幼稚園が終わってからなら良いはずだ!

さっそく、その日の幼稚園が終わってから、太郎は、路面電車に乗ろうと待ち構えていたが、ちょうど降りて来るお民に見つかってしまい、あっけなく二回目の旅立ちも失敗する。

太郎は気がついた。

タバコ屋のおばさんと云う邪魔者を避けない限り、村から一歩も出られないと云う事を。

その夜、太郎は、タバコ屋のお民が「太郎ちゃ〜ん、行ったらあかへん!」と追いかけて来る夢を見た。

翌日、まだ誰も起きていない早朝に起きた太郎は、自分でパンツを履き替え、家を出発するが、兎小屋の前で立ち止まる。

自分が旅に出てしまうと、ウサギに餌をやる人間がいなくなる事に気づいたからだ。

太郎は、たくさん餌を小屋の中に詰め込んで出発する。

かくして、太郎の三度目の家出が始まる。

今度は無事路面電車に乗り、高知市のはりまや橋に到着する。

スケッチブックに書かれたマークのようなものは、近くにある和菓子屋のマークだった。

太郎は、前に父親に連れられて来た道を間違いなくたどっている事を確認する。

ここで、父さん(宇津井健)は、「はりまや橋」の唄を歌っていたのだと思います。

太郎はしばし、玩具屋も前で玩具に見とれていたが、店員に声をかけられるとあわてて逃げ出す。

その時「太郎!」と呼ぶ声が聞こえたので、思わず振り返った太郎だったが、それは、別の太郎と云う子供を呼ぶ、知らないおばあさんの声だった。

そのおばあさんが、別の太郎にものを買ってやっている姿を見た太郎は、ちょっとうらやましがるのだった。

高知城のしゃちほこを、スケッチブックで確認した太郎は、ロープウェイのスケッチから、それに乗った事を思い出し、すぐに乗り込むのだった。

その頃、兎小屋の中に大量の餌が詰め込まれている事に気づいた安太郎が、誰がこんな事をしたのかと不思議がっていた。

一方、奥村家の朝食の食卓では、一つ茶碗が余っている事に気づき、誰がいないのかと探すと、すぐに太郎の姿がない事に気づく。

食卓に戻って来た安太郎は、また太郎が家出をした事に気づき、みんなに知らせる。

すぐさま駐在所に捜査願いを出し、高知市の警察に電話が届く。

高知駅に来ていた太郎は、荷物が多いおじさんの鞄を一つ持ってやると、そのまま一緒に、高松行きの急行列車に乗り込む。

スケッチブックの絵で、列車の窓の形が同じだった事を確認した太郎は安心する。

ところが、その直後、太郎は、連絡を受け探していた鉄道公安官から声をかけられ保護される。

太郎は、迎えに来た安衛門ときくと一緒に、軽トラの荷台に乗せられ自宅に連れ戻される。

安衛門は、父ちゃんに帰って来るよう手紙を書いてやるから、もう列車に乗らんと約束するかと太郎に言い含める。

太郎は、父ちゃんから手紙がもらえると喜び約束する。

その後、太郎は、自分で父さんに葉書を書き、ポストに投函する。

その日から、太郎は幼稚園が終わると、先に行くでと、従兄弟たちを置いてさっさと帰ってしまうようになる。

それを見た従兄弟たちは、先生に、又、太郎が家出したと告げ口する。

驚いた水沢先生は、きくの所に「又一大字ですよ」と電話をしたので、きくや安衛門は仰天するが、そこに当の太郎が帰って来る。

「手紙まだ?」と聞くので、太郎は、父親からの返事を待ちわびて早く帰って来たのだと云う事が分かる。

蔵の二階で郵便屋を待っていた太郎は、遠くから近づいて来る郵便配達を見つけると、喜んで近づいて行き、父さんからの手紙を受け取り安衛門に読んでもらおうとする。

ところが、安衛門は、メガネをかけて手紙を一読すると、メガネが古うなって読めんと言い出す。

きくもメガネがないので読めんと言うし、妊娠した伯母も読めないと言う。

安太郎も読めないと言うし、幼稚園の水沢先生まで、家出はなんて読んでもらったの?と聞くので、その内帰って来ると言われたと太郎が言うと、その通りの事が書いてあると答える。

それでも、信用出来なかった太郎は、自転車で通りかかった学生に葉書を読んでもらう。

すると、仕事が済むまで、当分帰れないと書かれていたではないか。

太郎は心の中で叫んだ。大人の嘘つき!大人は敵だ!

その夜、奥村家を訪れた水沢先生は、太郎ちゃんには本当の事を教えてやった方が良いと安衛門らに伝える。

その時、隣りの部屋で寝入っていた太郎が、「父ちゃん!」と寝言を言うので、全員、不憫そうにそちらを眺めるのだった。

翌朝、幼稚園に向かう太郎に、安衛門は、父ちゃんは当分来れんと書いてあったと、本当の事を打ち明けるが、太郎は無言で出かけて行く。

その様子を見ていた家族は、又、脱走を企みますよと気付き、きくは、村中の人に事情を知らせて、太郎を村から出さないようにする。

かくして、村の大人たちは、始終、太郎の様子を監視し出す。

大人の包囲網を、どう太郎は突破するのだ?

太郎は巣立った。

みんなが朝寝坊する日曜日の早朝を狙ったのだ。

第四回目の脱出だった。

太郎は、小屋の中のウサギを外に出してやると、家を後にする。

それから数時間後、歯磨きしながら庭先に出た安太郎は、ウサギが外に出ている事に気づくと、又、太郎が家出した事を察知し、家族全員を起こす。

お民の所へも知らせに行くと、お民は張り切り、わしが太郎ちゃんを大阪案内してやるわと言い出し、ネグリジェ姿のまま、知らせに来た男のバイクに乗ろうとする。

そんな事は知らない太郎は、着替えた後、自分を捜しにやって来たお民の姿を見ると、隠れて逃げてしまう。

路面電車に乗り込もうとすると、車掌が太郎の事を知っていて、早う家に帰らなあかんと行って来るではないか。

太郎は、なぜ大人たちが、みんな自分の事を知っているのか分からなかったが、敵である大人は、何か魔法を使ったに違いないと思い込むしかなかった。

魔法に対抗するにはどうすれば良いのか?

太郎も魔法を使えば良いのだ!

その時太郎は、目の前に停まっていた黄色いトラックが、高知に行くトラックだと気づき、荷台に乗り込むが、トラックがそのまま高知に向かうかどうかはっきりしなかった。

祈れ!魔法使いに。高知に行きますようにと…

その甲斐あって、トラックは無事、高知のはりまや橋前に停まったので、荷台から降りた太郎は、降りて来て太郎に気づいた運転手に、高知駅の場所を聞く。

駅はすぐそばだったが、近づくと、駅員たちが自分の事を噂しあっているではないか。

太郎は困った。

大阪に向かう手がかりとなるスケッチブックには、鉄道を使わない四国を縦断する方法が書かれていないからだ。

そんな太郎が目にしたのは、高松行きの国鉄バスが出発が迫ったのでお急ぎ下さいと客を呼んでいるガイド(川崎あかね)だった。

迷わず、太郎は大人の客に紛れて国鉄バスに乗り込む。

走り始めた後、昼時になった車内では、ガイドが客に弁当を配っていた。

一番後ろにちょこんと座っていた太郎にも弁当を配り終えたガイドは、自分の分がない事に気づき、このお子さんはどなたのお連れですかと聞くが、誰も心当たりがないと言うので、勝手に乗り込んだのだと気づき運転手に相談する。

次の停車駅で、運転手から降ろされた太郎だったが、バスの下に潜り込み、そのまま逃げてしまう。

やがて近くの河原にやって来た太郎は、そこで、ボディペインティングをやっている奇妙な男女と出会う。

それを見物していたカップルが、川を下る船に乗り込み、色々な乗り物を乗り継いで、途中まで行けると話しているのを聞いた太郎は、ボディペインティングの男女と共に、こっそり船に乗り込み、階段の下に隠れて、小歩危まで密航する。

大人たちはビールを飲んだり、バナナを食べたりしていたので、空腹な太郎は、何とかそのバナナを引寄せようとするが上手くいかずがっかりする。

小歩危で降りたボディペィンティングの男女と一緒に船から逃げ出した太郎だったが、不審に思った男女から追い払われたので、仕方なく一人で線路伝いに歩き始める。

間もなく、後ろの方から作業車が近づいて来て、太郎の前で停まると、降りて来た保線工(山本一郎)が、こんな所を歩いちゃダメだよと注意して、近くの子供と思ったのか、次の町まで乗せて行ってくれる事になる。

動き始めた作業車の中に、二人の保線工の食事らしきパンが置いてある事に気づいた太郎は、トンネルに入って真っ暗になった隙にパンを盗んで頬張り出す。

二人の保線工たちは、しばらく気づかず、なくなったパンの事を、互いに食っただろうと言い争っていたが、太郎が食べていた事に気づくと、笑って許してくれた。

駅に到着すると、降ろされた太郎は、そのまま一人で走り去ってしまったが、それを見送る保線工は心配そうだった。

一方、奥村家では、なかなか入らぬ太郎の情報に不安をつのらせていた。

そこに、前田巡査 (寺島雄作)がやって来て、警察、国鉄関係への緊急手配は全てすましたが、まだ連絡はないと報告来る。

それを聞いて、矢も盾も堪らなくなった安衛門は、自分が大阪に行くので準備しろと聞くと言い出す。

家族たちは驚くが、みんなは仕事があるのだから行けないだろうし、わしが行くと言うのだ。

それを聞いたきくは、自分も付いて行くと言い出す。

そんな中、外では雨が振り出し、ますます、家族たちは太郎の身を案ずるのだった。

その頃、太郎は、ドライブインの中で食事をしている運転手たちの様子を窓からのぞき、空腹をつのらせていた。

それでも、表に都待っていたトラックの荷台に潜り込んだ太郎は、ほどなくトラックが動き出すと、荷物として積んであったタマネギを剥いてかじるが、辛くて食べられなかった。

その頃、安衛門ときくは、軽トラの荷台に乗せられて駅に向かっていた。

きくは、太郎がオネショでもしてるんじゃないかと案じ、おむつを持参していた。

高松駅の近くに到着したトラックから降りて荷台に向かった運転手は、中で寝ていた太郎を発見、降ろしてやるが、太郎が高松駅はどこ?と聞いて、教えた方向に駈けて行ったので、運転手は心配になり、同僚から10円玉を借りると、警察に知らせる事にする。

太郎は、高松駅前の花時計を、スケッチブックの自分の絵と照合し安心する。

立ち食いうどん屋でうどんをすすっている大人の姿を見た太郎は、又、空腹を感じるが、その近くに来た駅員が、自分の噂をしているのを聞くと逃げ出す。

高松港にやって来た太郎は、停泊していた船舶の旗を、スケッチブックの絵と照合してみるが、違っていたのでがっかりする。

実はその旗とは信号用の旗であり、太郎のスケッチブックに描かれた三角の印は阿波丸の印だったのだが、その阿波丸は、2、3日前にドック入りしたばかりだった。

太郎は、あの三角の旗を付けた阿波丸だけが大阪行きの船だと思ていたので、三角印の旗が付いた阿波丸が来るまで、埠頭でずっと待つ事にする。

駅員が見ているような気がしたので、太郎は近くに積まれたタイヤの束の中に潜り込んで時間の過ぎるのを待つ。

次の船舶が港に来るが、タイヤの中の太郎はすっかり寝込んでしまっていた。

夢の中では、虹を渡っている自分の姿を観る。

目が覚め、タイヤから抜け出した太郎は、立ち小便をしようとズボンを脱ぎかけるが、掃除婦のおじさんから「何してんのや?」と声をかけられたので逃げ出すと、取りあえず蛇口を見つけ水を飲んで空腹を紛らす。

太郎は、又、魔法使いの神様に祈ってみる事にする。

すると、その願いが通じたのか、3時の定期便から阿波丸が運行する事になる。

あ、魔法が効いた!

三角印の旗が付いた阿波丸がやって来たのを観た太郎は喜び、すぐさま乗り込む。

ところが、出航してしばらくして、埠頭に大切なスケッチブックを忘れて来た事に気づいた太郎は、船から身を乗り出していたが、それを見つけた船員から、席に座ってじっとしているように注意される。

船は宇野に着いたが、太郎は椅子の間に身を隠し、そのまま又高松へと戻る事にする。

高松港に着いた太郎は埠頭に走り出すが、その控え室には、これから阿波丸に乗ろうとしていた安衛門ときくが座っていたのだが、互いに気づかないままだった。

埠頭にやって来た太郎だったが、スケッチブックはなくなっていた。

早く船に乗り込まないと、次に船が来るまで2時間待たなければいけない。

廻りを探しても見つからなかったので、太郎はがっかりするが、その時、さっきであった清掃婦のおじさんがリヤカーを弾いて通り過ぎるのがちらり見えたので、その方に向かってみると、おじさんは、集めたゴミを一カ所に集めていた。

おじさんがいなくなった後、そのゴミ収集所に近づいた太郎は、ゴミをあさり、下の方に落ちていたスケッチブックをようやく見つけ喜ぶ。

すぐに阿波丸の乗降口に駈け戻り、何とか出発に間に合うが、同じ船に、安衛門ときくも乗っていたとは、互いに全く気づく術もなかった。

宇野駅から、列車「鷲羽」に乗り込んだ太郎は、高校生たちのグループの中に紛れ込んでいた。

一方、前方の車両では、安衛門ときくが弁当を広げていたが、互いに、太郎が空腹で泣いているのではないかと案じ、箸が進まなかった。

ところが、その頃太郎は、女子高生から、サンドイッチやりんごをもらい、腹がパンクしてしまいそうだった。

大阪駅に着いた太郎は、両替機の形をスケッチブックの絵と照合し、すぐさま天王寺動物園行きの地下鉄に乗り込むが、遅れて同じ場所に来た安衛門ときくは、東洋一の梅田の地下街で迷子になってしまう。

目的の駅に着いた太郎は、横断歩道の前にあったはずの黄色い手旗を探すがないので、ずっとそこで座り込んでいた。

その内、小学生の女の子が声をかけ、手旗の代わりに歩道橋が出来たのだと教えてくれたので、太郎はそれを渡って向こう側に渡る。

そこから、通天閣が見えた。

太郎が、幼稚園の砂場で作っていた塔のようなものは通天閣だったのだ。

その頃、梅田の地下街では、安衛門ときくが、すっかり道に迷い警官に道を尋ねていた。

太郎は、いよいよ最後の絵、それはペプシコーラのマークの絵だったが、それを見つける事が出来ず、またもや座り込んでいた。

通りかかった出前持ちのお姉さんが声をかけて来ても無視する始末。

その時、そんな太郎のすぐ側に自動車が横付けし、そのウィンドーに、見覚えがあるペプシコーラのマークが映っているのに気づく。

マークが書いてある大きな看板は、その前に塀があったので隠れていたのだ。

喜んだ太郎は、そのマークの前までは知って行き、とうとう父ちゃんと前に来た「明和荘」と云うアパートにたどり着く。

二階に駆け上がる太郎の姿を見とがめた管理人の妻(正司歌江 )は、夫(佐々十郎)に、今の子、電報が来ている子供じゃないかと相談し、二階に上ってみる。

案の定、奥村安二郎の前に太郎が立っていたので、捜査願いが来ているんやと話しかけた妻は、ドアを開けてやると無人になった部屋の中を見せ、父ちゃんは、一昨日引っ越して行ったんよ。勤めていた建設会社は、万博の仕事が終わったので、今度は山陽新幹線の仕事をする為に、神戸の飯場に行ったんやと言うではないか。

太郎は心の中で叫んだ。

嘘や!大人は嘘つきや!

管理人が電報を打って来ると部屋を出たので、妻の方も、何か店屋物でもとったるさかい、ここにいるんやでと太郎に諭すとしたに降りて行く。

部屋に上がった太郎は、前に自分が描いた父ちゃんと自分が手をつないでいる絵が壁に貼ってあるのを見つける。

父ちゃんが唄を歌っているのを思い出しながら、父ちゃんのバカ!と叫ぶと、置いてあった灰皿を窓ガラスにぶつけ割ってしまうと、そのまま泣きながら畳に横になると、疲れが出て寝入ってしまう。

管理人二人が外からアパートへ戻ってみると、三輪車に乗った子供が「奥村はん、来よったで」と言う。

意味が分からない妻は、丼を手にして二階に上ってみる。

ふと目覚めた太郎は、部屋の入り口に発っている父ちゃんの姿を見るが、嬉しそうに上がろうとする父ちゃんに、来たらあかん!仕事の所へ帰れ!と怒鳴る、

それを聞いた父親は、父ちゃんが悪かったと謝り、太郎と抱き合う。

一人で四国から太郎が来た事に驚いた父ちゃんは、いつも太郎は、父ちゃんの事を口に出さないと聞いていたのにと不思議がる。

すると太郎は、口に出すと、父ちゃんの事を思い出すからやと言うではないか。

感激した父ちゃんは、汚れた太郎の顔を拭いてやり、太郎もその手ぬぐいを受け取ると、父ちゃんの顔を拭いてやる。

そうした二人の姿を黙って見ていた管理人の妻は、もらい泣きをしながらしたに降りて来たので、管理人は何事かと驚く。

父ちゃんは、用事があって大阪の事務所に来たついでに、大切なものを忘れていたので取りに帰って来たんじゃと太郎に教える。

その大切な宝物とは、壁に貼ってある、太郎の絵だった。

父ちゃんは、いつもその絵を観ながら、太郎の事を思い出しとったんよ。もうこの絵のように、手を離さんよと云うので、太郎は大喜びする。

そこに、上がって来た管理人夫婦が、今、梅田の地下街の交番から電話が入り、おじいちゃんとおばあちゃんがへたばっていはるそうやと教えてくれる。

それを聞いた太郎は、道案内はボクがしたるわと言い出す。

妻は、持っていた一つの親子丼を二人で食べてくれと勧める。

それを聞いた管理人は「親子でな」とまぜっかえす。

丼を食べ終わった父ちゃんと太郎は、アパートを出て、梅田の地下街に向かうのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

平成ガメラでお馴染みの、高橋二三脚本+湯浅憲明監督コンビによる、子供向け映画。

もはやこの頃、大映は倒産寸前で、この作品も配給がダイニチ映配だった事から、ほとんど世間に知られないまま忘れられて行った作品ではないかと思われる。

予算もほとんどなかったはずだが、さすがに、このコンビの作品は面白い。

芥川隆行のナレーションで、太郎の心理描写や状況説明を随所に挿入しているのも楽しいが、太郎が自分で描いた謎のスケッチを手がかりに旅行をして行くと云う辺りのアイデアがすばらしい。

大人にも観客にも、最初は意味が分からないスケッチが、旅行をするうちに一枚ずつ謎が解けて行く辺りの快感は、大人以上に子供はわくわくしながら見れたのではないか。

脇役もなかなか豪華で、父親役の宇津井健を始め、祖父祖母役の左卜全、北林谷栄に、ミヤコ蝶々、正司歌江、佐々十郎と言った関西喜劇陣の参加で、低予算を感じさせない安心感を生み出している。

実話に基づいていると冒頭で言っているが、こうした冒険旅行を本当にやった幼稚園児がいたのだとしたら痛快である。

宇高連絡船とか、今となっては貴重な映像も含まれていると思う。