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ワニと鸚鵡とオットセイ

1977年、松竹+バーニングプロ、久世光彦原案、山本清多脚本、山根成之監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ハワイ

ゴー(郷ひろみ)とメリー(樹木希林)は、ハワイの公園で、ふらふらになりながら歩いていた。

観光客がものを食べている前を取りかかると、うらやましそうに見つめる。

そこに、一人の日本人娘(秋吉久美子)がアイスを食べながら近づいて来たので、思わず、ゴーは近づいて行く。

二人は、空中ブランコ見習いとオットセイの飼育係として、何年も働いていた曲馬団を首になったのだった。

もう一度、団長に退職金をくれと掛け合いに行くが、興業主にだまされたので、サーカス自体解散となり、自分の家族を日本に帰す旅費で金は全部使い果たしてしまったので、金はないと言われる。

それでも、気の毒に思ったのか、団長は二人に鳥かごに入った鸚鵡を退職金代わりとして渡す。

その鸚鵡は「アイラブユー」と言葉をしゃべるだけだった。

取りあえず、金にしようと、「for SALE」の貼り紙をして路上で売ってみる事にした二人だったが、誰も鸚鵡など買う人間はいない。

とうとう空腹に絶えかねたメリーが、鸚鵡を食おうと、鳥かごを開けた時、鸚鵡は飛び立って逃げてしまう。

それを追いかけようとして諦めたゴーだったが、メリーの方は、鳥かごの下に敷いた新聞紙の舌から出て来たと、一枚の紙を取り出して広げる。

それは、団長からある人物が1200万円借りたと云う借用書だった。

二人は、それを取り立てれば、自分たちに大金が転がり込むと分かり、一瞬喜ぶが、当の借りた人物が東京に住んでいると分かりがっかりする。

二人には、飛行機代などなかったからだ。

それでも、1200万円の為と分かれば、早速、飛行機代を貯めようと、二人はバイトを始める事にする。

メリーは、食堂の皿洗い。

ゴーは、ビーチで、レンタルサーフィンボードの手伝いをしていたが、慣れない力仕事でふらふらになり、ビーチにへたり込んでしまう。

その時、彼の目に飛び込んで来たのは、「アイラブユー」とシャベル鸚鵡を捕り駕篭に入れ持って来た一人の日本人娘だった。

彼女は、昨日、公園でアイスを食べていた女性だと、ゴーは思い出し、その鸚鵡は自分たちのものなのだが逃げたのだと話しかける。

彼女は、ホテルの窓にとまっていたのだと言うので、その鸚鵡の為にせっかく新しい鳥かごも買ったようでもあるので、ゴーは、その鸚鵡は君にあげると言う。

彼女は、東京から両親と一緒にハワイに来たのだと言い、父親はホテルを買収に来たのだが、なかなか交渉が難航している所だと云う。

ゴーは、あなたとは昨日、公園で会ったと伝え、又明日も合ってくれないかと申し込む。

その後、食堂の調理場でチキンにかぶりついていたメリーの元へ向かったゴーは、軍資金を貸してくれと頼む。

素敵な彼女を見つけたのだが、彼女はマジックアイランドホテルに泊まっているのだと云う。

メリーはその夜、恋愛の手ほどきをしてやると、自分が彼女役になって芝居を始めるが、メリー相手では、ゴーの方はムードが出ない。

翌日、着飾って彼女と再会したゴーだったが、二人の側に出現する怪し気な女がいた。

メリーが変装をして、二人の様子を監視していたのだが、娘の様子を見ているうちに、本当に金持ちの娘かな?と疑問を抱くようになる。

モーターボートで遊んだ後、船を降りる時、怖がる彼女の手を握って引き寄せたゴーは、一瞬彼女と抱き合う形になる。

サンセットの時間になり、二人は踊っていたが、急に娘の方が身を離すように海辺に向かう。

ゴーはどうしたのか?ホテルまで送って行くと申し出るが、彼女は、あなたがとても良い人だから…、パパに見つかったら大変と言って拒否する。

ゴーは、何とか彼女の名前を聞き出そうとするが、彼女は答えない。

明日もう一度だけ会ってくれないかと、ゴーは頼むしかなかった。

その夜、ホテルで、ゴーにハンバーグを渡し、ちゃっかり75セントを要求するメリー。

しかし翌日、公園で待っていたゴーの元へやって来たのは、鸚鵡が入った鳥かごを引きずって来た男の子だけだった。

鳥かごの中には「ありがとう ごめんなさい そしてさよなら」と書かれた紙が入っているだけだった。

仕方なく、その鳥かごをぶら下げて通りを歩いていたゴーだったが、一組の老夫婦が、「アイラブユー」としゃべる鸚鵡に気づき、それを買いたいと言葉をかけて来る。

ゴーはメリーの所に飛んで行き、鸚鵡が500ドルで売れたと報告する。

東京に帰れるのだ!

ジャンボジェットで東京に到着した二人は、早速、借用書の名義人の住所を訪ねて、台東区下谷へやって来る。

その相手は、質屋をやっていた鴨下権十郎と言う人物だった。

しかし、質屋は見つかったが、声をかけたも誰も出て来ない。

隣の床屋「亀床」で客のヒゲを当っていた店主(山田吾一)に話を聞くと、権十郎なら競輪に出かけて留守だと云う。

では待たせてもらって良いかと聞くと、伊東辺りにまで行っているので、いつ戻るか分からないと云う。

それでも、他に行く宛もない二人は、質屋で寝て待つ事にする。

夜、外は雨が降り出していた。

ゴーは、ハワイで出会ったあの子の夢を観ていた。

夜更け、物音に気付き、おっかなびっくりその方へ向かった二人は、そこで立っていた見知れぬ中年男と出会い、互いに驚いて腰を抜かす。

その中年男こそ、二人が探していた鴨下権十郎(大滝秀治)であった。

二人から借用書を見せられた鴨下は、かつては、日本で一二を争う程のサーカスが解散した事に驚くと共に、自分も一時サーカスに世話になっていた事、さらに確かにこれは自分が10年前に表方を任されていた時、興行の金に手を出してしまい、その時書いたものだと認めるが、今は金がないと言う。

この家を売れば良いじゃないかとゴーは言うが、既に抵当に入っていると云う。

しかし、金庫の中から紙の束を取り出して来た鴨下は、15、6から預った金の借用書が約1700〜1800万円分あるのだと言う。

それを見たメリーは、自分たちが早速明日から取り立てに廻ると言い出す。

これを知って騒ぎ出したのが、町内で、鴨下から金を借りている面々たち。

亀床をはじめ、太陽写真店(千田孝之)、時計屋(ケーシー高峰)、剥製屋の万公房 (下絛アトム)、下駄屋(大泉滉)、生け花師匠(池波志乃)、葬儀屋墓場(伴淳三郎)、その妻(野村昭子)、娘桃子(藤岡麻理)たちは、集まって、鴨下の質屋に直談判に向かう。

ところが、茶の間に座っていた鴨下に声をかけても返事をしない。

その開いた目は白目になっている。

台所に置いてあったフグを見た全員は、鴨下がフグに当って死んだ事を知る。

すぐさま、町内を歩き回っていたメリーとゴーにその事を知らせに行く墓場。

それを聞いた二人は、「しまった、逃げられた!鴨下権十郎にあの世に逃げられた!」と叫ぶ。

取りあえず、墓場葬儀社が中心となり、借用書の面々がそろって、鴨下の葬式を執り行う事にするが、墓場は、葬儀代40万だと言い出すし、他の面々も、鴨下にはあれこれ借金があると云い出す騒ぎ。

そこにメリーとゴーもやって来ると、急に墓場の女房が「鴨下さんには七子と言う娘がおり、神田の八百屋で働いているはずだ」と言う。

早速、神田に向かったゴーは、その八百屋の横から、ゴミを出しに外に出て来た一人の娘の姿を見る。

その娘こそ、ハワイで出会ったあの子ではないか!

ハワイ中探したんだぜと声をかけたゴーに、娘は謝り、実は、金持ちの両親と云ったと云うのは嘘で、自分はこの店で働いており、ハワイへは福引きで当たっただけなのだと云う。

それを聞いたゴーは安心して、自分もサーカスを首になった男なのだと打ち明ける。

彼女こそ鴨下七子だと知ったゴーは、親父さんが亡くなったと知らせる。

しかし七子は、昔は親子だったけど、今は赤の他人と言い、冷めた態度を取る。

それでも、鴨下質店に連れて来られた七子は、父親の遺影に手を合わせる。

その横で、必死に金庫を開けようとするメリーと亀床の姿を見た七子は、勝手に金庫を開けないでくれと注意し、さらに、質草のワニの剥製を勝手に持ってかえろうとしていた万公房にも、きちんと金を出してくれと言い出す。

七子が意外としっかり者だと分かったみんなは、すごすごと帰って行く。

ゴーとメリーから、金庫の中に1800万相当の借用書が入っている事を知った七子は、その場で金庫を開け、中の借用書を確認すると、明日から手分けして、集金して来てくれと二人に頼む。

翌日、メリーは墓場葬儀社に、ゴーは生け花教室に集金に向かうが、共に、ヒステリーや泣き落としの芝居にだまされ、すごすごと引き返すしかなかった。

その後、橋の所で合流した二人は、それぞれ上手くいかなかった事を報告し合い、メリーは、七子が、自分たちだけに取り立てを任せているのはずるいと指摘するが、ゴーの方は惚れた弱みか、七子を責めようとはしなかった。

強引な取り立てを受けた亀床、下駄屋、万公房、太陽写真店、時計屋などは、七子に抗議に来るが、メリーとゴーガその後帰って来ると、明日から自分も外回りを手伝うと言い出す。

取りあえず、何か食べようと云う事になり、店屋物のそばを注文するが、何故か、その代金を払わされたメリーの側には、エビ天が乗っていなかった。

それを文句を言うと、ゴーは、嫌いなんでしょう?と云いながらも、自分のエビ天をメリーの蕎麦に乗せてやる。

すると。ゴーを気の毒に思った七子が、自分のエビ天をゴーに差し出し、メリーも同じようにゴーの蕎麦にエビ天を戻す。

そうしたエビ天のやり取りがしばらく続き、嫌になったゴーは、自分の蕎麦ごと、メリーの蕎麦の上から全部かけてしまう。

夜まで、メリーとゴーの気まずい雰囲気は尾を引くが、ゴーは非情にやってやると決意を述べる。

七子は、母親と家を出た子供の頃の事を思い出しながら、父さん、あんたが悪いのよと呟いていた。

翌日、ゴート一緒に出かけた七子は、万公房から商売ものの剥製、時計屋からは柱時計を持ち出して行く。

亀床は、表のねじりん棒を持って行かれ、どの店を頭を抱える。

生け花の師匠も、看板を持って行かれそうになり、必死に奪い合いするが、それじゃあと云いながらゴーに手を離され、尻餅をついてしまう。

頭に来て質屋に乗り込んで来た葬儀屋の墓場は、ゴーとメリーには、1200万の借用書の名義人ではなく、委任状も持っていないので、金を受け取る刺客はないと言い出す。

そんな中、墓場の女房はメリーに相談があると云い出す。

その頃、ゴーと七子は、公園で一休みしていた。

ゴーが、ブランコ乗りたかったなと呟くと、七子はそこにあるじゃないと指差すが、空中ブランコの事だよと云いながら、ゴーは答える。

七子がブランコに乗って、ゴーがそれを押してやる仲睦まじい様子を、こっそり付けて来たメリーは監視していた。

1800万円が戻ったら、その内の600万を手にする事になる七子に何に使うつもりかとゴーが聞くと、鎌倉で女中をやっている母さんを助けたいと云う。

母さんは、父さんの借金のカタとして売り飛ばされ、一生働かなくてはいけないらしい。

一方、両親ともいないと云うゴーは、600万手に入ったら、君を買いたいと言い出す。変な意味ではなく、何となく、君とは気が合いそうだから…とフォローするが、七子は、あなたにはメリーさんがいるじゃないと返事する。

お姉さん?まさか、お母さんではないわよね?とメリーの事を不思議がる七子に、ゴーは、彼女とはサーカスで何年も暮らして来た一人者同士で、いつの間にかコンビになってしまったのだと説明する。

そんな二人の様子を見ていたメリーは、つまらなそうに質屋に帰って来ると、金庫を足で蹴飛ばす。

すると、金庫の扉が開いたではないか!

中には、借用書が入っているのが見えた。

その後、質屋に戻って来たゴート七子は、メリーの姿が見えない事と金庫が相手中の借用書がなくなっている事に気づく。

金庫の中には「さよなら」と書かれた紙が入っていたので、メリーの仕業だとゴーは気づき悔しがる。

メリーは、墓場の家に集まった町内の面々を相手に、全員の証文全部を30万で売ると言い出していた。

墓場が立て替えた30万を持って帰って行くメリー。

その後ろ姿を見送っていた桃子は、何だか寂しそうだったねと呟く。

その後、質屋にやって来た面々は、ゴーと七子が持って来た品物を受け取りに来る。

メリーが、借用書を30万で売った事を知ったゴーは、あの馬鹿…と怒るが、質草であるワニの剥製までも持ち出そうとした万公房を見つけ、注意する。

やけになったゴーは、もうこんなものを持っていても意味がないと、1200万円の借用書を引き裂いてしまう。

元々なかったものだと思えば何でもない、君も元気を出せよと七子を励ますゴー。

七子は、これから母さんの所へ行って、自分が、身体が弱い母さんの代わりに働くと言い出したので、ゴーも付いて行く事にする。

北鎌倉の豪邸が、母親が働いていると云う屋敷だった。

ゴーは駅で待っていると約束し、七子も、本当に待っていてくれる?もう一人になりたくないからとゴーにすがり、二人は家の前で別れる。

屋敷の中で、水をまいていた女性こそ、七子の母親(春川ますみ)だった。

七子に驚きながらも茶の間に通した母親は、3年前まで女中だったが、先妻が亡くなった今ではこの家は私の家だと言う。

父親が死んだ事を七子から知らされた母親は、15年前、好きな人が出来て、父親もあなたも捨てて家を出たのは自分の方だった。悪かったのは全部自分の方だったのだと言い出す。

今の主人は、その頃、小さな会社の経理係をやっていたのだと云う。

北鎌倉駅で、七子が戻るのを待ちわびていたゴーは、駅前に停めてあったタクシーのボンネットの上に乗っていた所を、地元の不良たちに絡まれ、近くのトンネルに連れ込まれると、ぼこぼこに殴られる。

真実を知り、屋敷を飛び出した七子は、駅にやって来るが、待っているはずのゴーの姿がない。

その頃、ぼこぼこにされたゴーは、倒れ込んで動けなかった。

がっかりして電車を待つ七子だったが、母親が追ってホームまでやって来る。

母親は、すねる七子に対し、分かってくれと云ってるんじゃないの。知って欲しかったの。母さんだって女なのと説得し出す。

七子が乗り込もうとしていた電車は発車してしまっていた。

そこに、ぼろぼろになったゴーがやって来るが、七子と母親らしき女性が真剣に話し合っている姿を見た途端、自分は邪魔者だと感じ、次に到着した電車に乗り込み、そのまま帰って行く。

質屋に戻って来たゴーの姿を見かけた生け花の師匠は、ああいう崩れた所も又、結構ね…とうっとりし、弟子たちを呆れさせる。

亀床は、ゴーの姿を見かけると、七子ちゃんをどこへ連れ出したと怒鳴るが、気がつかない様子のゴーは、そのまま質屋の中に入ってしまい、夜、カップヌードルを一人すすると、もうもここには戻って来ないのかなぁと呟きながら、ハワイでの七子とのお芋井出を夢見ながら一晩泊まる事にする。

夢の中で、七子とキスをしそうな雰囲気になるが、突如、七子の顔がメリーに変わったのは、いつの間にか、ワニの剥製を抱いて寝ていた為だった。

翌朝店を出て行くゴーの後ろ姿を、電柱の陰から観ていたのは、墓場の娘桃子だった。

石材店の店の前にやって来たゴーは、そこに鸚鵡が入ったかごがあるのに気づき足を止める。

店の壁には「動物曲芸大会」のポスターが貼られていた。

それを見たゴーは、ひょっとすると、メリーがいるのではないかと期待し、その動物園に行くと、案の定、メリーと再会する。

こんな近くでオットセイがいるのはここしかないからなとゴーが愉快そうに言うと、メリーは、日本にはオットセイはいない。ここにいるのはアシカだと云う。

フラミンゴの前で、おふくろさんとの事見せつけられると辛かったとゴーが言うと、私も、男と女がベタベタしている所を観ているのは辛かったと打ち明けながらも、ゴーがいまだに、七子の事を忘れられない事を悟り、そっと焼き芋を渡す。

その頃、万公房は、七子が町に戻って来るのを見かける。

質屋に戻って来た七子は、父親の遺影を観ながら泣き出していた。

一方、亀床や太陽写真店たちは、1800万円ねこばばした自分たちの行為を反省していた。

いくら借用書を30万で買った所で、少しずつでも、借りた金は返すのがスジではないかと思っていたのだ。

そこに、万公房が七子が戻って来た事を教えに来る。

その七子は、家の中に忘れられた片方だけの靴下を見つけ、もう片方はどこに行ったんだろうねと寂しそうに笑う。

その片方をはいたゴーは、メリーと一緒に九州へ向かおうとヒッチハイクをしている最中だった。

質屋に集まった町の面々は、取りあえずかき集めた246万円を七子に返し、後は少しずつ返して行くから、黙って受け取って欲しい。そして、これからは、あんたが親父さんに代わって質屋を続けて欲しいと頭を下げていた。

取りあえず、一本締めをして、店を継ぐ事を決心した七子だったが、その後、一緒に買い物に出かけた桃子から、夕べ、店に戻って来たゴーが一晩泊まって、今朝出て行ったと知らされる。

あの人、七子さんが戻って来ると思っていたんじゃないかな?気にならないのと迫られた七子だったが、今は新しい生活を始めようと頭が一杯だからと答える。

しかし、桃子は、質屋なんて古いじゃないと言い、それを聞いた七子も、それもそうねと笑うのだった。

その頃、メリーとゴーの二人は、豚を運ぶトラックの荷台に乗せてもらっていた。

ゴーは、豚に囲まれたメリーを見て、どれがメリーさんだか分かりゃしないなどと云いながらも、いつしか眠りに入っていた。

夢の中で、回転木馬に乗ったゴーと七子は、甘いキスを交わしていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1977年に郷ひろみと樹木希林が共演したテレビドラマ「ムー」の直後に公開された二人の再共演作品。

アイドルだった郷ひろみが若いのは当然だが、樹木希林も、当時まだ34歳くらいで、今見ると、驚く程若いし、娘の内田也哉子にそっくりな事に気づく。

郷ひろみの方も、真っ赤なズボンなど、いかにも当時流行のファッションで登場して来るが、ズボンの上にトランクスをはいていたり、ズボンの上にスカートをはいている樹木希林の奇抜なファッションには驚く。

前半は、ハワイロケで、ありふれた設定ながらシャレた映像で展開するのだが、東京に戻ってからの後半は、いかにも松竹喜劇と云うか、ベタな下町人情劇になってしまう。

樹木希林の芸達者さとそれを受ける郷との軽いコンビネーションで魅せようとしているが、いかんせん、セリフだけの応酬で終わっており、動きの面白さがないために、笑いが起きないのだ。

脇を固める役者たちにも、個性派、芸達者をそろえているのに、それぞれのキャラクターが少しも生きていない。

何となく、ガヤガヤやっているだけの印象だけで、もったいない感じがする。

この作品は、別にコメディを意識して作られた訳ではないのかも知れないが、そうすると、牛乳瓶の底のようなコントメガネにセーラー服姿と云う、お茶の間コントのような扮装で登場する桃子などの登場があまりにも浮いてしまう。

そう云うマンガ風のキャラクターの登場も、当時としては、新しい感覚のつもりだったのだろうか?

それでも、あまりベタベタした「お涙頂戴もの」ほどには臭くなっていないのがせめてもの救いかも知れない。

しょせんは、事務所が企画したアイドル映画だから…と、言ってしまえばそれまでだが、工夫次第で、もう少し面白くなったのではないかと惜しまれる作品ではある。

いかにも70年代を象徴する女優の一人秋吉久美子や、若い郷ひろみや樹木希林を見るだけでも、十分価値はある映画とも思えるのだが…